イビルジョーくっっっっっそ怖かったあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
失礼、心の声がXBIGで表示されてしまいました。
いやぁ……強かったね。2、3回綺麗なお花畑と小川が見えたよ。冗談抜きでね。
やっぱり生きているイビルジョーは違うね。私を殺して食う為なら溺死を狙うなんてイビルジョーらしからぬ手を使うとは……食欲に支配されている、しかも飢え過ぎてブチ切れてるヤツの考えることは恐ろしいねぇ……
でも、退くという選択肢は現れなかった。カンナを襲われた怒りだけではなくて、ジンオウガとしての矜恃が逃走を許さなかった。
これで人間としての私の精神だけが残っていたら、カンナを連れて逃走するという選択肢を取っていたと思う。ジンオウガらしさをかなぐり捨て、生き残ることだけを優先した。
改めて、つくづく便利な精神構造だよ。人間的な思考力とジンオウガとしての矜恃が上手い具合に混ざり合っている。
そのお陰もあって、私は勝った。あの怒り喰らうイビルジョーと真っ向から殺し合って、カンナのありがたいサポートもあって何とか生存競争に打ち勝つことが出来た。
生存競争で勝者は生き残り、敗者は死ぬ。死んだ者は勝者に、あるいはおこぼれにあずかる者に食われ、糧となるのが必定。
イビルジョーの死骸を私は食べた。死闘で傷付いた体を眠って癒し、腹が減れば起きて喰らって、また眠った。
(まっさかこうなるとは思わなかったけどねぇ!)
三日三晩食っちゃ寝を繰り返して4日目の朝に起きてみればこの有り様よ。なにこれ、バグってない?
角の形とかはもろに金雷公だし、傷跡の発光ギミックとか黒ずんた甲殻とかはヌシ・ジンオウガなんだけど?
金雷公×ヌシとかバグでしょ。アレか、ヌシはタツノオトシゴもどきの嵐に巻き込まれて怒りと恐怖に支配された個体って設定があるから、そこに変にハマったのかもしれん。
相手こそタツノオトシゴもどきじゃなくて爆食暴走気狂いモンスターだけど、あれに対して私は『カンナを襲おうとした事に対する強烈な殺意と怒り』を覚え、同時に『イカれた筋力とこちらを殺して食おうとする気迫に恐怖』を抱いた。
そこが見事にハマって、ヌシ個体へと変貌を遂げるフラグを立てたのかもしれん……いや無理がある! 有り得そうだと思いかけたけど無理がある!
だってそうじゃん! ヌシ化ってそんな『あ〜タツノオトシゴもどきの嵐にやられたヌシ〜。頭来るヌシ〜でもおっかないヌシ〜……よし、なら殺す』みたいなポンっと変化する代物じゃないでしょ絶対!
しかもそこに金雷公要素混じるってドユコト!? 金雷公なんて何があって通常のジンオウガが金雷公に変化するかの説明すらないんだよ!?
(やっぱりイビルジョー食ったのが悪さしてんのかなぁ……)
心当たりはイビルジョーしかない。あんな龍属性エネルギーをバカスカ攻撃に転用できる存在を食ったせいで、私の肉体も龍属性エネルギーを取り込んでエラーを起こしたのかもしれない。
イビルジョーに対する怒りと恐怖がヌシ化する条件を満たし、龍属性エネルギーで肉体が変容を遂げた。
そしてジンオウガと比べれば格上であるあの化け物を殺したことで金雷公となる資格も同時に満たし、その二つが混ざり合った姿に変化したとか?
でも龍属性が何かしらの悪さをしたのだとしたらジンオウガ亜種に変化すると思うんだけどなぁ……あっちもバリバリ龍属性使いこなすんだし、取り込んだことで変容するならヌシとか金雷公じゃなくてそっちでは?
ま、いっか!!!!
細かいことは気にしない! 私はイビルジョーに勝ってカンナを守った! そしたらなんか強くなった!
