狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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ジンオウガらしく

 この場を離れようとした時、隊長だけがそれに気付いて「どうした?」と問う視線を向けて来た。

 この目敏さは警察としての役割を持つ生徒としては相当な武器だね、大切にして欲しいよ。

 

 何も言わず、ただすれ違いざまに視線を向けるだけに留めて私は草花の中に飛び込んだ。無言のまま、私たちを狙っていた奴らに向けて突進。

 大人しく伏せていたせいで私も手負いだと勘違いしたらしい。そんなのがいきなり駆け出してきたのだからビックリ仰天、逃げ出すしかない。

 

「ガアァァァァァウッ!」

 

 逃げても無駄だけどね。草木が生い茂る中で逃げ回るものだから踏み付けられて倒れた草花が、奴らがどっちに逃げたのかを教えてくれる。

 向かい風なのも幸いして奴等の匂いも漂って来て、嗅ぎたくなくても嗅ぎ取ってしまう。

 

 それに、だ。無双の狩人たるこの私、雷狼竜ジンオウガから逃れられると思わないでもらいたい。

 大好きなアプトノスを傷付けられて、ブルアカ世界の可愛い生徒すら狙おうとして、それ等が原因の怒りと空腹に駆られる私が見逃すはずが無い。

 

「ギャヴッ!?」

 

 私が追跡する個体が逃げる時間を稼ぐ為だろう。目の前にあった木の影から飛び出してきた小型モンスター、ジャギィを前足で薙ぎ払った。

 鉤爪が皮膚を引き裂き、骨を砕いてジャギィを切断。口元に飛び散ってきた血液を舐め取りながら追跡を続けた。血液なんて人間だった頃では鉄臭くて飲んでも気持ち悪いだけだったけど、今の私は何も感じない。

 

 草花に残された足跡を辿る必要もないくらい匂いが近くなる。

 森林の奥へ奥へと踏み込んでいくうちに周囲の風景にも変化が訪れ、やたらと開けた場所に出た。

 

(ここは……見覚えがある…)

 

 私から見て左手には滝があり、その横には滝の源流がある上方へと向かう上り坂。

 流れ落ちた滝は浅い川となって目の前の地面を流れて、右手側奥へと流れていく。

 

 見覚えがある。ここ、モガの森のエリア2だ。

 エリア1から入った時の構図だけど、さっきまで駆け抜けた場所はモガの森エリア1とはまるで構造が違う。

 

 私やアプトノスの存在といい、ブルーアーカイブの世界にモンハンの要素を一部混ぜ込んだみたいな感じなのかなぁ……

 それ、最悪の場合だと『イビルジョー×美食研究会』とか『ラージャン×ミカ』とか有り得るってこと? 地獄も地獄じゃね?

 

「アッアッオーーーウ!」

 

 おっと、まさかの懐かしい光景と恐ろしい妄想のせいで追跡していた奴の存在をすっかり忘れていた。

 

 私より幾らか小柄だけどアプトノスよりは大型。群れの長としての威厳を示す襟巻を生やした大型鳥竜種、狗竜ドスジャギィ。

 生意気にも私に対して威嚇して、手下のジャギィ達を呼び寄せている。

 

「……ガウッ」

 

 数だけは一丁前だけど、私の腹を満たすには足りないよね。だから鼻で笑って、馬鹿にしてみた。

 

 すると狙い通りにドスジャギィは顔真っ赤で再度仲間呼び。

 ゲームだと処理限界とかバランス調整の為に呼び出せる個体数に上限があるけど、現実世界ともなれば際限がない。

 

 わらわらウジャウジャと湧き出てきたジャギィを見回す。これだけいれば腹も満たされるだろう。

 

「グルルル……ガァウッ!」

 

 睨み合っての威嚇なんかしない。速攻を仕掛け、出鼻をくじく。

 

 取り巻きのジャギィに飛び掛り、顔面を叩き潰す。いきなり指揮系統を失ってピクピクと痙攣するだけになった元同胞の姿に、他のジャギィに動揺が広まるのが分かる。

 

 喰らい付く。皮と骨を牙と咬合力にものを言わせて食いちぎり、雑に咀嚼して飲み込む。

 美味い。作中ではアプトノスやらポポやらが家畜として扱われて食べられている描写もあるが、ジャギィも案外美味いものだ。

 

(抵抗感も無い。なんか、かなり都合の良い精神構造になってない?)

