ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 幕間が大変難しかったので初投稿です。

 >>あんころ餅様
 誤字報告ありがとうございます!!


其之十 兄弟子の苦悩

 

 余りにも波乱過ぎる第22回天下一武道会第一回戦。

 その興奮も冷めやらぬ夜。

 鬼の様な形相で弟子を睨む老人、鶴仙人が弟子二人を正座させていた。

 もちろん、二人の敗北への叱責である。そしてその怒りの矛先は桃白白の再来と言われた少女に向けられていた。

 

 「貴様…今なんといった…?」

 「私の失態は認めます。しかし、餃子の敗北は貴方の責任、そう言ったんです。」

 「言うに事欠いて…このワシの責任だと…!?貴様…何様のつもりだ!」

 「シャオ、よせ…老師も落ち着いてください。」

 「お前(天)は黙ってろ(黙ってて)!!」

 「……………。」

 

 小籠包は淡々と事実を並べる。対して鶴仙人は失敗した分際で小娘が自分に意見をするのが気に入らない。話は平行線を延々と辿り続けた。

 

 「餃子は勝っていました。貴方の″もっと甚振れ″なんて命令さえなければ。」

 「あの程度、命令の内にも入らんわ!白白の奴をやった連中を生かしてはおけん!」

 「それがつけ入る隙だと言うんです。対戦相手に攻略の時間を与えたのは貴方です。」

 「貴様〜…!そこに直れ!その性根…叩き直してくれる!」

 「目が曇ってるのは貴方です。復讐心に駆られて目前の勝利を逃す…桃白白様が見ていたらさぞ失望されたでしょうね?」

 「その復讐を失敗したのはどこのどいつだ…!何が″彼の殺しは正当です…!″だ…!殺しに正当も何もない!弱い奴が死ぬ!それが我々のーーー」

 

 それ以上の言葉を彼は発することができなかった。

 

 ーーーざわ…!

 

 「それが我々の…なんですか?」

 「…!!」

 「桃白白様は、私にそんな心構えは教えてません。…それが鶴仙流の本意…そう言いたいのですか?」

 「ッ……!」

 

 思わず彼女の黒い髪がふわらと浮き上がる程の殺意。

 大きく見開かれた黄色の瞳、黒い瞳孔は暗く鶴仙人を写す。

 今の一言は不味い。老人よりいち早く気づいた天津飯が遂に割って入った。

 

 「良い加減にしろシャオ…!…失礼しました老師…コイツには私がしっかり言って聞かせます。…今日はお疲れでしょうから、先に休んでいてください。」

 「う、うむ……任せたぞ。」

 

 あるいは桃白白以上の濃密な殺気を構える彼女を背に努めてポーカーフェイスを構えながら立ち去る鶴仙人に、少女が口を開いた。

 

 「老師……次はありませんよ。」

 「フン、黙れ役立たずが…!」

 

 捨て台詞を吐き捨てて一人弟子たちの部屋を後にする鶴仙人。

 乱暴に扉の閉まる音が響き、しばらく沈黙が続く。

 今度は天津飯が、彼女の前に座った。

 

 「シャオ、落ち着け。」

 「落ち着いてるよ天。」

 

 自身への呼び名が仙士のそれになっていると気づいてないのか。

 彼女のポーカーフェイスはいつになく成立していなかった。

 

 「何かあったのか。」

 「別に何も。」

 「シャオ、少し、変」

 

 普段の小籠包はここまで突っかかったりはしない。

 これで″なんでもない″は流石に無理があろう。

 さて、彼女も確信めいた二人に言い訳は通用しないと察したか、ゆっくり話し始めた。

 

 「…私ね、殺し屋を辞めようと思うの。」

 

 さて、唐突な告白…しかし彼らはなんとなくそんな気がしていた。

 続けろ、二人は無言で話を催促する。

 

 「ジャッキーと話をしたの…彼、やっぱり武天老師よ。なんでか知らないけど、コスプレして大会に出てたみたい。」

 「何を話したんだ。」

 「…もう一度やり直さないかって、勧誘されちゃった。」

 「武道家にでもなるつもりか。」

 「そうだね、彼みたいに強さを追い求めるのも、悪くないかなって。」

 「あいつか。」

 

 あの試合は今でも瞼の裏に焼きついている。

 小籠包のイキイキとしたあの顔、敗北の瞬間笑ったのだ。

 とても満足そうに。

 実際…天津飯もあの試合でこう思った。″孫悟空と戦ってみたい″と。

 

 「思ったんだ、私が本当になりたかったのって、殺し屋だったのかなって。…先生の背中をただ追いかけてただけだった。だから″未熟者″って先生は私を笑い飛ばしたんだってやっとわかったんだ。…私がそう思いたいって方が正しいかも。」

 

 まるで、自分の夢を語るかのよう。

 彼女の顔は穏やかだった。

 

