なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
ミッドチルダ首都、クラナガン近辺。
リンジはワールドチャンピオンとして五度目の防衛戦に挑もうとしていた。普段は母親にチケットを渡すだけだったが、今回の防衛戦には、ここ最近出来た沢山の知り合いが観戦にやって来ているのだ。
『赤コーナー、U25最年少にして無敗の戦績を誇る謎多き古流武術〈灘神影流〉を操り、未だ無敗伝説を築き続けるチャンピオン───』というアナウンスを聴きつつ、リンジは円形のリングに向かって歩く。
「すうっ、はあっ」
リンジは浅く息を吐き、対戦者を見据える。
かつて戦ってきた格闘技者を遥かに上回る巨体と巨木を彷彿とさせる両腕、何よりゴツゴツと凹凸が出来るほど異様に膨らんだ左右の五指、おそらく握り拳を作れば人の頭サイズになるかもしれない。
『青コーナー、その拳は防御を突き破り、剛力無双のシンプルな
「金的、目突き、噛み付きは禁止だ」
そうレフェリーは言う。
「ああ、分かっとる」
「OKだ」
二人は一言だけ発して、自営のコーナーに向かう。
「準備は良いな、開始っ!」
リンジはレフェリーの言葉と飛び出す対戦者───ロドマの巨大な掌を拡げて放たれた張り手を掻い潜り、筋肉の要塞とも形容できる彼の脇腹に向かって右鉤突きを打つ。
ばぎゃっ、と鈍い音が会場に響く。
最初の一撃はリンジのパンチだと誰もが疑いもせず、いつものようにボディブローを決めると思っていた。だが、リンジの身体はコーナーにめり込むほど弾き飛ばされ、彼の左手には大きな紅葉の様な痣が刻まれる。
「え、えぐいのぉ…!」
ニヤリと笑いながらリンジは構え直すとロドマは先程と同じように張り手を放とうと右手を振り上げる。その瞬間を二度も見逃すほどリンジはバカではない。
ぎゅるるっ、とリングのマットを擦るように爪先をねじり、ロドマの横面に上段回り蹴りを叩きつけ、リンジは右足が地面に着地すると同時に左の後ろ回り蹴りを打ち込んでヤローブを蹴り飛ばす。
「あぐっ」
微かに呻き声を漏らすロドマの頭を掴み、飛び膝蹴り。ごすっ、ぐちゃっ、どごっ、と鈍い音が会場に響き、五発目の蹴りを打ち込もうとしたところでリンジはロドマの胸部を蹴って後ろに飛ぶ。
「もう、やめちゃうの?」
そう血まみれの顔でロドマは言う。「チッ、効いてないんかい」とリンジは悪態を吐きつつ、ロドマとの間合いをジリジリと詰め合う。
「フンッ!」
「せやっ!」
いきなり間合いを詰めてきたロドマは張り手を止めて、巨大な拳を振るう。リンジも負けじとロドマの巨拳を往なし、分厚く太い筋肉繊維の詰まった腹筋を何度も殴り、巨漢のロドマを逆側のコーナーまで押し返す。
「おおおおおぉッ!!!」
「負けるかァッ!!」
殴る。
捌く。
殴る。
捌く。
まるで演武を見ているのかと錯覚してしまうほどリンジはロドマの拳を捌き、往なし、弾き、躱し、受け流す。
全ては〈灘神影流〉の超絶技巧の防御技術による恩恵だが、最もリンジの防御を手助けしているのは〈灘神影流〉の〝技法〟の一つ、
ミッドチルダで独自の進化を遂げた〈灘神影流〉の〝弾丸すべり〟は
「灘神影流、釘突きっ!」
どすっ、と眉間に向かって中高一本拳打ち込み、リンジが手首を上向きに、ぐりんっ、と捻った瞬間、ロドマの身体は緩やかにリングに向かって倒れ込んだ。
『しょ、勝者ッ、リンジ・ミヤザワっ!!』
その声と共に大歓声が会場に木霊する。
「中々強かったで、おっちゃん」
そう言うとリンジは倒れ伏すロドマにニカッと笑顔を向け、そのまま片腕を掲げながら、自身の勝利を示す様に恬然とした歩みでリングを降りる。
〈
灘神影流・技法
灘神影流の防御技術の最高峰。この技術を極めれば手のひらを用いて無数の弾丸を滑るように弾き、不意打ちで放たれた弾丸すら体内、臓器を傷つけることなく肉体をかん通させることすら可能とする。