ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
やっと人造人間編に入れそうなので初投稿です。
其之百三 神様候補生デンデ!?
「ありがとうございます…この星を救ってくれただけでなく…攫われた同胞達まで救ってくださるとは…!」
全てを終えた戦士達はムーリの元へ訪れた…龍族達による治療術をそれぞれ受ける彼らへムーリは深々と頭を下げる。
「我々は2度も貴方達に救われました…その御恩は…どう返したら良いか…!」
あまりにも大きすぎる借り。
こんなモノ、永いナメック人の一生を使っても返せるとは思えない。
彼らが望むのならこの星のドラゴンボールそのものを渡してもいいとすら考えていた。
当然今回の敵も悟空が倒したのだとばかり思っているムーリは、何かして欲しいことはないかと何度も悟空に問いかけている。
「って言われてもな、オラ達は強ェ奴と戦ェて満足だしよ。ドラゴンボールも地球にあるしなぁ。」
彼は大変に無欲だ…いや、こと戦いにおいては究極の我儘なのだが…。
「孫、それに関しては私に預けてはくれないか。」
現れたのはカタッツの子である地球の神だった。
脅威が去ったことで小籠包の瞬間移動によって連れてこられたのだ。
「神様!久しぶりだな!」
「うむ、見違えたぞ孫よ。もうお主に稽古をつけてやることはできんな。」
「はは!そんなことねえさ、偶には相手してくれよ。」
「何を言う、私などもはや足元にも及ばんよ。」
かつての弟子の誘い文句を軽くいなしながら、彼はムーリの前で跪いた。
「お初にお目にかかります、最長老様…私は地球の神をさせてもらっているモノです。」
「顔を上げてください。貴方の星の民が我々を救ってくれたのです。頭を下げるべきは我々の方だ。」
「では失礼して…私からの要求を一つ、聞いて頂けませんか?」
ゆっくりと顔をあげて立ち上がる今度はまっすぐと対等に、神としてムーリに対して提案を持ちかけた。
彼が求めたのは自分と同じ龍族のナメック星人だ。
自分の後継者として、地球を見守ることのできる才覚ある人物。
ムーリは暫し考えた。心当たりがいる、そんな表情だ。
「わかりました、紹介したいものがいます。…デンデよここに来なさい。」
ムーリに呼ばれたのは今まさにラディッツの治療を終えたばかりの小さな小さなナメックの子供だった。
それはかつて最長老とともに小籠包達が匿っていたナメックの少年。
その能力が突出したものであることは…戦士達の治療の効果を見れば言うまでもない。
「彼は幼いですが、優秀な龍族ですよ。もしよろしければ彼を貴方の後継者にしてはいかがでしょう。」
「…私としては願ってもないことです…しかしの良いのですか?彼はまだ幼い。故郷から遠く離れた地に赴くのには抵抗がありましょう。」
才覚ある若者を求めたがここまでの若さは想定外だったのか。
流石に孫悟空の息子ほどと思われる子供を自分の我儘で連行するのは…そんな雰囲気を感じ取ったデンデが一歩前に出た。
「僕で良ければ是非地球の力になりたいです。」
「2度と帰って来られないのだぞ。」
神の脅すような一言。
怖がらせたいのではない、その場の勢いで一生に響く決断をさせたくはないのだ。
「何言ってんだ、いざとなったらオラか小籠包の瞬間移動があんじゃねえか。」
「う、うむ…それはそうなのだが。」
「……孫、少し黙っていろ。」
半身への憐れみか、あるいはライバルの能天気さを見かねてか、ピッコロがつい口を出してしまうほど悟空の言葉は場を凍り付かせていた。
