ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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観戦(ドバイから)。


大阪杯を観戦

 ドバイのホテルにて、日本のレースを観戦する。

 

「さぁて、ポッケ君とダンツ君の直接対決だ!果たしてどのような結果になるのか、楽しみだねぇ!」

「テンションが高いですわね。そんなに楽しみにしていましたの?」

「当然だとも、ジェンティル君!一度は折れ、私の光に飲まれた2人……そのことを否定するつもりはない」

 

 しかし!と、タキオンは両手を大きく広げて笑みを浮かべていた。ジェンティルは微妙な表情をしている。

 

「彼女達は再び立ち上がり、私に挑もうとしている!そんな2人がどんなレースをするのか、ひっじょーに楽しみだ!」

「……まぁ、骨のある方々なのは認めて差し上げましょう。ですが、今の貴方に勝つのは容易ではない。それこそ」

「ドリームトロフィーで走っているようなウマ娘じゃないと無理そうですよねぇ」

 

 タルマエの呟きに頷くジェンティル。なんだかんだジェンティルもタキオンの実力を認めているみたいだね。

 実際、今のタキオンに勝つのはかなり難しい。中距離特化型な上に、他の距離にはほぼ出走してこないのだから。タキオンの得意な土俵で戦うしかないけど、完成した領域とステータスの暴力が襲い掛かる。まぁ、ステータスに関してはどうとでもなるかもしれないけど。

 

「ですがポケットさんもダンツさんも素晴らしいバクシンをお持ちの方々ッ!きっと素晴らしいレースを見せてくれるでしょうッ!」

「全てを余すことなく糧とする……まだまだ道は険しいのだから」

「あ、あたしまで緊張してきました……!」

「どうして貴方が緊張する必要があるのかしら?」

 

 感受性が豊かなんだよ、多分。

 映像ではウマ娘達がウォーミングアップを済ませてゲートへと向かっている。そろそろ始まるね。

 

《阪神レース場、芝2000m!大阪杯の枠入りは順調です!天気はあいにくの曇り空ではありますが、芝は良バ場の発表。注目されているのはやはり、新時代を告げる2人のウマ娘でしょう!》

《そうですね。1番人気のジャングルポケットに2番人気のダンツフレーム。さらには2冠ウマ娘のエアシャカールもいますから。どのようなレースを見せてくれるのか、期待が高鳴りますね》

《今、最後のウマ娘がゲートに入りました。緊張の一瞬、G1レース*1大阪杯!戦いの幕が今っ、上がりました!ゲートが開いて各ウマ娘が一斉にスタートを切ります!》

 

 レースが始まった。まず飛び出したのは……エフェメロンか。

 

《ハナを切るのはエフェメロン、追うようにオネストワーズが内から上がります。エフェメロンとオネストワーズ、この2人がレースを引っ張る展開か?》

《コサックステップはちょっと出遅れましたね。なんとかハナを取ろうと焦っているように見えます》

《第1コーナーめがけて走っていくウマ娘達、熾烈な先行争いが続いています!ジャングルポケットは中団、ダンツフレームは後方に控えていますね。エアシャカールは最後方でレースを進めます》

 

 逃げウマ娘が3人揃い、ハイペースで流れそうな展開。実際第1コーナーまで先頭の2人が我先にとハナを取り合っている。そこに加わるようにコサックステップも遅れて先頭へ。3人がガンガンペースを上げて第1コーナーへと入っていった。

 

 

 向こう正面に入ると展開は落ち着きを見せる……と思ったけど、前の3人が構わずペースを上げてるね。

 

「なんともまぁ破滅的なペースですこと。品がありませんわね」

「どうしてもハナを譲りたくないんだろうね。この辺は性格だと思うよ」

 

 バ群は縦に長く広がっている。先頭3人が競り合い、4バ身程後ろに4人の先行集団。ジャングルポケットはこの先行集団の一番後ろ、内にいる。ダンツフレームはジャングルポケットから1バ身離れた中団の真ん中に控えている。こちらはジャングルポケットとは違い外目につけていた。そこから後方集団がいて、最後方にエアシャカールが控えている。

 

「最内の経済コースを走るポッケ君と外につけるダンツ君。これはまた対称的な展開になったねぇ」

「距離のロスを嫌ったポケット、囲まれることを避けたダンツ……それぞれの考え方の違いだろう」

「だろうね、ドゥラ君。はてさて、これが後の展開にどう響くかな?」

 

 向こう正面を過ぎて、まもなく第3コーナー。ここで、後続に控えていたウマ娘達が一気に差を詰めようとペースを上げていった。

 

《第3コーナーへ入ります。先頭は現在エフェメロン!エフェメロンが先頭です!しかし競り合い続けます、オネストワーズにコサックステップ!しかしコサックステップは少し旗色が悪いか?脚色が鈍っています!》

《最初の出遅れが響きましたね。無理にハナを奪おうとした結果、かなりのハイペースになりましたから。最初の1000mは58秒1、スタミナを残せているのか?》

《先行集団も前との差を詰めていきます。ジャングルポケットが内から上がって行く!最後方からエアシャカールも伸びてきているぞ!縦に長かったバ群が少しずつ纏まってくる!まもなく第4コーナー、後ろで控えていたウマ娘達が先頭3人に襲い掛かります!》

 

