狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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アビドス対策委員会編
雷狼竜 in アビドス


 いやぁ〜………あっつい。アビドス近郊に差し掛かった途端になんか気温が心做しか上がった気がする。

 

「いやぁ〜…熱いね」

 

 いや、そんなのんびり言うことじゃないんですよ先生。貴女こんな場所に食べ物も飲み物もろくに準備しないで乗り込もうとしてたんですよ? 分かってます?

 

 作中でも先生がある程度さ迷ってからシロコに拾われるって展開だったから一旦引き止めて、アビドス攻略用装備をあれこれ整えさせたんだからね?

 

 保冷バッグを2つ、その中に詰められるだけの食料と飲料を詰め込んで保冷剤と氷をバンバンぶち込んだのを持たせている。

 なんかゲーム本編では語られなかったけどシャーレ就任に際して前金として結構な額を貰っていたらしいから、それを惜しみなく使わせた。最初は惜しまれたけど脅した。

 

「ガルっ」

 

 作中ではシロコに拾われたことで事なきを得たけど、私が関わると決めた以上は死亡の恐れがある行為は極力させない。知り合いが死にかけるとか気分悪いし精神衛生上よろしくない。

 

「…あはは、ゴメンね?」

 

 何言ってんだあんた、と問い詰める意の唸り声を上げると、私が少し不快がっているのを察してくれたらしい。

 私の背中の上で日傘を指すことで熱中症を予防しペットボトルの中の水を飲んだ後に、先生は謝ってくれた。うむ、分かればよろしい。

 

 飲食物の他、私が先生を運搬できるよう特注の大型鞍も作ってもらった。ライズだと普通に操竜だっつって飛び乗ってるけど発電能力ある生物に生身で乗っかるっておかしいよね? いくら人型モンスターのハンターとはいえ無理があるよね?

 というかなんで乗っかられて糸で無理やり操られてるのに放電とか氷結とか、干渉されない能力で抵抗しないんだ? いや、ゲームだからって言われちゃそれまでなんだけどさ……

 

 兎も角、先生は普通の人間だから生身で私に騎乗なんてしたら間違いなく感電死する。だから私に接する面には絶縁材を用いている特別な鞍が必要だった。イメージはArkのサドルっぽいやつだね。

 これのおかげで電車なんかよりもずっと早く先生を運べる。ウィンドスクリーンやバッグ類をはめてベルトで固定できる部位もある、もちろん先生本人の落下を防ぐベルトも標準装備だ。

 

 私としてもシャーレオフィスからアビドス高等学校なんて長距離を運ぶのだから、身体的疲労と無縁である超帯電状態を維持できるこの鞍はとても助かっている。

 

「ゴルルル」

 

 それにしてもあっついな……こりゃあ先生を一人でなんか行かせらんないや。

 

 だって、アニメ版でシロコに拾われた時の姿勢酷いよ? もしあれをこの先生がやったら絶対に拉致されるよ?

 治安レベルがグラセフレベルのキヴォトスなんだから先生みたいな美人、いつ拉致されるか分かったもんじゃない。空腹で動けないなんて格好の餌食になる。

 

 それに危険なのはグラセフ治安な所だけじゃない。小型モンスターも同様、というか同等以上に危険だ。

 ジャギィとかゲネポスみたいな肉食性の奴なんか以ての外だし、アプケロスとかリノプロスみたいなハンターに攻撃してくるタイプの草食性モンスターも先生にとっては脅威だ。どつかれただけでも下手すりゃ死にかねない。

 

大型モンスター? HAHAHA☆ 論外

 

「それにしてもジンの背中は快適だね……ありがとう、私の事運んでくれて」

 

 お礼をされてもむず痒いだけ。

 むしろ財布に大打撃を与えてしまった分申し訳なくすらあるし、私の意図を汲み取って飲食物を大量に買ってくれたことに感謝すらしている。

 

 だからせめてものお礼として、こうしてゆっくり歩く時間を設けている。シャーレに就任した先生がキヴォトスの地を知り、これから生きていく世界がどんなものか知ってもらいたいからね。

 あと、酔い防止も兼ねている。本気で走り続けると先生が酔いかねないからね、30分おきにダッシュと徒歩を切り替えている。

 

「がうっ!」

 

 むず痒いとはいえ無視はいけない。返事をし、体を左右に揺すって反応を示す。

 

 見上げると先生は笑っていた。声も出さず、クスクスって。

 笑ってくれるなら何よりだ。言葉は交わせなくても、笑ってくれるならそれに越したことはない。

 

 さて、そろそろ歩き始めて30分は経つだろう。時刻はまだ午前の7時。余裕はあるが、30分おきに切り替えているのを止めると慣れてきたであろう先生の体に何かしら影響があってもおかしくない。

 

 走り出すことを知らせるために立ち止まり、合図である後ろ足での地団駄をする。先生も体を固定するベルトを締め直し、ウィンドスクリーンの手前に取り付けてある握り棒を掴んだ。

 コンコン、と準備完了を知らせるウィンドスクリーンをノックする音が聞こえた。

 

 それじゃ走り出そうか、そう思った私の双眸が遠方からこちらに向けて迫ってくる物陰を捉え、走り出すのを止めさせた。

 

「ジン? どうしたの?」

 

 先生が不思議そうに声をかけてきた。彼女に視線を向けて、直ぐに正面を向く。

 前を見ろ、という意味合いの仕草に先生も望遠鏡を取り出して前を見る。ハッと息を飲む、そんな音が聞こえた。

 

「人が追われている! 相手は……なんかガンダムのアンテナみたいなトサカを生やしたでっかいラプトルみたいな!」

 

 ドスゲネポスじゃねぇか!

