『くそっ! 俺が負けるわけにはいかねえんだよぉ!』
『Bクラスのやつら、本気できてるぞ!!』
「くそっ......!」
俺は今とんでもなくピンチに陥っている。
というのも、今いるのは戦闘中の前線なのだがーー
『くっ、なんなんだこの人数は!?』
『これじゃ、逆にこっちが教室に押し戻されてしまう....!』
「皆落ち着け! なんとか上手く立ち回って戦死しないようにするんだ!」
そう、Bクラスの前線部隊の人数が俺と雄二の予想をはるかに上回っているのだ。
Fクラスは全員、親衛隊を少し残して前線にきている。BクラスはFクラスからしたらかなりの上位クラスだし、それくらいしなければ教室に押し込むなんてできないからだ。それは当然Bクラスも承知の上であり、最初は偵察とかも含めてそんなに人数は出てこないと予想していた。俺も雄二もだ。
だが実際にはFクラスとほとんど同じ人数、つまりBクラスも全力と言っていいだろう。Fクラスより少し少ないが、それは親衛隊とかをきっちり教室に残しているだけで後は全員出ていると推測できる。
それではすぐに前線崩壊すると思われるだろうが、今までなんとか前線は耐えていた。それはBクラスがFクラスとの戦闘にやる気がないのもあるが、なによりーー
「はい! はい! 次は誰ですか!?」
「気合入っとるのぉ、水樹」
「あ、秀吉君。はい、僕はこれくらいでしか役に立つことなんてできませんから」
どこか儚げな笑みを浮かべながらBクラス生徒を切り捨てている姫路がいた。
そう、これも予想外なのだが、姫路は頭が良いのはわかっていたが、そこそこ召喚獣の操作もできるし、運動神経もそんなに悪くないのだ。
姫路は戦闘開始直後にどでかいビームをぶっ放した後、ひらすらBクラス相手に奮戦していた。Bクラスは雑魚なそこら辺のFクラス生徒は置いておいて姫路に殺到していて、それによりFクラスの前線は保っていた。
と、言ってもこれは時間の問題だ。このままでは学年上位の点数を持つ姫路もBクラス生徒との連戦にいつかは敗北を喫することとなるだろう。そうなってしまう前になにか手を打たなければいけない。
にしても、まさか本当に恭子がまっすぐなにも策なし全戦力を投入してくるとは。なにか理由あったとしても本当に実行するとはーー
「......ん?」
ちょっと待った、恭子がこんな考えなしに行動するやつか?
いや、それはない。あの恭子が無駄なことをするのはありえない。
一回整理しよう、まず現場だが、Fクラスは全力でBクラスまでの最短距離である渡り廊下を死守し、どうにかBクラスに押し込もうとしている。
対してBクラスは、弱いFクラスになんの策を弄するわけでもなく、ただ点数差と物量で押し切ろうとしている、ように見える。
確かにBクラスのごり押しは普通のFクラスだったらなす術なくやられているだろう。だが、今の二学年Fクラスには姫路がいるし、俺もいる。俺の点数は恭子も知っていることだし隠す必要もない。
いや、まずBクラスの目的を考えよう。BクラスにとってFクラスは取るに足らない存在。消化試合のようなもの。....使い方が違うか? とりあえず、無駄な戦闘と言っていいだろう。
だったらBクラスは早く試召戦争なんて終わらせたいとーー
「......まさか!?」
俺は考えるために無意識に下げていた頭を上げ、戦場を確認する。
今は前線から少し離れて全体を見渡せる場所に立っている。Bクラスの人数はーー
「......おかしい。いくら姫路が頑張っていたとしても最初の人数から減りすぎている....!」
そう、最初はFクラスと同じくらいいたはずのBクラスはだいたい2/3、最初いたのが30人だとすると10人も減っていた。いくら姫路が気合を入れて頑張っていたとしてもこの減り具合は異常だ。姫路には複数で襲いかかっていて、そんなに戦死していないはず。
だったらどこにいるか、まずBクラスが最初あんなに人数を出してきた理由は....囮? いや、『Bクラスの戦力は全員前線に投入してますよ』というアピール? だったらアピールした後は引かして、別ルートからーー
「......雄二が危ない!」
俺は一つの可能性に考えつき、Fクラスの本隊がいるであろう場所に向かって走り出す。
くそっ、杞憂だったらいいんだが!
