狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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プロローグ編
ブルーアーカイブ本編に乱入する雷狼竜(自制心皆無バカ)


 サンクトゥムタワー近辺は都会ばかりで身を隠す場所が無いものかと思ったけど、地下の貯水槽やら地下鉄の路線内だったりと案外身を隠せる場所があった。

 

 夜中には高層建築物の屋上を飛び回って眼下に広がる街灯りの夜空を見下ろしながら、必要に応じて廃棄食料やそれを物色するネズミで食い繋いだ。

 腹を満たしつつ、私に付いてきてくれた雷光虫たちのご飯にも回した。飢え死にさせるのは可哀想だったからね。

 

 電気刺激が誤魔化してくれるのは筋肉の疲労だけで、時間経過による空腹は防げなかった。当たり前だけどすっかりそれを失念していたよね。

 

 絵面は廃品や廃品を漁るネズミを食べているオオカミと集る虫だ。ジンオウガとしてそりゃダメだろとも思ったよ。不衛生極まりないし、何よりも絵面が酷過ぎたしさ。

 でも、これも先生や沢山の推しキャラたちと出会う為だって言い聞かせて我慢した。

 

 夜になると、寂しさで泣いた。森で眠る時は横にアプトノスがいたし、カンナもたまに一緒に寝ていた。

 誰かと寄り添って眠る楽しさと安堵感に慣れていた私は、声こそ出さなかったけど涙が止められなかったよ……お恥ずかしい。

 

「ゴルルルル……」

 

 そんなこんなで惨めな思いをしながら潜伏し続けて、ついにこの日を迎えた。

 

 見下ろす先には先生とリンが居て、ハスミたちチュートリアル組の4人が居て、スケバンとチンピラが居て、厄災の狐ことワカモも居た。

 

 凄いよ! 皆本当に生きてるよ!! ゲーム中の立ち絵がぴょこぴょこ跳ねたり画面下にフェードアウトするのとは全然違う!

 

 皆が自分の頭で考えて自分の足で動いてるよ! なにか動作をする度にこのっ、とかそこっ、とか声を出して本当に生きてるの!

 

 銃を装備している少女たちが撃ち合うという普通に考えたら異常な光景に、私は感動すら感じていた。

 嗚呼……凄い。この世界に生まれて良かったと心から思う。

 

 イビルジョーに殺されかけるとかいう強烈なトラウマを植え付けられはしたけど、それを加味してもお釣りが来るね。

 

(皆可愛いなぁ)

 

 距離が離れていることと体格差によってハスミたちは更に小さく、可愛らしく見えた。

 

 体がウズウズする。じゃれ付きたい…それはもうだらしないくらいにじゃれ付いてやりたい……!

 

「ガルルルル……ガアヴッ!!!!」

 

 『何かをしたい』という気持ちが現れると抑えが効かないのがこの体の悪いところだ。唸り声が我慢出来ず、短い鳴き声へと変化してしまう。

 

 聞こえてしまったみたいだ。チナツがビックリした表情で見上げ、私の存在に気付いて目を丸くしている。

 嗚呼……チナツも可愛いなぁ……あのツンっと尖った耳に赤メガネの似合う姿。あの子にもじゃれ付いてやりたい……

 

「〜〜〜!」

 

 ユウカはなにか叫んでるね……いや太もも太いな。

 

 多分、私の存在を生物学的に有り得ないとか言ってるんじゃないかな……いや太ももふっと。

 

 普通に考えたらこんなデカい生き物が重力だの自重だのの関係で陸上で生活しているのはおかしいからね……いや太ももふっと!

 

 ユウカにもじゃれ付きたい! あの太もも甘噛みしてやりたい! 角でツンツン突っついてやりたい!

 

「ガルル…」

 

 ハスミとスズミは私とワカモのどちらを警戒すべきか話し合っているっぽいね。そして同時に困惑もしているっぽくて、私に銃口を向けるかどうか悩んでいる。

 

 そりゃそうだよね。私みたいなバケモンに銃ぶっぱなしてキレさせたら何するかわかったもんじゃないからね……そう考えるとゴジラに喧嘩売る自衛隊スゲェな。覚悟決まってるわ。

 

 それにしても……ハスミさん? そのスカートに入れてるえっげつないスリット入ったスカートで正義実現委員会って…ちょっと英智が過ぎませんか?

