ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
やっと人造人間編が始まるといったな?アレは嘘なので初投稿です。
メタルクウラの一件からおよそ半年が経過した。
戦士たちは各々のやり方で進化を目論んでいた。
「はぁ…!はぁ…!」
場所はピラフルーム。
無機質なドーム空間の中、小籠包は激しく息を切らしていた。
修行の相手は言うまでもなくラディッツだ。
「随分腕を上げたな。」
「そう言うなら汗の一つでもかいてくれない?」
ラディッツの言葉に一切の偽りはない。
この1年間…彼女は恐ろしい速度で成長をしていた。
既に通常状態では彼女に太刀打ちできないほどに。
しかし、それでもクウラは愚かナメック星で対峙したフリーザのフルパワーには及ばない。
それがわかっているからこそ、ラディッツの賞賛は嫌味にしか聞こえなかった。
もちろん、本人は心の底からの言葉なのだが。
「気功崩だって完成してない、コレだけ見知った相手なのに、ラディッツに当てられる気がしない。」
こんなことでは、来る人造人間…ひいては肉体改造によって更なる進化を遂げる師匠に顔向けできない。
既にピッコロにすらそのパワーを完全に追い抜かれてしまった。
まだまだ限界は見えない、あの頃のような絶望感は感じていない。
それでも、周囲に比べて彼女の成長は緩やかに感じてしまうのだ。
「ふん、下級戦士とはいえ、俺はサイヤ人だそう簡単に抜かされるわけにはいかんな。」
「なぁにがサイヤ人よドーピングインチキ野郎。」
「ふん、俺はベジータたちのような高潔な奴らと違うんでな。」
勝つためなら、強くなる為なら何でもする。
それがラディッツという男だ。
仮にターレスが神精樹の実を分けてくれるというのなら喜んでかぶり付くだろう。
それが数多の命を犠牲にした実であろうとも、小籠包を守る為なら彼は手段を選ばない。
…彼は伸び悩んでいた。
ヤードラットに旅立つ前、己が限界に弱音を吐いた彼女のように、今度はラディッツが自らの限界を感じ始めていたのだ。
それでも彼の瞬間的なパワーは地球の戦士最強である。
が、それも瞬間的なものだ。
それを使ったら最後、彼は気のほとんどを使い果たして戦えなくなる。
あの時のメタルクウラの時のように。
サイヤ人の王子と弟が確実に自分へと肉薄しているの感じている。
あの二人は紛うことなき天才だ。
自分のような偶然力を手にした凡人とは違う。
どこまでも強くなっていくだろう。
このままいけば間違いなく自分は置いていかれると彼は確信していた。
「…で、そう言うラディッツはどうなの。」
「何のことだ。」
「この私相手に隠し通せるとでも思った?」
彼にとって最大のコンプレックスは小籠包といってもよかった。
今の彼女はフルパワーを出さずとも相手の力量がわかる程度にはスピリットの大きさを感じ取れる。
…いや、そんなことをせずともラディッツが自分と同じ悩みを抱えていることくらいお見通しなのだ。
「俺のことはいい、自分のことに集中しろ。」
「その言葉、そっくりそのまま貴方に返してあげる。」
小籠包は自身の伸びが、超格上のラディッツを相手にしているからこそ成り立っているものだと思っている。
…それは裏を返せば、ラディッツの足手纏いになっていると彼女は感じている。
「いざとなれば精神と時の部屋にでも入る。」
今の彼は紛うことなき地球最強だ。
その彼がどうにかできない時点で地球の命運は終わっていると言っていい。
「そう、外の空気を吸ってくるね。」
それを誰よりもわかっているのは小籠包だ。
己の生存確率を上げる為に時間を割いていることをわかっているからこそ。
彼女はそれ以上言及することはなかった。
その背中を見送って、暫し考える。この半年…彼は驚くほど成長していない。
多少の上達はあるが、コレを成長と言えるかは甚だ疑問だ。
このままではジリ貧であることはラディッツ自身もわかっている。
彼に必要なのは師だった。
下級戦士だった彼が劇的な進化を遂げたのは何よりその精神性のあり方が変わったことも大きな要因だが、一番は小籠包が彼に気の扱いを教えたからである。
その小籠包がサイヤ人とは別の方向へと進化をしていった。
進化の系統が異なる以上、彼女はラディッツの師にはなりえない。
同族の二人もそうだ。
弟のやり方はどちらかと言えば小籠包に近い。
かと言ってベジータは人に物を教えるような奴ではない。