 大外からまくってくるエアシャカール。ダンツフレームは……まだ動いてないね。仕掛けどころはここじゃないと判断したんだろう。ジャングルポケットは内から上がって行くけど……。

 

「う~ん、どうにも抜け出しにくそうにしているねぇ」

「これが、内で走るリスク……ですか」

「そうだね、キタサン。みんな距離のロスが少ないコースを走りたい。そうなると、後ろで走る子達はどうしても不利になるから」

 

 でも、何もかもが不利になるとは一概に言えない。スリップストリームが代表的な例だね。

 

「前のウマ娘を風除けとして使えるから、一概に全部が悪いわけじゃない……ですよね?トレーナーさん」

「その通りだよ、キタサン。まぁ……キタサンは逃げウマ娘だからそこまで関係はないかもしれないけど」

 

 ただ、覚えておいて損はない。場合によっては先行で走ることだってあるかもしれないわけだから。

 

「しっかりと勉強しているね。その調子で頑張ろうか」

「えへへ……はいっ!」

 

 照れくさそうにしているキタサンに和みつつも、レースに集中。第4コーナーを越えて最後の直線に入ろうとしていた。

 最後方からまくって上がってきたエアシャカールが5番手に浮上、ダンツフレームがこの直線で勝負を仕掛けた。エアシャカールの後ろから上がってくる。ジャングルポケットはというと、どうにか最内から抜け出すことができたのか3番手。逃げウマ娘3人はすでに撃沈しているね。

 

《最後の直線に入りました!現在先頭はアキナケス!しかし差はほとんどありません!残り200を切りました!ここでジャングルポケット、ジャングルポケットだ!ジャングルポケットがアキナケスを躱して先頭に立つ!》

《後ろからエアシャカールとダンツフレームも来てますよ!油断はできません!》

《先頭に立ったジャングルポケット!エアシャカールとダンツフレームが猛追します!その差は2バ身から1バ身程の差!差を詰めてくるエアシャカール、ダンツフレーム!ダンツフレーム僅かに有利か!?逃げるジャングルポケット!このまま粘ることはできるのか!》

 

 ジャングルポケットは先頭に立って粘る。必死の形相で、後方から迫ってくる2人のウマ娘から逃げている。

 ただ、エアシャカールとダンツフレームの勢いが上だ。少しずつ差は縮まっていて、残りの距離を考えたら逃げ切ることは不可能だってぐらいのスピードで追い上げている。おそらくだけど、ジャングルポケットは内から抜け出す時にかなりのスタミナを消耗した。それこそ、外から追い上げている2人よりも。今回のジャングルポケットの判断は、凶と出た。

 旗色が悪いのはジャングルポケット。

 

(けど、そう簡単にいかないのがレースだ)

 

 ジャングルポケットはまだ諦めていない。必死に走って粘っている。最後まで勝負は分からない。

 抜け出した3人が競り合う。後続との差はそこまでついているわけではないけど、勢いがあるのはジャングルポケット・エアシャカール・ダンツフレームの3人だ。その中で一番勢いがあるのは……。

 

ダンツだ。彼女が今、一番勢いがある」

「ポケットさんは内で抜け出すのに手間取ってしまった……シャカールさんは少し仕掛けが早すぎたのか脚色が鈍い。けど」

「はいッ!ダンツさんは最良のタイミングで抜け出しましたッ!模範的な仕掛け、まさにバクシンッ!委員長が花丸をあげましょうッ!」

 

 ドゥラとタルマエ、バクシンオーの冷静な分析。彼女達の言う通り、ダンツフレームが少しずつ前に出始めた。

 

《残り100を切った!ここでダンツフレーム、ダンツフレーム!真ん中のダンツフレームがわずかに前に出た!必死に粘る内のジャングルポケット、こちらも追い上げる外のエアシャカール!しかしダンツフレーム、ダンツフレームだ!》

 

 粘る2人を振り払い、ダンツフレームが前に出る。その差を半バ身と開いて──ダンツフレームが1着で駆け抜けた。

 

《ここで差し切ったダンツフレームゥ!ダンツフレームが真ん中から突き抜けた1着!エアシャカールとジャングルポケットとの叩き合いを制し!見事大阪杯を制したのは秋のマイル王者ダンツフレームだぁぁぁ!》

《彼女は仕掛けるタイミングが良かったですね。ここだ!ってタイミングで抜け出せました。これはお見事です!》

《2着はエアシャカール、3着はジャングルポケット!次のレースが楽しみ……》

 

 観戦し終わって。タキオンは楽しそうに笑った。

 

「いやはや、とても良いレースだった!彼女達と戦うその時が楽しみで仕方がない!すぐにでも帰国したい気分だよ!」

「帰国するのは四月の前半ぐらいになりそうだけどね」

「せめて春の天皇賞には間に合わせたまえよ?トレーナー君。本当は大阪杯だって現地で観戦したかったのだから」

 

 無理を言わないで欲しい。そりゃ強行軍すれば現地にいけただろうけど、色々とあるわけだし。なによりメンバーの体調を考えたら強行軍なんてできるはずもない。

 大阪杯を制したのはダンツフレーム。後でお祝いのLANEを朝霞さんに送っておこう。こういうのが大事って聞いたし。

*1
余談ですが、ジャングルポケット達が走っていた当時はG2




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