ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 遂にあの便利ルームの解禁なので初投稿です。


其之百七 小籠包の覚悟、打倒桃白白!

 

 某日、ピラフルーム。

 重力を100倍に高めた部屋の中、1人瞑想に耽るのは小籠包。

 その気配はラディッツすらも近寄りがたい殺気を振り撒いていた。

 寄らば斬る、そんな雰囲気を纏う彼女は明らかに異常だ。

 

 こういう時、ラディッツは彼女に語りかけるなんて真似はしない。

 彼女から話すつもりがないのなら、引き出そうとしてもシラを切られるだけだからだ。

 

 …凡そ、予想はついてしまうのだが。

 とはいえ放置するわけにもいかない。

 かれこれ半日、休憩も無しに瞑想をし続けているのだ。

 戦いの相手は、言うまでもない。

 

 サイヤ人ほどではないとはいえ、彼女とて半分は地球人、食べねば死んでしまう。

 パフォーマンスも低下するだろう。

 見かねたラディッツは全く気は進まないが殺気がわずかに緩んだその時、彼女の間合いに入り込んだ。

 

 「……なに?」

 

 異形の瞳が、ぬるりとこちらを見据える、それだけで背筋に大量の冷や汗が滲むのを感じた。

 蛇に睨まれた蛙、そんな形容がもっとも似合うであろう。

 戦闘力はラディッツが遥かに上だ。

 ソレでも彼女に恐れをなすのは通常状態ではなす術なく殺されるとわかっているからか。

 それともこの女の持つ値の知れない気配に、戦闘民族の本能が警鐘を鳴らしているからなのか。

 

 「飯の時間だ、食わんと身にならんぞ。」

 

 噴き出る冷や汗とは裏腹に努めて冷静に言葉を並べ立てる。

 ぱち、瞬きを一つすると瞳の奥から感じた鬼はいつの間にか消え、気まずそうに笑う小籠包がそこにいた。

 自覚はあったらしい。

 

 「…ありがとう。」

 「何をそんなに殺気だっている。」

 「別に。」

 「この俺に隠し事か?」

 「なにその言い方、ずる。」

 「俺が卑怯者なのは良く知ってるだろう。」

 

 うるさい、そう言いながら彼女は足早に去っていく。

 やはり何かを隠している。

 それも彼女が捨てた殺し屋の身分を思い出すほどの相手。

 

 伝説の殺し屋、桃白白である。

 

 弟のカカロット曰く、地球人にしてはかなりの達人だがそれまでの相手らしい。

 しかし、彼女がここまで畏れを為す相手だ。

 油断ならない相手なのは言うまでもない。

 

 ーーー気に入らんな。

 

 小籠包は自分の女である。

 いくら師匠とのやりとりといえど隠されるのは納得がいかない。

 何も果し合いをするのに立ち会わせろなどと野暮なことを言うつもりはない。

 たかが地球人相手に彼女が負けるなどありえない。

 

 だがそれはそれだ、命懸けの勝負をするのなら()()()()()()()()()()()()()()

 そう考えると彼の頭は自分が思う以上に茹ってしまう。

 ここは一つ、ガツンと一言伝えるべきだろう。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「やだ。」

 

 彼の会心のガツンとした一言はたった2文字で拒絶されてしまった。

 この俺に隠し事は許さん、さっさと話せ。

 これ以上なく最高にキマった一言だと自負しているのにだ。*1

 

 「おま…!なんだその態度は!」

 「ラディッツこそライン超えじゃないの?」

 「ええい!黙れ!お前が何を考えてるのか大体想像はつくが!」

 「じゃあ良いじゃない、万事解決だね。」

 「ソレが気に入らんと言っとるんだ!」

 「うわー、サイヤ人ってめんどくさ。」

 「俺は絶対に間違っとらんぞ!貴様!天津飯と餃子にもそんな態度を取るのか!」

 「……確かに。」

 

