ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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ポッケの気合

 アグネスタキオンに宣戦布告をしたジャングルポケット。

 

「オラオラオラァ!タキオンに負けてられっかよ!気合入れていくぜぇ!」

「うわっ、ポッケさんめちゃ気合入ってる」

「ま~いいことじゃね?」

 

 トレーニングはさらに気合が入っており、次走である共同通信杯に向けて練習を積み重ねていく。

 ジャングルポケット自身、アグネスタキオンがどれくらい強いのかは分かっていた。

 

(ホープフルステークスで感じたアイツの強さはマジだ。今まで戦ってきたヤツの中で、間違いなく1番だっていえる!)

 

 あの時に感じた、途方もない実力差。けど、ジャングルポケットは燃え上がる。現時点では全てにおいて自分が負けているだろう。だったら、皐月賞までに彼女との実力差をひっくり返す。その勢いでトレーニングを続けていた。

 

「ゼッテーに負けらんねぇ!見ててくださいよフジさん!俺、最強掴んできますから!アグネスタキオンをぶっ倒すとこ、見ててください!」

「こりゃポッケ!気合が入り過ぎじゃ!それじゃ怪我に繋がるぞ!」

「あっはははは……」

 

 ジャングルポケットのトレーナーは気合が入りすぎている彼女を嗜め、フジキセキはやる気十分な可愛い後輩を見て苦笑いを浮かべつつも優しく見守っていた。

 

 

 そして迎えた共同通信杯。ジャングルポケットはというと。

 

《大外からジャングルポケットだ!大外からジャングルポケットが先頭に変わる!ジャングルポケットが先頭に立ちました残り200m!》

「オラオラァ!どきやがれぇ!」

 

 中団からレースを進め、第4コーナーから一気に捲るとその勢いのまま先頭へ。残り200mのハロン棒を通過した辺りで先頭になり、後は後続を突き放すだけのレースを展開する。

 

《ジャングルポケットが後続を突き放す!ジャングルポケットが後続を離して今ゴォォォォォルイン!見事共同通信杯を制したのはジャングルポケットだぁ!2バ身差で退けたジャングルポケットォ!》

「おっしゃあ!順調順調!」

 

 最終的に2着に2バ身差つけて共同通信杯を勝利する。調子は絶好調だった。

 

「勝利、おめでとうございます!皐月賞のトライアルレースには出走しますか?」

「ない。このまま皐月賞に直行じゃ。調子も良さそうじゃし、感触も悪くない。皐月賞でも良いレースをしてくれるじゃろうて」

 

 勝利者インタビューに答えるジャングルポケットとトレーナー。受け答えしている内に、ジャングルポケットはインタビュアーのマイクを奪って声高に宣言した。

 

「待ってろよタキオン!三冠全部俺が獲ってやる!お前には一個もやらねぇ、俺が世代最強だぁッ!」

「「「おぉ~!」」」

「こりゃポッケ!お前はまた……!」

「へっ、こーいうのはしっかりと宣言しておかねぇとな!」

 

 ジャングルポケットの行動に報道陣は大盛り上がり、変わりに彼女のトレーナーは頭痛そうに抱えていた。

 

 

 無論、このインタビューをアグネスタキオンはしっかりと見ていた。

 

「見たまえカフェ!ポッケ君が面白そうなことをやっているよ!」

「……彼女のトレーナー、頭痛そうに抱えてますが」

「ま~トレーナーからしたら頭が痛いだろうねぇ。さてさて、このレースを分析しようか」

 

 共同通信杯から数日が経った。共同通信杯の映像を余すことなく見ているアグネスタキオン。その様子はどことなく楽しそうだった。

 

(元々世代屈指の実力者ではあった。だが、私というライバルの存在を得たことで、更なる実力の向上が見られる!コイツは中々面白い……!)

「ところでカ~フェ~?最近大丈夫かい?季節の変わり目で風邪を引いたりはしていないかい?」

「……問題、ありませんよ」

 

 そう答えるマンハッタンカフェの体調は、傍目には問題なさそうに見えた。彼女は自信ありげに答える。

 

「体調は、問題ありません。弥生賞は、まずまずの調子で、迎えれそうです」

「ほほ~う、そいつは良かった!君と走ることによって得られるデータも欲しいからねぇ。う~ん、興味が尽きないことばかりだ!」

「……そんなことだろうと、思いました」

 

 呆れ果てるマンハッタンカフェ。そんな視線など露知らず、アグネスタキオンは愉快そうにレース映像を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 ジャングルポケットのトレーナーはあるレースの映像を見ていた。

 

(……相変わらず、とんでもないウマ娘に育ておる)