「…うぉっほん、デンデとやら、君の決断は尊いものだ。だがよく考えるのだ。神となればおいそれと地球を離れることはできん。それでも、それでも私の跡を継ぐ覚悟が、君にあるかな?」
真っ直ぐ、神とデンデは見つめ合う。
暫しの熟考、幼い視線は最長老と仲間達へと投げかけられる。
その上で彼は大きく頷いた。
「はい、立派な神になって見せます。」
強い瞳、そう感じた。
これ以上彼を試すようなことはむしろ侮辱に値すると感じるほどに。
「ではよろしく頼む。君を立派な神にして見せよう。」
「…よろしくお願いします。」
「話はまとまりましたか?神様。」
二人の会話の決着に声をかけたのは、神をここに連れてきた小籠包だ。
神とのやり取りにデンデはその大きな瞳を更に大きく丸く広げた。
あの時、先代最長老を連れ出した時とはまるで別人だ。
「あの、小籠包さん、ですよね?」
「そうだけど。」
「以前と感じが違ったもので、すみません。」
感じる気配は確かに悪徳そのもの。
しかし神と会話するその姿は実に平伏した態度であり、彼の感じていた悪人像と随分かけ離れていたのだ。
「…神様、良い後継者をいただきましたね。」
「うむ、彼なら良き神になる。ところで、小籠包よ、神の後継者に先の態度は少しばかり不遜ではないか?」
「改めますよ、彼が立派な神になったらですけど。」
そう言う彼女は黄色の瞳をするりとデンデに流して見せる。
その会話の真意を全て理解はできなかったが、彼女が自分を激励していることだけは伝わった。
「はい、頑張ります。」
さて、いつまでも神が地球を空けておくわけにはいかない。
神は小籠包の肩を、デンデは彼女の服の裾を、ソレに続いてラディッツが神の添えていない方へ手をおいた。
地球の神殿、神を待つポポの気配を感じ取る。
今度こそ地球へ帰ろうと瞬間移動をする直前、視界に入る二人の一匹狼に気がついた。
「ベジータとマジュニアはどうやって帰るの?」
「孫の瞬間移動に決まってるだろう。貴様と神がいる所などこちらから願い下げだ。」
「…カカロット、俺様を地球へ連れていけ。」
「おう、じゃあ二人ともオラの肩に捕まれ。…小籠包、じゃあな。」
額に指先を当てた悟空が早々に瞬間移動で帰っていく。
「お前、ベジータにまで目の敵にされたのか。」
「知らないよ、私に出し抜かれたのが気に入らないんじゃないの?」
また面倒くさい奴に目をつけられたと小さくため息をつく。
さて、悟空のようにあっさり移動しても良いが、そうはいかない。
「デンデ、みんなに挨拶はしなくてもいい?」
彼にとってこれが今生の別れになるのかもしれないのだ。
一言告げるくらいの時間は用意するのが、彼女なりの筋というものである。
「はい、みんな今までありがとう。元気で。」
「うむ、しっかり勤めを果たすのだぞ。」
たったそれだけ。
信頼しあう同胞だからこそそれだけで良いのだろう。
デンデは術師を見上げて小さく頷いた、お願いしますと。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
地球に帰ってきた神を率いる小籠包。
瞬間移動にて神殿に着地した彼らをポポが出迎えた。
「神様、おかえりなさい。後継者、見つかったか?」
「うむ、紹介しよう同族のデンデだ、…彼はミスター・ポポ、地球の神に永く仕えている。この神殿でわからないことは彼に聞くといい。」
「はじめまして、ミスター・ポポ。デンデと申します…これからよろしくお願いします。」
「ポポでいい、神様が選んだ次の神様、ポポにとっては神様と同じ。」
「では、ポポさんで。よろしくお願いします。」
