ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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お料理教室に通うことになった経緯。


お弁当を作ろう!

 きっかけはふとした疑問だった。

 

「みんなは食事に気をつけてたりする?」

「「「はい(ちょわっ)?」」」

 

 たまたま栄養学の本を読んでいる時に、みんなは食事に気を使ってたりするのだろうか?という疑問が出てきた。なので質問することに。

 

「当然、この委員長はしっかりとバランスの良い食事を心がけていますともッ!良いバクシンは模範的な食事から、好き嫌いは勿論ありませんッ!」

 

 バクシンオーが教えてくれたメニューはしっかりとバランスの良いものだった。必要な栄養をまんべんなく取っている感じの食事。

 

「あ、あたしはちょっと……お肉が多いかなって。やっぱりダメですかね?」

「これくらいなら許容範囲だよ。食べ盛りの時に食べないとね」

 

 キタサンブラックは少し肉が多めだが、これくらいは許容範囲だ。成長のためには必要なものだろう。

 

「好き嫌いのないよう努めている。最強へと至るためには、食事にも気を遣わなければ」

「ドゥラメンテも問題ナシだね」

 

 ドゥラメンテはアスリート一家ということもあってか、食事も非の打ち所がないものだ。小さい頃からなのだろう。

 残るは1人、アグネスタキオンなのだが。

 

「まぁ私も特に代わり映えはしないさ。たんぱく源を補うための鶏肉だったり、リコピンを摂取するためのトマトだったり」

 

 アグネスタキオンが口にするメニューは普通だ。普通なのだが。

 

「──とまぁ、色々と買ったものを適当にミキサーに放り込んで口に流しているよ

「えぇっ!?」

「……」

「いや、それはどうなの?」

 

 摂取方法が最悪の一言に尽きる。いわゆるミキサー食というヤツだろうか?なんかちょっと違う気がするけど。ドゥラメンテなんて凄い顔しているよ。信じられないって表情をしている。

 

「なんだい?なにか文句でもあるのかい?」

「文句しかないね。栄養はともかく、摂取方法が最悪すぎるよ」

「とは言ってもねぇ……研究のことを考えたら、食事する時間すら惜しいんだ。時間は有限、削れるものは削らないと」

「だからといって、我々アスリートは身体が資本だ。身体を作るためには食事が必須、それを蔑ろにするのは見過ごせない」

 

 厳しい目でアグネスタキオンを見るドゥラメンテ。彼女からしたら、アグネスタキオンの食事は我慢ならないのだろう。

 

「そうは言うが、私は料理ができないんでね。カフェテリアが開いているならともかく、開いてない日はどうすればいいんだい?」

「そこは……外食するとか」

「嫌だよめんどくさい」

「では私が作りましょうッ!ご安心ください、この学級委員長が模範的なメニューを作りますよ!」

「……なんだか嫌な予感がするから遠慮しておくよ」

 

 う~ん、正直、アグネスタキオンの食事に関しては僕も物申したいなコレは。

 

(いくら何でもミキサーで全部ごちゃ混ぜにしたのがご飯っていうのは……ダメなんじゃないかな?)

 

 強い身体は作れないし、栄養は摂取できるかもしれないが味気ないにもほどがある。とはいっても、僕も料理はできないし。

 どうしたものか、と考えながらPCを操作していると──ふと1つのページが目に入った。それが、お料理教室のページである

 

(……そうだ)

「お料理教室に通ってみるか」

「「「え(ちょわっ)?」」」

 

 料理ができないなら、できるようになればいい。これもアグネスタキオンの食事のため。休日もやっているようだから、早速申し込もう。

 

 

 

 

 

 

「今日からみなさんと一緒にお料理をする、高村聖さんで~す!……あ、あの。自己紹介をお願いしても?」

「高村聖です。料理は未経験なので、色々と教えてくれると助かります」

「は、は~い。よろしくお願いしますね~……なんでこの子生気のない目をしているのかしら?疲れ?

 

 そういう経緯があって、僕はお料理教室へ通うことになる。周りは女性ばかりでちょっと居心地が悪いけど、これも料理を覚えるためだ。

 4人グループで料理を作ることに。僕は……まぁちょっと敬遠されている。仕方ないけど。

 

「今日はハンバーグを作っていきますよ~。まずは……」

 

 先生の指示でまずはタネとなる部分を作っていく、のだが。気になることがある。

 

「先生、ちょっとよろしいでしょうか?」

「は、はい。何でしょうか高村さん」

「この、作り方に書いてある適量、とはどれくらいの量を指すのでしょうか?」

 

 さっきから気になっていたんだけど、適量の意味が分からない。字面的に適当な量のことなんだろうけど、大体どれくらいの量なんだろう?気になってしょうがなかった。

 

「え、え~っと……あまり深く考えなくて大丈夫ですよ?程よい量、という意味なので」

「程よい量……程よい量……」

 

 ダメだ、余計分からなくなった。どうやって見極めればいいんだ?