 

「そいつの後ろにはなんかちっちゃいバージョンみたいなのがいっぱいいるよ!」

 

 取り巻きのゲネポスもいるじゃねぇか!

 

「追われてる子は白髪のケモ耳娘!」

 

 メインヒロイン(砂狼シロコ)じゃねぇか!

 

 なんだよいきなり小型モンスター大型モンスター揃っておでましかよ!

 

 しかもなんでシロコが追っかけられてんの!? まさか出会って早々に銃ぶっぱなしたとかじゃないよね!?

 いや、アイツら目が合えば勝手に襲いかかってくるからシロコが何かちょっかいかける前に向こう側から突っかかってきた可能性もあるけどさ……あの子公式で戦闘狂の節があるって言われてるからなぁ……

 

 なんなら『ん、あれは恐竜。捕まえればお金になるかも』とかやっててもおかしくない。資金難のアビドス高等学校ならやりかねん。

 

 いずれにせよ、だ。あれをそのままってわけには行かない。

 ブルアカの可愛い生徒たちがモンハンのモンスターに食われました、なんて想像するだけで頭の血管がブチ切れそうになる。

 

「ジン! 助けにいこう!」

 

ガルルガァヴ(言われるまでもねぇ)ッ!」

 

 先生の指示に答え、全力で駆け出す。悪いけど揺れなんか気にしていられない、一刻も早くシロコを助ける為になりふり構わず四肢を動かす。

 

 私の速力ならドスゲネポス一味がシロコに到達するより先に私が彼女と接触できる。

 でも何があるか分からない。念の為、圧をかけておこう。

 

 走りながら息を吸い込む。大きく身を反らせ、先生への『吠えるぞ』という意思表示も兼ねて。

 

「ヴオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!」

 

 自分でもびっくりするくらいの大咆哮が放たれた。空間が震えるほどの咆哮に自転車で逃走しつつ後方に弾丸をばらまいていたシロコが驚いて立ち止まる。

 

 ドスゲネポス一味も私の咆哮に怯み、追跡の足を止めていた。これを好機と、私は疾走する勢いのままに跳ねた。

 人間の走り幅跳びの世界記録をあっさりと超える跳躍でシロコを飛び越え、そのままゲネポスの群れへ飛び込む。

 

 左前脚を振り上げ、地面に叩き込む。力任せに体を旋回させて地面を抉り取りながら周囲のゲネポス共を切断。

 一気に10数匹の仲間を殺されて更に怯んだ所を、体の旋回につられて振り回された尾で薙ぎ払う。

 

 オマケにもう一回転、その勢いで飛び下がってドスゲネポス一味とシロコの間に着地する。

 

「君! 怪我は無い!?」

 

「う、うん…大丈夫。だけどあれって」

 

「詳しい話は後! 乗って!」

 

 乗って!? ちょいちょいちょいちょい先生!? その鞍は一人乗り想定ですよ!? シロコが乗る余地無いでしょ!?

 

 私の心の中でのツッコミも虚しく、前金を使う事に躊躇いをなくした先生が『何かに使えるかも』とかいうフワッフワな理由で買ってきたロープを下ろしてしまう。

 シロコも流されるがままにロープを登り、私の鞍に乗り込んでしまった。あ〜あ…どーすんのよ。

 

「ごめんジン!! でもあのままにしておくのは!」

 

「あ”ゔ!」

 

 あーもうそんな声で謝らんでよ、別に怒っちゃないからさぁ。

 

 ほら貴女が謝るから当事者のシロコも申し訳なさそうな顔しちゃったじゃんかぁ〜……

 

 生徒の為ならって動くのは先生の良いところだからさ、そこにとやかく言うつもりは無い。

 私だって先生と同じ立場ならそうしていたと思うしね。

 

「ハァ……ゴルルルルルルルルル……」

 

 さぁて、現実を見ますかねぇ。

 

 目の前にたむろしているドスゲネポス一味を睨み付け、威嚇の唸り声を放つ。

 

 私を前にして怯んではいるけど、同時に何処かソワソワしているようにも殺気立っているようにも見える。

 やはり、シロコが何かちょっかいを掛けて苛立たせたのか? でもそれにしては何か妙だ。

 

 見れば、チラホラと傷を負っている個体もいる。シロコが与えられる傷、銃創の類じゃない。

 バカでかい鉤爪で切り付けられた、そんな感じの傷跡だ。こりゃあ、背後に何かいるな。

 

(最速で片付けないと、まずいね)

 

 一体一体は大したことがない序盤の大型モンスターとその取り巻きだが、背後に控える何かの存在を踏まえれば油断は出来ない。

 

 不要な傷を負わず、最速で片付ける。

 超帯電状態の私は更に上の段階、真帯電状態へと至るためにチャージを始めながらドスゲネポス一味に飛び掛って行った。

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