新しい住民を迎え入れる様子は実に微笑ましいものだが、神の真意を知る小籠包は実に複雑だった。
ーーーミスター・ポポはこのことを知ってるのかな。
神様が二人、ポポ頑張る。
などと仕事の充実ぶりにやる気を漲らせている様子から、おそらく隠しているのだろう。
あまりにポポが不憫でならない。
「…どうした。」
「ううん、なんでもない。帰ろう、私達が長居するところじゃないよ。」
「ふ、そうだな。」
自称悪党コンビ。
彼らが振り返った先に現れたのは瞬間移動してきた孫悟空だった。
「カカロット、どうした。」
「さっきの兄ちゃんのすげえスーパーサイヤ人を思い出しちまって、もっかい見せてくれーーーイデ!?」
神の居城だというのにあまりにいつも通りすぎる彼の脇腹を躊躇なく小突いた。
「あのね!神様の領域に気軽に瞬間移動するお馬鹿がどこにいるの!」
「固ぇコト言うなよ姉ちゃん、オラと神様の仲なんだしよ。」
「誰がお姉ちゃんだ!?」
「さっきチチが言ってたぞ、兄ちゃんと結婚すんだろ?なら小籠包は姉ちゃんだって。」
「ッ〜〜まだしてない…!!」
説教をしたはずなのがいつの間にか悟空の話題に呑まれてしまう。
これも孫悟空の不思議な所だ。
ソレはソレとして、小籠包が注意した手前、ここで井戸端会議されるのは神として看過するわけにはいかない。
「孫、小籠包の言い分も聞いてやれ、姉と慕うのであればな。」
「そっか、悪ィな姉ちゃん。」
神にそう言われては黙らざるを得ない。
ソレを知った上で神は意地悪く微笑んだ。
ーーー誰のおかげで新ナメック星が救えたと…!?
なぁんてことは口が裂けても言わない。
そして肝心の相棒は同情するように肩を叩くしかなかった。
ーーー諦めろ、こいつはそう言う奴だ。
ーーーうっさい。
すぅ、と大きく深呼吸をして茹る頭を落ち着かせる。
苦し紛れになんとか出した返し言葉は報酬の確認だった。
「…報酬の件、忘れていませんよね。」
「無論だ、精神と時の部屋、お前が望む時に使うといい。」
「はい、では失礼します。」
まるで捨て台詞、舞空術を使わずに神殿の際から身投げの様に飛び降りる。
その先にいる仙猫に挨拶をするために。
如意棒の節が何度か視界の端で通過したころその住居は見えてくる。
彼女が落下するのをまるで待ち構えていたかの様に仙猫はそこにいた。
「こんにちはカリン様。」
「騒々しい弟を持ったのう。」
「腹ペコの悟空くんをここに放り込んでもいいんですよ?」
「良さんか!これ以上食い扶持を増やされたら堪らんわい。」
「次弄ったら本気でやりますからね。」
辛うじてできる彼女なりのカウンター。
多少溜飲が下りたのか、それ以上追撃することはなかった。
ぐぬぬ、と杖を握り締めたカリンはふと、真面目な顔をした。
「お主に伝えねばならんことがある。」
「お邪魔しても?」
「うむ。」
おふざけではなく本当な大事な話。
宙に浮遊しながらでは無礼だ。
そう感じた彼女は主の許可をもらって中に入った。
「お主の師のことだ。」
「…老師に何かあったのですか?」
黄色の瞳が鋭くなる。
師の一大事となれば、駆け付けねばならない。
むしろ今すぐにでもどうにかしなければ、そうイキリ立つ彼女をカリンは静かに宥めた。
「どこぞのモノと交渉をしてあったぞ。自分を改造しろ、などと物騒な事をな。」
「……。」
その言葉に思い出すのは以前フリーザをあっさり倒したあの謎生物の忠告だ
ーーー3年後…私とは別の、人造人間がこの世界に現れる。
彼がわざわざ忠告を選んだ。
背後に控えている超サイヤ人を見た上でだ。
ーーーセルの言ってた脅威って…先生のこと…?いや、まさか…先生がそんなことをするわけ……!
