なお、水着カンナは190連目でお迎えしました。嬉しくてスマホぶん投げたのは言うまでもない。
ヒナの愛用品追加ストーリーで死んで水着カンナで死んで……まったくブルアカは最高だぜ!
「パワー……リロード?」
地面に書き込まれたカタカナを読み上げた私は首を傾げた。
ジンとの訓練は翌日、私の目の前で伏せて申し訳なさそうな鳴き声を放つジンを心ゆくまで撫で回してから再開された。
「姉御がみせたあの変なリロードのことじゃないすかね?」
イナシの構えが解ける瞬間、アイアンアサルトが火花を噴いたのと同時に行ったリロード。
終了後にアイアンアサルトが熱を帯びる謎の現象を引き起こしたリロード……それがパワーリロードというのだろうか。
狩猟したジャギィのもも肉をワイルドに食い千切り、飲み込んだコノカも私と同じことを想像していた。
『ぐるるぁう♪』
ご名答、という代わりにベロンベロンと舐め回してくれる。ついでにコノカもベロベロ舐め回され、食べていたジャギィのもも肉が強奪されジンの胃袋に納まった。
「ああああああ〜〜〜!?!?」
『ぐふるるるあぁう♪』
なんで奪うんすかぁ!?と目に見えてキレながらポカポカと胸元を叩いてくるコノカを見下ろして笑うジンは、そのまま鉤爪を地面に突き刺して文字を書き込む。
最初に書いたパワーリロードの文字の横に=を書き、PRと続ける。パワーリロードを省略したのだということは分かったがアルファベットまで書けるとは思わなかったな……
その次に書いたのは『20ビョー』という文字。このビョーが秒という意味だと察するのには、少しだけ時間を要した。
「パワーリロードは20秒しかもたない……そういうことか?」
ものは試しだ。イナシの構えを取って即座に解除、アイアンアサルトが火花を散らしたと同時にリロード。
昨日と同じでアイアンアサルトが熱を帯びる。パワーリロードの感覚もバッチリ掴めているようだ。
そこから20秒を数える。ジンとコノカもカウントダウンを邪魔しないように注意してくれていたのか、肉を取られて揉めているとは思えないくらいに静かな20秒が私たちの周りを流れて行った。
「……本当だ。熱が消えた」
20秒が経過したと同時に、熱を帯びていたのが嘘のようにぱったりと冷めてしまった。
制限時間付きの状態変化、といったところだろう。
冷めたアイアンアサルトからジンへと視線を移すと、ポカポカと叩いていたコノカを上下逆さまに咥えて弄んでいた。
「うっひゃあ〜〜!? 世界が回るっすぅ〜〜〜!?!?」
首をぐるぐると回してコノカを振り回している。楽しんでいるのがあのまん丸お目目から伝わってきて、なんだか少し微笑ましく思えた。
程なくしてコノカは解放されたが振り回されたことでグロッキーになっており、ヨダレまみれなのも気に入らなかったのかログハウスの前方にある湖へと飛び込んでいた。
「それで、このパワーリロードとは何なんだ? ただ熱を持つだけでは無いんだろう?」
2人のじゃれ合いが終わった所で本題に入る。
ただのリロードではなく、完了すると銃が熱を持つ特殊なリロード。
それが銃をホッカイロ代わりにできますみたいな実用的か否か判断に困るようなしょぼい効果がある行為だとは思えない。
私の問い掛けに、ジンは笑って頷いた。
『ごるぁう』
鉤爪が指差したのは、左角に比べて肥大化・湾曲している右角。
「パワーリロードをして、そこを撃てと?」
再度、ジンは頷く。
彼女を撃つのは心が痛む。大切な仲間であり友である彼女に弾丸を浴びせるのは、例え鍛錬であってもやはり心苦しいものだ。
昨日も数十分もの時間をかけて自分に言い聞かせることで何とか撃てるようになったのだから。
だけど、今回はそんな時間をかけている暇はない。訓練を付けてくれるジンを待たせてしまうのは、せっかくの好意に泥を塗るような行為だ。
それに何よりもジン本人が望んでいる。己を練習台として、私がより強くなることを望んでくれている。
ならば、迷っている暇も躊躇っている暇も無い。
再度パワーリロード。人生で三度目のパワーリロードも、滞ることなく無事に完了した。タイミングもばっちり掴めている。
アイアンアサルトが熱を帯びたのを確認し、照準を右角へと合わせる。
引き金にかけた指が動かなくなる、なんてことは無かった。
ジンが阻止してくれた。
あの可愛いまん丸お目目が変わる。
敵意を感じさせる肉食獣然とした眼光を放つ目付きへと、頂点捕食者として相応しいだけの威圧感を宿す目付きへと変化していた。
『グォグルルル……』
地面を踏み締め、唸り声を上げながら身を屈める。テレビ番組等で見ることがある、草むらに潜んで好機を伺う肉食獣のようだ。
顔付きだけではなく仕草からも、私が身を守るためにアイアンアサルトの引き金を引くという真っ当な理由を生み出してくれる。
狙いを定めながら、私は再度痛感させられた。
ジンは優しい人だ。私が罪悪感で止まってしまって、強くなるための鍛錬を挫折してしまわないように自ら悪者になってくれた。
そこまでしてくれるほど、私は彼女になにかしてあげた覚えは無いと言うのに。ただ一緒に居て、癒されて、それだけのはずなのに。
「撃つぞ…痛かったら、すまない…ッ!」
それだけの好意、決して無駄には出来ない。
躊躇いなく引き金を引いた。放たれた弾丸が視認できてしまうくらいの極限な集中状態にあった私の双眸が、弾道をしっかりと捉える。
