ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
おじさんのガバに巻き込まれた天才科学者の末路ということで初投稿です。
「ッ…データになかったぞ…!なんなのだ…!奴のあのパワーは!」
悟空達から命からがら逃げ仰せた20号、本来その体は疲弊などしないはずだ、その頭には彼の脳髄がそのまま格納されている。
だから感覚はまだ人間に…老体だった頃の自分を引きずっているのかもしれない。
必要のない激しい呼吸をぜーはーと響かせながら、彼は藁にも縋る思いで地下へと降りていく。
桃白白の反応が消えた…何者かに破壊されたか?それとも逃げ出したか?
…冷静に考えるなら、逃げ出したと取るべきだ。
しかし直後に発生した800億という恐ろしいパワーと
そんな風に舌打ちをしながらゲロは地下の階段を転げ落ちる勢いで降っていく。
たどり着いた先は…人造人間17号/18号
桃白白に比べればこいつらのパワーなど型落ち品もいい所だが…やはり孫悟空は彼らのパワーを超えることはなかった。
ーーーや、やむをえん…!こやつらを起動するしかあるまい!
その手に緊急停止コントローラをしっかり握りしめたまま20号は半ばボタンを叩き壊す勢いで彼らの起動スイッチを入力した。
桃白白の起動時と同じように…夥しい量の排気の煙を撒き散らしながら棺と銘打っても差し支えないカプセルがゆっくりと開く。
中からはどう見ても10代半ばの男と女…凶悪な兵器とは思えない何処かあどけなさを残した双子の姉弟。
いつでも停止コントローラで殺せるようにポケットの中で握りしめたボタンに指先をかけたまま…20号はゴクリ、とありもしない生唾を呑み下す。
そんな極限の緊張とは裏腹に無邪気にパチリと瞬きを一つした少年は彼を一瞥する。
「おはようございます。ドクターゲロ様。」
せ、成功だ。
あれほどマインドコントロールはうまくいかなかったはずなのに、ここ1番…最後の最後で彼は成功したのだ。
「う、うむ…き、貴様らの目標はなんだ。」
隠しきれてない動揺、彼らに正しく自身の目的をインプットできているか?
従順に命令を聞いてくれるのか?その最終確認である。
「孫悟空の抹殺、ですよね?ゲロ様?」
「おいおい、18号…今は俺がゲロ様と話をしてるんだ、割り込みするだなんて行儀が悪いぜ?」
17号の後ろからたおやかな声が上がる。
金色の髪を揺らしながら緩やかな微笑みとともに恭しく頭を下げる18号。
…完璧だ、マインドコントロールは完全に成功しているといっていい。
「…あぁ、お前達には奴の抹殺を命令する。」
ここに来てゲロは致命的な間違いを犯した。従順だと認識してしまったその瞬間…彼は最後の命綱である停止コントローラを離してしまったのだ。
「…それを聞く前に…一つよろしいですかゲロ様。」
「なんだ17号…ーーー!」
自らが与えた12億という途方もない戦闘力、彼はその膂力をフルに活用し…一瞬の油断をついて20号の手元から停止コントローラを強奪した。
「これは俺達が預からせてもらおうか。」
「き、貴様ーーーご、ふ!?」
何が起きたのかを理解する前に彼の胸元を18号の鋭い手刀がえぐりとっていた。
これが生身の人間なら凄まじい量の体液を吐き出していただろう。
飛び散るのは大量の機械部品。
がら、がらと金属音を散らばせながらもまだ20号は機能停止していない。
「な、何をーーーする…!私は、お前達のーーー産みの親ーーー」
その言葉が最後まで紡がれることはなかった。
鮮やかな17号のハイキックが容赦なく20号の顔面を千切り飛ばしたのだ。
「俺の知る限り、改造を産み出すなんて言い方はしないぜ、ゲロ様?」
最早転がることしかできないゲロの頭、胴体と切り離されたが…辛うじて頭脳の生命維持装置は稼働している。
こうまでしてもまだ20号は…いやドクターゲロは死なないのだ。
