ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 いろいろすっ飛ばすつもりなので初投稿です。


其之九十六 いざ、ヤードラットへ

 

 Xデー、死の運命、その要因を解除し未来は変わりつつあった。

 

 死んだ仲間達の蘇生とターレスへの嫌がらせ…もとい、彼への礼を返し、協力してくれたナメック星の人たちに新たな母星を与える。

 まだまだ時間はかかるだろうが…とりあえず、サイヤ人襲来から始まる騒動はようやく一区切りといったところだ。

 

 しかし、そんな安堵は小籠包の感じたとあるスピリットにより一気に吹き飛ばされる。

 フリーザだ、遠くの地で彼が息を吹き返したのを彼女ははっきり感じた。あの邪悪なスピリットを間違えるはずもない。

 

 悟空がトドメを刺したのも、彼女は見届けている。

 どうやって復活したのかはわからないが、とにかく…あの悪党が蘇ったのは間違いない。

 不幸中の幸いなのが…これがクウラでなかったことか。

 

 あの悪党が蘇ったのなら次に何をするかなどわかりきったことだ。

 

 復讐である。

 

 小籠包とラディッツは病という懸念を無くし、ピラフの許可を得て更なる力を求めてヤードラットへ旅立つつもりだった。

 そこに「出来れば悟空も連れて行く」と考えていた。

 しかし「なんとしても悟空を連れて行く。」に方針を変えたのだ。

 この地球でのんびり修行して迎え撃つ…なんて悠長な真似はしていられない。

 

 彼を連れて行くのに無視できない相手がいる、チチだ。

 強敵である。

 

 「…行けるのか、小籠包。」

 「やるしかないでしょ…!」

 

 そう、やるしかないのである。

 フリーザとて間抜けではない。

 超サイヤ人に手も足も出なかったのなら、それ以上のパワーを備えて挑んでくるはずなのである。

 

 「ところで…あいつらの歴史では…フリーザは地球に来たのか?」

 「…どうだろう…?」

 

 悟飯は…悟空を連れて行けといった。

 あれは…遠回しに「悟空には修行が必要」と示唆していたのではないか。

 結局は地球での修行でどうにかなったのかもしれない。

 それはかなり拮抗した戦いだったのではないか。

 

 「わからないけど、彼を連れて行った方がいいのは間違いないね。」

 

 もう未来はかわった。

 少なくとも彼女が病死する未来は回避した。

 孫悟空も不幸な病死をすることは無くなった。

 全員揃って…未来へ臨めるはずだ。

 

 「チチを、どう説得するかだな。」

 「…そのことなんだけど。」

 

 彼女にはある秘策があった。

 チチがあっさり承諾するとっておきの秘策。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「ダメだ!」

 

 開口一番、話し合いは決裂に終わった。

 チチの怒号が交渉の余地をゼロにしたのだ。

 

 「悟空くんは色々な奴に恨みを買ってる。だから鍛え続けた方が…チチの為にもなると思うんだけど…」

 「だとしてもだ!もう地球は平和だべ!そのフリーザっちゅう奴がここに来るって決まった訳じゃねぇだろ?」

 

 先ずは頭に血が上ったチチを落ち着かせる必要がある。

 まさか初手から臨戦体制だとは夢にも思わなかったのだ。

 家庭の為なら彼女は修羅にでもなるらしい。

 

 「…チチ、フリーザは多分ここに来ると思うぞ。」

 「悟空さは黙ってるだ。」

 「オラの事を話してんだ、お前ェ達だけで話すのは変じゃねえか?」

 

 ぅぐ!と珍しく悟空にねじ伏せられてしまう超教育ママ。

 

 「で、でもな!おっとぉが働きもしねえで武道家しっぱなしってのはよくねえ!」

 「…なら、オラは地球で修行する。そしたら働きながら修行出来るだろ?」

 

 学はないが、物の道理がわからない男ではない。

 チチのいうことはごもっともだ。

 亀仙流の教えにも「よく学べ」とある。

 働くとは少し違うが…修行ばかりしていてはダメだ。

 というのは悟空も理解はしてるのだ。

 

 「ご、悟空さ…!」

 

 やっと、わかってくれたか!

 そんな風に旦那の譲歩に感動するチチをよそに

 小籠包が口角を釣り上げた。

 ここだ、必殺のカード。

 チチを黙らせる最強の切り札。

 

 「だったらさ、ウチで働きなよ。悟空くんならピラフも受け入れてくれるよ。…私以上に知ってるからね、君の強さを。」

 

 待っていましたと言わんばかりにラディッツは一枚の紙をチチに差し出す。

 それはピラフが悟空を雇う上での雇用形態と給金…諸々が記載されたいわば募集要項であった。

 

 「こ、こ、これ…悟空さが稼ぐだか!?」

 

