ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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他陣営のお話。


幕間 それぞれの陣営

 今回の宝塚記念はかなりの盛り上がりを見せている。理由は1つ、現在世界最強と名高いウマ娘、アグネスタキオンとそのライバル3人が全員出走するからだ。

 

 ライバル1人目はジャングルポケット。世代のダービーウマ娘であり、ジャパンカップで【世紀末覇王】テイエムオペラオーを下した実力者。大阪杯では3着だったものの、一番の対抗は彼女だろうという声は大きい。

 

 2人目はダンツフレーム。マイルチャンピオンシップと大阪杯、2つのG1を制しており、勢いに乗った状態で宝塚記念に乗り込んでくる。クラシックの冠こそ取れなかったが、その実力は疑う余地はないだろう。

 

 3人目はマンハッタンカフェ。菊花賞ウマ娘であり、先日開催された天皇賞・春を制してステイヤーとしての地位を確立しつつある。長い距離の方が有利とはいえ、中距離であっても前の2人に引けを取らない。

 

 世代の中心ともいえるメンバー3人。だがやはり、ファンが注目するのは──アグネスタキオンだ。

 凱旋門賞を制し、年末の大一番で輝き、ドバイシーマクラシックを9バ身差大楽勝を収めた彼女。世界中のレースファンが認める現役世界最強であり、欧州のレースも是非どうか?と誘われるほどの実力者である。本人が申し出を受け取ったかどうかは、守秘義務で話されることはない。レースの日を待つしかないだろう。

 ドバイシーマクラシックを走り終わった彼女のインタビュー。そこで次走が発表された。

 

「アグネスタキオンの次走は宝塚記念です」

「と、いうわけだ。よろしく頼むよ、諸君」

 

 日本の報道陣は盛り上がる。発表された次のレースに喜び、出走の時を心待ちにする。

 そこに加わるように、ジャングルポケット達の次走発表があった。

 

「大阪杯は不甲斐ないとこ見せちまったけど……俺の次走は宝塚記念だ!タキオンのやろうにリベンジする機会、逃すわけにはいかねぇ!」

「わたしの次走は、宝塚記念です!タキオンちゃんに負けっぱなしじゃいられない。勝って、センターの座を貰います!」

「次走は、宝塚記念を、予定しています……雪辱を、果たすために」

 

 かなりの盛り上がりを見せる宝塚記念戦線。報道陣のみならず、レースファンも例外なく歓喜の声を上げる。1日が過ぎるのを待ち遠しく感じるほどだ。

 

 

 世代の頂点に君臨する【超光速のプリンセス】アグネスタキオン。彼女を倒せるウマ娘はいるのか?宝塚記念の日は、少しずつ迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 練習場にてフジキセキ、ナリタトップロードと併走をするジャングルポケット。

 

「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇ!」

「あはは、気合が入ってるね、ポッケ!」

「本当です!ポッケちゃん、凄く気合入ってます!」

「たりめぇっすよ!今度こそは負けねぇぞ、タキオォォォン!」

 

 彼女の気合いは、()()()()()()()に高まっていた。

 

(ホープフルで初めて会った、自分よりも強い相手。皐月賞で刻まれた、圧倒的な速さ。俺の心は一度折れた。けどなぁ!)

「負けっぱなしで終われるほど、俺は賢くねぇぞタキオン!お前にリベンジして、宝塚記念を勝つのは俺だぁぁぁ!」

「ポッケさんマジ気合入ってる!タキオンなんてやっつけちゃってくださいよ~!」

 

 ドリームトロフィーで走るフジキセキ、すでにトゥインクル・シリーズを引退したテイエムオペラオーとクラシックで覇を競い合ったナリタトップロード。2人と走り、実力を高める。成長速度は、彼女のトレーナーでさえも舌を巻くほどだ。

 

(ポッケはさらに進化しておる……恐ろしい加速度よ)

「じゃがポッケ!タキオンにばかり気を取られるでないぞ!大阪杯のこと、忘れたわけではあるまいな!」

 

 ジャングルポケットのトレーナーは檄を飛ばす。大阪杯、誰が勝ったのかを彼女が忘れていないか確認するために。

 もっとも、その心配はいらなかった。

 

「忘れてねーよトレーナー!勿論、ダンツにだって負けねぇ、カフェにも負けねぇ!俺がッ、最強だぁぁぁ!」

 

 ジャングルポケットは忘れていない。彼女の目にはしっかりと、ダンツフレームとマンハッタンカフェ、その他出走者の姿が見えている。一層走りのキレが増す彼女を見て、トレーナーは震えた。

 

(ライバルが力をくれる、強敵との戦いが進化を促す……じゃが、これほどとはな!)