 「鶴仙人様には感謝してる、…でもあの人は私たちを都合のいい兵器と思っている。それでもいいと思ってた。私のなろうとしてる物は兵器だったから。」

 

 でも、今は違う。

 小籠包は二人の反応を待たずに続ける。

 

 「この武道会が終わったら、私は鶴仙流を抜ける。当てもなく世界を回るつもり。」

 「…そうか、聞かせてくれ。あの老人にどんな話をされたんだ。」

 「やり直せるってさ。笑っちゃうよね、100人以上殺した極悪人″鬼姫″にだよ?…でもさ、あんな風に言ってくれる大人は初めてだったから。ついその気になっちゃった。」

 

 鶴仙人様はあんなだしね。そんな風に笑う彼女に二人は何も言えなかった。

 そしてこうも思う、これまで幾度となく世話をかけた妹弟子に何も返さぬまま見送って本当にいいものかと。

 二人も…仙人のやり方に違和感を覚え始めている。

 武舞台の上でのやりとりならまだしも…いざ目的が未達と見れば外野から攻撃をするのは、果たして是としていいものか?

 餃子は忘れられない。断腸の思いで自身にどどん波を向けるあの顔を。

 天津飯は忘れられない。孫悟空に支えられている楽しそうな横顔を。

 

 「二人の道を否定する気はないよ。今更善人振るつもりもない。私は悪党のまま自分の力を極めるから。」

 

 そういうと彼女は返事を待たずにベッドへ潜り込んだ。

 限界を超えた戦いは大きく消耗していたのだろう。

 程なくして静かな寝息が聞こえ始めた。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 あれから数時間後…ちょうど日付の変わる午前0時。

 目の冴えてしまった天津飯はホテルの外で一人型稽古をしていた。

 

 ーーー俺は、どうしたい。

 

 自らの疑問を、迷いを払拭するかのように汗を散らす若き戦士。

 しかしいくら拳を振るっても、頭の中のもやは一向に晴れる気配がない。小一時間程…無駄な足掻きを繰り返す。

 

 「天さん、明日に響く。」

 「餃子か。眠れなくてな。」

 「シャオのこと?」

 「俺は老師の言うがままに…殺し屋になる事を目指していた。だが…アイツと孫悟空の戦いを見て思った、俺もあいつと覇を競いたい。…しかし、俺が鶴仙流である限り…殺し屋を目指す限り、それは叶わない。」

 「天さん……。」

 

 鶴仙流最強の男の独白、返事を期待してないとわかっているからか、或いは何も返すことができないのか。餃子はただ彼を見つめることしかできない。

 

 「そこまで考えて思った、俺の本心はどちらなのかとな。…情けない話だ。鶴仙流の皆伝をいただいたこの俺が、殺し屋になる事を迷うだなんてな。」

 「僕は、シャオに着いてあげたい。でも、天さんを置いてはいけない。」

 

 彼女を拾ったのはこの二人だ。

 それ故に三人の関係は兄妹弟子というより家族のようなソレに近い。

 幾ら強く、精神が成熟しているとはいえ、成人もしていない彼女をたった一人世界に放り出すことに抵抗があった。

 しかしそれは、自分たちが歩んできた道を否定することにも繋がる。

 小籠包は強い、二人は改めてそれを実感した。

 幾ら自分の信念があるとはいえ、積み上げて来たものは簡単には捨てられらない。

 それを軽薄と笑うモノもいるだろう。

 だが二人は違う、小籠包という少女を知っているからこそ、彼女を変えた少年が、不思議な魅力を持っているとわかっていた。

 

 現に、試合をただ見ていただけの二人がここまで影響を受けているのだから。

 

 「この大会で見定めるさ、この俺がどこに進みたいのかをな。餃子、お前は、お前の行きたい道を行けばいい。」

 「…わかった。」

 

 何はともあれ…決勝にコマを進まなければ孫悟空とは戦えない。

 そのためにはジャッキー・チュンを…武天老師を下さなければならない。

 

 ーーーふ、面白くなってきやがったぜ。

 

 彼の拳がみしり、と音を立てて握られる。

 好敵手に思いを馳せてその口角が不敵に吊り上がる。

 

 ーーーシャオと、同じだ。

 

 その顔つきが…第四試合の決着で見たモノと同じ顔立ちである事に気がついたのは餃子だけであった。

 来る天下一武道会、2回戦…天津飯の運命を大きく傾けるその瞬間は刻一刻と近づいていた。

 





 概ね原作をなぞっています。正直まともなガチバトルは前回が最初で最後かもしれませんw
 
 と言うのも…彼女が割り込めそうな戦いがないのと…このまま行くと確実に原作乖離が起きて作者にも予想がつかないからです。
 や、簡単なルートは想像してるんですが細かなところで矛盾が出るかも知れないからなどと供述しており。

 引き続きストックがキレてますので更新は未定!数日内には更新できるようがんばります!

 閲覧ありがとうございました!
 宜しければ評価・感想などいただけますと嬉しいです!よろしくお願いします!!
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