 チチが狼狽えるのも無理はない。

 提示された金額は0が片手で数えられぬ金額が書かれていた。

 普通に暮らしていれば、悟空の食費を考慮してもかなり余裕のある金額である。

 父親である牛魔王の財産を切り崩して生活する必要もなくなるのだ。

 

 「汗水垂らして働く…とは違うが、お前達を養うには十分な額だろう。」

 

 地球人同士での厄介ごとなど…悟空にとってはたかが知れている。

 特にピラフの用心棒となればいわゆる要人警護。

 仮に不意打ちを打たれたとしても地球の生半可な銃や武器では彼に傷一つつけることはできない。

 お呼ばれされるタイミングで…小籠包か、ラディッツか、悟空か…この誰かが呼び出せれば良いのだ。

 ここに更に選択肢が増えるのであれば年間1億ゼニーだってピラフは支払うだろう。

 今やそれほどの財力が彼にはあるのだ。*1

 

 一度は目を輝かせたチチであったが…またその顔を曇らせた。

 

 「…また地球の外に行くってんなら、許さねえだ。」

 「ど、どうして…!」

 

 やはり一般的な労働者としての体を保てないことが問題か…!

 この作戦の一番のネック、「汗水垂らして働くお父さん」とは言い難いのも事実。

 

 …が、チチの反応は予想の斜め上を行った。

 

 「…今度こそ悟空さは帰ってこねえかもしれねぇ…!」

 

 ぐしゃり、とチチの手の中で紙が皺まみれになる。

 忘れがちだが、チチは教育ママであり、孫悟空の妻なのだ。

 悟飯を溺愛するのと同じように旦那を愛する良妻なのである。

 

 そんなバカな…なんていうことはできない。

 なんせ、本来の歴史であれば小籠包はそうして二度と地球に帰ってくることはなかったのだから。

 

 【金さえ解決すれば良い。】

 その考えが如何に浅はかだったかを痛感し、言葉が出ない。

 折角、あと一押しだというのに、これ以上言葉を紡げない自分がもどかしい。

 

 「チチ、飯の時間になったら帰って来るからよ。飯作って待っててくれねえか?」

 

 さて、悟空とて…できることならライバル達と共に励みたいというのが本音である。

 それも、未知の修行ときたらウズウズするのが孫悟空だ。

 だからと言って嫁の願いを放置するほど浅はかではない。

 これにノーと言われれば彼は大人しく引き下がるつもりだった。

 

 「約束だぞ…!」

 

 チチもまた、旦那がここまで考えた上の結論なら、黙ってその背中を見送るのが嫁である。

 そんな矜持を背負った女だ。

 

 「ああ、オラ嘘は嫌ェだ。知ってるだろ?」

 

 これが夫婦かと見せつけられて、小籠包は「おー。」と心の中で拍手を送る。

 相方はどうかとチラリと視線を送る。

 彼もまた弟の甲斐性の良さに驚いてる様子。

 

 ーーー何を考えてるんだか。

 

 敢えて、何も言わずに肩をすくめる。

 自分を見事捕まえたのだから堂々としてればいいものを。

 少なくとも、彼はターレスを押し除けて自分をモノにしたのだ。

 …もとよりターレスのモノになるつもりなど毛程もなかったが。

 

 最大の関門である超ママであり超嫁でもあるチチを納得させた。

 あとは出発をするだけなのだが、いきなり三人で押しかけて追い出されてしまってはかなわない。

 

 まずは同朋の血を引く…小籠包が単独で彼らの星へ赴くことにした。

 彼らにとって、サイヤ人の心象は良くないだろうとはラディッツの言。

 フリーザがサイヤ人を滅ぼし、その生き残りを従えているのはそれなりに知れ渡っていたらしい。

 

 ーーー…俺たちはそれなりに派手に暴れていたからな。ヤードラットの住民には、良い顔をされんだろう。

 

 とはラディッツの言。

 加えて小籠包はその気配から誤解を生みやすい。

 そこにサイヤ人まで同行していたら何を言われるかわかったものではない。

 

 そんなこんなで、彼女はまずは単独、ヤードラット星に瞬間移動で移動をした。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「止まれ、それ以上進むことは許さない。」

 

 チチ同様、彼女は早速出鼻をくじかれた。

 遠くの地から自分たちと全く同じ術を使う部外者。

 しかもその気配は悪に傾倒している上に強大である。

 ヤードラットの門番が彼女を制止するのは当然だった。

 …自分が瞬間移動したことが入り口であった幸運に深く感謝する。

 

 「…はじめまして、こんなですが…悪意はありません。どうか、お話を聞いて頂けないでしょうか。」

 「ダメだ。お前の半分は同朋かもしれんが…半分は余所者…!信じる訳にはいかないな!」

 

 聞く耳を一切持たない。

 思った以上に自分のスピリットは悪人らしい。

 …もちろんその自覚はあったのだが。

 

