ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 しばらく放置してた時の界王神関連のお話のため初投稿です。


幕間 天井
其之九十三 天使と神々


 

 第七宇宙のいずこかにある惑星。

 四角錐を逆さにした土台の様な惑星。

 その中央にはその惑星で最も大きな樹木が聳え立ち、その中をくり抜く形で建設された宮殿がある。

 

 そこにはこの第七宇宙の破壊を司る神、ビルスが住んでいる。もっとも、今はお昼寝と称して眠り続けているのだが…。

 

 そんな絶賛お昼寝タイムの破壊神の居城にて付き人であるウイスは、本日のディナーの支度にと大きなキッチンで、コトコトと震えるお鍋を見つめながら少しばかりこの世界に違和感を覚え始めていた。

 

 正確にはこの世界の時間の流れに違和感を覚えたのである。

 彼ら天使は数分程度なら時間の巻き戻しが行える。故に、時間に対する感覚が余人とは大きく異なるのだ。

 

 …ソレはさておいてコトコトと揺れるお鍋の蓋をどけてみる。

 本日のディナーはみんな大好きカレーライス。少しばかり違うのはルゥの色が少々青いくらいか。

 惑星スパイッスから取り寄せた香辛料からウイス独自にブレンドしたオリジナルのものである。

 

 眠りこけている破壊神は目覚まし爆弾であっても起きないねぼすけ具合。

 我ながら良き出来だと思うが、起きない神のことを考えても仕方なしと同居する友人を呼びつけ飯の時間とする。

 

 「なんだこれ。」

 

 開口一番、予言魚は出されたお皿に対して疑問を投げつけた。

 無理もない、純白のライスの隣に並々と注がれた青い物体はお世辞にも食欲を唆る色合いではない。

 予言魚は良くも悪くもあけすけにものを言うタイプ、ソレを知ってる料理人はその言い方にも特段思うところはない。

 

 「カレーライスですよ。」

 「すっげぇ色してんなぁ。」

 「今回はスパイスから作ってみたので。」

 「ふぅん。」

 

 ヒレを使って器用にスプーンを操り、なんの躊躇もなくライスとルゥを口の中に放り込む。

 数回の咀嚼の後にごくり、と呑み下す。

 芳醇なスパイスの香りと辛み、そしてその奥にある野菜の甘味が絡み合う複雑な味わい、これは確かにカレーと呼ぶに相応しい代物だ。

 喉越しに爽やかなミントの様な香りさえなければ。

 

 「後味が不思議だけど、なかなかいけるな。」

 

 一般的な地球人の味覚ではまず間違いなく首を傾げるその珍妙な料理を喋る魚はもくもくと食べ進めていく。

 

 暫し静かな食事風景が続くなか、ウイスが食事の途中でスプーンを置いて口を開いた。

 

 「予言魚さん、以前言いましたね、ビルス様の強敵が現れると。」

 「んぁ?…ン〜そんなことも言ったね。」

 「その予言もう少し詳しく話せませんか?」

 「覚えてないなぁ、ソレがどうかした?」

 「破壊神の強敵、となるなら新たな破壊神候補の誕生を意味しますので。」

 

 ふぅん、それだけ返すと予言魚は再び青い液体とライスを混ぜ合わせて口に運ぶ。

 むぐむぐと口を動かしてごくり、と飲み下す。

 

 「じゃあちょっと見てみようか、見れるかどうかわかんないけど。」

 

 スプーンを置いて腕を組む。

 むむむむ…と彼が腕を組んで何度も体勢を変えたせいでガラス鉢を支える杖がゆらり、ゆらりと揺れ動く。

 

 「青いやつと赤いやつが見えるね。」

 「…ふむ、青と赤、ですか。」

 

 これまた対照的な…。

 そんな感想を抱くウイスを他所にまだまだ予言魚は搾り出す様にむむむ…と唸り続ける。

 

 「飽きた、続きはまた今度見てあげるよ。」

 「ありがとうございます。このお礼はいずれ。」

 「じゃあ、惑星スイッツのケーキがいい!もう何百年も食べてないからな!アレ!」

 「わかりました、近いうちに用意しましょう。」

 

 やったー!

