狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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リオ会長は天井でお迎えしました!
美人!美麗!
可愛い!面白い!
宇宙猫!ニュータイプ!

     好 き!

制服ちびっ子は……どうしよう……


はいきょちほー・えまーじぇんしぃ

 以前は栄華を極め、人々の歩き回る足音や喜怒哀楽様々な声が織り成す喧騒に満ちていたと訪れた者に思わせる巨大建造物の残骸には苔や蔦が繁茂し、この土地の現支配者は私たちなのだとアピールしている。

 

 生命の息吹を感じさせないコンクリート製の地面に覆われていたはずのミレニアム近郊 廃墟区画はリオの話や見せた映像の通り、自地区の雰囲気に似つかわしくない異様な有り様を呈していた。

 

 足元は草花に覆われた柔らかい土が敷き詰められており、小鳥の囀りが聞こえる。

 草むらが揺れたかと思えばキツネやタヌキに野良猫といった野生動物が姿を現し、見知らぬ来訪者達の姿に驚いて姿を消す。

 

『グォウルルアァァァァァ!!!!!』

 

 生命の息吹に満ち満ちていながらも静かであった廃墟区画に、静寂を引き裂く巨大な雄叫びが響き渡った。

 

「「うわあああああああああああああああ!!!」」

 

 雄叫びに負けじと轟くのは、雄叫びの主に追跡されている先生達一行。

 

 思わず立ち止まって耳を塞ぎたくなる恐ろしい雄叫びに追われながら先生 モモイ ミドリの3名は半泣き状態で廃墟区画を逃げ回っていた。

 

「2人とも死ぬ気で逃げて! 逃げられなかったら死ぬよ!」

 

「死ぬ気で逃げなきゃいけないのに失敗したら死ぬってインチキじゃないかなあぁぁぁぁぁ!!」

 

「無駄口叩いてないで逃げるよお姉ちゃんッ!!」

 

 護身用の拳銃を手に最後尾を走る先生の声にモモイは大粒の涙を頬に貼り付けながら叫び、逃げることに集中したいのに姉がうるさくて叶わないミドリがキレ気味に怒鳴る。

 

『グュルルルルァ……ゴヴルルァァッ!』

 

「ぜんっぜん効いてないね! 分かっていたよチクショー!」

 

 オレンジ色の剣を思わせる尾を生やし、背中に特徴的な骨板を備えている獣竜種 獰竜 アビオルグの頑丈な鱗は先生の持つ護身用拳銃程度では傷すら付けられない。

 

 廃墟区画へと突入した最初のうちは比較的平和だった。

 リオによる調査の過程で打ち捨てられたと思われるドローンやロボット兵の残骸は人の叡智すらも受け付けない魔境である、と演出しているようにも見えたが大型モンスターの襲撃はなかった。

 

 時折ランポスやジャギィ等の小型肉食モンスターが現れることはあったが、今は別行動中の相棒が放つ威圧感が近寄ることを拒んでくれていた。

 

「ほらほらこっちだこっち! 食いでのある肉が呼んでるぞ!」

 

 なんだ、危険地帯だと言っておきながら大したことないじゃないか。

 

 誰かが言い出すまでもなく自然発生したその慢心は、散歩を楽しむ大型犬のような雰囲気を放っていたジンが突如として警戒心を強めたせいで掻き消されてしまう。

 

 元々廃墟区画へ赴くつもりでいたモモイの道案内に従って先陣を切っていたジンが3人を角に引っ掛けて急に全力疾走で来た道を引き返し、途中にあった建造物の中に身を潜める。

 何事かと困惑する3人が数秒前まで佇んでいた場所に、ヨダレを垂らしたアビオルグが現れた光景はトラウマ物の経験として彼女達に深く刻まれていた。

 

「先生! ミドリ! もうすぐだよ!!」

 

 泣き目で視認性が悪いながらもしっかりと目的地を見据えていたモモイの声に、自分たちを食い殺そうとする凶暴な大型モンスターからの逃走劇に終わりの気配を感じた2人は力を振り絞る。

 

 ジンが潜伏している廃墟の建造物がすぐそこに迫っていた。

 

 狭いながらもアビオルグがギリギリ通れる路地を意図的に選んで逃げ込み、安全に逃げつつも追跡を諦めさせない程度の距離感を保っての逃走劇。

 死の危機がすぐ真後ろに控えているという恐怖が体育会系ではなく体力も少ない3人から余計に体力を奪っており、人生の中でも中々経験し得ない感覚を味わう羽目になった。

 

「こっ、こんな滅茶苦茶な作戦立案したジンには後でお仕置だからねー!!!」

 

 3人がいた場所の匂いをアビオルグは執拗に嗅いでいた。ヨダレをダラダラと垂らしており、空腹状態であったと推測される。

 

 大型の肉食性モンスターであるアビオルグに匂いを覚えられてしまっては、逃げ切ることは無理。

 かといってコソコソと逃げ回り隠れ回りながらでは調査に時間を要することになり、それこそ体力が持たなくなる恐れがあった。

 

