ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
メタルクウラは間話のつもりだったので駆け抜けます。(言い訳)
ビッグゲテスター…元々それは小さな小さなコンピュータチップだった。
宇宙の果ての果て。
戦艦や船の残骸の流れ着く文字通り宇宙の墓場にそのチップは存在した。
僅かな動力源を少しずつ取り込む事でそのチップは超巨大なコンピュータの惑星へと進化していったのだ。
あの時、ナメック星でラディッツに太陽へと吹き飛ばされたクウラはその肉体の全てを太陽に焼き尽くされたわけではなかった。
普通では死んでいる肌のダメージ…脳の一部が巨大化したビッグゲテスターにたどり着いたクウラは…その巨大なコンピュータと融合を果たした。
それほど長くない時間で彼はこのコンピュータ惑星の制御を手に入れ…サイヤ人達への復讐を誓ったのだ。
それが彼、今小籠包達からエネルギーを吸い出している…「メタルクウラコア」なのである。
ーーーくはははは!!いいぞ!もっと吸いとれ!
戦士達から生体エネルギーを吸い出していく。
特に超サイヤ人のエネルギーはビッグゲテスターにとっても未知のエネルギーのようで
「ぐぅぉぉぉぉぉ!?」「ぐ、ァァァァァァ!」「おぉぉぉぁあああ!?」
自らをメタルクウラと名乗る彼はもうほとんどこの巨大な宇宙船に心身を侵食されているといっても差し支えない。
サイヤ人を殺すことが彼の悲願だったはずだ。
それを今やビッグゲテスターを大きくするために家畜のように生かしている。
ーーー哀れな奴。
スピリットをじわじわと吸い出される絶望的な状況下の中、小籠包は静かにため息をついた。
サイヤ人達のパワーに夢中でナメック星人と混ざり物のヤードラット人に興味などないのか。
ピッコロと小籠包は太いケーブルで簀巻状に囚われているだけに終わっている。
ーーー…おい、小籠包。貴様秘策があったんじゃなかったのか。
ーーーあるよ、でも、今じゃない。
心に直接流れ込むピッコロからのテレパシー。
一体いつそんな技術を会得したのかと驚いたが今はそんなことはどうでもいい。
ーーーち、もったいぶってる場合か。奴ら殺されるぞ。
ーーー…わかってる、でも今じゃない。
小籠包が待っていたのはメタルクウラの動揺だ。
ああして勝利の余韻に浸っているように見えてしっかり二人を監視している。
これでは致命打を与える前に再び囚われてしまうのが関の山という奴だ。
ーーーだったら早くしろ、あの食事が終わったら次は俺達だ。
ーーーうるっさいな、今じゃないって言ってるでしょ。
ここから脱出するのは簡単だ。
しかし、瞬間移動をするのは早い。
彼らが瞬間移動をどこからか学習済なのは先の戦いで分かった。
ーーークウラに見られてる中、アレを使うのは現実的じゃない。
コイツだけは私の手で殺す。
小籠包の中には確かな殺意の焔が燃えていた。
彼女にとって技を貶されることは最大の侮辱である。
自身の事を未熟と呼ばれるのはまだ納得しよう。
己が師の教えを踏み躙る行為だけは、我慢ならないのだ。
しかし、現状は絶望的、サイヤ人達の底力に賭けるしかないのだ。
どうにかして、クウラに隙を1秒でも作ってくれれば…あとはどうにでもなる。
ーーーあの時…最悪の状況を覆したラディッツの…サイヤ人の可能性を信じるしかない。
祈るような小籠包の集中、いつでも憎き敵目掛けて瞬間移動できるようにスピリットを研ぎ澄ませる。
こうしている間にも彼女自身もエネルギーを吸われているが大した問題ではない。
彼女のスピリット制御技術は格段に進歩した、この程度の吸収に屈するほど、柔ではない。
敢えてほんの少しずつエネルギーを流すことによって…自分は搾り尽くされようとしていることを演出し続けている。
元々メタルクウラは彼女を取るに足らない雑魚としか見ていない。
流れ出すエネルギーが少量であろうと彼は気にも留めないだろう。
その慢心を刺す。
ーーー素晴らしい…!これがスーパーサイヤ人のパワーか!これさえあればメタルスーパーサイヤ人を何万体でも作ることができるぞ!
