ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

13 / 66
今回はインタビュー。


探求者へのインタビュー

 ホッコータルマエをチームに迎え、チーム名も無事に決まったのでトレーニングの日々となる。

 

「ほう、チーム・ミーティア……流星か!中々おしゃれな名前じゃないか、高村トレーナー」

「ありがとうございます、佐岳さん。それじゃあ今日も」

「あぁ。ロンシャン攻略に向けたトレーニングを始めようか!今日もビシバシ行くぞ、アグネスタキオン!」

「分かっているよ。今日はどんなトレーニングをやるんだい?」

 

 チーム名はミーティアに決まった。それはいいとして、凱旋門賞に向けたトレーニングもさらに本格化することになる。今回は座学の後に実践トレーニングだ。

 

「ロンシャンではタフさも求められる。なんせ、高低差10メートルはあるからね」

 

 レース場の一番高いところと低いところの差が10メートル、か。

 

「中山が確か、高低差約5メートルだろう?実質2倍ってことだねぇ」

「ロンシャンはアスコットに比べると少しマシではあるけどな。だが、ロンシャンはポジション争いが熾烈になる前半に上り坂がある。これがまた厄介なところだ」

 

 良いポジションにつくために躍起になると余計なスタミナを消費する。ただでさえ上り坂だから、その辺の折り合いを上手くつける必要がある、ってことか。

 

「だから何個かつきたいポジションを決めておくといい。ベストポジションではなく、2番目、3番目につけるということも忘れないでおくんだ」

「ふぅン、まぁ了解だ。つまりは、この後はスタミナトレーニングをする……ということかい?」

「そういうわけさ。今回やるのはスタミナトレーニングだ!」

 

 と、まぁ。アグネスタキオンは順調にトレーニングを進めている。他の子達もまぁ変わらずだ。

 

「あ、あの~、ジェンティルさん?その小さい銀玉?みたいなものは……」

「あら?……あぁ、またやってしまったわね。ちょっと、トレーナー?」

「なに?また鉄球を圧縮したの?」

 

 ジェンティルドンナに呼ばれたので駆け寄ると、彼女の手元には変わり果てた姿の鉄球があった。うん、見事に圧縮されているね。パチンコ玉みたいになってる。肝心のジェンティルドンナは溜息を吐いているけど。

 

「もっと固い鉄球を用意なさい。これではトレーニングになりませんわ」

「固いとか関係あるの?どの道圧縮されるのに」

「あなたの返事ははいかイエス、どちらかですわ」

「……え?コレ元鉄球?なんで圧縮できるの?こわぁ」

 

 ホッコータルマエ、いつか君も慣れる日が来るよ。とりあえずまた秋川理事長経由で鉄球を注文しておくか。

 後はバクシンオーとキタサンブラック、ドゥラメンテ。

 

「さぁお2人ともッ!模範的で優秀な学級委員長についてきてくださいねッ!バクシンバクシーーーンッッ!!」

「ば、バクシーン!」

「……バクシンッ!」

 

 キタサンブラックとドゥラメンテはお互いをライバルと意識しているのか、一緒にトレーニングさせると良い結果を出す。お互いがお互いに負けたくない、って感じているんだろうね。良い傾向だ。

 

「どんどんついてきてくださいね~!バクシンバクシンバクシンシーン!」

「あ、あの、ちょっと……」

「……」

 

 たまにバクシンオーが暴走して2人を置き去りにすることがあるけど。それも愛嬌ってもんだろう。

 

 

 チーム・ミーティア。トレーニングは順調である。

 

 

 

 

 

 

 ただ、トレーニングだけではなく。アグネスタキオンに向けた取材もあった。

 

「私は忙しいんだがねぇ」

「僕が対応するから問題ないよ」

「おいおい、君がいなくなったら私は誰で実験すればいいんだい?だから私も受ける、とっとと終わらせるよ」

 

 今回の取材はクラシック戦に向けてのものだ。バクシンオーの時もやったことがある。バクシンオーの時は……。

 

「えぇ!勿論全部出走しますよッ!」

「え?距離不安?ハーッハッハ!問題ありませんッ!完璧な頭脳を持つ私にトレーナーさんというとても模範的なトレーナーさんがいますから!」

「クラシック三冠はほぼ確定的ッ!私が優秀で模範的な学級委員長になる日も近いでしょうッ!」

 

 うん、終始バクシンオーのペースで僕が喋る暇ほとんどなかったね。でも今回は真逆、アグネスタキオンは最低限のことしか喋らないだろうから、僕がサポートをする必要があるだろう。

 

「まずはホープフルステークス優勝、おめでとうございます!ジュニア級レコードを更新する形での勝利……私、痺れました!タキオンさんとしては、あのレースをどう振り返りますか?」

「ふぅン。これで私の目的にまた一つ近づいた、ってところだ。だが、まだまだ本気ではない。弥生賞と皐月賞でそれを証明しよう」

「……え?ホープフルステークスはまだ全力ではなかった、と?」

 

 こちらの方をチラリと見るインタビュアー。アグネスタキオンに目配せして、答える。

 

「そうですね、現時点で出せる全力ではありませんでした。ただ、こちらにもそれなりの理由がありましたので」

「その理由というのは!?」

「残念ながらお教えすることはできません。諦めてください」

 

 がっくりと項垂れるけど、こればっかりは教えるわけにはいかない。アグネスタキオンの弱点に直結するものだから。ま、その弱点も徐々に克服しつつある。クラシック後半にもなればあるいは、って感じだ。

 

「え~……さらりと明かされましたけど、次走は弥生賞なんですね?」

「おや?言ってなかったかね?」

 

 聞いてねーよ!って言いたげなインタビュアーさんである。いや、アグネスタキオン。不思議そうな表情してるけど言ったことないからね?インタビュアーさんの表情が正しいからね?

