ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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ドバイといえば!


年明けと今後の予定

 激闘の有記念が終わり、学園もしばらくの間冬期休暇だ。実家に帰る子もいれば寮に残る子もいる。ミーティアのメンバーはほとんど実家に帰ったけど。

 

「色々とあったなぁ」

 

 年末のトレーナー室で物思いに耽りながら呟く。仕事、というわけじゃないけど、スクラップブックの作成に勤しんでいた。無事に終わったので家に帰宅。

 

 

 料理を作りながら思い出す。

 

(おせち料理も教えてもらったな。作ってみるか)

 

 タキオンのお弁当作りのために通い出したお料理教室なのだが、あの後もちゃんと続けている。仕事の関係もあるから頻度はそう多くないけど、料理の腕を磨き続けていた。実態は辞めるのもなんか忍びないという曖昧な理由なんだけど。

 そんなお料理教室はというと。

 

「高村さん、本当に凄いのね!テレビのインタビューも沢山出てるじゃない!」

「あ、ありがとうございます」

「おばさんニュースあんまり見ないから分からなかったけど、かなりの有名人じゃないの!ご近所さんに自慢できちゃうわ~!」

 

 他のメンバーにいたく気に入られているようだ。避けられるよりはマシだけど、これもこれでどうなんだろう……。

 

「凱旋門賞のタキオンちゃん、本当に感動したわ!主人とも~うテレビにかじりついてたもの!」

「そ、そう言っていただけて嬉しい限りです」

「有記念もそうだし、バクシンオーちゃんの時も凄かったものね~。そんなトレーナーさんがこのお料理教室に来るなんて!」

 

 実際凄い確率だと思う、他人事だけど。普通は思わないだろう。テレビで見るような相手がお料理教室に通っているなんて。

 ただ、先生としては僕がここにいることはあまり周知したくないようだ。

 

「ま~あまり増えすぎると私も困っちゃうから。だから、あなたがここに通っていることは他言無用でね?」

「分かりました。自分の口からは絶対に漏らさないようにします」

「他の人達も頼みましたよ~!くれぐれも口外しないように!」

 

 他の方々も先生の言葉に返事をする。実際、これまで被害にあってないしちゃんと守っているのだろう。僕としても嬉しい。ここにいることができるから。

 

「ほら、聖ちゃん。美味しくなるコツを教えてあげるわ」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 コツとか色々教えてもらうけど、料理はあまり得意というわけじゃない。それでも頑張って覚える。

 

「もう本当に可愛いわね~!いつも一生懸命で!」

「は、はぁ。でも、それって普通では?」

「何言ってんのよ!ウチの子なんて気を抜いたらす~ぐサボろうとするんだから!聖ちゃんとは大違い!」

「そうそう。ウチなんて……」

「ウチは……」

 

 たまにそれぞれの家庭事情を聞かされるけど、まぁ楽しそうにしているからいいか。別に心から嫌っているわけじゃないんだろう。手のかかる子ほどかわいい、というヤツなのかもしれない。

 お料理教室の方々には、多分可愛がられている。母さんに報告したら驚いたのと同時に嬉しそうにしていたな。

 

(今度、実家に帰ったら料理を作ってあげるのもいいな)

 

 母さんと比べたらまだまだかもしれないけど、ね。

 晩ご飯とは別に、お店で買った年越しそばを食べる。ニュースを見ながらゆっくりと過ごしていると──ゴーンと、鐘が鳴った。

 

「除夜の鐘、か」

 

 それと同時に携帯の音が鳴る。LANEでメッセージが来たのだが……小学校時代からの友人がいの一番に送ってきていた。

 

「あけおめ!ことよろ!……か。いつもだけど、送ってくるの早いな」

 

 お互いに携帯を持ち始めてからずっとだ。一番最初にメッセージを送ってくる。なので僕もメッセージを送り返す。あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします、と。

 

「あ、返ってきた……相変わらず堅すぎ!か」

 

 これもいつものことだ。後は父さんや母さんにもLANEを返し、来年度のことを考える。

 

(まずはドバイワールドカップミーティング。これは確定だ)

 

 多分だけど直行になる。有記念の疲労を回復するためにも、レースを挟まずに直行した方がいいだろう。タキオンが出走するドバイシーマクラシックに出走するであろう有力候補達をピックアップ、研究する。

 そんなことをしていたら、かなりの時間が経っていた。

 

(……ん?また携帯が震えてるな)

 

 確認してみると、バクシンオーからだった。内容は【あけましておめでとうございます!!!今年も良いバクシンにしましょう!!!】というありふれたもの。起きるの早いな、相変わらず。

 その後も初詣に向かっている道中に、チームのメンバーから続々とLANEが届いていた。なんていうか、うん。

 

(嬉しいね、こういうのは)

 

 新年からとても良い気分で過ごせそうだ。

 