これでいいじゃん! 難しいこととか分かんないし、気にしたって頭痛くなるだけだからね!
私の体に起きた変化は大事件っちゃ大事件だけど、ぶっちゃけどうでも良い。
それよりも大問題、この世界がブルーアーカイブのストーリーにおいてどの時間帯なのかが判明した。
連邦生徒会長の失踪、これは先生がリンと言葉を交わし始めるプロローグ時点で一週間前の出来事。
つまり私、ブルーアーカイブのストーリー開始にギリッギリで気付くことが出来た。本当、カンナには感謝してもし足りないくらいだよ。
お陰で決心が付いた。カンナには悪いけど、私は森を出てアビドス自治区を目指して比較的住民が少ないルートを選んで爆走していた。
(カンナ……大丈夫かな)
心残りはある。カンナは日々の仕事の疲れを私を使って行うアニマルセラピーで癒していたから、その私が居なくなるのは相当な痛手だと思う。
日々を疲れを癒せる生活を味わってしまったのにそれが出来なくなるというのは、彼女にとって辛いと思う。
でもごめん、ホントにごめん。ジンなんて素敵なあだ名までくれたのに、立ち去らなきゃならなかった。
だって他にも推しキャラいっぱいいるんだもん!
その子たちとも会いたいしやり取りしたいしじゃれ合いたいんだもん!
うん、我ながら欲望に忠実な大変酷いものだね。でも仕方ない、推しキャラと同じ世界で生きるのなら会いたいじゃないか。
だって! 私だってヒナ吸いしたい!! イオリの足ペロペロしたい!!! ホシノ甘やかしたい!!!!
うん、我ながら酷い。こんな理由で飛び出しちゃったと思うとますますカンナに悪いよ……
彼女が怒っているとか、絶望しているとかは思わないけどね。カンナと私の付き合いは期間こそ短いものだったけど、その濃厚さはかなりのもの。
心も通っていたから、私が愛想を尽かして飛び出したんだと勘違いしたんじゃないかという不安すら無い。
彼女は私が何かをしようとしていると理解して、背中を押してくれている。根拠も何も無いのに、疑うつもりにもならない確信があった。
(見えた!)
夜、人が寝静まった時間になれば街ですらも私は利用する。建物から建物へと飛び移り、地下鉄の路線を駆け抜け、プロローグの舞台となるサンクトゥムタワーを目指してひたすらに駆けていた。
イビルジョーを捕食したことで身体能力も跳ね上がっているようだ。力が満ち満ちている。
やはり強い肉体を作るのには良い食事が欠かせない……でもあんな悪食モンスターの肉が体に良いのか?
疑問は残るが、現に奴の血肉は私にとって有益に働いている。間違ってはいないのだろう。
発電能力も飛躍的に高まっており、私に付いてきてくれた雷光虫も活発に飛び回っている。
(超帯電状態中は疲労状態にならないっていうのも有り難いね)
ジンオウガはチャージを終えて超帯電状態になると、その間は疲労状態にならない。電気刺激が筋肉に作用し、疲労を取り払ってしまう。
お陰で既に数百キロを休み無しにぶっ通しで走り切り、数階建てのビルの屋上からサンクトゥムタワーがうっすらとだが視認できるくらいの場所まで到達することが出来た。
ここからサンクトゥムタワーまではそう掛からない。1日もあれば到着自体は出来るだろう。
(間に合ってよかったぁ……)
どれだけかかるかも分からない状態で走っていたから目的地の姿を視認できた安堵は凄まじく、ビルの屋上に座り込んだ。
連邦生徒会長の失踪が発生してから私がそれを知るのに3日かかった。つまり、先生がキヴォトスに訪れるまで後4日しかない。
ここからサンクトゥムタワーまで1日かかると見て、後3日。かなりの余裕がある。
(なるべく近くにいないと、多分
カンナが部下と話していた内容が私の脳裏に焼き付いている。
