ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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こちら、出すタイミングを見失ってしまったアグネスタキオンの皐月賞時のステータスです。


アグネスタキオン

適性:芝A ダートD
距離:短A マA 中S 長A
脚質:逃げE 先行A 差しA 追い込みF

スピード:B 672
スタミナ:C 427
パワー :C+ 587
根性  :D+ 362
賢さ  :C+ 543


こんなん皐月賞で当たったらブチギレるで。


フランス到着!

 飛行機に乗ること十数時間。ついに僕達はフランスの地に降り立った。

 

「おぉッ!ここがフランスですねッ!」

 

 バクシンオーはどこでも元気だ。いの一番に降りて今にも駆け出しそうなほど。でも、迷子になっても困るので釘を刺しておく。

 

「どこかに行かないでね。迷子になったらまずいから」

「はいッ!分かりましたッ!」

「さて、ここから滞在先までバスで行くぞ!はぐれないように気をつけてくれよ?」

 

 佐岳さんが先導して滞在先へと向かう。それにしても気になるのは、お金のこと。

 

(どこから捻出してあるんだろうか?)

 

 ミーティアの人数6人に加えて、僕と佐岳さんの8人だ。これから凱旋門賞までの間滞在するとして、宿泊費はとんでもないことになる。一体そのお金はどこから出てきたのだろうか?普通に気になる。少なくとも自分達は関与していない。というか、出そうとしたら佐岳さんに止められた。と、なると。この海外遠征の費用の出処は佐岳さんなら知っているのかもしれない。

 隙を見計らって、佐岳さんに耳打ちをする。バクシンオー達は遠くにいるので今なら聞こえないはずだ。

 

「佐岳さん、ふと気になったんですが……海外遠征費とかはどこから出てるんですか?」

「うん?遠征の費用かい?」

 

 頷くと、佐岳さんは満面の笑みで答えてくれた。

 

U()R()A()

「……えっ?」

U()R()A()()。あたし様が交渉して資金を捻出させた。君達チームの遠征費をね」

 

 ちょっと待って欲しい。まさかURAが遠征費を出してるとは思わなかったぞ。いや、それも当然というか当たり前のことか?でもな……。

 こっちの困惑をよそに佐岳さんは誇らしげにしている。というか、佐岳さんもどうやって交渉したんだ?結構な額になるのに。

 

「いやはや大変だった……君達の素晴らしさを説いて、今度は凱旋門賞を勝てる!と熱弁し、不眠不休で資料を作成、メリットを提示してようやく許可が下りたよ」

「……本当のことを言ってますか?そうなると、負けたら大分まずいことにならないですか?」

 

 負けるつもりはさらさらないけど、この状況で負けたらとんでもないことになるのが確定した気がする。佐岳さんの努力が無に帰するわけだし、URAとしてもとんだ無駄金……無駄ではないか。今後の海外遠征に繋がるわけだし。にしても、僕達は責任重大だぞ。

 状況を理解して慌てていると、佐岳さんは──笑った。

 

「アッハッハ!冗談だよ聖トレーナー!ま~URAがお金を出していることには変わらないが、そこまで重く考えなくてもいい!」

「……と、言いますと?」

「実はまだ試験段階のプロジェクトがあってね。君達をそのテストモデルとして選出してあるんだ。勝手なことをして申し訳ない」

 

 テストモデル?

 

「海外遠征に重きを置いたプロジェクト……プロジェクトL'Arc。君達を記念すべき第1号として推薦することで、URAから資金を調達したのさ」

「……なんとなく合点はいきました。ただ、大変だったんじゃないですか?」

「そうでもないさ。君達の苦労に比べたらね。確かに大変だったけど、URAとしてもメリットがないわけじゃない。例えばそう、グッズとか」

 

 ……あ~、そういえばそんな話もあった気がする。アグネスタキオンの新規グッズ展開のこととか。別に困るものじゃないし、アグネスタキオン自身も興味なさそうにOK出したから忘れてたけど。

 

「だから許可自体は簡単に下りたよ。それに、今回の経験を糧に次に活かすこともできる。無駄になることはない」

「……そうですか。でも、責任は感じますね。ここまで動いてもらってるので」

「君は相変わらずだ「だから、これは」うん?」

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 問題ない。元より勝つためにここまで付き合って貰ったのだから。アグネスタキオンの体調を万全に整えて、レースへの理解を深めて、強敵となる相手をリサーチして、作戦を考えて。色々と考えることは山積みだ。

 なにより、アグネスタキオンを勝たせたい。彼女の目的とか関係なしに、僕個人の思いとして彼女を勝たせる。日本のレースの時と何も変わらない。それだけだ。

 佐岳さんは呆けたような表情をした後、フッと笑った。

 

「本当に君は、凄いな。大言壮語に聞こえるのに、本当にやり遂げるんじゃないか?って気持ちが出てくる」

 

 バクシンオー達がこちらへと戻ってくるのが見える。佐岳さんはこちらへと拳を突き出してきた。

 

勝とう、聖トレーナー」

「はい、勿論です」

 

 拳を合わせる……漫画とかだとよく見るけど、いざ自分がやるとちょっと恥ずかしいな。

 

 

 

 

 

 

 宿泊先に着いたその日は休みだ。長旅で疲れているし、無理に詰める必要はない。

 

「次の日からは早速トレーニングだ!英気を養っておけよ、諸君!」

 

 佐岳さんの号令でその日は解散。

 

