ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 ぼんやりですが、人造人間編のシナリオが見えてきたので初投稿です。


其之九十五 恐るべき凶報

 ナメック星からの帰還からしばらく経過した。

 激動の数ヶ月が嘘のような穏やかな日々。

 最大の変化は…小籠包である。

 

 あの時湧き上がった正体不明の感覚。

 それが何なのかを何となく理解した。

 無自覚だったものを漸く自覚した。

 

 さて、ここでラディッツと彼女の関係性について今一度整理しよう。

 

 インベーダーとして現れた彼は記憶を失い、

 本来得るはずのなかった優しさを身につけたのである。

 当時はそれを手放しに信用していなかった。

 記憶が戻った途端、彼は元のゲスに成り下がる可能性がある。

 記憶が戻るまでの観察が必要だった。

 

 最初は監視するものと、される者だった。

 

 小籠包はより観察しやすいように、彼を身内として取り込んだ。

 ラディッツはそうは考えていなかったが、その始まりは打算of打算である。

 断じて優しさからではない。

 記憶を失った彼は…驚くほど素直な男だった。

 元々が素直な男なのか、それとも記憶を失ったが故の一時的なものか。

 当初の驕り高ぶった勘違い戦士は見る影もない。

 

 おまけに打算的な自分の行為を、彼は「善意」と捉えるほど純粋だった。

 困惑はしたが、不思議と悪くない感覚だった。

 相手がこちらに全幅の信頼を寄せるのなら、それに応えることにした。

 それは「自分をいつでも殺せる距離」を許すことである。

 

 いくら無頓着の小籠包とて、誰彼構わずラフな格好を見せる訳では無い。

 あれはラディッツからの信頼に対する誠意だ。

 彼を試していたと言っても過言ではない。

 何よりそれで化けの皮が剥がれるのなら儲け物である。

 しかし小籠包の目論見は外れた。

 

 天兄みたいにうるさい。

 

 予想外だ、自分が家族と思っている人達と同じ反応をされたのが。

 この時彼女はようやく、ラディッツを信用できたのだ。

 こんな感じに、二人の間には無意識のうちに信頼関係が培われていったのである。

 

 ナメック星のあの瞬間。

 彼女はほとんど無意識に、自分でも理解のできない情動に駆られて、彼を救った。

 仲間だから?ちがう。

 サイヤ人だから?ちがう。

 敵を倒せるかもしれないから?ちがう。

 

 ()()()()()()()()頭より先に体が動いたのだ。

 

 小籠包は、己を顧みない。

 

 今までそんな必要なかったのだ。

 自分は師匠よりもらった信念に基づいて道を進む。

 何も恥ずかしいことはない。

 

 しかしここ数日、いやでもその時間を味わった。

 正体不明の感情のざわめき、集中を欠いた行動、どれもこれも「自分らしくない行動」が目立つ。

 「鬼姫」には存在しなかった精神の揺らぎ。

 トリガーはもちろん脳裏にチラつく「口移し」の瞬間である。

 気づけば唇を撫でている。そんな理解不能な「ナニカ」。

 

 自分には生涯無縁。

 そんな風に思っていた感情を漸く自覚した。

 これは「恋慕」であると。

 

 さて、小籠包という女は、思い立ったが吉日という女である。

 いつまでもこんな情けない自分を晒すわけにはいかない。

 何やり自覚した途端、より強く感じたのだ。

 ラディッツが欲しいと。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「話があるなんて、改まってどうした。」

 

 最早すっかり彼らの居住区と化したピラフルームの一室。

 隣り合わせにマグカップを並べる。

 切り出しはもちろん、クウラ撃破の件。

 

 「ちゃんとお礼を言わないとって思って。」

 「…何の話だ。」

 「私の為にクウラを倒してくれたでしょ?」

 「そのことか。礼をいうのは俺の方だ…お前のおかげでーーー」

 

 そこまで言ったところで停止する。

 異形の瞳がラディッツを観察する。

 この顔は、どう見ても何かを思い出している。

 

 なるほど、ラディッツにとってもシコリであったか。

 ならば、それが吉か凶かは見定めねばならない。

 

 「やっぱり、気にしてる?ごめんね?」

 「な、なぜ謝る。」

 「嫌な思いさせちゃっーーー」

 「そんなことはない!」

 