 ならば仕留める他にない。その判断は理解出来ても、それを大マジメに図解して見せたジンを先生はひっぱたきたくなった。

 

「この体験をゲームにしたらどうかなぁ! モンスターホラー系の逃走ゲームとか新ジャンルだと思わない!?」

 

「今そんなこと話してる場合じゃないよ!」

 

 こんな場面でもゲーム開発部存続の為に新しいゲームの開発意欲を口にするモモイだが、それに対してのミドリの言葉は端的であり的確であり無慈悲でもあった。

 

 ストーリーラインはどうするのか、どのようなジャンプスケアを用意するのか……逃走ゲームともなればその他の様々な要素を吟味しなければならず、そんな余裕は今の3人には無い。

 

 唯一残されている余裕は、目的の建造物の真横を通り抜けた事に気付く為の余裕だけ。

 

「「「ジン! お願い!」」」

 

『ヴオオォォォォォォンッ!!』

 

 3人が声を張り上げると、それに「待ってました!」と言わんばかりに建造物の中からオオカミを思わせる雄叫びが上がる。

 

 アビオルグも空腹感に苛まれていなければ「この場所を通るのはマズイ」と判断出来ていただろうに、目の前でもうすぐ食えそうな3体の獲物にチラつかれたせいで冷静さを喪失していた。

 

『グアゥヴルルルルッ!』

 

『ぎゅあゔっ!?』

 

 長い年月の経過を思わせる風化具合の建造物の壁が内側から突き破られてジンが姿を現す。

 

 先生達を追跡するあまり側面への警戒がお留守だったアビオルグの左横腹に頭突きが炸裂し、太く捻れた角が鱗を粉砕して肉体に突き刺さった。

 

 横の建物がいきなり崩壊して中から何かが飛び出してきた、ここまではアビオルグも理解出来ていた。

 その理解を吹き飛ばしてしまう強烈な痛みを感じたのが最後、アビオルグの意識は永遠に失われる。

 

「う、あわぁ……えげつねぇ…」

 

 突き刺した角から電撃を流し込み、内臓を焼き払って強引に殺してしまった。皮膚が絶縁体であったとしても体内に直接電撃を流し込まれては、防げるものも防げない。

 

 断末魔の声もなく倒れ附したアビオルグの死に様と、恐ろしい思いをしながらも引き付け続けた相手のあっさりとした最期に先生は引きつった表情で声を漏らしていた。

 

「「……」」

 

 モモイとミドリはごく短時間ながらも目の前で繰り広げられた自分達の生活とは無縁だった世界、命の奪い合いで決着を付ける野生の世界の残酷さを見せ付けられて言葉が出ない。

 

 あれだけ純粋無垢にじゃれ付いてくれたジンからは想像も出来ない、人間とは異なる『獣』としての顔。

 

 殺すことへの躊躇を感じさせないロボットのような無感情さと、それでいて生物らしさを感じさせもする瞳が2人の脳裏に強く強くこびり付く。

 仕留めたアビオルグの腹部へ牙を突き立てている光景も、一生忘れられない光景になった。

 

(アビオルグ来たかぁ……)

 

 ジンの視線は先生達ではなくアビオルグの死骸に向けられている。

 

 フロンティア初の獣竜種 アビオルグ

 

 強く印象に残ってたりする訳では無いのだが、こうも木々が生い茂り緑豊かな場所でフロンティア産のモンスターと出会うのはかなり危険だ。

 

 ジン単独で探索をしていたり大型モンスターとの交戦経験があるカンナとのペアであればまだしも、先生達は大型モンスターとの交戦経験が無い。

 魔境と称されることもあった()()()()()()()()()に生息する化け物モンスター達の驚異から先生達を守りつつ行動する必があり、かなり骨が折れる。

 

(厄介なのが来ないと良いけど……辿異種ヒプノックとかエスピナスとかUNKNOWNとか……)

 

 何が潜んでいるかは分からずとも、何かがいるのは確かだ。

 

 リオ達が生活し学業や部活動に励んでいるミレニアムサイエンススクールに漂うものと同様に多数の気配によって廃墟区画の雰囲気な構成されてはいる。

 異なる点は廃墟区画に漂っている雰囲気には、殺伐とした気迫や殺意が多分に含まれている点か。

 

(廃墟区画が急速な緑化かぁ……なんか森に飲み込まれたみたいになっているんだけど、ムフェトとか来てないだろうな? あれ来てたら猛烈に面倒臭いことになるんだけど……お、意外と美味い)

 

 リオの話を思い出しながら仕留めたアビオルグの皮膚に牙を突き立て、流し込まれた電撃によって焼けている肉を堪能する。

 

 原作では荒廃した元都会といった風体をしている廃墟だが、今こうして実際に見てみると都会が大森林に飲み込まれているかのような在り様をしている。

 人が姿を消して何百年と経過しなければ体得し得ない在り様でありながらも、リオの発言が正しければここまでの変容に大した時間を要していない。

 