 どうしたものかと二の矢を放たずにいる。

 ここで彼を押し除けるのは容易い。

 しかしそれでは状況を好転させることはない。

 この態度こそが、誠意の証にならないだろうかと彼女は何とか穏便に事を済ませようと対話を試みる。

 

 「では、貴方伝手で構いません。…どなたか私に稽古をつけていただきたいのです。」

 「…稽古だと?我々は戦わない。暴力なら他所で鍛えてこい!ヤードラットの恥知らずめ。」

 

 彼のスピリット…その質だけでも素晴らしいことはわかる。

 戦闘力は確かに自分のほうが上だが、術師としては足元にも及ばない。

 これ以上先がないと思い上がっていた自分が恥ずかしくなるほどに。

 

 「貴方のお仕事の片手間でも構わないのです。…どうか、お話を聞いてくれませんか?」

 「しつこい奴だな。お前に教えることなどない。帰れ。」

 

 拒絶。断固たる拒絶。

 ラディッツを連れてこなくて良かったと心の底から思う。

 もしここに彼がいたら、それこそであえであえと捕獲されていたかもしれない。

 

 「…リネくん、通してあげなさい。」

 

 鋭い針のような言葉とは正反対な声音が、彼の後方より染み渡る。

 奥から現れたのは彼より2回り以上大きなヤードラット星人。

 その彼のスピリットに…小籠包は黄色の瞳を見開く。

 ここまで澄み切ったスピリットが、存在するのだろうか。

 磨き上げた鏡面のように美しい。

 自分のスピリットが如何にくすんだ代物かを見せつけられているかのよう。

 

 「ピバラ様…!しかし…!」

 「彼女は同朋の娘…であれば、我々にとっても家族のようなものだ。…違うかな?」

 「…承知しました。」

 

 この大柄な…ピバラというものは、彼らの長…あるいはそれに類する者らしい。

 小籠包も見上げるような巨体で彼は静かに言葉を返した。

 

 「…ツカネくん…いや、君のお父さんは元気かな?」

 「どうして、父の事を…?」

 「君のスピリットは父親にそっくりだ。…勘違いしないでほしい、君のお父さんは我ら同朋に恥じぬヤードラット人だ。」

 

 これまで散々、リネという門番が自分のことを悪党と罵った事をフォローしてくれたらしい。

 特にそんなことは気にしていない。

 それよりも、自分の磨いた力が父親の背を追えている。

 その事実がなんとなく誇らしく感じた。

 

 「君のお父さんはね、掟を破ってこの星の外に瞬間移動をしたんだ。…今から30年くらい前になるかな。」

 

 ついこの間のようにピバラは語る。

 その様子から少なくとも追放者の親族だからとここから追い出すつもりはないらしい。

 

 「…ピバラ様、私に…いえ、私達に稽古をつけてくださいませんか?」

 

 彼女は…事の顛末を語った。

 自分の生い立ち、そしてここに来るまでに様々な敵と戦い、敗北してきたこと。

 そして…倒したはずの悪党を倒すために…力をつけねばならない事。

 

 「いいよ。」

 「ピバラ様!!」

 「彼女らはこの星の恩人だ。忘れたのかい?ギニューという連中がこの星に来た事を…彼女達のおかげで、我々は今を生きているのだ。」

 

 ギニュー…その名前は、彼女が葬ったフリーザの親衛隊…その隊長を名乗っていた男の名前。

 成る程、ナメック星の前はここに侵略に来ていたのかと、一人納得する。

 

 「君たちがフリーザを倒してくれたのだろう?だったら君たちに稽古をつけることが、我々にできる唯一の恩返しだ。」

 「ありがとうございます。…その、一緒に鍛える仲間ですが…」

 「サイヤ人でも恩人は恩人だ。気にすることはない、ここに連れてきなさい。」

 

 …記憶を読まれた。

 無防備に構えてなどいなかった。

 身体にも触れられていない。

 だというのに彼から記憶を読み取られた。

 つくづく、術師としての格の違いを見せつけられる。

 

 「…素晴らしい技ですね。」

 「君の方こそ、独学でそこまで出来るとは大したものだよ。ここで学べば、もっと素晴らしい術師に…いいや、戦士に生まれ変わるだろう。」

 「ありがとうございます。…貴方に追いつけるよう、精進します。」

 

 何が天井か、その薄い壁の向こう側に果てのない空が広がっていたのだと痛感する。

 

 「では、連れてくるといい。フリーザ達を倒してくれた戦士達に…ヤードラットを代表してお礼を言わせて欲しい。」

 「はい、本人もきっと喜びます。」

 

 額に指先を添える。遠く離れた地球で自分を待つラディッツと悟空の気配を掴み取る。

 良き返事が返って来た事を彼らに伝えるために、彼女は瞬間移動にて地球へ戻った。

*1
結構な額を慈善事業に投資してピラフ様ピラフ様と喜ばれて高笑いするのが最近の趣味らしい、もはやただの善人である。





 人造人間編が始まります。
 対戦よろしくお願いします。
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