「アグネスタキオン……【神童】高村聖が育てた、世界最強クラスのウマ娘。じゃが、ポッケも負けておらんぞ」

 

 相手はもしや、という可能性すら奪うような強敵。ともに走ったウマ娘の脳裏に例外なく圧倒的な光を刻むウマ娘。それでも、もしやという可能性を見出す。

 

真剣(マジ)でアガるぜ!今度の宝塚記念……勝つのは俺だぁぁぁッ!」

 

 ジャングルポケットは己を高める。全てはその先にある勝利を掴み取るために。

 

 

 同時刻、ダンツフレームは別の場所でトレーニングをしていた。山の中にある今は使われていない合宿所。チームのメンバーが集まって、一緒にトレーニングをしている。

 かつてサクラバクシンオーと鎬を削ったマチカネタンホイザとの併走、さらには彼女に協力してくれるウマ娘達とレースをすることで、彼女も力を蓄えていた。

 

「ハァ……ハァ……!」

「まだ息が上がるんは早いで、ダンツ」

「タマの言う通りだ。君の戦う相手は、まぎれもない世界最強のウマ娘……勝つためには、ここで倒れてはいけない」

「へぇ?オグリも厳しいこと言えるんやな」

「私だって、たまにはいい恰好したいからな」

 

 かつて一時代を築いたウマ娘……タマモクロスとオグリキャップ。

 

「つっても、相手も相手でマジにヤバいからね。まだまだ根を上げてられないよ、ダンツ」

「わ、分かっ、てる……これじゃあまだまだ、タキオンちゃんには勝てないっ!」

 

 さらにはゴールドシチーも協力者に迎えて、ダンツフレームは励んでいた。ドリームトロフィーで活躍する彼女達との併走は、かなりの消耗を強いられる。息も絶え絶えだが、ダンツはすぐさま立ち上がり再開しようとしていた。

 ダンツフレームは何度でも立ち上がり、すぐに息を整え練習へと取り組む。そんな姿に、タマモクロス達は感嘆の息を漏らす。

 

(えらい闘争心や。相手も相手で強大やけど)

「気合だけならば負けていない。まだまだ、頑張るぞ」

「やな。うっし、ほなもう一本行くで!」

「はぁ。ま、協力するといった手前アタシも頑張るよ。もっと気合入れな?」

「はいッ!」

 

 練習を再開するダンツフレーム。傍らでは彼女達のトレーナーが応援していた。

 

「頑張ってダンツー!ダンツはちゃんと強くなってってるよー!」

「や~……すげえな、あのダンツって子。少しも気を抜いちゃいねぇ」

「そりゃそうですよ。それだけ、勝ちたい相手が強いってことですから、ジョーさん」

 

 オグリキャップのトレーナー達もこの場にいた。何度倒れてもへこたれないダンツフレームの姿に驚きつつも、応援の言葉を送る。

 彼らも勿論知っている。今度ダンツフレームが戦う相手がいかに強大で、ヤバい相手か。

 

「相手が世界最強のウマ娘か……オグリのジャパンカップを思い出すな」

「あー、相手も強かったですもんね。しかもワールドレコード決着でしたし」

「それに近しい相手との戦い……っ!うぅっ」

 

 チクチクと刺さる現実的な言葉。それでもダンツフレームのトレーナー、朝霞は諦めない。

 

「で、でも!これ以上聖君に負けたくないので!それに、ダンツが諦めてないから私も諦めない!頑張れー、ダンツー!」

 

