狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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舐められ担当と言えばこの人!

 本能が行動に直結している連中ばっかりな世紀末学園ことゲヘナ学園には、好き勝手を許さないよう取り締まる役割である風紀委員会が存在する。

 

 ゲヘナ最強、強いてはキヴォトス最強とも呼ばれる風紀委員長 空崎ヒナ

 

 そのヒナの腹心、天雨アコ

 

 風紀委員会の切り込み隊長、銀鏡イオリ

 

 混沌極まるゲヘナ学園において秩序を重んじるというかなりイレギュラーである火宮チナツ

 

 この4名を主軸とする風紀委員会はヒナ不在のうちに、アコの独断によってゲヘナ学園の問題児である陸八魔アル率いる非公認部活である便利屋68の捕縛を掲げてアビドス自治区近郊へと進行していた。

 

 ちょっとした勘違いから柴関ラーメンが爆破され、それに気付いたアビドス高等学校の廃校対策委員会が現場へ急行。

 白目をひん剥いていたアルたちと対峙し、今まさに激突しようかというタイミングで風紀委員会が介入。

 

 迫撃砲を用いた奇襲により双方の無力化、それに至らずとも戦力低下を目論んだのだが……

 

「ごぐるああああうぅ!」

 

「ひいいぃぃぃ〜!? アレ何アレ何アレ何アレ何ぃ〜!?」

 

 迫撃砲が直撃する寸前、何かが残像を生み出す速度で飛び出してきて電撃のドームを展開。

 砲弾を全て空中で爆発させて無力化してしまい、困惑していた所を狙うように黒煙を突き破って飛び出して来た何かが姿を現した。

 

 巨大な狼。金色の毛と暗緑色の甲殻を身に纏い、全身に赤々と煌めく傷を負った巨大な狼だ。

 

「あうぉぉぉぉぉぉぉんっ!」

 

 遠吠えを放ちながら突進する狼はその巨体を武器にし、迎撃を試みた風紀委員会の生徒たちを次から次へと跳ね飛ばし、迫撃砲をボーリングのピンのようになぎ倒して破壊していく。

 

 浴びせられる弾丸も効き目が無い。狙撃班による対物ライフルでの狙撃すらも弾いてしまい、風紀委員会が傷を負わせることは出来なかった。

 

「なんなのアイツっ! あんなにデカイのになんでッ!」

 

 イオリも狙撃を試みるが動きが早すぎて狙いを定めた頃には見失ってしまう。

 周囲の建築物を蹴って飛び回ったり壁を突き破って内部に隠れたりそこから奇襲に転じたりと、獣でありながら近代建築郡の中での戦闘に長けた挙動で彼女を翻弄していた。

 

「はぁ……そういえば、昨日のネットニュースで存在は確認されていましたね」

 

 既に面識があるチナツは最後に出会った時と比べて気迫が増していることに最初こそ驚いたが、自分を見るあのまん丸お目目が可愛らしくて笑ってしまった。

 

 ネットニュースにもなった『巨大狼銀行襲撃事件』。ブラックマーケットで商売を行う銀行を、常識から外れているサイズの狼が襲撃。

 稲妻を放ち、跡形もなく消し飛ばしてしまった事件だ。幸いにも死者は出なかったが銀行員数名が意識不明の重体。

 

 銀行に預けられていた資金も全てが焼けてしまい、カイザーコーポレーションが近々その巨大狼を討伐すると息巻いているのをニュースで見たチナツはすぐに巨大な狼が自分の出会ったあの狼、ジンであると見抜いていた。

 

「元気そうですね。お変わりないですか?」

 

「あおんっ!」

 

 自分でどうにか出来る相手では無いと実際に出会って理解しているチナツは武器を構えず、手をひらひらと振ってジンに挨拶をしていた。

 ジンも無論彼女のことを覚えている。元人間でありブルーアーカイブを楽しんでいた彼女が忘れるわけが無い。

 

 元気な返事をし、浴びせられる弾丸の雨を回避しながらチナツへ肉薄。友軍に弾丸が当たってしまうと風紀委員会の攻撃の手が止まった。

 

「よしよし。それにしても昨日は派手にやりましたね。銀行を襲うなんて」

 

