ビヨンド・ザ・ライトレス   作:カニ漁船

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遠征と言えば?


遠征の記録

 特に何もない平和な日。そんな日に僕は、とあるウマ娘のところを訪れていた。時刻は放課後、授業を終えたウマ娘達が廊下で喋っていたり、練習へと向かう姿が確認できる。

 歩いて、目的地へと辿り着いた。廊下の教室名には──【遠征支援委員会】、と書かれている。ノックして、部屋へと入った。

 

「失礼するよ、ドリームジャーニー」

「えぇ、いらっしゃいませ高村トレーナー」

 

 部屋に入った僕に対してニコリと微笑むのは1人のウマ娘。この遠征支援委員会の長でもあるドリームジャーニーだ。お茶の用意とかしてもらってるけど、悪いな。

 座ることを促されて着席。差し出されたお茶に一礼をしつつ、早速本題へと入る。どうやら相手も早く聞きたいようで、お茶とお菓子を用意するとすぐに対面に座った。

 

「さて、と。聞かせてもらいましょうか。今回の遠征について」

「うん。まずはホテルについてなんだけど……」

 

 今回呼ばれた理由は1つ。海外遠征についてだ。

 

 

 タキオンの目的である速度追求の果て。実はまだまだ続きがあって、今は世界中の強敵相手に試しているところなんだ。アイルランドとイギリスの両チャンピオンステークスに出走したのもそうである。ちなみにどちらも勝った。愛チャンピオンステークスに関しては圧巻の6バ身差、世間では、今年も世界最強はアグネスタキオンだ!……なんて触れ込み。誇らしいね。

 話を戻すと、その時の体験を是非聞きたい、って子がいたんだ。それが今僕の目の前にいるドリームジャーニーである。

 彼女と初めて会ったのは凱旋門賞の時、フランスに旅立つ前日、僕の前に現れて、深々と頭を下げてお願いしてきた。

 

「申し訳ありません、高村トレーナー。実は、折り入ってお願いがあるのですが……」

 

 聞くところによると、フランス遠征の時の話を帰ってきた後してほしい、とのことだった。

 

「海外遠征の話を聞きたい?それはまた、どうしてかな?」

「実は私、遠征支援委員会というものをやっていまして。今回の海外遠征の情報を、是非とも仕入れたいのですよ」

 

 どうも僕達の遠征での学びを委員会の活動に役立てたい、といったものらしい。別に断る理由もないのでOK、遠征から帰ってきた後彼女に今回の結果を報告した。

 

「ふむ、ホテルや治安、さらにはオススメのスポットまで……」

「まだ情報不足だったかな?なら、次の海外遠征ではもう少し詳しく調べるよ」

「いいえ、とても素晴らしい報告書です。細かいところまで配慮してある……貴方に頼んで正解でした、高村トレーナー」

 

 優雅に微笑む彼女を見るに、結果は上々だったらしい。ちょっとホッとした。

 

 

 それ以来、彼女とは少しばかり交流がある。勿論今回も遠征について話すつもりだった。

 

「今回はアイルランドとイギリス、だね」

「えぇ。フランスにドバイも素晴らしい報告書でした。今回もまた、素晴らしいものを期待していますよ?」

「……あまりハードルを上げて欲しくないかな。期待外れだった時が落ち込むから」

「──可愛らしい方だ。心配なんてしなくても、あなたの仕事は常に完璧。不安になる必要はありませんよ」

 

 まとめたレポートをドリームジャーニーに手渡す。受け取ってペラペラとページをめくっている間、僕はお茶を飲みながら静かに待つ。かなり熱心に見ているようで、ドリームジャーニーは集中していた。

 

(それにしても、遠征支援委員会か)

 

 その名の通り、遠征するウマ娘を支援することを目的に置いた委員会。ドリームジャーニーが委員長を務め、ホテルの手配や交通の便の把握、遠征先での休息地やトレーニング施設のピックアップ、さらには遠征者の相談など幅広い活動を手掛けている、らしい。とんでもないな。ものすごく重要な委員会だ。

 そんな遠征支援委員会だが、海外遠征については情報が少ない、というのが実情だ。まぁ海外遠征をするウマ娘はまだまだ少ないからね。

 最近では海外に目を向けているウマ娘も増えている一方、現地に足を運んだことがない情報でウマ娘達の相談に乗るのはあまりにもリスキー。そこで選ばれたのが……海外遠征をしている僕のチーム、というわけなんだろうね。フランスに始まってドバイにアイルランドにイギリス。そこそこ回っている。ドリームジャーニーからは大助かりだと褒めてもらえた。ちょっと嬉しいね。