 

 ジャギィは小型モンスターに含むれるけどムービーの「みんな大きいっチャ!」によれば365cmもあるらしい。それをほぼ丸っと1頭平らげながら、自分の精神と肉体の噛み合わなさに首を傾げた。

 

 人間としての理性や本能と、ジンオウガという肉食獣としての本能が今の私には混在している。

 

 今回もそう。肉食獣なのに生徒たちを襲わず、アプトノスを損得勘定抜きにして助けて、私たちを狙ったジャギィとドスジャギィは殺して食おうとしている。

 真逆ともいえそうな精神が2つ、ぶつかり合うことはなくその都度その都度で私が納得出来るように折り合いをつけてくれる。

 

(お陰で食べ物に困りはしないけど……)

 

 殺したてのジャギィを貪り食っても何も思わない。可哀想とか申し訳ないとか、そんな気持ちも一切湧かない。

 狩りとそれに伴う捕食行為に関してはジンオウガ寄りの思考・感性に引っ張られるのかもしれない。色々試してみよう。

 

 味覚なんかはジンオウガ寄りだろうし、多分内蔵含めた身体構造はジンオウガそのものだと思っていいかもしれない。

 そうなるとあの時に草花食おうとしたのは危なかったかもしれないなぁ……腹壊しただろうし。

 雑草食べて腹壊して、草むらの隅っこでクゥンクゥン唸るジンオウガとか情けないにも程がある。

 

《さて……お次は》

 

「アオォンッ!」

 

 ドスジャギィも怯んでいたらしいけど流石は群れの長、どの個体よりも先に立ち直って指示の雄叫びを放つ。

 

 それを聞いてジャギィたちが一斉に飛び掛ってきた。突撃命令とかそこら辺だろう。

 

 前腕で薙ぎ払ってやろうかとも思ったけど、それだと死体が飛び散って食うのが面倒になる。

 それを避けるには切り裂く類の攻撃はダメ、打撃類の攻撃の方が向いている。

 

 体を後方に飛び下がるように捻りつつ、尾で前方を薙ぎ払う。振り抜く際に尾に感じた複数回の衝突感、狙い通り上手く行った。

 打ち返されたジャギィは他のジャギィに激突、これだけで一気に数頭殺せたのはかなりの収穫だ。

 

「ガルルルル……アオォォォンオッオッオッ!」

 

 今度はやたらと長い雄叫び。それ聞いてジャギィたちがぱっと散開してドスジャギィと私の周りをぐるりと取り囲む。

 

 そこでドスジャギィはニタリと笑ってバックステップで後退、自分だけ包囲陣から逃れてジリジリと囲い込む作戦か。

 

 獲物を追い込むには良い作戦かもしれないけどさ……相手、元人間とはいえジンオウガよ? 攻め方間違ってない?

 

「フンッ」

 

 縦に後方一回転をして尾で背後のジャギィを叩き殺す。

 

 仲間を殺されて他のジャギィはお怒りモード、我先にと飛び掛ってくる。

 そこをジンオウガの代名詞とも言える技、サマーソルトで迎撃。またしても数頭のジャギィがこれで死んだ。

 

 続けて、サマーソルトの着地隙を背面ボディープレスで落ちる事で帳消しにする。

 こうした方が強いんじゃね?とゲームをしている最中に考えていた動きを再現して見た。

 

 起き上がる隙をついて飛びかかってくるジャギィもいたけど、G級とかマスターランクのジンオウガだと背面ボディープレスの後隙を消すのもお手の物。

 素早く起き上がって再度サマーソルト、これでドスジャギィが呼び寄せたジャギィはとりあえず皆殺しに出来た。

 

「ガルル……ガアゥッ!」

 