 あの2人は彼女にとって最大の泣きどころだ。

 なんせ育ての親ならぬ育ての兄と言って良い。

 師匠とはまた違った意味合いを持つのだ。

 

 あまりにもちょろい小籠包は観念したように一枚の封書を懐から取り出した。

 

 「なんだソレは。」

 「先生からの果たし状。」

 

 余りにも予想通りすぎてラディッツは頭を抱えた。

 やはりこの女は自分に黙って命懸けの戦いに出るつもりだったのだ。

 当然、勝利の確信があるわけでもない。

 なんならそのまま朽ち果てるつもりすらあっただろう。

 彼女はそういう女である。

 

 「勝算はあるのか。」

 「ないね、殺されると思う。」

 

 これである。

 看取られるつもりなど最初からないのだ。

 死んだって地獄で会えるでしょ?

 そんなことを真顔で言うのだ。

 内勤を選択した自身の母親よりよっぽどサイヤ人している。

 

 「ついてこないでよね、先生には1人で来いって言われてるし…そんな場合でもないと思うよ。」

 「…なぜだ。」

 「人造人間が現れるって書いてあるよ。」

 「貴様ァ!!ソレはさっさと話さんか!!!」

 「…怒鳴ることないじゃん。」

 

 これが怒鳴らずにいられるか?

 忘れてた、そう顔に書いてあるのだ。

 怒号の一つでも飛ばしたくなる。

 

 「いつだ、いつどこに奴らは現れる!」

 「3日後、南方にあるあめんぼ島って書いてあるよ。私はいかないけど。」

 

 封書を懐にしまいながら当たり前のように彼女は吐き捨てた。

 地球の命運と師匠との果し合い。

 彼女にとって比べるまでもないのである。

 今度こそ、師を超える、殺してやる。

 

 憎悪による殺意ではない、親愛による殺意だ。

 殺し合いの中で生まれるコミュニケーションは存在する。

 そんな狂った師弟関係が桃白白と小籠包である。*2

 

 「ちィ…!こうしてはおれん!俺は行くぞ!」

 

 いそいそと戦闘服に着替えてラディッツは飛び出して行った。

 行き先は色々だろう、雇い主であるピラフを始め、孫悟空やピッコロ、ベジータや天津飯…戦力をかき集めるべく彼は飛び出したのだ。

 

 最初から小籠包の瞬間移動には期待していない。

 完全に他人事、その背中に向かってヒラヒラと片手を振って見送った彼女は、ピラフルームに足を運ぶのではなく、意識を天界へと向けた。

 

 感じるは神と見習いのナメック星人の気。

 

 ーーーじゃあね、ラディッツ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()、彼女は天界へと瞬間移動した。

 

 視界に入り込んだのは今まさに修行中のデンデ、今は千里眼の会得に精力的になっているようだ。

 その集中具合は目を見張る、なんせ小籠包が現れたことに気づいていないのだ。

 気配をゼロにしている彼女は当然足音もゼロにできる。物音一つ立てずに彼女はデンデのいる部屋から離れた。

 …このまま精神と時の部屋に行っても良いが、流石に神の住居に無断で立ち入って好き勝手するわけにもいかない。

 彼女は真っ直ぐ、神の元へと向かった。

 

 「…お前がそのような姿勢をとるとは珍しい。」

 「精神と時の部屋を使わせてください。」

 「良かろう、人生最期の時間、ゆっくりと噛み締めるのだぞ。」

 「感謝します。」

 

 下界を見渡している神にとって小娘1人の隠し事を暴くことくらい容易い。

 そして、彼女がこれから挑む相手が未曾有の強敵であることも、そして彼女に万に一つも勝ち目がないことを。

 だからこそ彼女は最期の修行場所をここに選んだのだろう。

 

 

 別れを惜しむ時間すら無く淡々と精神と時の部屋へと向かう小籠包に、少しばかりの願いをこめた視線を神は送り言葉を送った。

 

 「48……いや、24時間だ。それ以上は許さん。」

 