 待つこと少し。資料を読み終えたドリームジャーニーはホクホク顔だ。どうやら、満足のいくものだったらしい。

 

「──えぇ。今回もまた、素晴らしい報告書でした。今後の活動に役立つでしょう」

「それは良かった。バクシンオー達に協力してもらって、現地で評判の良いご飯屋をはしごした甲斐があったよ」

「おや?そこまでしていただいたのですか。勤勉なお方だ」

 

 資料の紙を揃えるドリームジャーニー。チラリと時計へと視線を向けた。

 

「……少しばかり時間がありますね。高村トレーナーは?」

「僕もまだ、時間はあるかな。どうかしたの?」

 

 ドリームジャーニーは口元へと手をやり、微笑んだ。

 

「少し、お話でもどうかと。暇つぶしに、ね」

 

 別に断る理由はない。僕はOKを出した。

 

 

 話の内容は主にチームのことだ。

 

「ドリームジャーニーはオルフェーヴルと一緒のチームに所属しているんだったかな?」

「えぇ、そうですよ。オルにタンホイザさん、ダンツさんにアースさん。中々愉快な日々を送っています」

 

 ……朝霞さんのチーム、かなり濃くなってきたな。いや、僕のチームが言えた義理じゃないんだけど。ちなみに、アースさんというのはサウンズオブアースのことだ。つい最近スカウトしたらしい。

 

「あの方も随分と可愛らしい……我々のために身を粉にして働いている姿は、とても好感が持てます。少しばかり、抜けているのが玉に瑕ですが」

「朝霞さんも一生懸命だからね。強くなるために、色々と手を尽くしていることは知っているよ」

 

 朝霞さんとは度々併走を組んでもらっている。向こうから話をしてくれるのでこちらとしても大助かりだ。

 

「オルも朝霞トレーナーのことを随分と評価しています。本人の前では絶対に言いませんけどね」

「……確かに、オルフェーヴルは言わなそうだね」

「それもまた、オルにとっての愛情です。厳しい言葉をかけることで、彼女の成長を促している……特に、相手は強大ですから」

 

 ……その相手ってのは僕のことなんだろうなぁ。直接言われてはいないけど、何となく察しはつく。

 そういえば朝霞さんと言えば。

 

「結構マスコミ受けも良いよね、朝霞さんは。よく話題になってる」

 

 女性トレーナーで、最近頭角を現してきたトレーナーとして有名だ。親しみやすく何事にも一生懸命な彼女は一般受けも良いらしく、テレビでは結構評判が良かったのを思い出す。

 ドリームジャーニーもまんざらではないようで、耳がピコピコと動いていた。

 

「ダンツさんのこともあって、どんどん有名になってきました。彼女の魅力を、世間が認知してきたということでしょう」

「だね。喜ばしいことじゃない?」

「えぇ。ですが……それに付随するように、どうも邪魔なコバエが湧いているようで」

 

 おかしい。微笑んでいるはずなのに圧が凄いぞ。地雷でも踏み抜いたかな?僕。

 

「純粋なあの方に悪意をもって近づく……それはあまりにも許せる所業ではありません。高村トレーナーなら、ご理解いただけるかと」

「……ノーコメントでお願いするよ」

「フフっ」

 

 その笑顔の裏では何も起こってないことを祈っておくよ、ドリームジャーニー。

 

 

 それから少しの間話を続ける。

 

「いつもありがとうございます、高村トレーナー。特にフランス遠征の話は、オルの時に役立ちそうです」

「前にも言ったけど構わないよ。遠征支援委員会の力になれたのなら、それでいいかな」

「フフっ、あなたはやはり、とても一途な方だ。もしまた遠征の話が上がったら、その時はお願いしますね?」

「うん、その時はまたレポートを出すよ」

 

 しばらく話していると時間はあっという間に過ぎるもので。僕もドリームジャーニーもトレーニングに向かう時間になった。部室を出て僕達は分かれる。

 さて、と。

 

「今日も頑張ろう」

 

 いつもより少しだけ気合を入れて、みんなを待たせないように早歩きで部室へと向かった。




遠征と言えばやっぱりドリームジャーニーよな。実はオルフェーヴルと一緒のチームに加入してます。


一日遅れにはなりましたが、こちらが新作のURLになります。ジェンティルドンナ&ホッコータルマエ編です。

https://syosetu.org/novel/352392/
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