 自然環境の推移にも時間がかかる。ごく短時間でここまでの変容を引き起こすのは無理がある。

 それこそ、自然環境に干渉して好き勝手に手を加えられるような上位的存在でもなければ。

 

(ただでさえ色々規格外なのがウリの古龍種でもアレは群を抜いて色々規格外だし……そんなのがキヴォトスに来たら神秘とかを取り込んでもっっっと規格外なことになり得るからなぁ……)

 

 色々なムフェトを想像する。

 

 全身に銃火器を取り付けたトリガーハッピーわっぴームフェト

 

 デカグラマトンと融合したメカメカムフェト

 

 ゲマトリアと結託したゲマ・ムフェトリア

 

 ベアトリーチェわからせムフェト

 

(うん! どれも等しく面倒臭いぞぉ!)

 

 ミラボレアス以外の全モンスターが流入しているとなればムフェト・ジーヴァも存在する可能性が高い。

 あの生物なら絶対に何かしらの劇的な環境変化を引き起こすだろう。導きの地を作り出したという実績があるのだから、このキヴォトスの地で第二の導きの地を作り出すことも十分有り得る。

 

 最悪なパターンを想像してしまったジンは食事をやめて白目を向き、口を半開きにして固まってしまう。

 

 ムフェトや導きの地といった名称を想起したことで、苦行の日々を思い出す。

 ドスジャグラスとドスギルオスを罠ハメして地帯レベル上げをし、罠が切れたら討伐して呼び出し、特殊痕跡を掻き集めるのを繰り返す日々。

 

あおおぉぉぉぉぉぉん(辛かったよおぉぉぉぉぉ)!』

 

 ジンは吠えた。そして泣いた。

 

 先生達から見れば食事を止めたジンがいきなり雄叫びを放ったように見えており、何が起きたと身構えさせられる。

 

「じ、じん、さん……?」

 

 恐る恐るモモイが声をかける。柄にもなく、親しいと思った相手にさん付けで。

 

 彼女は初めてジンがモンスターとの生存競争を繰り広げ、淘汰し、勝者の権利を行使する光景を見た。

 。

 可愛い動物ではなく厳しい環境に身を置いて日々を力強く生きる野生動物を取り扱う番組で見るような、土臭くて泥臭くて血腥い生きるか死ぬかの奪い合い。

 

 それを仲良くなったと思っていたモンスターによって見せ付けられたことで、彼女の中には明確な()()が生じてしまった。

 

(怖がらせちゃったなぁ……まぁ、生徒皆に可愛がってもらえるとも思ってはいなかったし、好かれるなんてのも思い上がりだからねぇ)

 

 モモイの視線に恐怖が含まれているのはジンにも伝わっているが、それをケアしてあげる事は出来ない。

 

 理由は複数ある。怯えている相手に近寄られるのは返って逆効果になり得るし、アビオルグを捕食したばかりで不衛生な口腔内に格納されている舌で舐めようものなら健康被害も起こる。

 

 それに第一、今のジンは先生達の誰かに注意を向けられるだけの余裕がなかった。

 

「皆、気を付けて……まだ終わってないみたいだよ」

 

 普段のバカっぽさを感じさせるまん丸お目目では無い、アビオルグを仕留めた時と同じく野生動物然とした殺意と警戒心を宿した目付きのままであるジンの姿に、先生はまだ終わりではないと悟る。

 

 先生達が叫びながら逃げ回り、それを追跡するアビオルグも咆哮を放ち、ジンによって建造物の壁を破壊する轟音が立てられ、奇襲により絶命したアビオルグが血の匂いを撒き散らす。

 他の大型モンスターに何かが起こっているという情報を伝え、引き寄せるのにはうってつけだった。

 

 周囲に乱立している建造物の屋上や崩れ掛けの壁の裏、木々の隙間といった様々な場所から大型モンスターの視線が向けられる。

 

(なんか色々いるぅううぅぅ!?)

 

 どれもこれも見た事があるモンスターばかりだ。

 

 緑迅竜 ナルガクルガ亜種

 

 尾槌竜 ドボルベルク

 

 怪鳥 イャンクック

 

 大猪 ドスファンゴ

 

 土砂竜 ボルボロス

 

 爆鎚竜 ウラガンキン

 

 他にも様々な大型モンスターの姿がジンには視認されていた。

 

 本来の生態系を完全に無視しているメンツに彼女はまた白目を剥く。第二の導きの地が作られしまう恐れがどうのと考えていた数秒前の自分を殴りたかった。

 

(もう十分魔境じゃねぇかよおおぉぉぉぉぉぉ!! 導きの地ってか夜のモガの森じゃねぇかよこれえぇぇぇぇぇ! 昼だけどさぁぁぁ!)

 

 どこからどう見ても、廃墟区画には異常事態が発生していた。




来月の今日にはワイルズ遊べるとかマ?
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