狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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モンハン×ブルアカ……てこと?

 さて、一晩経ちました。昨日の夜は満月があまりにも綺麗だったから一晩中月に向けて吠え続けてました。喉痛い。

 

 空が明るくなってきた頃に眠気が来て私はエントランスホールに撤退、ゴロンと横になってそのまま爆睡こきました。

 中身は元人間だけど肉体は野生に生きるジンオウガ、ある程度の広ささえあれば問題無くぐっすり眠る事が出来た。

 

「………」

 

 午前中を完全に寝潰してお昼を少し回った頃。

 軽く廃墟内を駆け回ってウォーミングアップを終えた私はエントランスホールの中央に佇み、前腕を覆う蓄電殻を舐めて綺麗にしていた。

 

 モンハンはゲームとして面白いのは勿論、モンスター一体一体に詳しい生態が設定されていて単純にそれを読むだけでも面白いから読みまくった。

 超帯電状態に移行するのには蓄電殻による発電だけでは足りない。作り出した静電気を帯電毛に溜めて、それを雷光虫に分け与えて超電雷光虫に変化させてから力を借りている。

 

 つまるところ、ジンオウガがフルスペックを発揮するのは雷狼竜に留まるのなら雷光虫の存在が必要不可欠って訳だ。

 

「……ガゥ(どうしよ)

 

 蓄電殻の手入れを終えて、ため息を吐く。

 

 困ったことが1つ。ここ、雷光虫が居ない。

 まぁそりゃそうだよね。廃墟だもん。虫が生息するのには環境が向いてないから居るはずがない。

 

 というかここ、本当にモンスターハンターの世界なの?

 カルテとか廃病院とか完全に現代風な代物だしモンハンの世界とはかけ離れているように思うんだけど?

 

 分からないことだらけで頭が痛くなる。思考を放棄したくなるけどそれだと何も解決しないし、現実を見るしかない。

 

(雷光虫が存在しない環境下でジンオウガとして生きる、かぁ)

 

 廃墟の外には森林が広がっている。そこになら雷光虫が生息しているかもしれないけど、まだあの森林に何が生息しているのか分からないせいで迂闊に足を踏み込めない。

 

 この世界がモンスターハンターの世界であった場合、森林に生息するモンスターはやばいのばっかりだ。

 

 生態系崩壊させる緑のゴーヤ

 

 豪鬼作るつもりがサイヤ人になっちゃったゴリラ

 

 ソイツらに喧嘩売る気狂い狼鳥

 

 装備がエチチだし見た目も良いしで人気な忍者猫

 

 全身トゲトゲ麻痺毒棘竜

 

 ヘタレウスにクソクシャ

 

 ロケット生肉

 

ガアウアウ(ろくなのいねぇ)!?」

 

 思わず叫んだ。本当にろくなのがいない。

 

 いや、ヤバいやつ以外もいるのよ?

 ドスジャグラスとかクルルヤックとかプケプケとかドスジャギィとか……初心者でも勝てるように弱めに設定されているってのもあるけど、どうにかなりそうなのも結構多く居る。

 

 でもそれが霞んでしまうほどにヤバいのがひしめいている。わたしの知識だけでもこれだけのモンスターが居るのだ。

 それが未知の世界ともなればもっとヤバいのがいるかもしれない。

 

 そんな森林に無謀に飛び込んでいけますか?

 生息しているかも分からない雷光虫を探しに行けますか?

 

 無理ですよね。行けません。

 それに仮にリスクを踏まえた上で何処ぞの知○単よろしく突撃をかまして運良く雷光虫とエンカウント出来たとしても、この廃墟に連れて帰って来た個体が生きられるとは思えない。

 

(死んでいる野生生物もいないしなぁ……)

 

 廃墟は野生生物のねぐらになる、と聞いた事がある。野良猫やらタヌキやらが住み着いてどうのこうの……だったかな。

 

 疲れ知らずな快走を見せたこの肉体も半日経てば空腹を訴え出し、ウォーミングアップ以外で無意味に体力を消耗しないように大人しく寝てたって訳。

 何か食べられそうなものがないかと探し回ったりもしたがこの病院、廃墟化してかなり時間が経過している。

 

 売店だったと思われる場所は当たり前ながらもぬけの殻。

 入院患者用の食事を作る場所も埃だらけで未開封のまま腐った食べ物すら無い。

 元人間としては抵抗はあるものの生きる上では仕方なく食物の候補に台頭した野生生物の死骸もないと来た。

 

 そんな状況下で私よりも体が小さい雷光虫が生きられるとは思えない。

 

グルル(う〜ん)……ガァウ()ウガウァ(行くかぁ)……」

 

 全く情報がない森林に飛び込むのはリスクがあるけど、ここでじっとしていても飢え死にするだけ。

 

 ジンオウガになったのに死因が飢え死に。これではあまりに格好悪い。

 ジンオウガとして生まれたのなら、無双の狩人の2つ名に相応しい生き様をしよう。リスクを踏まえ、死の危険性を身近に感じながら生きる気高い狼のように。

 

「………ガウッ!」

 

 廃墟の正面入口を睨む。

 

 廃墟に面白半分で人が入り込んでくるのを防ぐ為なのか木の板で塞がれている入口に向けて、一切の躊躇い無しに突進して体当たりを仕掛ける。

 ジンオウガの体当たりをただの木の板が耐えられる訳もなくて、バリバリっと小気味良い音を立てながら砕け散った。

 