「待ってチナツ、なんでそいつとそんなに仲が良いんだ?」

 

 顎を撫でられて気持ちよさそうに地に伏せるジンと、その姿に笑みを見せるチナツ。

 

 イオリから見ればおかしい光景だ。

 数秒前には交戦していた狼と自分の後輩が親しげに触れ合っているのだからおかしくない方がおかしい。

 

「彼女はジンさん。以前」

「ぐあうあうっ!」

 

 どうして仲が良いとか、という問い掛けに対して紹介から始めようとする少しズレた対応をするチナツの声を遮るように、ジンが吠える。

 

  ゆっくりと立ち上がると、目の前で自分に銃を向けているイオリを見据える。

 

(まずい、怒らせたか?)

 

 チナツに説明を求めたのはシチュエーションを考えれば至極当然。

 しかしそれによってチナツの意識を喋ることに向けさせたせいで、撫で方がおざなりになっていたのかもしれない。

 それで気分を害し、原因となった自分に対して怒りを抱かせてしまったかもしれない。

 

 不安から獲物を握る手に力が籠る。

 見上げるような体高の狼に見つめられるなんてこの先経験することがあるかも分からない体験に、イオリの体はガチガチに固まってしまっている。

 

 そのせいでジンからの不意打ち、顔面に対する舐め回し攻撃を避けられなかった。

 

「うわっぷ!?」

 

 唾液を帯びた舌がイオリの顔面を舐め上げる。まさか舐められるなんて思っていなかった彼女は後ろに体を逸らしてしまい、尻もちをついてしまう。

 

 彼女は怒ってなんかいない。自分に対して警戒心を抱くことも、その相手と仲間が親しげに接していれば関係性を気にするのもジンは分かり切っていた。

 

 今の不意打ち舐め上げ攻撃も、怒ってないぞという意思表示に他ならなかった。

 

「ふふっ。ジンさんは意味無く人を襲ったり傷つけたりはしませんよ。そんなに身構えなくても──」

 

「そんなこと言ったっていきなりこんなデッカイ狼が出てきたら身構えるなって方が──」

 

 チナツとイオリが言葉を交わす光景をジンは呆然としながら見つめている。

 

 昨日の銀行襲撃後、カンナから夜通しでなだめられつつ窘められたことでジンは軽い寝不足を起こしていた。

 普段なら3日くらい寝なくても問題ないのだが、銀行を破壊し尽くす為に大暴したことで軽く疲労していたのも寝不足を重くしている。

 

 柴関ラーメンが入っている建物の屋上で身を潜めていると、柴大将が明らかに廃棄品ではないのに廃棄するから勿体ないし食べてくれと山盛りのチャーシューを用意。

 たらふく食べて腹を満たし、眠っていたところで便利屋68が柴関ラーメンに入店からの爆破を引き起こした。

 

 お陰でジンはせっかくの睡眠時間を妨害され、半分寝ぼけているような状態だった。

 普段なら武器を破壊したり脅かすことで無力化する所を体当たりで跳ね飛ばしていく辺り、普段の彼女らしい思考が出来ていないことの証拠と言えよう。

 

(……足だ)

 

 ジンの目が捉えているのはイオリの足。生まれつきの褐色肌が作り出す、スラリとしている綺麗な足。

 

 さて、ブルーアーカイブをプレイして廃校対策委員会編をプレイしたことがある先生なら分かるだろう。

 

 イオリの足は舐められる。彼女が挑発的な物言いをしたことが原因とはいえ、彼女は先生にその足を舐められているのだ。

 

(イオリの足……)

 

 今、イオリの足を見ているのはジン。

 

 元人間で元ブルーアーカイブプレイヤー。

 

 彼女も当然ストーリーは履修済みであり、イオリから足を舐める展開も把握している。

 

(イオリの足…)

 

 彼女は人の理性を持ちながら、生徒たちとじゃれる時はその理性がぶっ飛んでしまいベロンベロンに舐め回す。

 顔だろうが胴体だろうが服だろうがお構い無しで、一部ではその強烈なじゃれつきっぷりとその際の楽しげな様子で精神を癒すアニマルセラピー的な効果があるとまで言われるじゃれつき方をする。

 

(イオリの足)

 

 そんな彼女が、イオリの足を凝視している。

 

 生徒たちをベロンベロン舐め回す戦慄のペロリストたる彼女がじーっと、茂みの中から狙いを定めた獲物の隙を伺う肉食獣の如き真剣さで。

 

(イオリの足?)