 食い気味だ、まだ言葉の途中だというのに全力の否定。

 少々力んで声が裏返ってすらいた。

 ぱちくり、と黄色の瞳を瞬かせる。

 

 「…ほんと?」

 「あ、あぁ…嘘じゃない。」

 

 何とも言えない沈黙。

 天井を見上げながらこぼした安堵の吐息。

 無意識の隙、それほどに彼女は動揺した。

 

 「そっか。…そっか。」

 

 持ち上げたマグカップの中を見つめる。

 ゆらり、と動く水面には黄色の瞳と褐色の肌が映る。

 両親からもらったかけがえのない体、

 一般的な地球人の美的感覚で言えば、自分は怪物と呼ぶに相応しい容姿だ。

 赤い肌に額から伸びる角のような2本の触覚。まさに鬼だ。

 

 しかし、自分はラディッツの容姿に惚れた訳では無い。

 ならばこの容姿を引き合いに引っ込む理由にはならない。

 

 ここが勝負所だと、彼女の中の勘が囁く。

 

 ーーー師匠(せんせい)ならどうするかな。

 

 こんな甘ったれた考えではまた叱られてしまうだろうが、今だけは許して欲しい。

 

 彼なら、桃白白ならこう言うだろう。

 欲しいものは実力で勝ち取れ。

 

 ーーー勝てるかなぁ、スーパーサイヤ人に…!

 

 勝って、彼が欲しい。

 いや、こんな形でなくとも、やりようはいくらでもあるのだが、あいにく自分は…桃白白の弟子である。

 欲しい者は奪い取ってでも、勝ち取りたい。

 

 よし、と立ち上がってラディッツを見下ろす。

 

 「ねぇ、勝負しよう。」

 「どうした急に。」

 「やるの?やらないの?」

 「…良いだろう、今の俺の力を見せてやる。」

 

 戦闘用のドレスを、戦闘用のボディアーマーを

 各々が戦いの為の正装を纏ってピラフルームへと入っていく。

 その中央にて無形の構えを取り、深く腰を落としてこれに応える。

 

 一つ深呼吸をする。

 そうだ、大事な取り決めをしていなかった。

 

 「私が勝ったらさ、欲しいものがあるんだ。」

 「珍しいな、良いだろう、言ってみろ。」

 

 ニヒ…!と口角を吊り上げる。

 悪人然とした微笑み、いつものソレよりは悪意を感じない。

 まるで自分を鼓舞するかのような儀式。

 一呼吸おいて、静かに、そして確実に要求を切り出した。

 

 「ラディッツがほしい。」

 

 その微笑みに対して彼もまた愉しげに口角を吊り上げた。

 

 「なら俺もほしいモノがあるな。」

 「ふぅん、言ってみなよ。」

 「お前を貰う。」

 

 先ほどと同じ、ぱちくり、とした瞬き。

 ニヒ…!と顔を凶悪に歪めながら彼女は高らかに笑った。

 

 「あはは!大変だ、これは負けられない。」

 「俺もだ、悪いが手加減はしないぞ。」

 

 嗚呼…なんて素晴らしい勝負か…!

 勝っても負けても望みが叶うだなんて…!

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 勝負は、一瞬だった。

 本気の本気、超本気。

 通常状態ですら、今の小籠包では手も足も出ないというのに、彼は一気にスーパーサイヤ人になって彼女を制圧した。

 

 「俺の勝ちだ…!」

 「うん、私の負け。」

 

 余りにも物騒なプロポーズ。

 見事なマウントポジション。

 浅い呼吸を繰り返す自分とは対象的に全く息を乱さないラディッツ。

 暫し見つめ合った後に異形の瞳が訝しげに細くなった。

 

 「こんなところでおっ始める気?」

 「す、するかぁ!?」

 「じゃあいつするの?」

 「お、お前という奴は…!」

 

 すっかり毒気を抜かれて超化を解除し、マウントポジションから解放する。

 倒れた彼女に手を差し出す。

 それを下から掴んでニンマリと微笑んだ。

 

 「折角気合いいれたのに。」

 「何を言っーーーー」

 「痛ぁ!?」

 

 無言で手刀が脳天に振り下ろされる。

 無理もない、ドレスをたくしあげて下着を見せびらかせば叱られると言うもの。

 

 「また天津飯に怒られるぞ。」

 「いいじゃん、ラディッツにしか見せないんだから。」

 