 結局分からずじまいになったが、お料理教室は進んでいく。それにしても、他の人達はテキパキと進めてるなぁ。やり慣れてたりするんだろうな。

 対する僕はというと──滅茶苦茶遅い。明らかに1人だけ遅い。

 

(まぁ、生まれてこの方料理なんてしたことないし)

 

 家庭科実習ぐらいか?家庭科実習も友達が率先してやってたから僕はほとんど何もしてないし。

 プルプル震える手で包丁を使っていると、見かねた同じグループの人が駆け寄ってきた。

 

「そ、その持ち方だと危ないわよ?ほら、包丁はこうやって持つの」

「……成程。さっきよりも切りやすいです。ありがとうございます」

「いいのいいの……それよりも、若いのに珍しいわね?お料理教室だなんて」

 

 まぁ、若い男が料理教室に来たら、そりゃ気にはなるだろう。聞かれると思っていた。

 

「実は、自分トレーナーをやっていまして。担当ウマ娘のために料理を覚えようと」

 

 別に隠すことでもないので正直に話す。周りの反応はというと──驚いたような表情を浮かべていた。

 

「え!?あなた、トレーナーなの!?」

「はい。一応、中央でトレーナーをやらせていただいてます」

「ま~!若いのに凄いわね~!しかも、担当ウマ娘のためにお料理を覚えようなんて!」

「アスリートは身体が資本ですから。でも、自分は料理をしたことがなくて……このお料理教室に通おうと」

 

 凄い。さっきよりもフレンドリーになった。トレーナーの自分に興味が出てきたのかもしれない。

 

「若いのに立派ね~。ウチの息子も見習ってほしいわ!」

「一緒に料理を覚えましょうね!担当のウマ娘ちゃんのためにも!」

「はい。頑張っていきます」

「……ところで、なんでそんな疲れた目をしているの?くたびれたサラリーマンみたいな目をしているけど」

「デフォルトなので気にしないでください」

「トレーナーって激務なのかしら?」

 

 その後も同じグループの人のみならず、他の班の人達も甲斐甲斐しく教えてくれた。それなりに楽しい経験になったね。

 

 

 お料理教室が終わって、早速実践してみることに。ただ、ハンバーグはちょっと焦げてしまった。

 

「……やっぱり上手くいかないな。毎日コツコツと頑張っていこう」

 

 早く上達しないと。アグネスタキオンの食生活改善のためにも。

 

 

 

 

 

 

 お料理教室に通い始めてからさらに日が経って。

 

「そうだアグネスタキオン、はい」

「ん?なんだいこれは?」

「お弁当。料理、できないみたいだから。作って来たよ」

 

 ついにお弁当を作れるぐらいには上達した。少し冷凍食品も混ざっているけど、ほとんど手作りである。

 

「へぇ?……君、料理は出来なかったんじゃないのかい?まぁそのためのお料理教室だったんだろうが」

「まぁね。とりあえず、食べて感想を聞かせて欲しいな」

「全く仕方ないねぇ……そんなに私に尽くすのが好きなのかい?君は」

 

 君の食生活が不安だからだね。さすがにミキサー食から脱して欲しいし。あんまり言い訳すると余計こじれそうだからなんも言わないけど。

 とりあえず夜の分を手渡した。ついでに、明日の朝と昼の分も作っておくとしよう。

 

(ちょっと料理が楽しくなってきたし。たまにはいいかもしれない)

 

 自分の分も作って、料理後は仕事をする。アグネスタキオンのトレーニングメニューをもっと改善しないと。

 

 

 次の日。アグネスタキオンは早速部室を訪れた。

 

「やぁやぁトレーナー君。お弁当箱を返しに来たよ」

 

 弁当箱が入った袋を押し付けられる。アグネスタキオンの表情はというと……満足げだ。

 

「中々バランスの良い食事だった!それに、食器がフォークとスプーンというのもポイントが高かったよ。食べやすかったからねぇ」

「まぁね。アグネスタキオンは実験もするだろうし、なるべく手間取らない方が良いと思って」

「良い心掛けだ!食べる側のことをちゃんと配慮しているねぇ!ただ、白米の量はもっと多くしてくれたまえ。あの量だと、おかずと一緒に食べたらすぐに無くなってしまう。もっと多くても構わない」

 

 アグネスタキオンの感想をメモし、次の弁当作りに活かす。反省点を踏まえた上で、もっとバランスの良い食事にしなければ。

 

「……と、私からは以上だ。というわけで今日の分のお弁当を渡したまえ」

 

 いつの間にか来ていたキタサンブラックが信じられないような目をしている。何故かオロオロとしながら僕を見ているが、抜かりはない。

 

「はい。朝の分と昼の分。今日のトレーニング時間に返してね」

「えっ?用意してあるんですか!?」

「殊勝な心掛けだねぇ!それじゃ、私はまた実験に戻らせてもらうよ」

 

 アグネスタキオンはスキップしながら部屋を退出した。弁当でそこまで喜んでもらえるなら、作った甲斐があったね。

 

「あ、あの~……」

「どうしたの?キタサンブラック」

 

 おずおずと遠慮しているような態度を取っているキタサンブラック。やがて、恥ずかしそうに口を開いた。

 

「あ、あたしもちょっとお腹空いたな~って……」

「そう?なら、これ食べる?」

 

 僕の弁当をキタサンブラックに手渡す。目を丸くして驚いていた。

 

「え!い、良いんですか?トレーナーさんのお昼じゃあ……」

「別に構わないよ。僕は時間があるし、なにか適当に作ればいいから」

 

 仕事の隙間時間でも料理は出来なくもない。最悪冷凍食品をチンすればいい話だ。

 

「それに、身体が資本だからね。いっぱい食べて、元気よく行かないと」

「そ、それなら……ありがとうございます!大切に頂かせていただきます!」

「うん。それじゃあ、行っておいで」

 

 キタサンブラックも元気よく飛び出していった。朝から元気なようで何よりである。

 ちなみに、放課後。

 

「はいっ!私もトレーナーさんの料理が食べたいですッ!」

「……」

「そんなにチラチラ見なくても、ドゥラメンテの分も作るから」

 

 バクシンオーやドゥラメンテにも一日だけ作ることになったのはここだけの話。味は好評だった。




明日は新時代の扉を観に行くんじゃフヒヒ。
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