ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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最初のトレーニングでござい。


なにをするべきか

 アグネスタキオンが加入し、トレーニングを始めることになる。

 

「とりあえず、目標を聞いておこうかアグネスタキオン」

「ほほう?目標と来たか」

「うん。このレースで勝ちたいとか、君自身の目標」

 

 一応察しはついているものの、聞いておく必要があるだろう。アグネスタキオンが目指すものについて。彼女から返ってきた言葉は、()()()()のものだった。

 

「決まっているとも!可能性の果て、ウマ娘が出せる“限界速度”を知りたい!……それが私の目的、というよりは研究対象だね」

「可能性の果て、か」

 

 アプリでもそうだったな。研究一筋なウマ娘だった記憶がある。ま、それはそれとしてだ。

 

「分かった。とにかく頑張ろうか」

「えらく抽象的だねぇ。それとも、なにか算段はあったりするのかい?」

「今のところはないよ。でも、これから先作る予定」

「正直だねぇ!まぁいいさ、一緒に探求していこうじゃあないか!」

 

 アグネスタキオンの目的になにが必要なのかはまだ不明瞭だ。だからこそ、まず必要なのは彼女を知ることから始まる。彼女の研究にもちょっと興味があるしね。

 ちなみにアグネスタキオンのステータスだが、現状こんな感じになっている。

 

 

アグネスタキオン

 

適性:芝A ダートG

距離:短G マD 中A 長D

脚質:逃げE 先行A 差しB 追い込みF

 

スピード:F 104

スタミナ:G+ 76

パワー :G+ 70

根性  :G+ 71

賢さ  :G+ 99

 

 

 デビュー前だしこんなものだろう。これから伸ばしていけばいいわけだし。

 さて、トレーニングを始めるわけだが、自分はアグネスタキオン以外にも3人、担当している。基本的には彼女達と一緒にトレーニングしていくことになるわけだ。

 

「さぁ!早速トレーニングをしますよ~!委員長に続けー!バクシンバクシーン!」

 

 1人目はサクラバクシンオー。最初にスカウトした子で、現在デビュー済み。目標である全距離制覇に向けて頑張っているところだ。

 

「バクシンバクシーン!わっしょーい!」

 

 2人目はキタサンブラック。サクラバクシンオー繫がりでトレーニングを手伝ってもらっていたのだが、流れで担当することに。いつも一緒にトレーニングしているからスカウトしているものだと思われていたらしい。

 

「……バクシーン」

 

 3人目はドゥラメンテ。この子もキタサンブラックと一緒にバクシンオーのトレーニングを手伝ってもらっていた子で、担当することになった。他のトレーナー陣から白い目で見られていたのは、まぁそういうことだろう。僕が粉をかけていると思われたらしい。取り入ってるとかなんとか。そんな気はなかったのでちょっと申し訳ない。

 

「……え?ちょっと待ちたまえ。今からあそこに放り込まれるのかい?」

「そうだよ。早速トレーニングを始めようか」

 

 バクシンオー達と僕を交互に見て──駄々をこね始めた。

 

「いやいやいやいや!待ちたまえよ君ぃ!まず、なんだいあの掛け声は!?」

「バクシンだね」

「聞けば分かるよ!私は意味を聞いているんだ!」

「バクシンだね」

「それで乗り切ろうとするんじゃないよ!」

 

 意味に関しては分からないけど、掛け声的な何かだと思うよ。多分。

 アグネスタキオンは今からバクシンオー達に混ざることを考えてか、嫌そうな表情を浮かべていた。そんなに嫌かな?

 

「別に、あの掛け声は真似する必要はないと思うよ。一緒にトレーニングするだけだし」

「私がKYみたいに思われるだろう!」

「バクシンオー達は気にしないと思うけどね。とりあえずトレーニングを始めよう。君の課題とか、色々と洗い出さないといけないから」

 

 渋々ながらもバクシンオー達に合流するアグネスタキオン。どうやらやる気になったようだ。

 

「バクシンバクシーン!気合を入れていきましょうッ!」

「バクシンワッショーイ!」

「ばくしーん」

「……なんで私がこんな目に。早まったか?」

 

 トレーニング開始だ。

 

 

 

 

 

 

 休憩時間中、アグネスタキオンと話し合いをする。

 

「それにしても、キタサン君とドゥラ君も担当するなんてねぇ。最も期待されているトレーナーというのは伊達ではないということか」

「あんまり実感湧かないけどね」

「最初の担当であるバクシンオー君が、ジュニア級とはいえすでに重賞を取っているんだ。期待されるのも当然だと思うがね」

「元々、キタサンブラック達はバクシンオーのサポートをしてもらってたんだけどね」

 

 よくよく考えれば、ほぼ毎日のように一緒にトレーニングしてたらそりゃ担当していると思われるか。

 

「それにしても、他のウマ娘と一緒にトレーニングすると効果が上がるというのは興味深い!どういうことか詳しく聞かせてくれたまえ!」

「いいよ。個人的な推察になるんだけど……」

 

 アプリ的に言えば友情トレーニングのようなものだろう。それに、友情トレーニングでなくとも他の子とトレーニングするとステータスの伸び幅も増えていた。つまりは、複数人でトレーニングをするのがより効率的、と判断。

 

「ふむふむ。そうなると、教官に教えてもらっているウマ娘は能力値の向上が著しいということになるのかな?アレはかなりの大人数だからねぇ」

「あまり多すぎても良いってわけじゃないみたい。最高でも5人、もしくは6人かな」

「ほほう。あまり数が多すぎると取り組むべき課題や見えてくる目標が不明瞭になるからかな?もしかしたらウマ娘同士の相性も関係しているかもしれない。いずれにしても興味深い事象だ!」