 その一言で黙ってしまうあたり、彼女は思う。

 ちょろいなこいつと。

 仕方なしにドレスを直す。

 

 一世一代の大勝負は見事に完敗で終わった。

 

 「あー、勝ちたかったなぁ。」

 「あんな挑発をされたらな、負ける訳には行かん。」

 

 さてと、改めて「ラディッツの女」になったのだが、特別何か変わった訳ではない。

 正味な話、ピラフルームの居住スペースを共同してる関係上、家族のようなモノだ。

 要するにこの何とも言えない関係に終止符を打ったにすぎない。

 

 そしてラディッツに敗北したことで、彼女の中で一つのピリオドがついた。

 彼なら、自分の見れなかった先へ進んでくれるだろう。

 

 「チチみたいに、武道家は引退かなぁ。」

 「どうしてそうなる。」

 「欲しくない?子供。」

 「………。」

 

 もちろんという感情と、彼女のような才人を失うことへの未練。

 その二つがないまぜになり回答ができない。

 

 「お前はそれでいいのか。」

 「残念だとは思うけど。」

 

 ナメック星での戦いで、彼女は戦士としての限界を感じていた。

 スピリットの制御技術は日増しに上がっている。

 しかし、それと戦闘力はイコールではない。

 ナメック星での戦いで彼女は術士として大きな進化を遂げた。

 

 しかし、それでもクウラには敵わず、それを下したラディッツの足元にも及ばない。

 

 体を鍛えても無意味だった。

 術士はあくまで術士なのだ。

 術による増強でなし崩しに力の底上げをしていたが、もうそれでは追いつかない。

 そう、ここが自分の天井なのだ。

 

 「貴方の後ろを歩くのも、悪くないと思って。」

 

 寂しそうに笑う。

 彼女の顔に…ラディッツは言葉を失った。

 そこで漸く、彼女があっさり負けを認めた理由を理解した。

 もちろん、敗北の先にも望むものがあったのが大きいだろう。

 だがそれでも彼女は貪欲に勝ちを求める。

 あんなふうにあっさりと負けを認める女ではなかったはずだ。

 

 その理由を察する。

 彼女は自分の夢を己に、ひいては子に託すつもりなのだ。

 

 それを軟弱者と誹ることはできない。

 弱虫ラディッツとなじられ、強者に怯えていた彼だからこそ、小籠包の諦観は理解できる。

 

 彼女の前を進み、後ろからその景色を見せてやる。

 そう言う選択肢も、ありだろう。

 

 ーーーできるか…!そんなこと…!!

 

 だが、納得するかどうかは別である。

 

 自分は美しい小籠包に惚れ込んだのではない。

 強い小籠包に惚れ込んだのだ。

 今の彼女が、本心からそれを言っていないことなど、自分でもわかる。

 なら、一緒になって足掻くのが自分の役目である。

 

 「…ヤードラット星だ。」

 「え?」

 「ヤードラット人だ…奴らなら何か糸口を掴めるかもしれん!」

 

 善は急げと早速立ち上がる。

 目を丸くする彼女を引き摺るように進む。

 

 「待ってよ、彼らだって術師だよ、私に足りないのは力なの。もう幾ら鍛えたって…!」

 

 何を懸念しているのか、アレコレと弱音を撒き散らす彼女はもう見て居られない。

 何より、そんなのは小籠包らしくない。

 柄にもないことをしていると思えば、そんなことを考えていたのかと笑ってしまう。

 視線を右往左往と泳がせる彼女の肩を掴んで真っ直ぐその瞳捉えて言い放つ。

 

 「つべこべ言うな!!俺の女がそんなつまらん弱音を吐くのは許さんぞ!」

 「…はい。」

 

 またもぱちくり、と瞳をまんまるにして、呆気に取られている。

 だとすればヤードラットがどこにあるのか。確かめなくてはならない。

 ターレスならば方角ぐらいは調べられるだろう。

 

 そんなことをあれこれ考えながらそそくさとピラフルームを後にするラディッツの背中を見つめる。

 

 ーーー…かっこいいじゃん。

 

 ニヒ、と笑ってその後に続く。

 だったらお言葉に甘えさせてもらって、もう少しだけ可能性を追って見ようじゃないか。

 そんな気になれる。それに、わざわざいけすかない野郎(ターレス)に聞かなくたって、適任がいる。

 

