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続きダヨ。
タキオンの新薬を飲んだ結果、どういうわけかウマ娘になってしまった僕。起きてしまったことはどうしようもないので、このままトレーニングをすることに。
ただ、ちょっと問題があって。
「聖君、今日はよろしくお願いするよ」
「ひっじり~ん!今日もシクヨロ!テンション爆アゲあげみざわでヒアウィゴー!」
天城さんのチームとダイタクヘリオスを中心としたギャルウマ娘達のトレーナーさん、新條さんのチームと合同トレーニングをする予定だった、ってことだろうか。頭の中から抜け落ちていた、とかそういうことはなく。タキオンの薬を飲んでいるのは割と日常茶飯事だったので合同トレーニングがあるけどいいか、と思っていた。結果、こうなってしまったわけで。
お2人と合流したわけだが、キョロキョロしている。
「あれ?バクシンオー達はいるけど……」
「肝心のひじりんがいないね?どこ行ったんだろ?」
「おかしいなぁ、集合時間に遅れたことなんてなかったのに」
うん、僕を探しているな。そりゃあ分かるわけないよね。今の僕はウマ娘なわけだし。
「ねぇ、サクラバクシンオー。聖君はどこにいったのかな?もしかして、急用でも入ったのかい?」
「あとあと!知らない子がいるね?ひじりんが新しくスカウトした子?」
天城さん達の言葉に、顔を見合わせて苦笑いを浮かべているキタサンとタルマエ。2人は多分、どうやって説明したものか?なんて考えているのだろう。表情に出ている。
だが、バクシンオーはそんなもの関係ない。
「はいっ!こちらのウマ娘さんが私の模範的なトレーナーさんですッ!」
僕をビシッ!と指差して、声高に答えた。天城さんと新條さんは、ポカーンとした表情。そりゃそんな表情にもなるよね。僕だって信じられないよ。
「え、え~っと……どことなくカフェに似てるような気がするけど」
「実はトレーナーさん、タキオンさんの薬を飲んだらウマ娘になりました!なので、こちらのウマ娘さんはトレーナーさんというわけですッ!」
「うん、よく分かんないな」
嘘は1つも言ってない。言ってないが、それで信じることができるかと言われたら別問題。どうしたものか……ついでに。
〈カワイイ!オキニイリ!〉
お友だちさんにさっきから纏わりつかれているのもどうにかしたい。いつも以上につきまとってくるね、君。フェイスハガーしないでくれる?
……仕方ない。天城さん達に事情を話さないと。
「バクシンオーの言ってることは本当です、天城さん、新條さん。信じられないかもしれませんが」
かくかくしかじかと事情を説明。天城さん達の表情は驚きに満ちていた。
「……ってことは!?」
「本当にひじりんなの!?」
「はい。タキオンの薬を飲んだらこうなってしまって。ただ、合同トレーニングに影響はありません。始めましょうか」
「いや、だとしても……」
天城さんは考え込んでいるような。新條さんはわなわなと震えていた。お、怒らせてしまっただろうか?でも、なにが琴線に触れたのか分からない。
(なにか、粗相をしてしまっただろうか?)
理由は分からないが、謝った方がいいだろう。すぐにでも謝罪の準備をしよう「ギャンかわ~!ひじりんめちゃんこ可愛い~!」うん、その必要はなさそうだね。
新條さんが僕に抱き着いていた……苦しい。抱き着くどころか頭を撫でたりして愛でている。
「え?ちょ、やば。カワよ!妹にほC!」
「苦しいです、新條さん。後、中身僕ですよ」
「関係ナッシング!ありよりのありけり!あ~、ほんとにかわE!ねね、天城君もそう思うっしょ!?」
「……ノーコメントで」
目を逸らす天城さんである。そりゃ言いにくいよね。中身が僕だって分かってるし。
<ハナレロ!ハナレロ!>
お友だちさんはそんな敵愾心を出さないで欲しい。後、いつまでフェイスハガーしてるのかな?