 

 ホープフルステークス。ジャングルポケットとアグネスタキオンが初めて対峙したレースで、ジャングルポケットが6バ身差で千切られたレースだ。

 この時のレースはまだ記憶に新しい。

 

「ポッケの調子も悪くなかった。むしろノっていたとさえいえるじゃろう。なのに……アグネスタキオンの強さは群を抜いておった」

 

 2連勝で勢いづいていたところに突きつけられた、圧倒的な差。慢心はなかったし、最善を尽くして仕上げたが……それでも大敗した。

 アグネスタキオンの強さの立役者。間違いなくトレーナーの手腕もあるだろう。

 

「な~に考えてるの?トレーナー」

 

 考え込んでいるトレーナーの下にやってきたウマ娘、フジキセキ。飲み物をトレーナーに手渡し、隣に座った。

 

「おぉ、フジか。なに、皐月賞のことでちょっと、な」

「皐月賞かぁ……もうすぐ、なんだね。ポッケのクラシック戦」

「あぁ……なんだか、長いようで短いようで。不思議な気分じゃよ」

 

 感慨にふける2人。2人にとってジャングルポケットは可愛い担当ウマ娘と後輩だ。そんな教え子が迎えるクラシック戦、ワクワクせずにはいられない。

 だが、2人とも気になっていることは一緒だった。どちらが口火を切るか、探り合う様子だったが……フジキセキが切り出す。

 

「……やっぱり、アグネスタキオンのこと?」

「ッ!」

「やっぱり、だよね。まぁ、ホープフルステークスの強さは圧倒的だったからね。クラシック戦で最大の敵になるのは、彼女だと思う」

「……お前もそう思うか、フジ」

「まぁね。分かるよ……彼女の強さは」

 

 アグネスタキオンの強さはフジキセキも感じ取っていた。しかも、ホープフルステークスはまだ全力を出していない。もし彼女が全力を出したその時はどれほどの強さを発揮するのか……フジキセキは怖れつつも興味が湧くところだった。

 しかも、アグネスタキオンだけじゃない。トレーナーにも注目が集まっている。

 

「ポッケの強さを疑ってるわけではない。じゃが、アグネスタキオンは自身が持ちうる才能に加えて……ついているトレーナーもトレーナーじゃ」

「高村聖トレーナー、だったよね?知り合いなの?」

「知り合いではない。じゃがトレーナー間でヤツ程有名な新人はおらん。ある種、畏怖の対象じゃからな」

「畏怖って……」

 

 苦笑いを浮かべるフジキセキだが、トレーナーは大真面目な表情をしていた。

 

「ヤツのトレーナーとしての腕は間違いなく一流じゃ。最初の担当ウマ娘であるサクラバクシンオー、彼女がそれを証明しておる」

「……無敗のクラシック四冠、SMILE区分の全制覇、史上最強スプリンターと呼ばれながらも長距離を走ることができるウマ娘。普通に考えておかしいよね」

「そんなヤツが育てるウマ娘じゃ。アグネスタキオンもま~とんでもないウマ娘に育て上げるじゃろう。ホープフルステークスなんぞ序の口、本番はクラシック以降じゃ」

 

 適性という概念を破壊した新人トレーナー。賞賛や尊敬の声も上がるだろうが……それと同じぐらい上がるのが、畏怖の声。これまでの常識を破壊した高村聖というトレーナーに、畏怖の感情を覚えるトレーナーも少なくない。

 

「でもトレーナーの間で虐められてるとかそんな話はないよね?……まさか表に上がらないだけで」

「そんなもんあるわけないじゃろうバカバカしい。確かにヤツは恐怖の対象ではあるが、それ以上に物腰の低い良いトレーナーじゃ」

「へぇ?そうなんだ」

「あぁ。相談には乗るし、アドバイスもする。怖いと思うこともあるがそれはそれ、これはこれじゃ」

 

 畏怖の対象であることは間違いないが、相談にも乗るしアドバイスもしてくれる高村トレーナーの存在がありがたいのもまた事実だった。

 

「……なんにせよ、ポッケがクラシックを取る上で最大の敵はアグネスタキオンじゃ。クラシックの主役は、間違いなく彼奴になるじゃろうて」

「そうだね……とりあえず、敵情視察行ってみる?弥生賞」

「えぇかもしれんな。おそらく流しで走るじゃろうが、見ておいて損はないはずじゃ」

 

 遠くへと視線を向けるフジキセキとトレーナー。ジャングルポケットのために、できることをやろうとしていた。




割と畏怖の対象で見られたりはする高村Tであった。長距離も走れる史上最強スプリンターとか字面がおかしい!
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