 風紀委員がゲヘナの風紀を一番乱してるとか言われるけど、貴女も大概同じ穴の狢では?

 

 でも可愛いなぁ……背も大きくて美人だし! 翼も大きくていい匂いしそうだし! じゃれついたらどんな顔するんだろう!

 

 

 スズミも可愛いよね。最初から先生に対してデレッデレで事ある毎にスタングレネードをポンポンぶん投げるぶっ飛び具合とかすんごい可愛かった。可愛くて思わずスマホ投げたもん。

 制圧した相手を電柱に縛り付けて懐メロ大音量攻撃とかもイカれてて好きだったなぁ……センス押し付けおじさんって言われてたのも可哀想だけど好き。

 

 スズミはあの4人の中じゃ1番小さいイメージがある。実際の身長差はよく知らないけど、そのせいかダントツで小柄故の可愛さみたいのを感じるんだよ。

 

 嗚呼、ダメだ。抑え切れないや。カンナに出会えた時もそうだけど、私のスマホの画面の中で懸命にアオハルを生きていた彼女たちをこうして実際に見れると、感動と興奮が抑えきれない。

 

 足場にしている建物の屋上に四肢が食い込む。蓄電殻が電力を生み出し、それを蓄える帯電毛が金色の光を帯びる。

 傷跡がアツイ。全身に力がみなぎり、生み出した電力を受け取った雷光虫たちのお陰でより強大な力が迸る。

 

「ゴルルルルルル………ア”オ”ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!」

 

 嗚呼……やっちゃった。

 

 思い切り吠えちゃった。

 

 警戒されたかな。怯えられたかな。

 

 でも、しょうがないよね。

 

 ビルから飛び降り、ハスミたちとワカモの間に割って入るように降り立つ。数10mもの高さから飛び降りても、私の強靭な肉体は一切の痛み無く着地を完遂した。

 

「な、なに……この、生き物……」

 

 ユウカの困惑する声が聞こえた。怯えを含んだ震えた声。

 

 ハスミたちも私を明らかに恐怖の対象として見ている。足が震え、銃を持つ手も寒い時みたいなガタガタしていた。

 

 悪い事をしたなぁ、と思いつつも彼女たちに背を向けた。

 私と視線が交わったワカモも、少し怯んだ様子で私の視線を受け止めている。

 

「ひ、ひいぃぃぃ!?」

「なっ、なんだコイツ! 私っ、悪夢でも見てっ!?」

 

 チンピラとスケバンたちも腰を抜かしている。アレだ、ラージャンの拘束攻撃食らった後の移動できるダウン状態みたいな、あんな感じ。

 

 こうして改めて見ると…この子たちも可愛いんだよなぁ……嗚呼、じゃれ付きたい。

 

 でも、今はそれを我慢。じゃれつく相手は私を受け入れてくれる人、私を怖がらない人って決めてるんだ。怖がられちゃうと嫌だし。

 

 私がやるべきことは先生をシャーレオフィスへ無事に送り届けること。ハスミたちにかすり傷も負わせる事無く、ね。

 その為にもワカモたちには一旦武器を下げてもらおう。暴力を振るって構えられなくするとかじゃない、ちょっとした脅しでね。

 

「グルッ…ガァウ……ガアァァァウッ!」

 

 唸りながら上体を起こして、振り上げた左前脚を地面に叩き付ける。道路を舗装しているアスファルトが捲れ、四方八方に亀裂を走らせていく。

 

 同時に私を中心として雷の柱を生み出し、空へと向けて立ち登らせる。金雷公と同じ金色の雷に、一同の視線が釘付けになるを感じた。

 

 ミカが壁をぶち破るくらいで怖ってなる世界だ、アスファルトを殴り割って雷の柱を出せるとなればその恐ろしさは彼女に並ぶだろう。

 ……いや待て、突然変異起こしているジンオウガと同等の恐ろしさを出せるってやっぱりあの子おかしくない? 脈絡なく隕石落としてくるのも込みでおかしくない?