色々とあったものの合同トレーニング。せっかくウマ娘の身体になったので。
「バクシンオーのトレーナーさんと走るのか~……新鮮ってレベルじゃないね、うん」
「走るのは、大丈夫、なのですか?」
「一応少しだけ走ったから、フォームは問題ないと思う」
まずはメジロパーマー、マンハッタンカフェの2人と走ってみることに。タキオンはというと、検証のために観戦している。
スタートの態勢を取る僕ら。練習と言えど気を抜かないのが2人から伝わってくる。
「……スタートッ!」
トウカイテイオーの合図で、僕達は一斉に駆け出す。最初に抜け出したのは──僕だ。
「え?はやっ!?」
「ッ!中々の、スピードで……!」
2人の驚いたような声が後ろから聞こえる。でも、そんなことお構いなしに僕は走る。慣らしで走った時も思ったけど、うん。
(人の身体では味わえない感覚……中々、悪くない……っ!)
風を切るように走る感覚、これがバクシンオー達が走っている時の感覚なのか。
「ちょ、マジで速すぎっしょ!?手なんか抜いてられないって!」
「追い、つかないと……!」
「ひじりんめちゃんこ速い!頑張れ頑張れー!」
「トレーナーはどっちを応援してんだよ!パーマーの方応援しろや!」
ハハ……!本当に、楽しいな、これ!願わくばずっと続けたいけど……無理なんだよね、これが。
1ハロンも走り切らないうちに異変は訪れる。先頭で走っていた僕だけど、気づいたらメジロパーマー達がすぐ近くに。2人が本気を出したとか、そういうわけではない。
「……」
「あ、あれ?」
「減速、した?舐められ……いえ、違いますね」
僕の脚はすでに千鳥足。新鮮な酸素を求めて呼吸をするけど、上手く吸えない。そう、つまりは。
「カヒュー……カヒュー……おえっぷ」
ガス欠である。
「め、メディィィィィック!?」
「お、おまっ!?1ハロンももたねーのかよ!?」
そ、その通りだよエスポワールシチー……これが僕の限界だ。
ウマ娘になった僕のスピードはかなり突出しているらしい。これはタキオンとの調べ。ただしその反面……おっそろしいほどにスタミナがない。1ハロン走り切ることすらできないほどに。実は鏡を見た時に自分のステータスも見えたんだけど、スピードの値だけ飛び抜けてて、スタミナが50を下回るとかというトンデモ数値になっていたのだ。なんだ11って。
「君ぃ、相変わらずスタミナがないねぇ」
「コヒュー……コヒュー……」
「ほら、酸素缶だよ。新鮮な酸素を取り込みたまえ」
あ、ありがたいな。酸素缶を貰ってなんとか整える。
「確かにスピードは凄いけど……」
「レースを走り切るのは無理そうだね、ひじりん」
「れーす、でるきないから、べつにいいです」
僕がレースに出てどうするんだ。本職トレーナーだよ。
その後は無難に合同トレーニング。
「やっぱりパワーもついてるんだね、聖トレーナー」
「そうだね、メジロパーマー。ウマ娘並の力は発揮できるよ」
「あら?私が手取り足取り教えて差し上げましょうか?その程度では満足できないでしょう?」
「君並の力を手に入れるのは無理だよジェンティル」
みんなと一緒にトレーニングをして、今後のメニューに活かせそうな知識を吸収していく。習うより慣れよ、って言葉があるけど、その通りだな。
(実際に体を動かすことで分かることがある……これからに活かせそうだ)
身体の使い方とか、意識すべき筋肉のこととか。本で知っていたことに加えて、自分で体験することでさらに深く理解できる。これは明確な利点だね。
そんなこんなで合同トレーニングも終わり、お疲れ様の音頭で解散……なのだが。
「新條トレーナー!トレーナーさんは置いていってくださいッ!」
「……チッ」
「いや何してんのさトレーナーさん!?」
<カフェ!カフェ!ツカマエテ!>
「ダメに、決まってるでしょ」
新條さんに抱えられてそのまま連れて行かれそうになるし、お友だちさんは相変わらずフェイスハガーしてくるしで大変だったことを記憶しておく。何回も言うけど、中身僕ですよ?