 「ラディッツ、界王様に聞いてみるよ。」

 「あ、あぁその手があったか。頼むぞ。」

 

 早速瞬間移動で界王星へと移動した。

 さて、肝心の神はというと呑気にドライブをしている所だった。

 彼女の脇にて強めのブレーキ音と共に停止する。

 

 「お忙しいところすみません。ヤードラット星の方向を教えて頂きたくて」

 「…そろそろ来るころだと思っていたぞ。あちらの方角へスピリットを探ってみろ。」

 

 真っ赤なオープンカーから降りた神は真っ先に指先をとある方向を示す。まるで全てを見て居たかのようだ。

 まさか、アレを見られていたのでは?

 答えを聞くのが恐ろしい、今思えばその場の勢いで随分らしくない事をしていた気がする。

 

 いや…今は、ヤードラット星だ。

 意識を集中する。彼らの気配はひどく小さいだろう。

 しかし今の彼女なら、遠くのスピリットを見極める事は十分できる。

 己がスピリットと似た気配、それらが見つかるまで、ひたすらに示された方角を辿る。

 

 銀河をいくつも跨いで、惑星をいくつも超えた先に、それは存在した。

 

 ーーーあった…!

 

 小さい、確かに小さいが…自分とは明らかにスピリットの質が違う同朋達。*1

 

「うむ、随分と遠くの気配を読めるようになったな。」

 

 彼女の様子から当たりを引いた事を確信した界王は満足げに頷く。

 

 「ありがとうございます、界王様。…このお礼はいずれ。」

 

 ヒラヒラと片手をふる界王にぺこりと頭を下げると彼女はラディッツのもとへと帰る。

 

 「見つかったか。」

 「ばっちり…ラディッツも行くの?」

 「当たり前だ、お前は油断すると直ぐに死ぬからな。」

 「そんな大袈裟な…もうフリーザもいないし、ヤードラット人は温厚な種族だよ。」

 「だからこそだ、油断をしてる時が最も危険…俺にそう伝えたのはお前だぞ。」

 「…わかった。一緒に行こうか、私の手をーーー」

 「少し、待っていただけますか?」

 

 彼らの居住スペースに突如入ってくる二人の青年。

 思わず小籠包を庇って前に出るラディッツを押し除けて二人を観察する。

 そのスピリットからは悪意を一切感じない。

 そして片割れのスピリットはよく知っているモノだ。

 

 「貴様ら…!一体何者だ…!」

 

 自身を庇って前に立つ男を退ける。

 警戒するなんて以ての外だ。自分は…このスピリットを知っている。

 

 「悟飯くん…?で会ってる?」

 「な…なんだと!?」

 

 ぺこりと頭を下げる紫髪の少年と孫悟飯と思しき青年。

 そして彼は涙を流しながら前に出てきた。

 

 「…流石ですね、会いたかったです。小籠包さん…!」

 

 声と面影、差し出された手を握って確信する。

 彼は紛れもなく孫悟飯その人だ。

 

 「…?、?…大きく、なったね…?」

 

 成長期…?いや、いくら何でもデカくなりすぎだ。

 それに近くにいる少年も何となく見覚えのある面影である。

 しかし、そのスピリットには覚えがない。

 

 「ありがとう、ございます。僕らは…二十年後の未来からやって来ました。…貴女を救う為に。」

 「…どう言うこと…?」

 「貴女は半年後、ヤードラット星で命を落とします。不治の病によって。」

 

 あまりにも唐突な展開、二人は孫悟飯を名乗る青年が何を言っているのか、全く理解が追いつかなかった。

*1
半分は違うのだが





 戦闘力更新

 孫悟飯(未来)
 常人レベルに気を抑える:5
 基本最大:???
 超1(?):???

 20年後の未来からやってきた孫悟飯。
 絶望の未来…ではなく、孫悟空がいることでなんやかんやなった世界。
 多くは語りませんが、おそらく皆様の知ってる未来悟飯とは大きく異なります。

 謎の少年
 常人レベルに気を抑える:5
 超1(?):???
 謎の青年…一体何者なんだ…!
 こちらも多くは語りませんが、
 多分皆様の知ってる人物ですし、おそらく人物像も同じです。
 多くは語りませんが。
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