 若干ながら身体は震えている。それでもその目にはしっかりとした闘志が灯っていた。また、手元には【必勝!㊙トレーニングプラン!】と銘打たれたノートがあり、このレースにかける情熱が籠っているのが窺える。

 そんな姿に、オグリキャップのトレーナー達は笑みを漏らした。

 

「頑張ってください。個人的に、応援してますよ!」

「はい!頑張ってくださいね、朝霞トレーナー!」

「じ、ジョーさん……コミさんッ!私、頑張ります!」

 

 こちらもまた、順調である。……余談だが、この併走にはオルフェーヴルも参加していた。その走りにタマモクロス達は身震いするのだが、また別のお話。

 

 

 そして、マンハッタンカフェ。玉のような汗を流しており、かなり厳しい鍛錬を積み重ねているのが容易に想像できる。

 彼女もまた、併走をしていた。相手は……中距離最強格の1人、トウカイテイオー。中距離ならば誰にも負けないと豪語する彼女が、マンハッタンカフェのトレーニングパートナーを務めていた。

 

「ほらほら、もっと頑張りなよ?カフェ。それじゃあタキオンには勝てないよ」

「……くっ!」

「前にも言ったと思うけど、タキオンの強さはボクに比肩する。この程度で根を上げてたら、宝塚記念は勝てないよ?」

 

 膝をつき、荒く呼吸を繰り返すマンハッタンカフェに対して、トウカイテイオーは容赦なく現実を突きつける。その光景を、トレーナーである天城は黙ってみていた。

 あわあわとしているサトノダイヤモンドとシュヴァルグラン。心配そうな表情で2人を見つめる。

 

「と、止めなくて大丈夫でしょうか?トレーナーさん」

「大丈夫だよ、ダイヤ。これぐらい厳しくいかないと」

「で、でも!」

 

 抗議の声を上げようとするシュヴァルグランだが、彼女も内心では分かっている。これぐらいしないと勝てない相手、アグネスタキオンはそれほど強大なのだと。

 

「カフェの得意な土俵ですら負けた相手なんだ。そんな相手と、相手が最も得意とする中距離で戦わないといけない。テイオーは何も間違ってない」

「トレーナー君に同意だ。それに……マンハッタンカフェはこれで落ちるほど、弱いウマ娘ではないさ」

 

 フッと笑いながらカフェを見るシンボリルドルフ。彼女の言葉と同時に、マンハッタンカフェは立ち上がった。トウカイテイオーを鋭い目で睨む。

 

「……まだ、終わりませんッ!次を、お願い……します!」

 

 いまだ尽きぬ闘争の炎。マンハッタンカフェの瞳から闘争心を感じ取ったトウカイテイオーは、にっと笑う。

 

「そう来なくっちゃね。それにしても、カフェは幸運だね~。中距離最強のワガハイが同じチームにいるんだから!」

 

 自信満々に告げるトウカイテイオー。マンハッタンカフェにとってなにより幸運だったのは、アグネスタキオンと同じく中距離を主戦場とするトウカイテイオーが同じチームにいたことだろう。さらには最強格の1人、仮想アグネスタキオンにはもってこいの相手である。

 2人はスタートラインに立つ。何度目かの併走が始まった。マンハッタンカフェの胸中にあるのは、アグネスタキオンへのリベンジ。

 

(今度はもう、負けません。私が得意とする舞台で負けたように、あなたにも……味わわせてあげますッ!)

「もう、負けないッ!タキオンさんにも、誰にもッ!」

〈ソノチョーシ!カフェ、ゼッコーチョー!〉

 

 お友だちの応援の声でさらにブーストをかけるカフェ。

 

(勿論、忘れていない。あなたにも、追いつくッ!)

〈ソレデヨロシ!……ま、そう易々とは追いつかせないけど〉

 

 気合十分。トウカイテイオーも嬉しそうに笑みを零し、さらなる成長を遂げるマンハッタンカフェに天城達も笑った。

 

 

 宝塚記念に向けてどの陣営も気合を入れている。勝利の栄光を掴み取るのは誰か?




次は主人公(ラスボス)陣営視点。
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