ーーーーーーーーーー
「雄二! 無事か!?」
俺はガラッと扉を開き、転がり込むかの勢いで教室に踏み込む。
Fクラスの教室にはBクラス生徒の姿。まさかーー
「ああ、須川。やっときたのか」
「遅いですよ亮君」
ーー俺は踏み込んだ勢いのまま転んだ。それは盛大に。なにせBクラス生徒と、その後ろにいて見えなかったFクラス本隊の囲む中心にはーー
「......なんで雄二と恭子はのんびり茶を飲んでるんだよ」
「いや、喉が乾いたからだが?」
「そこで『なにおかしなこと言ってんだ?』みたいな顔すんな馬鹿雄二!」
ああ、状況が理解できない。
そう、俺が言ったとおり雄二と恭子はFクラス教室の中心でお茶を飲んでいた。周りにいる両生徒も戦うことなく話していたりぼーっと突っ立っていたり各々好きなことをしている。
誰か、説明してくれ。
「そうですね、須川はここに来たということはBクラス生徒が減っているのに気づきました?」
「ああ、だから俺はここに来たんだ」
そう、俺はBクラス生徒が減っているのに気づき一つの可能性に気づいた。
それは、前線にいる部隊は囮で本隊はFクラス教室に直接強襲してきているというもの。前線の生徒の数が減っていたのはおそらく本隊に合流して強襲に参加した、と考えていた。
恭子は俺のテストの点数、つまりどれだけ戦闘力があるか知っている。だったら気づかれる可能性を高めるとしても前線に投入した人を少し本隊に戻して気づかれたときのためにそいつらで足止めさせるーー
「......と、思ってたんだけどなあ」
「その考えはあながち間違えではありません。当初はそれでぱっぱと片付ける予定でしたし」
「そうなってたらFクラスは終わってたな」
相変わらず俺の考えを読む恭子に、おそらく俺と同じ考えにたどり着いた雄二。
だったらこの状況はなんなんだ......?
「そうですね、無意味な戦いで勝つより有意義な取引で引き分けなほうが私たちには都合がいいからです」
「ふーん、取引ねえ」
「ああ。俺たちにそんな損がある話しでもなかったし、すでにOKは出してある」
どうやら俺や前線が知らないうちに話しは終わっていたらしい。
そうか、FクラスがBクラスと一対一で前線が保っていたのはやる気がどうのこうのじゃなくて手を脱いてたのか。む、だったらこの茶番劇とも言えるBクラス戦が始まる前にすでに雄二は恭子と交渉していたということか?
「雄二君とはこの前翔子さんの家に行ったときにお話したんですよ」
「ああ。俺が翔子にアイアンクローされてるのを見ながら平然と話しかけてくることに驚いたが、そのおかげでBクラス戦を確実に突破できるようにできたんだ。土下座して敬えこの野郎」
「いきなり発言が上から目線の上にイラついてるな。カルシウムちゃんと取ってるか?」
「お前に心配される必要はないくらいに正常だよ。......まぁ、くっくっく」
雄二がどこか腹立てているようなので心配したら気持ち悪い笑い方で返ってきた。本当に頭は大丈夫なのだろうか? まぁ本人が大丈夫だと言ってるなら大丈夫なのだろう。駄目な方向に。
「で、取引の内容は」
「それは......私の口から言わせたいのですか。須川君は変態さんですね///」
「まて馬鹿雄二、貴様いったいどんな取引しやがった!?」
「ははははは! この前俺を生贄にした罰だこのヤロウ! まぁ安心しろ、Aクラス戦には支障がないように頼んである」
「本気でいったいどんな取引しやがった!?」
顔を赤らめて変なことを言う恭子に嫌な予感がした俺は雄二に詰めかけるが、結局答えはなかった。いったい俺はどうなるんだ....?
ま、ぁぁ今はそんなことは置いておこう。いやそんなことで済む話しじゃないんだが。
「....とりあえず試召戦争に話しを戻そう。今やってる試召戦争はどうなるんだ?」
「それはですね、明日まで試召戦争を長引かせてもらいます」
「ん? なんで長引かせる必要があるんだ?」
「それは今回の取引にも関係あるのですが、今私は少し面倒なことに巻き込まれてしまいまして。それを解決するのにも須川君の協力が必要なんです」
「そういうことだ。お前も男なら女が困ってるのに協力してやるだろ?」
「あぁ、まあ、いいけど」
どうやらそんなに変な取引ではなかったみたいだ。これならひとまず安心かな?
「それではあなたたちは当初の予定通り、派手なやり方でBクラスに乗り込んできてください。それで私たちを追い詰めて、戦後対談をしましょう」
「ああ、了解した。続きは明日」
「ええ、明日」
俺はいまいち納得いかないものを感じながら、Fクラスの教室から出ていく恭子の後ろ姿を見つめる。
はて、どうなるのやら......おじさんには検討がつきませんよっと。
一応Bクラスが前線に全員投入したのは他にも理由があります。わかる人はいるでしょうか?
さてはて恭子ちゃんが抱える問題はいったいなんでしょうか。それは誰にもわからない....そう、作者である私にもっ!
......嘘です。ですがこれから詳しく考えていくのでまだあまり構成ができてないのも事実です。
それではまたノシ