 己の残酷さを神は自嘲する。

 最期の修行だと言うのに、目一杯やらせない。

 これは流石に文句の一言でもあるだろう。

 そんな神の期待とは裏腹に、視線だけ寄越した小籠包はふわりと微笑んだ。

 

 「わかりました。」

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 歩くこと1分、神殿の最奥にその入り口は存在した。

 真鍮製のドアノブには埃一つついていない。

 ミスターポポが欠かさず掃除をしているのだろう。

 

 ドアノブに手をかけて、彼女はゆっくりと時の異次元空間にその身を投げ込んだ。

 …この瞬間、地球上から小籠包の気配は完全に喪失した。

 

 清潔感ある純白のタイルを踏み締める。

 簡素な建屋の外にはただただ無限に広がる空間がそこにあった。

 オーロラを思わせる神秘的な空間、しかしその美しい見た目に反してその気温は40℃を記録している。

 

 ーーー重い。

 

 重力は大したことないはずだ、しかしこの身にかかる重圧のなんと重いことか。

 ゆっくりと深呼吸をして思考を切り替えようとする。

 足りない。…空気がとてつもなく薄い。

 

 ーーー重さの正体は、これか。

 

 酸素が薄いと言うことはパフォーマンスをフルに活かしれないと言うこと。

 今の彼女の膂力は平常より大きく低下していると考えても良いだろう。

 無茶な修行をすればあっさりお陀仏になるのは目に見えている。

 

 …にひ。

 

 口角が吊り上がり凶悪な微笑みがそこにはあった。

 だからどうした、ここで死ぬか、師に殺されるか、ただそれだけの違いだ。

 ここで死ぬようなら師に立ち会うことなど認められるはずもない。

 自分に許されるのはここで限界を越えることだけなのだ。

 

 「やってやる。サイヤ人も、マジュニアも、桃白白も…全部踏み潰す…!」

 

 極限まで薄い酸素の凶悪な重力の合わせ技。

 もとより彼女は地球人とヤードラット人のハーフ、サイヤ人のように頑強な肉体をもつ種族ではない。

 あっという間に体力を持っていかれ()()()1()0()()()()()にすら膝をついてしまった。

 その昔、界王に言われた言葉をおもいだす。

 

 お前は術に頼りすぎている。

 あまりにも厳しい神の言葉、こうしなければ自分は最前線立つことはできないのだから。

 これはあの日の焼き回しだ。

 瞳をゆっくり閉じる。

 

 10倍、ソレは界王星の重力と同じ。

 しかして侮るなかれ、この空間は極限まで酸素の薄い異空間だ。

 油断をすれば間違いなく自分はペシャンコに潰れてあの世行きだろう。

 

 覚悟を決める必要なんてない、彼女はするりと奥義で身に纏っているスピリットを手放した。

 瞬間、全身に襲い掛かる壮絶な重圧。

 あの日と違うのは立っていられないほどではない。

 歩くこともできるし、走ることもできる。

 

 しかし、それは一般人レベルでの話だ。

 こんな状態では同じレベルの武道家に一瞬で叩きのめされてしまうだろう。

 まず修行の第一段階は、この状態でまともな動きができるようにならねばならない。

 

 彼女が選んだのは基礎体力の増強だった。

 幾ら鍛錬をしても真気功法の密度は精々が20倍。

 それ以上の上達を見込めなかったのである。

 

 ヤードラット人の特性か、あるいは半分地球人の血が混ざった雑種故か、スピリットばかりが異様な成長をしてしまう。

 

 気功崩の完成はまだ見えない以上、彼女自身が正攻法で強くなる他ない。

 

 文字通り血反吐を吐くような特訓が始まった。

 ひたすらに形稽古を繰り返す。

 常人には致死レベルの酸素濃度の中、超達人級が満足行くレベルにまでひたすら実行と自己評価を繰り返す。

 もちろんスピリットの制御修行もだ。

 陽が沈む…ことはないが、起きて飯を食らい稽古、飯を食らい稽古、飯を食らい寝る。

 決して美味くない粉の塊を引っ掴んでは水で押し流す雑な食事。

 美食家であれば耐え難い苦痛であろうが、幸いにも彼女は「腹が膨れればよい」そう言うタイプの戦士だ。

 

