欠損奴隷を治したら、俺を崇める宗狂団体が設立されてた   作:破滅

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15話 女神の使徒の法服

 

 更衣室に入ると、ファルは全裸で紙袋の下着をガサゴソと取り出しているところだった。日焼けしたような健康的な肌色の背中は、よく鍛えられていたのか筋肉の形が浮き出ていて、結構ゴツい。

 

 全体的に筋肉質な身体付きなのにお尻はぶりんとしてて大きく、腰からは鰐のような太い尻尾が生えていた。

 

 エロい、というよりも格好いいという意味で見惚れてしまう良い身体をしていた。

 

 俺がジロジロと見ているのは気づいてそうだけど、ファルは特に気にする様子もなくパンツを履いてブラを巻いていく。

 

 そして、手際よく装備に着替えていた。

 

 早々に着替え終わったファルは、スササッと俺の前にまでやってきて両腕の力こぶを作る――ダブルバイセップスのような決めポーズをして見せてくる。

 

「どうだ? 格好いいだろ!」

 

 見事なドヤ顔だった。

 

 ファルの装備は、革の胸当てと革製のショートパンツのような腰装備という、ビキニアーマーとまではいかないまでもそれに近しいくらい露出の多いビジュアルをしていた。

 

 ややサイズの小さい胸当てで締められていても大きいのが伝わってくるバストと、安産体型で太い腰回りは女性らしさを極めた抜群のプロポーションでありながら、腹筋は6つに割れていて両腕は細いながらもがっちりとした筋肉がついている格好良さまで兼ね備えていた。

 

 自信満々に見せつけてくるのも頷ける肉体美だった。

 

「ああ、凄く綺麗で格好良いな」

 

「えへへ、だろ?」

 

 鼻の下を擦って無邪気に喜ぶファルは、快活な感じで可愛かった。

 

「ジタロー様、私はどうかしら?」

 

 俺がファルの肉体美に見惚れている間に着替え終えてしまったらしいニケが、俺のスーツの袖をちょんちょんと引っ張ってくる。

 さっきまで“アイツがいる前で着替えるなんて嫌なのです”って言ってたミューの耳を引っ張って喧嘩してたのに……。

 

 いや、女の子の着替えをあんまりジロジロ見るもんじゃないし、良いんですけどね。

 

 ニケの装備は、白い半袖のシャツに革製の半ズボンというとてもラフなものだった。

 しかし腰のソードホルダーが良いアクセントになっていて、近代式の軍人の軽装備みたいな感じで中々に様になっている。

 

「美人訓練教官って感じで、格好良いぞ!」

 

「美人……あ、ありがとう。ジタロー様に良い装備を買い与えて貰った分、頑張るわ!」

 

 ニケのシャツはなんとかフロッグっていう魔物の皮を使っているらしく、かなり丈夫らしい。

 

「おう、頼りにしてるよ」

 

 健気な反応をしたニケが可愛かったのでそのまま頭を撫でると、ニケは目を細めて受け入れてくれる。俺の勘違いかもしれないけど、ニケは嬉しそうな顔をしていた。

 ミューがむっすーと不服そうな顔で俺を睨んでくる。

 

 ミューの装備は、膝下丈の紫色のワンピースの上から丈の長い黒いコートを羽織るという何ともお洒落なものだった。

 

「ミューの装備も、凄く格好良くて可愛いぞ」

 

「……お前の感想は別に聞いてないのです」

 

「ミュー、お前じゃなくてジタロー様って言ってるでしょ!」

 

「い、痛いのです! 耳を引っ張るのは許してほしいのです! 姉様、ごめんなさいなのです!」

 

「謝るなら私じゃなくてジタロー様に謝りなさい!」

 

 ミューと挨拶をしたのはついさっきのことだったはずなのに、このニケとミューのやり取りは既に見慣れたものになりつつあった。

 

「それで、ダンナは戦闘服に着替えないのか?」

 

「そうだな。着替えるか……」

 

 ニケとミューがわちゃわちゃしている間に、俺はスーツを脱いで神父服に着替えていく。

 

 巻頭衣とでも言うのか、頭から被るように着るだけで装備できるのは便利だ。

 だけど、生地がゴワゴワしていて、結構重い。……まあ、我慢できないほどではないけど。

 

「どうだ?」

 

 着た服を見せると、ファルは口をへの字に曲げてあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「……その服、心底反吐が出る不愉快な格好なのです」

 

 いつの間にかニケともみくちゃするのを止めてたミューがストレートにそう言ってくるけど、ニケは黙ったまま動かない。言外にミューの言葉を肯定しているのだ。

 

 ……反応は、想像を絶するほどの大不評だった。

 

 ――ジタロー。私の声が聞こえていたら、その不愉快な格好をいますぐ止めなさい。

 

 脳内に、アストレア様の声まで響く。……えっ、アストレア様まで!?

 

「……こ、この格好、そんなにダメなのか?」

 

「ダメ、というか。それはマモーン教徒の神服だから。私たち亜人は、その服を着た人間に多かれ少なかれ嫌な思いをさせられてきたのよ」

 

 ニケの言葉に、ミューとファルが頷いた。

 

 そっか……。じゃあこの服着れないじゃん。

 

 ニケやミュー、ファルに嫌われる服を着るくらいなら、多少目立つとしてもスーツを着る方がマシだ。

 

 店員さんが、自分も敬虔なマモーン様の信徒ですからとか言ってた時に気づくべきだったな。……割引されて得したと思っていたのに、却って損をしてしまった。

 

――ジタローよ。裁量の天秤を出しなさい。

 

 しゃーなし、と神父服を脱ごうとしたらアストレア様の声が脳内に響いた。

 

 て、天秤ですか?

