狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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ジンオウガらしさブレイク


雷狼竜式 トラブル脱出方法

 ジンオウガに転生していながらブルーアーカイブの世界に迷い込んだという衝撃的過ぎる現実に木から落っこちたけど、着地をミスってはジンオウガの見た目的にもよろしくない。

 

 落下の途中で身を捻り難なく着地。ネコが着地する時を真似してみたけどなんか上手く出来たわ。オオカミなのに。

 

「グルルルル……」

 

 大柄な体格をしている分体重も相当に重いはずだが、着地はストンっと静かだった。

 ゲーム中でも飛びかかり攻撃の時とか、思い切りジャンプして飛びかかって来ているのに着地は静かだし。

 そんなこんなで落下ダメージの回避に成功した私は、こちらに銃口を向けてガタガタと震えている少女たちに威嚇の唸り声を投げ掛けていた。

 

「な、なに……この生き物?」

「分かるわけないじゃん! あんなバケモノ!」

「オオカミの突然変異種…とか?」

 

 おい、バケモノとはなんだバケモノとは。せめてモンスターと言わんか。

 いきなり発砲されても回避が出来るように、少女たちが形成する包囲陣の中をグルグルと回りながら思考を巡らせる。

 

 この世界がブルーアーカイブの世界だということは私を取り囲んでいる少女たちのお陰で理解出来た。

 そうなると次の疑問、彼女たちはどこの学校の生徒なのか。

 

 ブルーアーカイブの舞台、キヴォトスは何千もの学校がひしめき合う土地だ。

 そんな土地柄のせいでプレイヤーの分身である『先生』がストーリー内で関わる生徒たちが所属する名前が判明している学校から、関わる生徒がおらず名前すら分からないまま設定上存在しているだけの学校まで扱いにはかなりの差がある。

 

(警察っぽい制服の学校……)

 

 どこの学校の生徒なのか推察する時、制服がヒントになる。何処の学校に所属しているかの目印になってくれるからね。

 

 少女たちの制服は警察っぽい雰囲気がある。つまりは警察的な要素がある学校……おい、待て。つまりアレか?

 

 彼女たち、ヴァルキューレ警察学校の生徒か!? 私の推しキャラの1人である尾刃カンナと同じ学校の生徒ってことか!?

 

「アオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!」

 

 嬉しさのあまり吠えた。ガッツポーズが出来ないからその代わりだね。

 月に向けて雄叫びを上げた時みたいに座り込んで、両前足をピンと伸ばして体を反り返らせながら高らかに吠えた。

 

 いやぁ、カンナちゃんに会えるかもと思うとテンション上がるでしょ。あんな性癖詰め込みセットな女の子……出会ったら押し倒す自信しかない。

 

「み、みんな構えて!」

「襲ってくるかもしれない!」

 

「……ガウ(あれ)?」

 

 おかしい。嬉しさ爆発で舞い上がっていたから気付くのが遅れたけど、なんかやけに警戒されている。

 いや、確かにデカくて角生えたムキムキの碧色オオカミが目の前にいたら『警戒する』ってのは、分かる。すげー良く分かる。

 肉食獣であるオオカミからすれば人間も餌の一種に過ぎないし、それを人間も理解しとるかんな……

 

 でも、私こんな馬鹿面だぞ? アニメとかマンガとかに出てくる頭すっからかーんなおバカキャラみたいな目をしてるんだよ?  

 〇の中央に.をはめたみたいな威圧感のいの字もないような目ん玉した馬鹿面オオカミにそこまで警戒する?

 

「で、でも……なんか、バカっぽい顔してません? そんな警戒する必要あります?」

「あのモンスターも困惑している風ですよ?」

 

 うんうん、話が分かりそうな子もいるようで少し安心。

 

「油断するな。野生動物は狡猾で強か……私たちを油断させる為に敢えてあんな馬鹿面になった生き物かもしれないだろ」

「困惑している風を装えるだけの高度な知能を持つ生物…そう考えるのが妥当な所だ」

 

 だぁめだあぁぁぁぁぁ……思っきし警戒されとるぅ…

 

 あれか、嬉しさのあまり吠えたのがアカンかったか。

 よくよく考えればそりゃそうよな。目の前に降りてきた推定20m超の大型オオカミが前触れなしに吠えるとか、人間からすれば普通は恐怖でしかないわな。

 

 ど、どどどっ、どうしよう……発砲されたらそれなりに反撃するつもりではいるけど、避けられるならヴァルキューレ警察学校に属する生徒とは揉めたくない。

 揉めたらカンナちゃんに会えるチャンス無くなるじゃん。それに今の私が反撃したら肉体が頑丈なキヴォトス人でも死にかねない。

 

 とにかく、敵意がないことを示さなくては。アレか、犬っころの真似すればワンチャン行けるか?

 

「……体を、伏せた?」

 

 前腕も折り曲げて頭の位置を低くする。犬に押し込む芸のひとつ、伏せをジンオウガがやっている。

 犬のご先祖さまであるオオカミの名を持つジンオウガなら違和感なく伏せが出来た。体も辛くないし、この姿勢ではいきなり飛びかかる奇襲攻撃も難しかろう。

 

 同時に尻尾を左右に思い切り振る。『ご主人!構え!』とアピールする甘えん坊の犬みたいにブンブン振り回し、地面に顎を付けている状態で見上げる上目遣い攻撃も同時に放つ。

 

 どうだ! 敵意がないと示す3点セットだ! 怖くなかろう!