様々な計器ががしゃん!と振り切った限界値である事を叩き出す。
ビッグゲテスターにすらそのエネルギーが過ぎた代物であることにメタルクウラコアは気づいていない。
三人のサイヤ人からいくらでも溢れ出る金色のエネルギー、いくらでも吸い出してやると豪語していたメタルクウラコアの思惑を大きく上回ったソレは、遂に許容量を超えようとしていた。
…それと同時だ。
三人のサイヤ人から金の光が消滅したのは…
ーーー…くく、死んだか。流石の俺でもあれ以上は危なかった。…さて、残りのゴミを始末するか。
小籠包の作戦が水泡に帰した瞬間だ。
「ちっ…バケモノめ…!餌として捉えたのなら相応に管理しやがれ…!」
「………。」
横で離脱しようともがくピッコロだが、完全な簀巻状態では離脱は難しい。
エネルギーを吸い取られながら全開パワーを発揮する技量は流石のピッコロにもない。
コアから作り出された大きな大きな砲台。2人の身の丈を優に超える口径の内側から凄まじい熱が蓄積されていく。
それだけでジリジリと肌を焦がす、放出されればどうなるかなどいうまでもない。
間違いなく跡形も残らないだろう。
瞬間移動をしても無駄だ、現れた先にクウラは先手を打ってケーブルを伸ばし彼女を絡めとるだろう。
だというのに小籠包の口元には「にひ…!」と強かな微笑みが形どられた。
ーーー何がおかしい、死を前にして気でも触れ……
確信を持った勝利の余韻の中、静かに響き渡った火花の散る音。
「遅いよ、三人とも。」
直後迸る眩いばかりの金色の閃光。
力なく項垂れたまま三人の戦闘民族は殆ど無意識に己の潜在パワーの全てを解放し放出していた。
メタルクウラコアの…いや、ビッグゲテスターの許容量を完全に超えたエネルギー量だ!
ーーーな…ば、ばかな!どこにそんなパワーが…いや、ソレより何故だ!回路は閉じたはず!なぜエネルギーが流れ込……ぐぁぁぁ!!
一つ、計器の一つがサイヤパワーによって弾け飛んだ。
彼からすれば腹の中で食べたものが破裂するようなものだろう。
それを皮切りに次々と壁一面に張り巡らされたスーパーコンピュータを超える電子部品がサイヤパワーによって燃やされていく。
この時、メタルクウラコアは自身の中で発生する異常に完全に囚われた。
「ここ…だ…!」
止めていたトリガーを放出し、小柄な体躯を瞬間移動させる。
当然、その動きを見ていなかったクウラは先手を打つことなどできない。
ーーーな、に…ィ!?
眼前に現れるのは…かつて部下にスカウトした女、従わないのなら死ねと踏み潰した取るに足らない虫。
そのはずだ、そのはずなのだ。
だというのにどうしてか、彼の視界…最早ガラスのレンズと化した彼の眼球へ投影された小娘の姿は死神に見えたのだ。
まるで弓を弾き絞るかの様に利き腕たる右腕に力を込め、照準をつけるかのように左手をメタルクウラコアへと構える。
彼女が纏うのはオーラではない、まるで焔。
その殺意を具現化させたような禍々しい赤色の気。
その姿に恐れた…いや、見入ってしまった。
ーーーば、バカな…この、クウラが…!たかが…ヤードラット人、如きに…!
これがクウラの見せた最期の隙となる。
だというのに、彼の発した言葉は己がプライドを慰める為のモノだった。
ーーー…私の術は効かない、そう言ったわね!
もう、彼女を捕縛するためのケーブルは間に合わない。
技を発動させるための時間を充分に与えてしまったのだ。
ーーーだったら…これを受けて、死ね!
真・気功崩!
メタルクウラコアの鼻っ面に彼女の拳が突き刺さる。
まるでガラス細工を叩いたかのような甲高い音が、一音だけ響き渡る。
…それだけだ。
彼女の力ではビッグゲテスターの作り上げた強力なコアの外皮に傷一つつけることはできない。
まさしく、今何をしたのか?と問いかけたくなるような技だ。
ーーー…ふ、は…はは!くだらん!やはりただの雑魚だったか…!簡単には殺さんぞ女…!貴様の手足をもいで、じわじわとなぶり殺しにーーー
ぼろり。
彼の高笑いによって、崩れ落ちたのは頬の外皮。
強靭な金属の繊維によって編み込まれた強固なそれがボロボロと崩れ落ちていく。
ーーーな、なんだこれは…!何が起きているというのだ!