 威嚇し、ドスジャギィを怯えさせて足止めさせる。逃げようものなら殺すぞ、と視線で訴えて逃走は許さなかった。

 

 奴はジャギィの3倍はサイズがある。あれを食えば腹もある程度は満たされるだろうし、アプトノスを傷付けた罪はきっちり償わせないといけないからねぇ。

 

 逃げないよう睨みつつ、殺したジャギィを掻き集める。口で咥え、前足の蓄電殻に引っ掛け、血で汚れてもすぐに洗い流せるように水流の上に山積みにする。

 味わってなんかいられない。次から次へと噛み付いて食いちぎり、飲み込んで腹を満たす。

 

 今度、何とか火を起こして焼いてみようかな。なんか筋っぽくなった鶏肉みたいな感じで、焼くと結構美味しそうに感じた。

 それくらいの簡単な考え事をしながら食事を進め、推定25頭のジャギィを私はペロリと平らげてしまった。

 

 これだけ食べて、まだ満腹にはならない。ゲームでもガーグァとか食べていたし、発電能力みたいな特殊能力を持つモンスターは大量のエネルギーが必要なんだろうね。

 そうなると、やはりドスジャギィも食わないと腹は満たされなさそうだ。

 

「ア”オ”ヴッ! ガゥ! ギャアウッ!」

 

 私に部下を食われている間はビビっていたのに、いざ食事を終えたとなればまた聞き慣れない鳴き声で威嚇してくる。

 

 まぁ、声は震えているし視線も少しズレている。私を相手にして怯えているのは明確だ。

 呼び寄せられたジャギィも自分たちの長が怯えている姿にどこか不安げな様子を見せる。 

 

 さて……それじゃあそろそろ、ジンオウガとしての()()()()()()()()()()()()()

 

 帯電毛を揺らし、溜め込んでいた静電気を周囲に散らす。

 ゲームだといきなり唸り声を上げ始めてそれを合図に集まってくるけど、私はその方法を知らないからこうして撒き餌みたいに静電気を撒き散らすことにした。

 

 程なくして私の頼もしいお供たちが、撒き散らした静電気を目当てにやってきてくれる。

 

「ギャウ?」

 

 自分たちの周りを飛び回る光の玉に、ジャギィたちがざわつき始める。

 まだ明るいのに、私に集まってきてくれるお供が放つ光は鮮明に見えた。夜なら蛍みたいでより綺麗なんだろうなぁ、なんて考えてみる。

 

 モガの森エリア2には虫取り網を用いて、素材となる虫を採集出来るポイントがある。

 釣りバッタやら光蟲、苦虫に不死虫。お目当ての素材を集めるために虫取り網を担いで振り回し、全然出ずに虫取り網を何本も壊した……そんな経験、誰しも1度はあるだろう。

 

 毎回ランダムで獲得出来る虫系素材たち。その中には私のお供たち、()()()も含まれていた。

 

「アオォォォン!」

 

 私の生み出した静電気を受け取り活性化してくれた超電雷光虫に、蓄電殻や帯電毛の隙間に集まってもらう。

 

 本来ならこれを後1回から2回行って超帯電状態に移行するんだけど、今回はこれくらいで抑えておく。いきなりフルパワーなんか出したら悟〇にフリ〇ザが負けた時みたいなことになりかねない。

 

 それに一段階だけでも全身に力が漲る。気迫も増したのだろう、ジャギィたちが怯んでいるのが分かる。

 

 自分たちの長の呼び掛けなのだから、集まってしまうのはジャギィという種族の特性上仕方がないこと。

 でも、だからといって怒りと空腹に駆られた私の前に出てきたんだから殺されても、食われても文句は言えないよね?

 

「ガアァァァァァァァァァオンッ!!」

 

 超電雷光虫から受け取った電力を雄叫びと共に放電し、集まってきたばかりのジャギィたちを片っ端から感電死させていく。

 

 ドスジャギィが困惑してキョロキョロしながら後退りする様は面白いけど、見続けたいとは思わなかった。

 

 だって、私もお腹が空いたからね。

 私たちを襲おうとしたのなら、返り討ちにあって食われても文句は言えないよね?

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