 と両手をあげて喜びスプーンを引っ掴むと、再び不思議な色合いのカレーライスに舌鼓を打ち始めた。

 

 ーーー青と赤…少し調べてみましょうか。

 

 彼が感じた時の流れに対する違和感。

 これはもしやこの第七宇宙存続の危機かもしれない。

 本来天使は全ての物事には不干渉である必要がある。

 しかし…ソレはあくまで人間レベルの争いに限るのだ。

 この世界は偉大なる全王によって統括されており彼の意思なくしてこの宇宙が消滅することなどあってはならない。

 

 彼が危惧しているのは、そのレベルの事態なのだ。

 

 ごちそうさまー!と元気な声をあげて満腹感にホクホクの予言魚を見送り食器を片付けて、身支度を整える。

 

 ーーー時の界王神、彼女から話を聞くべきでしょうね。

 

 向かうは界王神界、本来彼1人でも行けるのだが…界王神の瞬間移動を使ったほうがより早く辿り着ける。

 ソレに、この宇宙の行く末に関わること、彼も聞いておいて損はないだろう。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「お久しぶりですね、東の界王神」

 「はい、魔人ブウの一件以来ですね、ビルス様は…ーーー」

 「ご安心を、今は私1人です。」

 

 その様子に明らかに安堵のため息をつく。

 神々にとって破壊神の相手をするのは心臓によろしくない。

 僅かな不興で大切な生命があっという間に消滅させられるのだから。

 

 「…そうですか、本日はどのようなご用件で?」

 「コントン都まで一緒にきて欲しいのです。」

 「…?、何か事件ですか?」

 「そうならないことを、祈ってます。」

 

 要領を得ないその返事に首を傾げるしかないが、ガイド天使が単独で行動をするということは余程の事態と、流石の界王神も察する。

 そして彼が余り多くを語らないクチなのも知っているため、百聞は一見にしかず、わかりましたと頷くしかなかった。

 

 「ウイスさんじゃない、シン君もお久しぶり〜。」

 「ご無沙汰しています。」

 「どうも。」

 

 なんの要件であるのかを理解した時の界王神、クロノアは本題を切り出した。

 

 「残念だけど、私が貴方達の歴史に干渉することはできないわ。」

 「やはりそうでしたか。」

 「す、すみません。一体どう言う事なのですか?」

 

 困惑するシンに対して、時の界王神は件の【終わりと始まりの書】を持ち出した。

 本来、時を司るモノ、あるいはそれを守るものしか閲覧を許されない。

 ここにおいては最高神であるシンですらその閲覧を認められない代物だ。

 それを時の界王神はなんの躊躇いもなく彼の目の前で開帳した。

 

 「と、時の界王神!いけません!これはーーー」

 「いいのよ、どうせ開いたって何にもわからないんだもの。」

 「は?」

 

 慌てて視界を塞ぐシンが恐る恐るそれを覗き込む。本来、この宇宙の終焉まで書かれているはずの書物が途中から空白になっているのだ。

 

 「これは…ナメック星の…爆発…?」

 「…そう、とあるサイヤ人とフリーザが戦った影響よ。」

 「ま、待ってください、サイヤ人がフリーザと戦ったのですか?」

 

 勝負にもならないでしょう!そんな風に狼狽える。無理もない、彼は神として未熟、数百万年という永い時間があったとはいえ彼を育成する者たちが皆死に絶えていたのだ。

 このところ、ようやく神として地に足が着いたころである。

 

 想像以上に界王神界の事態の悪さにウイスはため息をついた。

 

 「…貴方はもう少し下界を見た方がいいですよ。…フリーザはそのサイヤ人に倒されました。」

 「ほ、本当ですか。」

 

 はい、と頷くウイスに開いた口が塞がらない。

 シンにとって第七宇宙の格付けはフリーザ達とそれ以外という認識でしかない。

 彼らですら、シンにとっては大した脅威ではないため静観するしかないのだ。

 例えそれがこの宇宙のレベルを下げる行為だとしても彼の師である大界王神の教えがそうさせるのだから仕方のないことである。

 彼の経緯ははっきり言って同情の余地はある。

 人間で言うところの、突然仕事の責任者が事故で亡くなり、なし崩しに昨日まで平社員だったのが責任者になったようなものである。

 

 現場がぐだぐだになるのも致し方ないといえよう。

 