 

「…これ、甘えてますよね?」

「なんか……可愛くないですか?」

 

「確かに……って、いやいやいやいや! 騙されるなお前ら! 私たちが警戒しているのを感じ取って騙そうとしているに違いない!」

 

「でもあんなに深く伏せてたら襲いかかれないと思うんですけど……」

 

 なんか仲間割れ起こったわ。私への注意が薄れたのは良いけど、この世界で仲間割れはちょっとまずい。

 

 ここはブルーアーカイブの世界。透き通る世界観の下、頭グラセフな連中が生きている世界だ。

 前世では揉めた際に殴る蹴るといった暴行が行われていたが、肉体が頑丈なキヴォトス人は平然と銃をぶっぱなす倫理観世紀末。

 

 目の前で大好きな生徒と同じ学校に所属する生徒たちが仲間割れを起こして撃ち合うとか、見たくない。

 そうなれば……見せてやろう。ジンオウガが幾多ものハンターをその技の威力・見た目で悩殺して見せた究極のデレ行動って奴を!

 

「アオンッ!」

 

「ほら見てください! ひっくり返ってお腹見せてますよ!」

 

 背面ボディープレスの後のひっくり返った姿を完璧に再現した。

 手足を軽く曲げて、生徒たちをチラッと見る。ゲームでも『あいつ潰せたかなぁ?』と確認するように顔を傾ける仕草がもうなまら可愛かった。

 

 これを見せ付けられても、私を警戒していられるかなぁ? んんん〜〜??

 

「だっ、騙されるな……利口な奴だ、あれも私たちを騙す為の」

 

「がうっ!」

 

「無理だ! 我慢出来ない!」

「隊長!?」

 

 なんかまだ隊長格の生徒が警戒していたから、気持ち高めな声色で軽く鳴いてみた。

 

 するとそれがトドメの一撃になったらしい。まさかの隊長格が銃をぶん投げていの一番に駆け寄ってきた。

 よく見ると目の下にクマが出来ている。動くのには書類関連で手間がかかるーとかカンナちゃんもゲーム中で言ってたし、実際に動く時以外でも色々心労溜まってるんだろうなぁ……

 

「いてっ! なんだ!? 静電気か!?」

 

 首筋に生えている帯電毛を触ろうとしちゃったみたいで、隊長格の生徒が声を上げた。

 しまった、犬に徹しすぎてジンオウガであることを失念していた。雷狼竜として不覚。

 

 ゴロンっと体を捻って起き上がると手を振って痛みを誤魔化している隊長格の生徒に顔を寄せた。

 食われる、とでも思わせてしまったのだろうか。キュッと目を瞑っている所に、角の側面を軽く押し当ててみた。

 

「へ? く、食わない…のか?」

 

 やっぱり食われると思っていたらしい。失敬な、人間なんて食うわけないじゃん。私も元人間、共食いをする種族じゃないんだから人間食うのには抵抗があるよ。

 

 頷いてみせると、警戒の色が目に見えて無くなった。これならもう身構えられる必要も無さそうだ。

 他の生徒たちも武器を置いて近寄ってくる。隊長を救おうとしているのか、私に敵意を抱かせないよう注意している…そんな感じの足取り。

 

「アウッ♪」

 

 そんなことをせずとも殺しも食いもしないのだが……まぁ仕方ない。デカイのは怖い、これは世の常だからね。

 

 腰を下ろして右前脚を軽く上げ、何も無い場所に向けてお手をしながら軽く鳴く。

 舌も出して『甘えてます』感を全力アピール。ジンオウガらしさなんか見た目以外無くなっちゃったけど双方怪我なく乗り切る為だ、致し方あるまい。

 

 それに、転生して初めて誰かに出逢えたのが嬉しかった。

 無双の狩人、そんな呼ばれ方をする存在に生まれ変わったとしても心はまだ人間なわけで孤独は辛い。

 

「ス、すごい……見てよ、前足のこの甲殻」

「カチカチだし…なんかビリビリする。発電してるかな?」

 

「多分だが白い毛の部分が帯電しやすい性質を持つんだろう。甲殻で発電、体毛がそれを蓄電……極めて合理的だ」

 

「隊長……べろべろ舐められながら腕組みしてドヤ顔解説されても面白いだけです」

「ウケ狙いじゃない分余計にタチ悪いから辞めてください。あと変わってください」

 

「嫌」

 

 すっかり警戒心を取り払ってくれた生徒たちは私の体を撫で回し、べろべろ舐め回すことを容認し、年頃の女の子らしくワイワイきゃーきゃーと騒ぎ始めた。

 

 食べ物はなし。雷光虫もなし。

 当初のお目当てのものは何一つとして手に入らなかったけど、それ以上とも言えそうな人達に出会えた。

 

 勇気を出して廃墟を出て良かったと、心の底から思った。空腹を堪える為にも体を伏せ、楽な姿勢を取る事にした。

 

 生徒たちのじゃれ合う姿にほっこりしていた私の耳が、やけに不規則な間隔でこちらに迫る足音を拾うまでは。

 

 

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