 

「グルルォォォンッ!」

 

 力の一端を見せ付け、〆の威嚇。

 

 効果はてきめんでスケバンとチンピラは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。なんだろう、松明でぶん殴られて逃げていくジャギィっぽさを感じた。

 

 それに対して、ワカモはまだ逃げない。災厄の狐なんて格好いいけど可愛い女の子にはちょっと似合わないあだ名を付けられる所以、それが少し体感できたと思う。

 なら、もうちょっとひと押ししてみようかな。

 

 電気を扱えるモンスターはジンオウガだけじゃない。ライゼクスとかトリドクレスとかフルフルとかギギネブラ亜種とか、割と沢山いる。

 その中でも私が好きなモンスター、ラギアクルスの技を私は参考にして新たな技を生み出した。

 

 イビルジョーを食べる以前の私は電気を放出するくらいしか出来なかった。今見せた雷の柱もそう、ただ放出しただけ。

 それを潜伏期間中にアレコレ試したことで、ある程度形や性質を変えられるようになった。吐いた息の形を変える、みたいな芸当だね。

 

 無数の雷の玉を生み出す。一つ一つは元ネタのラギアクルスのものと比べれば明らかに小柄。

 1口大の団子くらいの大きさで、それを私の背中の上で円状に並べて回転。

 回転速度を高め、そのまま幾つかを水平に飛散させた。周囲の建築物に雷の玉は直撃、倒壊してくる瓦礫を残りの雷玉で撃ち抜いて破壊する。

 

「っ……今の私であなたを相手取るのは難しいですね」

 

 こんな芸当が出来る私を相手取るつもりか、そんな脅しを仕掛けた。ワカモも好きなキャラクターだけど、今はこうするしかない。

 心が痛いけど脅させてもらって、ようやくワカモも撤退する気になってくれたらしい。本気の彼女と戦ったどうなるんだろう…そう思うと、ちょっとワクワクする。

 

 人間だった頃の私はこんな好戦的じゃなかった。ゲームをしている時は明らかに勝てない相手にちょっかい出して喧嘩売ったりはしたけど、それはあくまでゲームだから。

 やっぱり戦闘の気配がチラつくと、ジンオウガとしての精神が表に出やすい……のかな?

 

 ともかく、これで望まない戦闘は回避出来た。なら、次は()()()()()()()()()()()()()()()()の開始だ。

 ワカモが撤退を始めるのを見送ると、彼女に背を向けてハスミたちへと振り返る。

 

「先生…なんか、あの化け物こっちを見てますよ?」

 

 ユウカが引き攣った表情で背後に控える先生を見る。

 

 私も先生を見た。私がゲームを遊んでいる時は私の分身として存在した『第2の私』では無く、この世界に生きる1人の『人間』としての先生。

 

「そう、だね……」

 

 アニメ版だと男だったけど、まさか女性の先生が出てくるとはね。そして胸でっか。太ももふっと。

 こりゃあ……ヒナちゃんあたりがズブズブに甘えそうな抱擁感あるタイプの先生だなぁ………ちょっとジェラった。

 

「ワカモが撤退する時間を稼ぐつもりでしょうか」

 

 ああ、このタイミングでこの行動はそんな誤解を抱かれても仕方ないか。

 

 頭を左右に振って否定、それを見たスズミが「言葉が通じた!?」と目を丸くして驚いていた。

 ハスミが「有り得ないわ」と切り捨ててきたから、それに対しては不服の意を込めた唸り声を返す。

 

 私は今後、先生にくっ付いて行くつもりだ。そうなると自ずと先生が手を貸す面々と反目する集団と敵対することになる。

 時系列順に行けばカタカタヘルメット団とかカイザーの所の奴らとか、柴関を吹っ飛ばした便利屋68とか風紀委員会あたり。

 

 そこに対人戦未経験で挑もうものなら、冗談抜きで殺しかねない。いくら頑丈なキヴォトス人でも私の怪力には耐えられまい。

 だから、少しでも練習が要る。私の後方にあるサンクトゥムタワーを目指さなければならない、つまり撤退の選択肢が無い先生はその練習の絶好の相手だ。

 

「ガヴルルルル……グガガウッ!」

 

 あまり時間をかけるとワカモが暴れる前に先生がサンクトゥムタワーに到着できなくて、彼女を止められず破壊されてゲームオーバー。

 

 時間は使えても5分が良いところかな。

 身勝手だと思うけど、ちょっとジェラシー感じさせられた罰だとでも思ってよ先生。

 

 アスファルトを踏み締めて砕き、身を低くしながら唸り声を上げて私は見せかけだけの敵意を示した。

 

 さぁ、いっちょ練習試合と行きましょうか!

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