 しかし、そう何度もガイド天使が破壊神の下を離れるわけにもいかない。

 さて、どうしたものかとウイスは考える。

 ここで彼を放置するのはいくら中立の立場と言えどよろしくはない。

 界王神が機能できていないのならこれを補佐するのもガイド天使の役目である。

 

 「なんじゃ騒々しい…て、天使様!?…ま、まさかここにビルス様が!?」

 「大丈夫よおじいちゃん、このウイスさんは例の時間軸の人だから。」

 

 現れたのは彼らの時間軸から15代前の大界王神、ご存知ビルスにゼットソードへ封印された哀れな哀れな神様である。

 その存在を当然知っているウイスはある妙案を思いつく。

 

 「東の界王神、ゼットソードはまだ保管されていますか?」

 「勿論です。」

 

 結構、そう満足そうに微笑むウイスはこれまた普段通りの言葉足らずで返事をした。

 

 「では、彼を封印から解放しましょう。」

 「よかったじゃないおじいちゃん、少し早く解放されるわよ。」

 「やれやれ、本来の歴史の流れと異なるが…お前さん達の歴史は少々特殊だからのう。」

 

 当然ながら、事情を中途半端に伝えられたシンは頭にハテナを浮かべるしかなかった。

 

 「…すみません…話についていけないのですが…。」

 「その話はまた後で、本題に戻りましょう。」

 

 どうせ一から説明せねばならぬこと。

 クロノアはゆっくり、丁寧に彼らの時系列について説明を開始した。

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「質問はありますか、東の界王神。」

 

 普段の緩やかな雰囲気を捨てて完全な仕事モードのクロノア、彼女の態度で如何に今の状況が難しいかをシンは理解した。

 

 「一つだけ、我々がその…ご先祖様でよろしいのでしょうか。…彼を本来の経緯と異なる形で解放しても、本当にこの宇宙には影響を及ぼさないのでしょうか。」

 

 歴史の改変は重罪である。

 今自分たちのやろうとしている行為は、その重罪であるのだ。

 第七宇宙最高神である自分がその罪を犯すわけにはいかない。

 故の最終確認である。

 

 「問題ありません。貴方達の歴史は見せた通り、私にも先がわからないの。今まさに紡がれている物語と言って差し支えないでしょうね。」

 「それに、この流れがお前達にとっての正史かもしれんからの。」

 

 その通りです。

 そう続けるシンはようやく安堵した様に胸を撫で下ろした。

 

 「わかりました。もう一つだけ、その…本来の歴史と大きく異なるのはこれ以外にはないのでしょうか。」

 「………。」

 

 クロノアは口を噤む。

 いくら彼の自発的な質問とはいえ、時の裁定者からの言葉がなければこの質問はなかったのだ。

 これに対する回答は控えるべきだろう。

 そう、控えるべきだったのだが…ーーー

 

 「小籠包というヤードラットと地球人のハーフでしょう?時の界王神。」

 「……お答えすることはできません。」

 

 このガイド天使は本当に機転の利く存在である。

 クロノアの一拍置いたこの返事、動揺は彼の質問に是と答えたも同じだった。

 

 「そうですか、残念です。」

 「相変わらず意地が悪いわね、ウイスさんは。」

 

 観念した様にため息を吐いたクロノアはいつの間にか先ほどまでの厳格な空気を緩めていた。

 

 「会ってみたいのなら行ってみるといいわ、4032の緑の877惑星、地球という星よ。」

 「これはこれは、探す手間が省けて助かりました。」

 

 ホホホ、と白々しく笑うウイスにそれが目的か…!とぐぬぬと震える。

 本当にこのガイド天使は何を考えているのかわからない。

 

 「では界王神よ、お主の宇宙のわしを頼んだぞ。」

 「はい、必ず、私の方こそ…ご指導のほどよろしくお願いーーーするのは、貴方ではありませんね、ハハ…。」

 

 老界王神は難しい顔をする。

 自分の知る彼より随分と雰囲気が違う様に感じたのだ。

 

 「…お前ほんとにわしの知っとる界王神か?」

 「それは…どう言う…?」

 「いーや、なんでもない。」

 

 歴史が違うのだ、多少なりとも印象が違うのは仕方のないことだ。

 根本のところは、変わってない様子。

 

 「では、そろそろ我々はお暇しましょう。彼を解放してあげねばなりません。」

 「はい、ではご先祖様、時の界王神、我々はこれで。」

 「うむ、達者でな。」

 「元気でね〜」

 