 サァッと、俺の頭から血の気が引いていく。……俺は、アストレア様の使徒だというのに異教徒の祭服を着てしまった。

 

 アストレア様はきっと、不届きな行いをした俺に然るべき天罰を与えるつもりなのだろう。

 

「『裁量の天秤』」

 

 抵抗すると更に罰が厳しくなるかもしれないので、俺は、大人しく天秤を出す。

 

 し、知らなかったんです。この服が異教徒の服だって。それに、俺、日本にいた頃は無宗教だったからあんまり自覚がなくて。

 す、素直に罰を受け入れますので、ど、どうか恩赦を……。

 

 ガクガクと恐怖の震えを抑えるように両手を握るように合わせて、涙が零れないように目を瞑り、アストレア様に祈りを捧げた。

 

 ほわほわと、優しい温もりが俺の身体を包み込む。

 

 ――その祭服を、我が使徒に相応しいものに仕立て直すだけだ。そう怯えるな。

 

 少し、呆れたような声が脳内に響いた。

 

 目を開けると、やや悪趣味だった神父服は、アストレア様が着ていたものを男性向けに仕立て直したような上品な法服へと変貌していた。

 

「い、今の気配は、なんだ!?」

 

「……ふ、フシャー」

 

 ファルは顔の前で腕をクロスさせて身構え、ミューは震えながらニケの後ろに隠れ俺に威嚇してきていた。

 

「今のは、アストレア様……俺が信奉している女神様だ」

 

「……アストレア。聞いたことないけど、気配は尋常じゃなかったのです」

 

「い、今のが女神の気配なのか。姿もないのに……凄まじいな」

 

「そう、ジタロー様は凄いのよ!」

 

「なんでニケが得意げなんだ……」

 

 胸を張ったニケに、ファルが突っ込んだ。

 

「それで、アストレア様に新しくしてもらったこの格好ならどうかな?」

 

「……どうかなも何も、畏れ多くて文句なんて言えるわけないのです」

 

「オレはカッコよくなったって思うぜ!」

 

「聖人のジタロー様に最もふさわしい格好だと思うわ!」

 

 ファルとニケの反応はとても好意的なものだった。

 ……アストレア様に仕立て直してもらった以上、格好悪いって言われたとしても俺はこの服を着るんだけどな。

 

 アストレア様の法服を思わせるこの衣装は、出来が良すぎて着て歩けば目立ってしまいそうなことだけが難点だけど、格好良さや美しさに関しては不満の余地はなかった。

 

「じゃあ、着替え終わったし。出るか。何か他に必要なものとかないか?」

 

 下着を買い、装備を整えた。

 他に何が必要か解らないので尋ねると、ニケが遠慮がちに挙手をした。

 

「私はこの剣、ファルは素手で戦うらしいから良いけど、ミューに武器を買ってあげて欲しいわ」

 

「武器。良いぞ。この店にあるので良いのか?」

 

「遠慮しておくのです。この規模の町にまともな性能のものはおいてないし、それだったら媒体なしでもそんなに変わらないのです」

 

「……因みに、ミューの武器って何だ?」

 

 なんか見た目魔法使いっぽいから、杖なのだろうか?

 

「魔導書なのです」

 

「魔導書?」

 

「はいなのです。杖とか指輪の人もいるけど、ミューは魔導書しか扱えないのです」

 

 な、なるほど。……魔導書。

 それには一つ、心当たりがあった。

 

「ちょっと失礼」

 

 俺はニケの腰にあるマジックポーチをガサゴソと漁って、二冊の本を取り出す。

 一冊が辞書くらいに分厚い本。縦ロール姫の城の宝物庫から持ってきたやつだ。

 

「これとか、魔導書なのか?」

 

「そ、それは『増魔の書』と『合魔の書』! 国の武器庫とか禁書庫にあるような超一級の代物なのです! ミューにそれを寄越すのです!」

 

 ポーチから本を取り出すと、ミューがあからさまに態度を変えた。

 

 目をキラキラとさせて、尻尾をぶんぶん振っている。まるで犬みたいだ。

 

「ミュー?」

 

「ね、姉様。解ってるのです。そ、それをミューに寄越してくれるなら、ミューはお前のことご主人様と呼ぶのです。た、偶になら頭を撫でさせてやっても良いのです」

 

 この本、そんなに凄いものなのだろうか?

 

 俺にはただの本にしか見えない。

 ミューがこれを有用に扱ってくれるなら、俺は条件とかなしに渡すつもりだった。

 

 けど……。

 

「や、約束だからな」

 

「解ってるのです!」

 

 二冊の本を手渡すと、ミューは奪うように取ってから大事そうに抱えた。

 

 嬉しそうにしているミューの頭に手を伸ばすと、少し嫌そうな顔をしながらも撫でさせてくれる。

 

「ご主人様、偶になのですよ」

 

「わ、解ってるよ」

 

 ミューみたいな小さくて可愛い女の子に“ご主人様”と呼ばれて喜ぶ趣味は……正直あるし、そこに偶にだけど頭を撫でさせてくれる権利までついているのだ。

 タダであげるつもりだったけど、ミューの提示した条件は俺にとってあまりに嬉しいものだったので、余計なことは言わず素直に受け取っておく。

 

「あ、そうだ。そんな分厚い本持って歩くのも大変だろ? なんかいい感じの入れ物買ってやるよ」

 

「それは、助かるのです」

 

 そうして更にこの店で魔導書を収納できる腰巻、ブックホルダーも購入した。

 

 宝物庫で回収した金貨は二日で、34枚にまで減ってしまった。

 

 暫くは大丈夫かもしれないけど、この世界でもお金を稼ぐ手段を考えないといけないな……

 

 

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