 

「皐月賞と同条件で開催されるから、前走に丁度いいのさ」

「それに、メイクデビューとホープフルどちらも阪神開催だったので。この機会に中山レース場に慣れておかないといけませんから」

「ほうほう……中山レース場の感覚を掴むため、と」

 

 思えばどっちも阪神開催だったなぁ。ホープフルステークスは本来中山開催だけど、今回は阪神での代替開催だったし。

 インタビューは続き、今度は注目している相手についての話題となる。

 

「注目しているライバルの存在はいますか?」

「ライバルぅ?……別にいないねぇ」

「おや、ライバルはいな「それはそれとして気になる相手はいるねぇ!ホープフルでも一緒に走った彼女……ポッケ君だったかな?彼女は良いねぇ!」じ、ジャングルポケットさん、ですか?」

「そうだ!彼女は良い目をしていた……負けてなお私に立ち向かおうとしていたあの目!彼女はきっと強くなるだろうねぇ!」

 

 嬉しそうに、楽しそうに語るアグネスタキオン。これは心からの言葉なんだろうな。

 

(アグネスタキオン自体、こういうことであまり嘘は言わないけども)

 

 ただ、それと同時に。()()()()も抱いているんだけどね。

 

「と、なると。クラシックでのライバルはジャングルポケットさんになると?」

「ライバル?」

「へ?は、はい。強くなりそうだ、って注目しているならライバルと思ってるんじゃないかって、思うんですが……」

「違うね」

 

 インタビュアーの言葉を、アグネスタキオンは一刀両断した。目を見開くインタビュアーに、アグネスタキオンは淡々と告げる。

 

「彼女に関しては強くなりそうだ、としか思っていない。ライバルという関係は不適切だ」

「そ、そうなんですか?」

「そうだとも。ま、彼女が強くなることは望ましいと思っているよ。私の研究に役立つからねぇ」

 

 アグネスタキオン的には、強くなったとしても自分ならば負けないという自信があるのだろう。競争相手とすら思っていない。自分の実験に役立つであろう相手という認識なのかもしれない。後は普通に、挑発。もしこのインタビュー記事が世に出回って、ジャングルポケットの目に留まった時のことを考えている可能性がある。

 

(……いや、多分、ジャングルポケットだけじゃない)

 

 自分以外のウマ娘全員に対して、かもしれないね。ウマ娘は闘争本能が高いというし、世代の頂点と言われているアグネスタキオンから眼中にない宣言をされたら全員憤ること間違いなしだ。それを見越しての挑発行為……だったりしてね。

 

「他のウマ娘達も、是非とも頑張ってもらいたい!より強く、走りに磨きをかけて欲しい!君達が強くなるほど!私の研究は更なる躍進を遂げることになる!」

「は、ハァ……?」

「ま、その上で勝つのは私な訳だが。総括すると、私にライバルはいないということでOKだよ」

 

 インタビュアーさんはさっきから戸惑いっぱなしだ。アグネスタキオンにペースを握られているからだろう。僕がサポートする必要、なかったねこれ。

 それでもめげずにインタビューを続ける。次の質問は。

 

「やはり目指すはクラシック三冠ですか!?」

「クラシック三冠?」

「はい!弥生賞から皐月賞を目指すなら、日本ダービーも菊花賞も走るのではないかと!」

 

 アグネスタキオンと目配せ。視線で僕が答えろ、と言われた気がするので対応する。

 

「一応、アグネスタキオンが望むのであれば進みます。菊花賞は少々難しいですが」

「それはどうしてですか?」

「適性的にどうしても合わないところがありますので。本人も中距離路線を希望していますし、よしんば出るとしても秋の天皇賞かジャパンカップになると思います」

 

 ……まぁどっちも出ないと思うけどね。希望的観測を告げておくのは大事だろう。凱旋門賞のこと?いや、別に言う必要はないかなって。あんまり騒がしくされるとアグネスタキオンとしてもめんどくさいことになるだろうし。

 

「で、ですが!もし無敗の二冠ともなれば菊花賞にも出走する可能性が!」

「……まぁ可能性はあると思います。その時次第ですね」

 

 当たり障りのない返答。詰められた時もそんなことは言ってないでしらを切ればいいだろう。

 その後のインタビューも順調にこなし、無事に終わる。

 

「トレーナーくぅん、君も中々の悪だねぇ。出る気がないレースのことをあげるとは」

「……嘘は言ってないよ。可能性はある、と言っただけ」

「う~ん、実に悪っぽい答えだ!ま、いいがね。関係のないことだ。それよりも今日の実験をするぞトレーナー君!」

「今日の薬は?」

「肉体改造!」

 

 インタビューが終わった後は実験。まぁいつもと変わらない日常である……これがいつもと変わらないってのもなんかアレだな。大分毒されてるな、僕。




早く2回目観に行きたいんだが?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。