 

 しかも彼女は今、まともな状態ではない。

 寝不足+寝惚け状態であり、理性による本能の抑圧がいつも以上に出来ない状態にあった。

 

(イオリの足!)

 

「アヴォォォォォォォーーーーンッ!!!!」

 

 ジンがバグった瞬間である。

 

 急に大声を上げたかと思うと、そのままイオリに飛び掛った。

 意味無く人を襲わないと聞かされたばかりのイオリは対応が間に合わなくて、目をグルグル回しているジンに押し倒された。

 

「うわっ!? お、お前何をうひっ!?」

 

 困惑しながらも声を張り上げたが、その声は直ぐに上擦ったものに変わる。

 

 ジンの舌がイオリの足を舐め上げていた。その感覚にイオリは声を抑えられず、自分の口から出た上擦った声に驚いて咄嗟に口を手で覆う。

 

 それがいけなかった。拒絶の意思を伝えることが出来なくなり、ジンの暴走がますます加速する。

 

「わぐるるるるる♪ あおんっ♪ はぐっ、あうっ♪」

 

 ベロベロベロベロベロベロベロベロ……

 

「ひぐぅっ!? おっ、おいやめっ!」

 

 イオリの今更な拒絶の意思ももはや通らない。

 

 ベロベロベロベロベロベロベロベロ……

 

「んぐっ!? おぎっ、ひいぃっ!?」

 

 ベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ…

 

「〜〜〜〜、〜〜〜ッ!?!!」

 

ベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ

 

「うはっ!! うひひひひひひひひひひ!!!! わかったわかった!!!! やめてっ、やめ、やうひゃひははははははははははは!?!?」

 

 イオリも舐め回されるくすぐったさを我慢しきれなくなり、狂ったような笑い声を上げてのたうち回る。

 

 ジンもその姿を見てさらに暴走。舌から伝わってくるすべすべした肌触りとハリのある触感、泣き目になって頬を紅潮させているイオリの顔に興奮が抑えられなかった。

 

「はぐるるるるるお わうっ♪ あんっ、あおおおおおおおおおんっ♪♪」

 

「もう無理! もう無理もうむいひゃハハハハハハハハハハハハハアハハハハハハッッハ! ちな、ちなつ! たすっ助けて!」

 

 ますます激しさを増す舐めまわし攻撃に白旗を上げたイオリはチナツに助けを求めた。親しい間柄の彼女ならジンを止められる、そう思ったからだ。

 

「ダメです」

 

「なんで!?」

 

 しかしチナツは拒否した。驚いたイオリは「なんで」と言うことは出来たものの、すぐに足から襲うくすぐったさに負けて笑い始めてしまう。

 

 イオリは相手の立場等々を考えない行動をしようとした。

 対策委員会に対して攻撃を仕掛けようとしたのも、下手をすれば政治的問題になりかねない危険行為だ。

 

 それに対する罰…というのも助けない理由の一つ。

 

(楽しそうですね)

 

 イオリの足を一心不乱に舐め回すジンは楽しそうだったから止めたくない、というのも理由の一つだった。

 

 触れ合った際、何となくだが疲労しているように感じた。鳴き声も触り心地も以前と変わらないのに、これという明確な根拠もないのに、彼女はそう感じていた。

 

 ならここはジンのリフレッシュも兼ねて、イオリを満足するまで舐めまわして擽ってもらえば一石二鳥になるのでは無いか。

 仲間に対して割と非情な判断を下したチナツによって、イオリはずぅ〜〜〜〜〜っと足を舐め回され続ける羽目になった。

 

 この隙にトンズラこいた便利屋68を取り逃し、自分たちはどうしたら良いのかと困惑気味の廃校対策委員会が接近し、そこにホシノとヒナが現れるまでジンによる舐め回し攻撃は続けられた。

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