「トレーナーさんッ!早速走ってきますッ!」

「うん、明日になったら沢山走っても良いから今日は我慢してね」

「分かりましたッ!バクシーーンッ!」

 

 本当に分かっているのだろうか?……出口じゃなく部屋の方に向かってるから大丈夫か。

 

「そうそう、みんな夜には出歩かないでね。日本とは違うから」

「わ、分かりました!」

「分かった。もし出歩くとしても、トレーナーについてきてもらうことにする」

「そうしてくれると助かるかな」

 

 ぶっちゃけ出歩くような事態にならないのが一番だけどね。

 

 

 次の日、早速トレーニング。

 

「あ、あの~!これ、大丈夫ですよねー!?」

「大丈夫だよ。安全面はしっかりと考慮されてるから」

「そうはいっても、不安しかないんですけど~!?」

 

 やることはパラシュートランだ……ホッコータルマエがパラシュートに括りつけられてるけど。

 

「アグネスタキオンとホッコータルマエが同時にスタート。ただ、ホッコータルマエはそこまでスピードを出さないようにね」

「本当に大丈夫かなぁ……」

 

 いまだに納得がいってないホッコータルマエだが、時間は有限。すぐにでも始める。

 

「よーい……スタートッ!」

「フッ!」

 

 一気に駆け出すアグネスタキオン。続くホッコータルマエだが。

 

「わ、わわ!うわわっ!?わーっ!?」

「おぉッ!楽しそうですねッ!」

「……そうでしょうか?」

 

 見事にホッコータルマエは浮いた。アグネスタキオンは順調に駆け抜けている。凄いな、ウマ娘の脚力。こんなことも可能になるのか。

 

「ハーッハッハッハ!まだまだいけるよ!」

「それじゃあ、そのまま走ってねー」

「私はもういけないんですけどー!?高い高い!」

 

 ホッコータルマエの抗議は知らずとばかりに走るアグネスタキオンだった。その後、恨みがましそうな目で見られていたけど。当の本人はどこ吹く風である。

 順調にトレーニングをこなしていく中、アグネスタキオンとデータをまとめる。

 

「VRでこちらの芝を体感してはいたが……やはり細かいところは違うね。全部まるっきり一緒ということはなさそうだ」

「やっぱりそうなんだ。それで、問題はありそう?アグネスタキオン」

「……今のところは。ただ、環境の違いが身体に与える影響は大きい。無理はしない方が良さそうだねぇ」

「それに、あくまで体験したのはロンシャンのコースだしね。ここのトレーニング施設じゃない」

 

 やはり慣れるための時間が必要だろう。あまりキツめの負荷をかけるのはよろしくない。

 休憩も終わり、さぁトレーニングの再開を……と思ったところで、妙な視線を感じた。すぐ隣にいるアグネスタキオンから。ジト目で睨まれている。

 

「どうかしたの?」

 

 何か怒らせるようなことでもしただろうか?とドキドキする。ジト目を止めないままだ。

 

「君、いい加減私の名前をフルネームで呼ぶのは止めたまえよ。めんどくさいだろう?」

「……そうかな?」

 

 あまり苦にしたことがないから分からない。ただ、抗議するような視線を感じる……それも複数。気づけばキタサンブラック達も物申したそうな目でこっちを見ていた。

 

「委員長君は縮めて呼んでいるのに、我々にできないということはあるまい?それに、少し前にも言ったはずだろう?タキオンで構わないと」

 

 うっ、痛いところを突かれた。前にも言われたけど、結局戻したんだよな。

 

「そうですそうです!キタサンブラックじゃなくてキタサンで良いですよ!」

「……ドゥラでいい。君なら構わない」

「フフ、まさかジェンティルと呼ぶことに抵抗があるわけではないでしょう?まぁドンナでも構いませんが」

「いちいちフルネームで呼ぶのもなんですし、私もタルマエで良いですよ」

 

 ジェンティルドンナに関しては笑っているので確信犯だろう。だが、他の3人は本気だ。なんならタキオンも。

 助けを求めるためにバクシンオーと佐岳さんの方を見るが。

 

「良いんじゃないでしょうか!仲が良いのは美しきことッ!委員長的にも花丸ですッ!」

「全く問題ないだろう?なんならモチベーションアップに繋がるかもしれないからなぁ?」

 

 いや、まぁ、うん。分かってた。分かってたけども。というか佐岳さん、あなたに関しては面白がってませんか?笑いが堪えきれてないですよ。

 苦悶の時間。どうしたものかと、なにか上手い言い訳は考えつかないかと頭を捻る……が、そう思いつくはずもなく。

 

(なにより、彼女達の言葉は間違ってない。別に拘りがあるわけでもないし、言うならば癖のようなものだから)

 

 なら別に言い訳を考える必要もないか、とのことで。

 

「分かったよ、タキオン」

「よろしい。では、トレーニングを再開しようか」

「そうだね。キタサン達もよろしく」

「ッ!はーい!」

 

 キタサンは耳をピコピコさせてトレーニングに戻っていった。そんなに嬉しいのだろうか?

 

「ドゥラもタルマエも、ジェンティルもトレーニングに戻ろうか」

「あぁ、分かった」

「よろしくてよ……存外悪くないわね」

「……さっきみたいにパラシュートに括りつけられたりしないですよね?」

「しないから。その役はバクシンオーが代わってくれるって」

 

 その後もトレーニングを行った。まだまだ遠征は始まったばかり、ニエル賞に向けて頑張ろう。




パラシュートに括りつけられるタルマエであった。
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