なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
ミッドチルダ郊外、アラル港湾埠頭。
此処はリンジと彼の母親の修行のために通っている大型倉庫のある区画だ。今日、とくに用事もなくリンジがアラル港湾に立ち寄ったのは他でもない、アインハルト・ストラトスに頼まれ、高町ヴィヴィオの再戦を見届けるためだ。
「お待たせしました」
「どうもっす」
そう言葉を紡ぐアインハルトの傍らに立つリンジをチラチラと見て、やっぱりキラキラとした尊敬や憧れの眼差しを向ける美少女達にリンジは困りつつ、アインハルトに続いて、ぎこちない挨拶をする。
「ミヤザワ、アンタも来たのか」
そうノーヴェは少しだけ驚いたものの。
「コイツのせいやぞ。俺は悪ないで」
すぐにリンジがアインハルトに付き添っている理由を知り、憐れみの視線を向ける。彼の右腕を押さえ込むようにガッチリと腕を絡め、アインハルトは思いっきりリンジの右腕に関節技を極めているのだ。
「セット・アップ」
「武装形態」
二人の呟いた特定のキーワードによって膨大な魔力がアインハルトとヴィヴィオの肉体を包み込み、ちょうど十代半ば程まで成長した姿に作り替える。
「ゴホン。それじゃあ、始めッ!」
その合図を皮切りにヴィヴィオは両腕を持ち上げ、頭部を守るようにガードを固めた状態で駆け出す。対するアインハルトは静かに〈覇王流〉の構えを取り、凄まじい速さで猛進するヴィヴィオを迎え撃つつもりの様だ。
「はあっ!」
アインハルトは射程圏内に踏み込んだヴィヴィオを狙い、疾く鋭い右の正拳突きを放つ。
しかし、先日の手合わせより軽快なフットワークでヴィヴィオは拳の当たる寸前、ぐんっ、と身体を低く深く沈め───しなやかな足腰をねじり、超低空を這う様なアッパーカットを繰り出した。
「スマッシュか?」
「…よく分かるな」
「そりゃあな」
リンジは呆れるノーヴェに当たり前のように言葉を返し、至近距離の間合いで打ち合う二人を見据える。パンチ力、肉体の強度に関してヴィヴィオより年上かつ身長の高いアインハルトに分がある。
「おりゃあっ!!」
「くッ…!」
ぶぉんっ、と鋭い風切り音が上げる。
振るわれる三連続の蹴り、下段、上段、中段、角度も速さも左右の脚も向きもバラバラな動きにアインハルトは少しずつ後ろに後退し、防御に徹する様に両腕を持ち上げ、ヴィヴィオの蹴りを受け止め、拳打を往なし、受け流すという行程を繰り返している。
「しゃあっ!!」
ヴィヴィオが中段を蹴ろうと振るった脚を、アインハルトは十字に組んだ腕で受け止め──右足を地面から跳ね上げて、ヴィヴィオの左側頭部を足の甲で打ち抜く。
「あっ」
みしっ、と鈍い音がした。
「はあっ、はあっ…!」
どしゃり、とアインハルトが倒れ、ヴィヴィオも僅かに遅れて倒れ伏す。
その様子を確認したアインハルトは武装形態を解除し、ビリビリと痛みで痺れる腕をだらりと下ろしはがら、起死回生のつもりで放った蹴りによって倒す事の出来たヴィヴィオに歩み寄る。
「改めて、私はアインハルト・ストラトスと言います。先日、いえ、今日はありがとうございました、高町ヴィヴィオさん」
そう言うとアインハルトも倒れてしまった。
「大変です、動けません」
「何故、俺を見る」
「リンジさんは彼氏なのですし」
「俺は何もしとらんぞ」
そう愚痴るようにリンジは溢す。
〈高町ヴィヴィオ〉
聖王オリヴィエの生き写し
アインハルト・ストラトスと一度目の練習試合で何も出来ずに敗北し、二度目の再戦にて学んできた