ふと、ここである人物を忘れていたことに気づいた。
ピッコロだ。
彼は以前、ベジータ達が来るまでの間、悟飯の師匠をしていたと聞く。
ど素人の子供をあそこまでの戦士に仕上げることができるのなら、自分に足りない物を教えてくれるかもしれない。
「…奴と一度会ってみるか。」
彼の成長も著しい、既にナメック星人の領域を大きく逸脱している。
彼も天才と呼ぶに相応しいだろう。
何より、ピッコロとは同じ師を持ちながら独自の進化を遂げた戦士だ。
ヒントを聞くのにこれ以上の人材はない。*1
何かあれば瞬間移動で迎えに来るだろう、相棒に特に告げることもなく、彼は早速目当ての人物へ会うべく…ピラフルームを後にした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
弟の住むバオズ山の更に奥…静かな森林の中に目当ての人物は瞑想をしていた。
ネイルと同化して以降、彼の中で小籠包に対する敵対心が薄れ……るはずもなく、相変わらず彼女をどう倒すか。
それをイメージの世界にて戦っているのだ。
彼はストイックな戦士だ、たとえイメージの中でも甘い展開も妥協もない。
ピッコロの小籠包像は完璧と言っていい。
時折感じ取れる大きな彼女の気配から殆ど同一の戦士をイメージの中で複製し、これと戦う。
結果は必ずと言っていいほど黒だ。
だが、その結果も惨敗から徐々に変わりつつある。
パワーは完全に彼女を超えたことにより後一歩で彼女に地面にたたき伏せる所まで来ているのだ。
今度こそ、その生意気な顔面を地面に減り込ませるところで、受け身と舞空術の合わせ技による体勢リカバリー、ストンプを決めた僅かな隙をつかれて顔面にカウンターの回し蹴りをもらってKO。
後一歩、その後一歩のところで必ず逆転の一手を掴まれるのだ。
相変わらず勝てるイメージが沸かないと舌打ちをしたところで、近づいてくる地球最強の男の気を感じ取った。
ーーーラディッツか、一体何の用だ…?
閉じていた双眸をゆっくりと開き、サイヤ人の気が近付いてくる方角へと視線を向ける。
程なくしてオーラを纏いながら現れたラディッツを静か見つめた。
「久しぶりだなピッコロ。」
「何のようだ、俺を殺しにでも来たか?」
「今更お前を殺してなんになる。」
肩をすくめる、彼もまた残忍なサイヤ人から随分と変わった。
その性根は間違いなく悪党ではあるが、在り方は善人といっていい。
仮に、地球に来たばかりのラディッツなら理由もなくピッコロを踏み潰しただろう。
「お前も温くなったな?…だったら何しに来た。」
「…俺に足りないものを知りたい。ピッコロ、お前はどうやってここまで強くなった。」
「そんな甘っちょろい事を言うためにここに来たのか?強さに近道などない、帰ってトレーニングでもするんだな。」
くだらない、吐き捨てるように返した。
己がどうやって極めたか?
言うまでもない、地道な鍛錬の先に今の自分があるのだ。
大猿だのスーパーサイヤ人などでインスタントに強くなれる種族にはそんなこともわからないのか。
相手にするだけで無駄と、彼は再び瞑想に戻る。
「そんなことはわかっている!」
瞑想に戻るなか胸ぐらを掴まれる。
その目は明確な怒りの炎が灯っていた。
「2年だ…!ナメック星のあの日から2年…!小籠包とトレーニングを続け、あいつは確実に進化している!だが俺はどうだ!?あの日から何も変わっちゃいない!だと言うのにだ!貴様らは恐ろしい速さで進化しやがる!なんだ!?俺には何が足りん!?ベジータのような誇りか!?カカロットの様な純粋さか!?貴様の様な強さへの渇望か!?小籠包の様な冷酷さか!?」
そこまで言ってラディッツはようやく手を離した。
「その答えを俺が持っていると思うのか?」
「お前は素人の悟飯を戦士に仕上げた奴だ。お前とやれば何かわかるのかもしれん。そう思っただけだ。」
ピッコロは目を細める。
確かにラディッツの強さは大きく変化していない。
その理由をピッコロはなんとなく理解していた。
「ラディッツ、お前の強さは神精樹の実によるものだったな。」
「それがどうした。」
「これは俺の想像だが…,」
その前置きを元にピッコロは続けた。
元々神の片割れである彼は神精樹の実がなんであるかは知っている。
もっとも、星一つを養分に果実を実らす野蛮な樹という程度の情報だが。
その実は本来神にしか食べることを許されていない。
神でもないラディッツが食した所で本当の恩恵は受けられていないのではないか。