 

 

 

 

 

 そして年明け。みんなで集まって今後の打ち合わせをする、予定だったんだけど。

 

「ね~ね~いいでしょキタサンのトレーナーさ~ん、私もドバイに連れてって~!」

「諦めなさいヴィブロス。トレーナーさんすみません、すぐに連れて帰りますので……」

 

 何故か2人のウマ娘が来ていた。どちらも名前だけは知っている。

 1人はヴィブロス。先程から僕に一緒にドバイに連れて行って欲しいとお願いをしている子だ。なんでドバイに行きたいかというと。

 

「ドバイって、ちょ~ゴージャスでセレブなところなの!私もいつかあそこで暮らすんだ~!」

「そうなんだ」

 

 ドバイに憧れているから、らしい。確かにセレブな街って印象はあるけども。

 

「それに私、ドバイの知識なら誰にも負けないよ?観光ガイドとしてどうかな?」

「別に観光に行くわけじゃないし、必要はないかな」

「え~!?観光しないの~!?ドバイなのに!ドバイなのに!」

 

 2回も言われた。観光って言われても……僕らはレースのために行くのであって、観光をする気はないというか。

 

「ほらヴィブロス?高村トレーナー達は遊びに行くわけじゃないの。これ以上迷惑をかける前に、早く帰るわよ」

 

 そんなヴィブロスを諫めるもう1人のウマ娘。彼女の姉であるヴィルシーナだ。お願いをしているヴィブロスを止めている。

 そもそもどうしてこの2人がここにきているのか?という疑問だが、どうやらタキオンの記者会見を見たそうで。

 

「我々の次走はドバイシーマクラシックと正式に発表したからねぇ。噂段階だったものを確信に変えた。だからここに来た、ってところか」

「でしょうね。全く、お気楽なこと」

 

 ジェンティルも呆れた表情だ。というか、ヴィルシーナは時々ジェンティルを睨んでいる。バレないようにしてるみたいだけど、意識しているのが分かる。当のジェンティルはあまり気にしてない風だけど。

 

「……よいとまけって持ち込みできますかね?持ち込めたら、是非とも向こうの方々に!」

「……一応調べておくよ」

 

 お土産枠だから心配はないと思うよ、タルマエ。ホッキ貝とかは危ないけど。

 そんな会話をしている間にも、ヴィブロスのお願いは続いている。

 

「お願いおねが~い!私もドバイに行きたいの!だから一緒に連れてって~!」

「ワガママ言わないのヴィブロス!早く帰るわよ!」

 

 そうは言われてもなぁ。

 

「ヴィブロス。残念だけど君のお願いは聞けないかな」

「え~!?なんでなんでなんで~!?」

「根本的な問題だけど、君は僕の担当じゃないから。チームの子ならともかく、部外者を連れて行くのはさすがに僕も容認できないよ」

 

 僕は別にヴィブロスの担当というわけじゃない。だから連れて行くわけにはいかない。問題なんてそれだけだ。

 ヴィブロスは不服そうな表情を浮かべているが、次の瞬間には何かを閃いたような表情を浮かべる。

 

「じゃあじゃあ!私があなたのチームに入る!これなら問題ないでしょ?」

「それなら問題ないかな」

「ダメに決まってるでしょ!そんな理由で決めるなんて、お姉ちゃん認めないわよ!」

 

 うん、当たり前だけどヴィルシーナに阻止された。そして、こちらをキッと睨みつけてくる。ちょっと怖い。

 

「トレーナーさん!ヴィブロスを甘やかそうとしないでください!」

「別に甘やかしてるわけじゃないよ。チームに所属したら連れて行くってだけで」

 

 ぶっちゃけ、僕が許可しない理由は担当じゃないからってだけだからね。担当なら勿論連れて行く。後学のためにね。

 結局すったもんだの末に。

 

「ほらヴィブロス。迷惑をかけたんだから、なにを言うべきか……分かるでしょ?」

「……は~い。ごめんなさい」

 

 ヴィルシーナがなんとか説得成功して解散となった。それにしても熱意が凄かったな。

 

(本気でドバイを目指しているんだな、ヴィブロスは)

 

 ちょっと可哀想に思うけど、ヴィルシーナの言うことも間違っていない。でも、いずれは。

 

「よくできたわね。それじゃ、ドバイの代わりにお姉ちゃんがヴィブロスのデートに付き合ってあげるわ」

「え!?良いのお姉ちゃん!やったやった~!早速いこ~!」

 

 ……うん、幸せそうならいいのかな?

 

「なんだったんですの、これまでの茶番は」

「僕に聞かないでくれるかな」

「当事者じゃありませんのあなたは」

 

 いや、そうだけども。聞かれたところで分からないことはあるんだ。

 タキオンの次の目標はドバイシーマクラシックである。




ヴィブロスとヴィルシーナ登場。
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