狂犬が拾った雷狼竜、元人につき   作:ジンオウガを飼いたい

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今後の展開を踏まえ、『オリジナル設定』タグを追加します。後出しになってしまい、申し訳ありません。


雷狼竜が住む森

「ふぅ……デスクワークが多かったせいか、体が鈍っているな」

 

 ふぉ…ふおぉ……ふおおおおおぉぉぉ!!!

 

 カンナが! 私の住んでいる森に! ログハウス建ててる! 白いジャージにブルマ姿で! 首にタオル引っ掛けて! 汗水垂らしながら!

 

 ジンオウガだから匂いもすごいよく分かる! 本当に生きてるカンナだよ!

 

「アオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!」

 

「うわっ!? び、びっくりした……急に吠えるな」

 

 おっと失敬、嬉しさのあまり吠えてカンナを驚かせてしまった。

 

 いやぁ……しかし眼福ですなぁ。あのカンナが汗水垂らしながら木を間伐してログハウスを建てるお手伝いが出来るなんて。

 

 なんだろう、ミスターと○泉が家建てるのを手伝っている、そんな感じの感動具合。つまるところ死ぬほど嬉しい。死なないけど。

 

 ジンオウガとしての肉体はここでも大活躍。使用したい木をカンナに選んでもらって、根元から鉤爪で切り取った。

 こんなに鉤爪鋭利なんて設定なかったと思うけど……大型の肉食モンスターの鉤爪なら、木を簡単に輪切りに出来るくらいの鋭利さはあるよね。

 

「だが、手伝ってくれたおかげでかなりハイペースで進めることが出来た。ありがとう」

 

 お、おおお、おおおおおおおお!!!!

 

 カンナに褒められた! 喉のとこナデナデしながら褒めてくれた!

 

「ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!」

 

「ッ、本当にお前は撫でられるのが好きだな。そんな大きなナリに鋭い顔つきをしておいて……誇りは無いのか?」

 

 そんなもんある訳ないじゃん! こちとら前世は平々凡々で何一つ取り柄のないゲーム大好き三十路独身女だったんだぞ!

 誇りの類なんざとうの昔に木っ端微塵に砕けてるわ! あの地球人のようにな!

 

 仮に誇りがあったとてしも、だ!

 

 推しキャラの尾刃カンナに優しい目付きで見上げられながら喉撫でられつつ褒められて見ろ!

 そんなもんシッポ振る以外の選択肢無いでしょうが! 仮にあったとしても私には思い浮かばないね!

 

「ばうっ!」

 

「ハハハハハッ、そうかそうか。そんなに嬉しそうだと私もなんだか嬉しいよ」

 

 撫でられながらひっくり返ってお腹を晒すと、そこもカンナは優しく撫でてくれた。

 

 嗚呼……前世の私、三十数年も頑張ってきた苦労は今報われているよ。好きなモンスターに転生して推しキャラに愛でられるとか幸福も幸福だよ。

 

 さて、惚けていたいけどそうのんびりもしていられない。

 私がこうして生きているこの世界が、ブルーアーカイブのゲーム進行度で考えるとどの辺に該当するのかまるで分からない。

 

 シャーレがどうとか連邦生徒会長がどうとか、その手の現状が読み取れる要素が一切転がり込んでこない。

 そりゃ当然と言えば当然なんだけどね。森に住んでるんだし、通信機器の類やラジオ等も持ってないし、そもそもモンスターだし。

 

(それになぁ……多分、元のゲームよりも混沌としてるんだろうなぁ)

 

 透き通る世界観と言いつつ倫理観グラセフでドンパチカチコミ青春群像劇なブルーアーカイブに、世界滅ぼせる黒龍とか天候変える古龍とか空飛んで火炎吐き散らすヘタレウスとか色々ヤベーい奴らがひしめくモンスターハンターがガッチャンコしてるのがこの世界の有り様だ。

 

 大型モンスターも私だけじゃない。カンナがこの森に移住するって言い出して以降、危険なモンスターが湧いていないか巡回して調べて見た。

 結果、3日前に食い殺したドスジャギィの他にもドスランポスやらアオアシラやらオサイズチ、ゴゴモアにクルルヤックといった序盤に戦う大型モンスターがチラホラと目撃されている。

 

(無印からサンブレイク、しかもフロンティアまで網羅してるとかこの森も大概魔境だな……)

 

 ジンオウガ()とドスジャギィならモガの森エリア2が実在するのを加味して3rdか3Gくらいの世界なのかなぁ、とか思ってた矢先に目の前にゴゴモアが出てきた時は発狂しかけたよね。

 

 ゴゴモアってフロンティア限定の大型モンスターだし、それがいるってことはあの人外魔境フロンティアまでブルアカ世界にガッチャンコしてるってことでしょ?

 

 ホント、冗談抜きでそう遠くないうちにこの世界滅びるんじゃない?

 アルバもいてミラオスもいてボレアスもいて、そこにシャンティエンだのラヴィエンテだのグァンゾルムだのUNKNOWNだのと錚々たる面々が『私も入れてよ』って首突っ込んでくるんでしょ?

 

(この森もいつまで安全なんだろう…見回り強化しないとなぁ…)

 

 ナルガクルガとかディノバルド、私以外のジンオウガとかギアオルグみたいな危険度が高い大型モンスターはまだ見られていないけど、生息していると思った方が良さそうだね。

 イビルジョーとかラージャンみたいな基地外モンスターも、マガイマガドとかエスピナスみたいな激ヤバモンスターも今の所は痕跡すらない。いたらヤバいって。

 

 出来ることならカンナには住み着いて欲しくないけど……もうログハウスの基礎作り終えちゃってるからなぁ……移り住む気満々だよ、大丈夫?