「まぁ、頑張ってね聖君」
「頑張ります、天城さん」
「……大変だな、あなたも」
天城トレーナーとシンボリルドルフの労わるような視線が少し痛かったことも覚えておこう。
◇
ウマ娘になってからの日々は結構慌ただしく過ぎていった。というのも、なにもかもが新鮮だったので時間があっという間に過ぎていくのだ。最初はどうなることかと思っていたけど、結構エンジョイできていたと思う。
「今日もトレーニング頑張ろうか」
「「「はいっ!」」」
まぁ、やることもトレーナー業だから変わらないしね。お料理教室に関しては……こんな状態で行くわけにもいかず、休む旨を伝えた。
ちょっと不便だったのはお風呂だったか。なんせ髪が長いから洗うのが結構大変なのだ。ロングヘアだしね。
「めんどくさいし切ろうかな?」
そう呟いたら、キタサンやバクシンオーから必死に止められたけど。
「ダメです!!ぜ~~~ったいに!ダメです!」
「そうですよ!綺麗な髪をしているからそのままにしておきましょうッ!委員長的にも花丸ですよ!」
「分かった、分かったから。髪切らないからそんなに圧をかけないで」
結局髪を切ることはなかった。
後は、トイレか。
「え~っとぉ……聖、ちゃん?君?」
「君でいいですよ、天城さん。どうされましたか?」
「いや……どこに入ろうとしてるの?」
「……お手洗いですが?」
「いや、さも不思議そうな表情してるけどさ──今の聖君が男子トイレに入るのはまずいでしょ!?」
普段の癖で男子トイレに入りそうになったことが何回かあった。その度に驚かれてたな。
新條さんはというと……ウマ娘の姿の僕をいたく気に入ったらしい。何度も遭遇した。
「ひじりん!今日もお菓子持ってきたよ!」
「新條さん。なんだか申し訳ないですね」
「いいのいいの!その代わり、食べるとこ見ててもいい?」
「……まぁ、それぐらい構いませんが」
お菓子を持ってきては、僕が食べるところをじーっと見ている。*1そんなに面白いのかな?
「は~……癒されるぅ」
そんなにかな?よく分からない。とりあえずかなり気に入ったようだ。
タキオンの実験も勿論やる。とはいっても、すぐにガス欠するからあんまり多くのことはやれなかったけど。
「しかし、スピードがとんでもないねぇ君。このまま成長していけば、委員長君並になるんじゃないのかい?」
「なんと!こんな身近なところにライバルがいたとはッ!トレーナーさんも是非レースに!」
「カヒュー……ゼヒュー……む、むりぃ……」
「代償にスタミナが絶望的にないが」
「わー!?またトレーナーさんが倒れちゃいましたぁ!早く保健室に運びましょう!」
タキオンとしては満足いくデータが取れたらしい。それは良かった。今後に活かせるだろう。
……と、まぁ。ウマ娘になったもののそれなりに充実した日々を過ごしていた僕だけど。ウマ娘になってから──1週間が経った。つまり。
「……ようやく戻れたな。この顔も、なんだか懐かしい気がする」
やっと人に戻れた、ってことだ。うん、やっぱりこっちの方が良いね。戻る時はまた高熱にうなされたけど、寝て起きたら元の身体に戻っていた。ほっと一安心だね。
「やっぱり、こちらの方がトレーナーさんらしいですねッ!花丸ですッ!」
「もっと検証したいことはあったが……まぁいい。実験のデータは大量に取れたからねぇ!」
「うん、やはり普段の君が一番だな」
「お帰りなさいトレーナーさん!」
「可愛らしい貴方と戯れるのも悪くありませんでしたが、まぁいいでしょう」
「大変でしたねトレーナーさん……色々と」
ミーティアのメンバーも一安心したことだろう。ちなみに、タキオン曰くあの薬をもう一度作れるかは微妙らしい。そういえば、奇跡の産物って言ってたからね。
「ま、成分やアレやコレといった部分はしっかりと記憶している。時間をかければ類似した薬は作れるだろうねぇ!」
「……お手柔らかに頼むよ」
さすがにもうなるのはゴメンだ。実験のためとはいえ、極力なりたくないというのが本音。やっぱりいつもの自分が一番だからね。
「色々とあったけど、今日も一日頑張ろうか、みんな」
元気の良い掛け声でトレーニングが始まる。さて、トレーナーとしての仕事を頑張ろう。
なお、その後新條さんと会ったのだが。
「ひ、ひじりんひじりん!お願いだから!後生だから~!」
「さすがに無理です」
「そんな~!」
もう一度ウマ娘になってくれ、と頼まれた。丁重にお断りしたけど。
色々とあったけど、無事に人に戻れたよ!