ライフリングによって回転エネルギーを得ている弾丸は真っ直ぐに飛翔、ジンの右角を的確に捉えていた。
傷は与えられない。硬すぎる角にあっさりと負けて弾丸が潰れてしまい、かいんっと小気味良い音を伴って弾かれた。
でも、それで良いらしい。有効打かそうでないかはどうでも良く、パワーリロードの効果時間中に攻撃を命中させることが大事なようだ。
「なるほどな。だから『ブレイヴ』なのか」
感覚的にだが理解出来た。
パワーリロードは己を鼓舞するリロードなのかもしれない、と。
力強い動作のリロードは、そのリロードを行った本人である私を勇気付けさせるためのものなのだろう。
着弾を視認した途端に、体に力が巡った。アツい、煮えたぎるような力。
引き金を引く指は止まらない。2発、3発と弾丸をジンの右角へと打ち込み続ける。
相手を果敢に攻めること、勇気ある立ち居振る舞いで相手と死合うこと。
故にブレイヴ、か。
『ゴガゥルルルル……グガゥ!』
まだまだ終わりではない。私が呟いたのを聞き取り、手を止めてしまうのを阻止しようとジンが私を威嚇する。
本当に優しい人だよ、彼女は。可愛くて格好良くて優しいとかもう非の付け所がないな。
射撃を続ける。パワーリロードは20秒しかもたない、その間にぶち込めるだけの弾丸をジンへとぶち込む。
公安局で使用している銃火器の中でもかなり反動が強い部類になるアイアンアサルトが生み出す手の痺れも気に止めず、ひたすらに射撃を続けた。
そして十何発目かの弾丸が着弾した時、変化が起こる。
パワーリロードによって与えられた小さな勇気は、相手への攻めを継続することでより育まれ私に
「これは……凄いな」
全身に力が巡るだけでは無い。
体の奥底から止めどなく力が沸き立ってくるのを感じる。
体が軽くなったような気さえする。育ち切った勇気が私に力を与えてくれているのだと、反動による痺れがあったはずの手から感じる違和感の無さで理解した。
「あ、姉御? なんか雰囲気が……」
『うぉうるるる♪』
傍目から見ても私には変化が起こっているのだろう。コノカの心配するような声と、ジンの嬉しそうな遠吠えが聞こえた。
それにしても体が軽い。アイアンアサルトは反動だけではなく重量も相当なものなのに、それを持っていてもなお体が軽いのだ。
感覚的にはハンドガンやサブマシンガンを持っているくらいの重さ。それくらいの重さなら、こんなことだって出来てしまう気がした。
「ふっ…!」
軽く息を吐いて、私は
重さを勘違いしているのではない。体の奥底から滾々と沸き立ってくる力が、こんな無茶苦茶な動きを可能にしてくれている。
「うええぇぇぇ〜〜!? あ、姉御!? それって展開したまま突っ走れる重さじゃ!?」
以前、好奇心からアイアンアサルトを持ちたいと言ってきたコノカはこの銃の重さを知っている。とてもでは無いが展開したまま突っ走れる代物ではないと理解している。
それを展開して走り出したのだから驚きもする。悲鳴にも似た驚きの声が聞こえてきた。
一方、ジンは満足そうに頷くだけ。弟子の成長を見守り、望んだ形へと至ったことを喜ぶ師匠のよう。
彼女の期待に応えられたのだと思うと嬉しい。これは紛れもない、混じりっけなしの心の底からの感想。
でも疑問が残る。彼女は私がイナシやパワーリロードをモノにすることを知っていたみたいだ。
その知識の出処も疑問の一つだ。如何に賢いとはいえ、ジンは人間では無い。人間社会で生きていくのには適さない生物、世の中の常識から外れた存在だ。
そんな彼女がブレイヴやパワーリロードといった技術面についての知識をどこで仕入れたのだろう。
答えては……くれんだろうな
地を踏み締め、風を切りながら思考を巡らせようとしたがやめた。
私らしくもない力強さのある走り……パワーリロードになぞらえ、パワーランとでも名付けるか。
パワーランの感覚は新鮮で、柄にもなく心が踊った。これだけ本気で、力強く走ったのなんて幼い頃ぶりかもしれない。
否、心の踊り狂いっぷりといったら幼い頃を遥かに凌駕する。
いつまでも走っていたい。湧き上がる勇気とも闘志とも取れるアツい熱が全身を満たし、無尽蔵の力を与えてくれる。
せっかく掴んだパワーランがもたらしてくれた感動に水を指すのは嫌だったし、余計なことを考えて転びでもすれば大怪我は必至。
転んだ姿なんて恥ずかしくて見せられたものでは無い。コノカにずっっっっとネタとして擦られるのは目に見えているし、ジンの目の前でそんな姿を晒したら恥ずかしさで死ねる…ッ!
『うこるるるる……ううぉぉぉぉぉぉぉんっ♪』
ジンの楽しげな遠吠えが聞こえて、振り向いた私の隣を何かが駆け抜けた。
ジンだ。遠吠えが聞こえて振り返るまでの間に、急加速した彼女が私を抜き去って行った。
あの巨体がぐんぐんと私のとの間の距離を作り出し、離れて行く。
いくら人間よりも身体能力に優れるとはいえ早すぎる。あの巨体であの加速力…ミサイルでも追尾しきれないのでは無いだろうか。
「あっはははははは! 負けないぞッ、ジン!」
そんな感想を抱かせられたが、私だって負けてはいられない。
せっかく掴んだパワーラン、使いこなせることを見せ付けてやらねば気が済まない!
巨体を支えるマッシヴな四肢が地面にくっきりと残した足跡を置いながら、私は森の中へと突っ込んで行った。