 彼らの見送りを確認するとともにウイスと界王神は界王神界に戻った。

 

 「しかし…ご先祖様が封印されているというのなら…何故…「手にしたモノは世界一の力を持つ」…なんて伝承が残されたのでしょう。」

 

 界王神の疑問はもっともだ。

 もし界王神界の頂点に立つ神が封印されたというのなら、

 そんな伝承を残して保管されているはずがないのだ。

 

 「おそらく、ビルス様の怒りを買わないよう…聖剣として保管していたのでしょう。」

 

 それだけではない、破壊神の対となる存在を「勝手に封印」などしたと全王に知れ渡れば、秩序の乱れた宇宙などいらないとあっさり消される可能性があったから…とウイスは予想する。

 

 「それに…あの界王神には特別な力がありましたから。」

 「特別な力…ですか?」

 「はい、戦士に秘められた力を限界まで引き出すことの出来る魔術を…彼は修めているのです。」

 

 その術は彼の力ではなく、合体した老魔女の力によるものなのだが、ここでは割愛とする。

 

 「ビルス様はその力があまりお気に召さないようで、ことあるごとに彼とは衝突しておりました。」

 

 大界王神を破壊したとなれば、大問題である。

 天使を経由して大神官に知らされるのは自明。

 そこで彼は「封印」という手段をとったのだ。

 それだって、ウイスが報告をすれば即大問題なのだが、

 当時のウイスはこんなお粗末な封印はさっさと解けるだろうと今の今まですっかり忘れていたのだ。

 

 「では、さっさと彼を解放してあげましょう。…ハイ。」

 

 突き立てられたゼットソードを無造作に放り投げると…その刀身を手刀であっさり両断。

 中から現れたのは先ほど時の巣で出会った老界王神と全く同じ背格好の界王神だった。

 

 「ふゥ…やぁっと出ることができたわい。…助かりました天使様。」

 「いいえ、こちらこそ、ビルス様がご迷惑をおかけしました。」

 

 ぺこり、と頭を下げる15代前の大界王神の前にシンはあわてて傅いた。

 

 「…お、お初にお目にかかります。…私、シンと申します。…現界王神を務めさせていただいています。」

 「ほう、その若さで大界王神とは…なかなかやるではないか。」

 「い、いえ…そういうことではなく……。」

 

 シンは現状の界王神界の状況を説明した。

 魔人ブウによって自分以外の界王神が全て殺されて…まともな引き継ぎのないまま、第七宇宙の管理を任せられていることを

 

 「…そいつは災難だったのう。では…ワシが大界王神の代理として、お主を導いてやらんとな。」

 「ありがとうございます…よろしくお願いいたします。」

 

 自分の役目は終わった。

 ウイスは帰り支度を始める。

 そろそろ破壊神のシーツと寝巻きを交換してやらねばならない。

 

 「では大界王神代理、後のことは任せましたよ。」

 「はい、天使様、…ビルス…様はいらっしゃらないのですか?」

 「ご安心を…今は眠りに就かれています。」

 

 天敵とも言える破壊神ビルスの不在に胸を撫で下ろす。

 

 「今後はこのようなことがないよう、我々ガイド天使も注意いたします。今回のことはどうぞ穏便に。」

 「とんでもない。ですが…次はゴメン被りたいですな。」

 

 ほーほっほっ、と誤魔化すようにウイスは笑う。

 あの様子だと、次も間に入ってはくれなさそうである。

 老界王神改め、大界王神代理はため息をこぼした。

 

 「それでは、近いうちにまた…。」

 

 手持ちの杖で地面をこつん、と叩くと凄まじい速さで…彼は天空へと消えていった。

 

 「全く…相変わらず天使様には困ったもんじゃ。」

 「…ごせ……大界王神様、近いうちとは一体…?」

 「さぁの、知りたくもないわい。そんなことより…これから忙しくなるぞ!ビシバシ扱いてやるから覚悟せい!」

 「ど、どうぞお手柔らかに…」

 

 典型的なパワハラタイプの上司、今後の心労が増えそうだと冷や汗の止まらない界王神であった。





 というわけで、裏で動いている界王神達のお話でした。
 天使に目をつけられた我らがオリ主、どうなるんですかね?
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