 3ヶ月。

 ようやくまともな動きができるようになった。

 しかしまだまだ足りない、これでは()()()()()()()()()

 真気功法があれば倒せるのは当然だ。

 奥義を使って漸く過去の脅威の互角であるのは下の下である。

 苛立ちに地面に拳を叩きつけても、傷つくのは己の拳のみ、それがまた小籠包を苛立たせる。

 

 半年…外界の時間では12時間ほどが経過した。

 この空間での修行に随分慣れてきた。

 真気功法を使わずとも、スーパーサイヤ人を引き摺り出す事ができるだろう。

 …それだけだ、その後に待ち構えているのは一方的な蹂躙。

 こちらも奥の手を出さなければならない。

 ソレではダメだ、高みに到達しているであろう師に対してそんな腑抜けた力で挑めるはずもない。

 

 更に3ヶ月。

 外界では18時間…。師との果し合いの時は近い。

 遂にその力は()()()()使()()()()()フリーザを圧倒できる程に極まった。

 まだこれでは足りない。ここでやっとスタートラインだ。

 

 1年。

 外界では24時間が経過した。

 この3ヶ月を彼女は真気功法の更なる研鑽に注ぎ込んだ。

 今の彼女なら真気功法を更なる高みへと持っていける。

 その成果もあって、真気功法の精度は格段に上がった。

 

 「………。」

 

 精神と時の部屋の建屋の前、もはやこの極限まで薄まった酸素は彼女にとって単なる負荷トレーニングにしかならない。

 異形の瞳を閉じて深呼吸を一つ。

 以前はこの深呼吸一つしてもまともな呼吸を得られなかった。

 

 するり、と開いた瞳に宿るは鬼。

 ぎちり…と両の拳に力を込めて全身にスピリットを漲らせる。

 

 「気功法!」

 

 1年間封印してきた気功法の常駐を解禁する。

 邪悪な紅の焔が天高く舞い上がり、彼女の中は収束し、充実していく。

 

 ーーー…ッ、この程度…?

 

 確信できる、今ならクウラであろうと、ラディッツであろうと、容赦無く地獄に落とせる。

 …しかし、たかがそれだけのパワーで師を超えたと言っていいのか?

 彼女の目指す頂きは、本当にそれだけで挑むに値するのだろうか。

 

 …しかしこれ以上はいけない。

 神の言いつけを守るためではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 今の彼女にはこれが精一杯と言える。

 真気功法でその身に纏ったスピリットを解き放つ。

 スピリットをゼロに戻して、彼女はゆっくりと精神と時の部屋を後にした。

 

*1
ラディッツ調べ

*2
なお弟子側の一人相撲





戦闘力更新
 小籠包
 基本最大:250万=>1000万
 真気功法:5000万=>2億

 敬愛する師匠からの死刑宣告にハイ喜んで!と無邪気に飛びつく狂人。
 世界の危機より師匠との立ち合いを望むあたおか戦闘民族ヤードラット地球ハーフ人
 半分サイヤ人の悟飯より血気多いのなんなんだろうか。
 
 ただでやられる訳にはいかないのでソレなりに準備はしている。
 寧ろ殺してやる、そんな覚悟の切り札投入である。

 基本最大:1000万=>2億
 真気功法(20倍相当):2億=>40億
 真気功法(40倍相当):80億

 精神と時の部屋を使っての特訓。
 基礎から鍛え直した結果、彼女の戦闘能力は飛躍的に向上した。
 そして奥義の更なる精度の向上、文句なしのラディッツ超え。

 しかしあまりに哀れ、ここまで進化しても敬愛すべき師の背中はあまりに遠く、そして来たる最悪の脅威にも…。

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