『この森には今までこんなモンスター達の生息・目撃情報は無かった』
この世界にあのモガの森もどきは前から存在こそしていたけど、そこにモンハン世界のモンスターは存在していなかった。
なら何故今になって現れ始めたか。その原因は、おそらく私だ。
ジンオウガという大型モンスターの中でも上澄み寄りなモンスターが現れ、長居をしたことでその他の大型モンスターを発生させる呼び水となった。
そして大型モンスターを私が狩猟したことで新たに大型モンスターを発生させる余地が生まれてしまい、それが続いたことであの森がモンスターを発生させることに
これが私の立てた仮説。検証のしようがないため本当にそうなのかどうかは分からないけど、もし本当なら私は一定の場所に長居出来ない。
そんな私がサンクトゥムタワー近辺に長居したとなれば、なにが湧き出すか分からない。
だからなるべく早いうちにサンクトゥムタワー近辺に到着し、先生が到着するまでの間を近場でウロウロしまくることで時間を潰す。
一定の場所に長居をすることで大型モンスターが湧き始めるのであれば、転々とし続けることで大型モンスターが発生するのを回避できると考えたからだ。
その間に一般住民に目撃される恐れもあるけど、その時はそれ。生存報告としてカンナに伝わってくれるかもしれないからモーマンタイだ。
(アビドスに先回りするのもありかもだけど……あそこ砂漠だからなぁ……)
先生がアビドス高等学校に向かうのはシャーレに就任したから数日経ってからだったはず。なら私もアビドス自地区に先回りしているのも手ではある。
人口流出がどうたらという話もあったし、身を潜めるにはうってつけかもしれない。
でも、あそこには砂漠がある。モンハン世界じゃ森林と大差ない魔境だ。
そこに先生が来るまで潜伏する? 馬鹿じゃないですか?
なんかもう予感がするのよ私。セリカが誘拐されてそれを助けに行く時、絶っっっっ対にヤバいモンスターが湧く。
ディアブロスやイビルジョーがまだ可愛く思えるようなヤバいのが湧く。そんな確信がある。
何が湧くのやら……やっぱりフロンティア産のオディバトラスとかルコディオラ、辿異種ティガレックスとかも有り得る。
そんな場所に長居なんかしたらそのヤバいやつのヤバさランクが跳ね上がりかねない。最悪、怒り喰らうイビルジョーの群れとか発生したっておかしくない。
(森には居られないし……)
ギリギリまで森で粘る、という選択肢もあったがそれは真っ先に排除した。
あの森は怒り喰らうイビルジョーが湧いた以上、次に何が湧き出てくるか分からない。
それにより化け物が生まれるリスクがある土地ながらも、何だかんだで居心地が良すぎる。私にイタズラを仕掛けるくらいに慣れてくれたアプトノス達が居て、カンナも居る。
長居をすればそれだけ動きたくなくなってしまう気がした。
(まぁ、いいか♪)
サンクトゥムタワー近辺でどう立ち回るか、それを考えつつ夜の街を駆け抜けるのを楽しんでいた。
ジンオウガが近代的な街並みの中を疾走する。非現実と現実が混在する光景が、アニメや漫画を見ているかのような高揚感を私に与えてくれる。
さて、目的地は見えた。あとは時が来るまでどうにか特定の場所に長居せずに動き回って時間を稼ぐだけだ。
今から楽しみだ。この世界の先生は男だろうか、それとも女?
高身長? それとも低身長かな?
私を見たらどんな反応をしてくれるんだろう。怯えるかな? カッコイイって言ってくれるかな?
ユウカやハスミたちもこの目で直接見たい。あわよくばじゃれ付きたい。
「クルルルルル……」
溢れ出る期待感に雄叫びを上げたかったけど、こんな人口密集地でそれをすれば騒音問題になりかねない。
ぐっと我慢して、でも堪えきれない唸り声が私の口から漏れていた。