「どう?生きながら死ぬ気分は?」
既に地面へと降り立った小籠包が放ったのは勝者の勝鬨だった。
幾らケーブルを絡ませようと力を込めたその端から崩れ落ちていく。
最早、メタルクウラにできることなど、何一つなかった。
ーーーな、何を、した…!女ァ…!
「あなたのスピリットを破壊した。ありがとうね?練習台になってくれて♡」
ーーーな、にぃ!?
練習台、それは宇宙の覇者を名乗る強者を、自負する彼にとってこの上ない最悪の言葉である。
敵ではない、単純な的だ。そう言われたのだ。
ボロボロと崩れ落ちていくメタルクウラコアは、遂にその自重を支え切ることができず、情けなく地面目掛けて落下していった。
なす術なく地面にめり込む己の顔面。
辛うじて目玉を回して見上げた所には小籠包が酷薄な笑みを浮かべて見下ろしていた。
「わかった?スピリットってのはこう使うの。
ーーー…しょ、う…ロン、ぽォォォォォォ!!!
トドメを刺す、そんな事をする必要などない。
己の無力感を噛み締めろ、そんな盛大な意趣返しのつもりか怨嗟の声を背に彼女は仲間達の元へと戻っていく。
「しょ、小籠包…おまえ、なんだあの技…!」
「秘密兵器。」
人差し指と中指で小さくVを作ってニタリと笑う小悪党。
気功崩。
かつてナメック星にて中途半端に技の形を成した技。
相手のスピリットそのものにダメージを与えて破壊する。
物理的な防御は無意味、まさに一撃必殺。
相手が格上だろうと関係ない。
文字通り初見殺しの大技。
この技の最大の欠点は溜めに大きな時間を要すること。
スピリットとは千差万別。
使う相手によって技の発動プロセスが変わるのだ。
故に相手のスピリットに合わせて自身のスピリットを変容させねばならない。
加えて彼ら超達人の戦う世界において1秒という時間はあまりにも永い。
グルドを叩きのめしたあの頃と比べて形には成ったが、まだまだ研鑽の必要な技であり実戦運用には程遠い。
相手が動かないオブジェであり、かつ致命的な隙を晒すという二つの奇跡が重なって漸く成立した技である。
「感じた気は全然大ェしたことなかったのになぁ。」
「そういう技だから、試しに受けてみる?死ぬほど痛いよ?」
「…小籠包すげえ悪ィ顔してるぞ。」
「これでも地獄行きの悪党ですから。」
今まさにビッグゲテスターが崩れそうだというのに呑気な雰囲気を漂わせる三人組に対し、ベジータは腹に据えかねるものがあった。
ーーー…なんだあの野郎は…パワーは大したことないはず。それが…あのクウラを一撃で…!どうなってやがるチクショウ。
スーパーサイヤ人に覚醒したことで、王子としてのプライドと誇りを取り戻せたと思った。
現実はその逆、超えるべき下級戦士達との力の差を見せつけられ、しかも…眼中になかった存在に出し抜かれる始末。
ーーーちっ…頭に来るぜ…!だが最後に笑うのはこのベジータ様だ…!
血が滴るほどに拳を握るサイヤ人の王子に対して生暖かい視線を送っていたのはピッコロだった。
ーーーふん、こいつも孫達におかしくされちまったようだな。
さて、いつまでもこんな所にいるわけにはいかない。
次々と落下する瓦礫に潰されるような連中ではないが囚われたナメック星人達はそうはいかない。
ビッグゲテスターの妨害がなくなったことで囚われのナメック人達のスピリットをあっさりたどり、これを瞬間移動にてすぐさま退避させる。
しかも術者は2人もいる。彼ら全員を救い出すのに1分とかからなかった。
かくして…新ナメック星に訪れた未曾有の危機は去ったのである。
またしても地球の戦士達によって。
真・気功崩について補足
本編でだいぶ語った気がしますが…いわばピッコロの魔貫光殺砲と同じです。
ベジータなら面と向かってこう言うでしょう。
「俺には弱点を抱えたクソみたいな技」と。
「完全に決まれば」確かに超強力な技ですがやはり溜め時間がネック。
魔貫光殺砲と違うところは…チャージ時間ではなく構築時間なので、小籠包のスピリット制御技能次第でこれは短縮します。
いつかはノータイムで出せる様になるといいですね。