 

 アグネスタキオンはこういった話に興味が湧くらしい。

 

「しかし、問題は上がり幅が分からない、ということか。私も複数人のトレーニングが効果的という話は聞いたことがあるが、いかんせん検証がしにくくてねぇ」

「上昇値が微々たるものだと、判断が難しいからね。けど、それを解消する手立てがある」

「ふぅン?それはなんだい?」

「僕はウマ娘の適性が分かる。でも、それだけじゃない……ウマ娘の能力値的なものも分かるんだ」

 

 僕はウマ娘のステータスが分かる。トレーニングでどれだけ上がったかが一目でわかるわけだ。そう考えると本当に凄いな、ステータスの可視化は。

 アグネスタキオンは……目を輝かせていた。こちらへと身体を乗り出してくる。

 

「ほ~う!随分と興味深いねぇ!適性だけでなく、能力値まで分かるとは!それまた凄い目だ!」

「言っておくけど、解剖しても分からないと思うよ」

「そいつは残念だ。ただ、他の人は分からなくても君ならば一目で分かるというわけか」

「そういうことになるね」

 

 休憩時間だから休んでほしいんだけど、アグネスタキオンはお構いなしに質問攻めしてくる。疲れているはずなのにだ。

 

(疲れよりも興味を優先する。アグネスタキオンは探求心が凄いんだろう)

 

 実験にどっぷりだったという話も真実味を帯びてきた。いや、疑っちゃいないんだけど、いざこうして話をしていると本当なんだろうなと実感する。

 

 

 さて、そろそろ休憩時間も終わろうかというところ。

 

「あぁそうだトレーナー君。これを飲みたまえ」

 

 アグネスタキオンから試験管を手渡される。何かの液体が入っているようだが、なんだこれ?

 

「今日の薬だよ。この薬品“α”はアドレナリンを高める作用が期待されている。ま~味はアレだが」

「そうなんだ」

 

 とりあえず飲むか。味は……うん、ロイヤルビタージュースよりはマシだな。比較対象が終わってるけど。

 

「躊躇せずに飲んだねぇ……して、どうだい?身体に変化はあるかい?」

「……なんか走りたくなってきた」

 

 凄いな。急に走りたくなってきたぞ。

 

「ほほ~う!では、遠慮せずに走りたまえ!さぁ!衝動のままに!」

「ちょっと行ってくる」

 

 とりあえず走り出す。そうしないと身体が収まりそうになかったから。

 

「……っ」

「おぉ!トレーナーさんも走るとは珍しいですねッ!不思議と輝いて見えますよッ!」

「……いや、なんかトレーナーさんの脚が光ってません!?あたしの気のせいですか!?」

「光り輝く脚、か。面白い」

「何が面白いのドゥラさん!?いや、見た目は確かに面白いかもしれないけど!」

 

 走る、走る、走る……のだが。すぐに限界が来た。

 

「ゼェ……ゼェ……」

「だ、大丈夫ですかトレーナーさん!?キタさーん!保健室へ運びましょうッ!」

「だ、だい、じょう……ぶっ。それより、走らないと……」

「その状態じゃダメですよ!とにかく休みましょう!」

「ふ~む、効果が強すぎるのが難点か。というか君、体力ないねぇ」

 

 まぁ、勉強ばっかりでろくに運動してこなかったし。僕の運動能力がかなり低いのも仕方がないことだ。

 その後トレーニングは一時中断。僕の体力が回復するまで自主トレとなった。

 

 

 トレーニング後。今回の薬の検証結果について話し合うことに。

 

「さて、アドレナリンを高める作用が期待されていた薬品“α”だが……いかんせん強力すぎるのが難点か」

「さすがに、体力の限界を超えても動きたくなるのはまずいと思うよ」

「ま、要改善だ。次にこの薬品“Δ”を飲んでもらおうか。こちらは疲労回復用の薬だ」

 

 疲労回復用の薬か。ロイヤルビタージュースを思い出すな。

 アグネスタキオンから薬を貰って、一気に飲み干す。

 

「トレーナーさん、躊躇しませんね……」

「危険ではないと分かっているのだろう。アグネスタキオンへの信頼だ」

「美しい信頼関係ですね!ですが私とトレーナーさんの信頼も負けませんよッ!」

 

 さて……おぉ、凄い。見る見るうちに疲労が取れていくぞ。ロイヤルビタージュースを飲んだときみたいだ。代わりになぜか右手が赤く光ってるけど。

 

「今回の副作用は右手が赤く発光する、か。疲労の方はどうだい?」

「さっきの疲れが大分取れたかな。もう動いても問題ないくらいだよ」

「ふむふむ。後日、筋肉痛などはあったかのレポートを出してくれたまえ。詳細なデータが欲しいからねぇ。しっかりと頼んだよ」

「え?もっとツッコむところありますよね?」

 

 ただ、味にさえ目を瞑ればロイヤルビタージュースの方が効果はあるな。これもまた要改善、というヤツだろう。

 

 

 

 

 

 

 アグネスタキオンが加入してから結構な日が経った。トレーニングは順調そのものであり問題ナシ。加えて、今僕が何をすべきかが明確になってきた。

 

(アグネスタキオンのために、今僕がやるべきことは)

「は~いそれでは!今日はハンバーグの作り方について教えていきますよ~!」

 

 アグネスタキオンのために僕がやるべきこと。それはお料理教室に通うことだ。




お料理教室に通うことになったトレーナーである。
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