 封鎖されていた廃墟内では感じられなかった草花の優しい香りが駆け抜ける。さわさわ、かしゃかしゃと風に揺れて擦れ合う音が周囲を包む。

 未知の森林は恐ろしいながらも、優しい香りと音で私を迎え入れてくれた。

 

「……」

 

 少し拍子抜けというか、身構えていた割に穏やかな様相を呈されて若干の困惑はあった。

 

 警戒しつつ歩を進めて、森林の奥へ奥へと潜って行く。

 背の高い草を鼻先で掻き分け、お目当ての雷光虫と腹を満たす為の小動物を探す。

 

 絶対に、足を鼻先より前に出すことはしない。進行ルート上の草に雷光虫が紛れ込んでいる可能性もあるからね。

 

(なんだろう……懐かしいな……)

 

 こうして草をかき分けて雷光虫を探していると、福島の片田舎に住んでいたおばあちゃん家で虫探しをしていた幼少期を思い出す。

 女の子なのに人形遊びよりも虫探しやら木登りやら、男の子と混じって遊ぶことが多かった。

 

 昔の私じゃ想像出来なかっただろうね。後々にどハマりするゲームの大好きなモンスターに転生しちゃうなんて。

 

「……グルルル」

 

 雷光虫を探しつつ、唸り声を上げて周囲への威嚇も怠らない。無双の狩人が威嚇しているともなれば、余程の頭ゴーヤやら頭ゴリラでもない限り突っかかっては来ないだろう。

 

 そうやって森林の中を歩き回って1時間とちょっと。

 雷光虫も小動物も現れない。視界に飛び込んでくるのは草と花と木ばっかり。

 

「あぐぅ……」

 

 空腹に変な声が漏れた。

 もういっその事、この草花とか食べてみようかな。詳しくは知らないけど犬だってキャベツとか食べられるんだし、ジンオウガなら草花くらい消化出来るでしょ……多分。

 

 でも絵面がなぁ………食べるものに困って草花をもっちゃもっちゃ食べるジンオウガ…可愛いけどなんか哀れだ。

 

 というか食べ物は最悪草花を食べてどうにかするとして、雷光虫がいないのはどうしたものか。

 ゲーム中だと植物が豊かなエリアならそこかしこに居た雷光虫がこの森林にはまるで居ない。

 

(私の知識は通じない、と見た方が良さそうかな)

 

 やはりこの世界、モンスターハンターの世界じゃないのかもしれない。

 雷光虫みたいなアイテムとして扱われる生き物はもちろん、ジャグラスみたいな小型モンスターも環境生物もいない。

 森林を1時間ちょっと散策してコレだ、たまたま会わなかったというよりも存在していないと考えた方が納得出来る。

 

 雷光虫なしでの立ち回り、生き延び方を考えないといけないみたいだ。さて……どうしようか。

 ジンオウガは雷光虫との共生によってより力を発揮するモンスターだ、共生相手がいないとなればその分の弱体化は否めない。

 

グゥン(うぅん)?」

 

 どうしたものかと首を捻っていると、背後の木々の間からこちらに近寄ってくる気配を感じた。

 

 多い。10数体の群れで移動し、私の方に向かって来ている。

 ガジャブーやチャチャブーといった奇面族の探索部隊だろうか……だとすればマズイ。

 

 アイツら毒投げナイフやら麻痺投げナイフをこれでもかとぶん投げ、壺爆弾バカスカ投げつけて大型モンスターを動けなくするようなゴリッゴリの戦闘民族だ。

 今の私では数の暴力でボッコボコに叩きのめされる気がする。

 

「……ガゥ」

 

 周囲を見回し、1番背が高く幹が太い木の上に飛び乗った。

 ジンオウガは色味的にも自然に溶け込みやすい。息を殺してじっとしていればバレにくさは格段に上がるだろう。

 

 木の幹に鉤爪を突き立て、体を固定。

 大勢の気配が近寄って来るのを息を殺して待ち構える。

 

 やがて、私が踏み締めた事で倒れていた草花の様子に不安感を抱いているのを感じさせる挙動不審な人間達が数名現れた。

 ハンターにしては若い。背中には大剣やランスみたいなThe・モンハンって感じの武器ではなくて近代的な銃器を背負っている。

 

(あれって……もしかして…)

 

 まさか近代的銃器を携行した人達と出くわすとは思わず驚かされたけど、それよりも私を驚かせた要素があった。

 

 その人間達、警察っぽい制服を着こなして頭の上に輪っかを浮かべている。円形の蛍光灯とは違って天使の輪っかみたいな光臨が、支柱もなしに浮いている。

 

 銃器の携行、警察っぽい制服、そして頭上の輪っか。

 間違いない、彼女達はブルーアーカイブに出てくるモブ生徒達だ。

 

(つまりこの世界、ブルーアーカイブの世界ってこと!? え!? 私ジンオウガに転生してブルアカ世界に迷い込んだってこと!?)

 

 まさかの事態に頭の中は大パニック。

 

 動くまいと決めていたのにまさかの事態で肉体も変に動いてしまい、バランスを崩して私は木から落下してしまった。

 

 怯えている様子の可愛い女の子達の目の前に。

 

 

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