ピッコロはそう考えている。
今の力は神精樹の実によって強引に引き上げられたものであり、ラディッツ本来の力ではない。
そんな状態で鍛錬をした所で、偽りの強さが強くなるはずもないのだ。
神精樹の実の力は神精樹の実でのみ増強する。
小籠包が指摘した通り、今のラディッツは有り余る膂力を力任せに振るっているだけなのだ。
外付けの力などまともに制御することなどできない。
だからこそ力任せに戦うしかない。
「少なくともベジータ達が来た時のお前はそんな戦い方ではなかった。お前のいう″大猿の力″とやらの制御が効かんのも少なからず影響してるはずだ。」
過ぎたるは及ばざるが如し。
身の丈に合わない大きなエネルギーはそれ以上のモノにはなり得ない。
今のラディッツが正にそれに当てはまる。
「ではどうすればいい?ドラゴンボールで実の力を分離でもするのか?」
「何を寝ぼけたことを言っている。使いこなせないのなら使える様になるまで徹底的に鍛え直せ。
そう言いながらラディッツめがけてホイポイカプセルを放り投げる。
それは、簡易タイプの重力発生装置だった。
「小籠包から押し付けられたモノだ、貴様にくれてやる。」
受け取ったカプセルを見つめるラディッツに彼は続けた。
「仲睦まじい事は結構だが、奴にかまけてる以上、お前はそれまでだ。小籠包は貴様の助けなど必要ない。いつか足元を掬われるぞ。奴を守りたいなら貴様が強くなれ。」
そこまで言った所で両目を閉じ、再び瞑想に戻った。
自身の中の宿敵に再戦する為に。
生み出された虚像との戦いが始まったことで、もう既にピッコロはラディッツなど眼中になかった。
かける言葉は不要。
そう解釈したラディッツは無言でその場を飛び去った。
ーーー奴を守りたいなら貴様が強くなれ。
ピッコロの言葉が胸に刺さったまま抜けない。
自分の悩みは数年前の小籠包と同じ…それは大きな間違いだった。
彼女は文字通り自身のベストを尽くし袋小路に迷い込んだだけだ。
自分はどうだ?果たして彼女のように種族の限界に挑んだのか?
彼女を理由にして自らの可能性を閉ざしていただけではないのか?
才能の差は確かに存在するだろう。
ベジータは独力で伝説の力に目覚め、
弟はその柔軟な思想から様々な方向から技を取り込む。
自分にできるのは力任せな突撃だけ…ならばそれを極めるしかないのだ。
ばきり、と彼はカプセルを握りつぶした。
ーーー目が覚めたぜ…!俺には…いや俺たちのやり方はこうじゃなかったはずだ。
弱き者に合わせるのではない、弱き者が強き者に喰らいつく。
それが彼らのやり方、いつの間にか互いの絆が深まることでその在り方を見失っていたのだ。
ピッコロの言う通り、今の二人は甘っちょろいと言わざるを得ない。
文字通り小籠包を叩き潰す程度はしなければ互いの為にはならない。
ラディッツの顔は実に良い笑顔を浮かべていた。
ただし、見る者が見たらとんでも無い極悪人と思われるようなわるーい笑顔であるが。
その後、彼はピラフルームを占領した。
いや、占領という言い方はおかしい、重力の設定を150倍に固定したのだ。
奇しくもサイヤ人の王子が設定する値と同等のモノ。
自身に内包された莫大なエネルギーを力に変えるために、一から鍛え直すのだ。
戦闘力更新
小籠包
基本最大:40万=>250万
真気功法:800万=>5000万
超格上との戦いを常にすることによって大幅パワーアップ…と言うわけではない。
新たなステージによるレベルキャップ解放と彼女自身の才能によって潜在能力が開かれている。
ピッコロの言うことは概ね正しい。
迷いのない小籠包は一人でも強くなれるのだ。
ピッコロ
基本最大:1000万=>6000万
修行の天才。
強くなりつつあるライバルの気に負けじと延々と鍛錬を続ける。
この調子なら人造人間襲来時には「億」の領域に踏み込むだろう。
神の片割れゆえの知性とネイルの厳格さを併せ持った知恵者として確立しつつある。
もう大魔王の面影はほとんどない。
ラディッツ
基本最大:2000万=>2200万
超1-1:11億
大猿パワー:33億
ピッコロとのやりとりにて自分と、そして小籠包のやり方を思い出す。
仲良く二人三脚で進むなんてやり方は悪党のやり方ではない。
ついて来れないのなら切り捨てる。
それが小籠包とラディッツのやり方だったのだ。
人造人間襲来まであと半年、ラディッツもやっとスタートラインに立ったといえよう。