難しい顔をする彼女の心を読むまでもない。
カリンはこの若き元殺し屋が何かを知っていると勘付いた。
「何か思い当たることがある様じゃな。」
「…3年後、恐ろしい奴らがこの地球を襲う。…そう言う予言を受けてます。」
「まるで未来を知っている様な口ぶりじゃのう。」
「…そうですね。」
未来からの使者、そんな話をカリンにするわけにはいかない。
…少なくとも公然と口に出すことはしなかった。
「その判断は正解じゃぞ。ワシが聞いたのは下界人の与太話。そう言うことにしておこう。」
「…本当にヒトが悪いですね、貴方は。」
「ヒトじゃないからの〜ほほほ!」
カラカラと笑うカリンの目は笑ってはいない。
サイヤ人襲来の余波が漸く一区切りついたというのに、新たなる脅威が来るというのだ。
力になりたいのは山々だが、もうすでにカリンの手を出せる範疇を超えている。
今はこの若人達に全てを託すしかないのだ。
「仙豆はできる限り減らさぬようにしておこう。万が一のためにな。」
「…助かります。」
「そう不安になるでない。決してお主は劣ってはおらん。今はな。」
もう既にカリンが教えられることはない。
それでも強さの質を測ることにおいては、彼は正確だ。
その彼が言うのだ、「まだお前には先がある」と。
「…ワシに言われんでもわかっとるわーって顔じゃのう。」
「いえ、カリン様に言われると自信が持てます。やるだけやってみるつもりです。」
ニヒ…!
澱みのあった表情から打って変わって、挑発的な微笑みが浮かび上がる。
「うむ、その調子じゃ。お主ならサイヤ人達にいつか追いつけるであろう。」
「私のことより、
「…残念じゃが、ワシの千里眼でもわからん。」
カリンの目ですら見通せないと言うことはその場所はかなり巧妙に隠されているのだろう。
それこそドラゴンボールで確認するのも一つの手である。
しかし、彼女にそのつもりはなかった。
「…ふむ、詮索はするつもりはなしか。」
「顔に出ていましたか?」
「お前さんはわかりやすいからのう。」
何度もいう様だが、彼女はこれで何を考えているかわからない。と依頼主からも舌打ちをされた存在である。
…彼らの言うわからない、は文字通りの意味も含まれていたのだが、神を前にしては彼女もまた一人の人間に違いないと言うわけだ。
「…
「そういう割に納得していないようだが?」
「……そんな事をしなくても、あの人は強いです。」
いや、そんな事は…と言いかけてカリンはその言葉を呑んだ。
彼女の言う強いは所謂戦闘力とは違うところにあるのだろう。*1
「奴なりに思うところがあるのだろう、弟子のお前が一番よくわかっているのではないか?」
「あの人はいつも私の想像を超えるので。」
本当に?…と言いかけてまたも彼は言葉を呑んだ。
あんまり他所様の師弟関係に口を出すのも良くない。
カリンは空気が読めないようで、空気の読める猫なのである。
「次に会ったときは気をつけよ、お主の知る師ではなくなっておるのかもしれん。」
「はい、忠告感謝します。」
立ち上がった頃、ちょうど悟空達が神殿の上空から降りてきたところだった。
彼女を呼ぶ声に立ち上がった簡単な挨拶と共に背を向ける。
「これ、小籠包。先ほど破門されたと言ったな。」
立ち止まる。その先の言葉は聞くまでもなかった。
敢えて視線だけを送って、彼女は答えた。
「100年は待ってくださるのでしょう?」
「猫は気まぐれじゃからの〜」
「ではカリン様の気が向いたら拾って上げてください。」
そう言って彼女はオーラを纏って二人のサイヤ人と共に下界へと飛び去って行った。
それ、《行けたら行くわ》と同じ奴じゃな〜。
などと考えながら長い髭を寂しげに撫でる仙猫だった。
ラディッツがいなかったら、弟子入りしていたかもしれない。