 危険性を考慮して住んで欲しくないってのもあるけど、この前『片道2時間か…行けるな……』とかボヤいてたよね?

 ここから公安局オフィスまで片道2時間ってことでしょ? 行ける行けないじゃなくて無謀だよ無謀。

 

(アビドス砂漠とかヤバそうだなぁ……)

 

 第一章の舞台となるアビドスには広大な砂漠がある。

 

 モンハンで砂漠といったら暴君ディアブロスを筆頭にセルレギオスやらベリオロス亜種やらハプルポッカやら激ヤバ癖強モンスターの宝庫。

 そこにクシャとかテオみたいな古龍がプラプラーっと飛んでくるんだから余計にタチが悪い。オディバトラスとかルコディオラなんかも普通に出てきそうだ。

 

 セリカが誘拐された時とかヤバいんじゃないかなぁ……ディアブロスとかに襲われて大騒ぎになる気しかしない。

 だって実写版Monster hunterだと軍隊が使う機関銃とかもほとんど効いてなかったんだよ? 民間で使われている銃とか通用する訳なくない?

 

「さて……そろそろ夕食にするか。食事を貰ってくる」

 

 タオルで汗を拭ったカンナはそう言って立ち上がると調理を進めている部下たちの元に歩いていった。

 

 今日の晩御飯はジャギィの足を根元から切り落として作ったローストチキン。鳥竜種だし、肉質は鶏肉のそれだ。

 カンナの部下たちが狩猟してきたジャギィを解体・調理して、ログハウス作りなんて超重労働を進める彼女にスタミナが着く食事を用意するんだって張り切っていた。

 

 公式じゃ部下にも恐れられる…とか言われてたけど、こうして仲良しこよしな姿を見るとほっこりするよね。

 寝転がっていたのをやめて起き上がり、伏せの姿勢を取りながらカンナと部下のやり取りを眺めていた。

 

「グゥ」

「ガウ?」

 

 生暖かく見守っていると、隣に座ってきたアプトノスが短い唸り声と共に頭部を擦り付けて来た。

 

 この子にもだいぶ心を許して貰えた。私だけではなく、カンナの部下ともじゃれ合ったりログハウス建築に使う間伐材を転がして運搬したりしてくれている。

 

 何も無い時はこうして横並びで座り、ぼーっと森を観察するのが今の私の趣味だ。

 色々と考え事をまとめるのにも調度良いし、風に乗って流れてくる他モンスターの匂いを嗅ぎ取って状況の変化を察知するのにも役立つ。

 

(どうしようかな)

 

 ジャギィ程度の小型モンスターであればカンナみたいな固有名を持つキャラクターでなくても数名態勢で相手取り、無事に狩猟することが出来るとわかった。

 

 でも大型モンスターともなれば話は別。アオアシラなんかゴールデン○ムイに出てくるヒグマ並の絶望的格差が現れてくる。

 私ならお手一発で頭を叩き潰して勝てるけど、彼女たちはそうもいかない。

 

 アオアシラ程度でこれだ、アビドス砂漠でディアブロスなんか出てこようものならホシノ達も先生も普通に死ぬだろう。

 できることなら、助けに行ってあげたい。私なら勝てるかどうかは分からなくても、良くて撃退までは持っていけるはず。

 

ガルルルル(でもなぁ)……」

 

 助けに行きたいけど、それは夢物語だ。

 私は雷狼竜ジンオウガ。高い身体能力を有しているけど、より有利に立ち回る為には雷光虫の協力が必要不可欠だ。

 

 エリア2から引き連れてきた雷光虫はログハウスの近くにも定着し始めている。

 私の電力を糧に健やかに過ごしていて、夜には雷光虫が闇夜を飛び回る幻想的な光景を楽しませてもらっている。

 

 砂原でも雷光虫は採取出来るけど、それはあくまでゲームだから。現実であるこの世界では砂漠に雷光虫を連れ込めば環境が合わずに死なれてしまう可能性だってある。

 

「どうした? 悩み事か?」

 

 しばらく考え込んでいると、ローストチキンを食べ終えたカンナが戻ってきた。口元にタレが付いているのに気付いていないんだろう。

 私のことを心配している感じの表情とタレが相まって、凄い可愛らしく見えた。

 

 隠し事をしても、公安局局長のカンナにはバレるだろう。彼女相手に隠し事をするつもりもないけど。

 起き上がって頷き、頬に付いているタレを舐め取った。

 

「くすぐったいな……話してみろ。何を言っているかは分からないけど、聞き役なら出来る」

 

 左前腕の上に座って見上げてくるカンナに、私は何も言えなかった。

 

我ながら馬鹿なことをしている、なんて言いながらも楽しそうにログハウスを組み立てる彼女を見てしまうと『この森に住んで欲しくない』なんて言えないし伝えられない。

 でも、ずっと黙っているわけにも行かない。そんなことをして危険な大型モンスターが湧き始めたら、カンナたちやアプトノスの命が危ない。

 

 特にここは森林、ラージャンやらイビルジョーやらが生息する環境だ。

 あんなのが湧いたら私でも守り切れない。

 

「……話したくないのなら、無理に話さなくてもいい。ログハウスが完成すれば、もう少しお前と話せる時間も確保できるからな」

 

 優しく微笑んで、喉を撫でてくれる。

 

 ログハウスが完成して、そこに住み着いたカンナとじゃれ合いながら過ごす日々。

 それも悪くない。というか凄い楽しみですらある。

 

 そんなことを思っちゃったせいで、私は誤魔化すようにじゃれつくことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔が森に現れたのは、ログハウス完成の翌日だった。

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