「おの、れェ…がらくた、どもーーー」
ぐしゃ。
もう会話する気もない17号は、彼の頭蓋容赦なく踏み潰した。
中から飛び出るさまざまな液体。
それが培養液なのか、ゲロの血液なのかはわからない。
一つ確実に言えることは、この瞬間、稀代の天才科学者ドクターゲロは間違いなく地獄に堕ちたということである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あっさりと人を殺してしまった。
だというのになんの感慨も湧かない。
このクソッタレな科学者によって人外に改造された故なのか、
それとも元々自分は人殺しをなんとも思わないイカれた存在だったのかは定かではない。
「もう少し静かにヤレなかったの?」
「いいじゃないか、悪党には相応しい死に様だと思わないか?」
「汚いだけだよ、服が汚れるところだったじゃないか。」
記憶のほとんどを失っているが、彼女が双子の姉だということは覚えている。
ノリの悪い姉に対して大袈裟に肩をすくめると、入り口に立ち尽くしている19号が目に入った。
何が気に入らないのか、18号は若干眉を顰めている。
人は見かけて判断できないのだぞ、そんな風に彼は努めてフランクに語りかけた。
「俺たちと一緒に来ないか?アンタも、このじーさんに勝手に作られたって奴だろ?」
自分達があのイカれ科学者を憎んでいたのなら彼だって同じだろう。
そんな楽観的な姿勢に18号はため息をついた。
「裏切り者め、始末します。」
対話の余地などない、フランクに語りかける17号を他所に一瞬で19号は臨戦体制を取った。
「…バカだね、ご主人様を殺されてんだからキレるに決まってるだろう?」
「そうだな、謝罪の一つでもするべきだったか?」
19号を無視して小競り合いを始める二人目掛けて飛び掛かるも彼は19号を見向きもせずにエネルギー波をぶっ放してその胴体に風穴を開けた。
「ほ?ほ…?」
何が起きたかわからない。
辛うじて稼働する目玉がぎょろ、ぎょろと動くばかりだ。
「悪いな、アンタと俺とじゃ勝負にもならんらしい。」
主人同様に、頭部を蹴り飛ばされた19号、今度はその頭部を18号が片足を振り上げて踏み潰した。
先ほどは苦言を呈された意趣返しにニヤリと笑う。
「おいおい、もう少し静かにやれないのか18号?」
「案外スカッとするじゃないか。…それで、どうするの?孫悟空でも殺しにいく?」
幸いゲロと違って完全機械型の彼は無様に体液を散らすことはなかった。
頭部だったものを無造作に蹴り飛ばす18号の問いに首を傾げる。
「…興味ないな、ゲロの言うことを聞く義理もないだろう?」
「同感だね、それとも何かい?あのジジイがくれたこのパワーでスーパーマンにでもなるかい?」
「その場合、18号はスーパーレディか?」
「殺して欲しいのかい?」
「怖い怖い、そう怒るなよ。」
近くを物色し始めるがどれもこれも扱いのわからない意味不明な装置ばかりだ。
いきなり人生を奪われて改造人間にされてしまったが、
幸いこの二人にはこれまでこ過去、記憶がない。
悲観する必要もないのだ。
これを第二の人生と捉えるのならそう悪いことでもない。
そんな風に彼らは捉えているらしい。
「さっさとこんなところから出ようよ17号、どうせ大した物なんかありゃしないって。」
「そうでもなさそうだ、見ろよ…この16号とかいう奴。パワーだけなら俺たちをはるかに超えているぜ。」
「アンタバカなのかい、さっきそうやって襲われたのをもう忘れたの?」
「こいつが襲ってくるという確証はないだろう?」
「そいつが安全だなんてどこにも書いてないじゃないか。」
「悪いな、もう起動ボタンを押してしまったよ。」
「アンタ、ほんとーにガキだね。」
見せつけるかのようなわざとらしいため息が傍から聞かれるの。完全は無視する。
18号の望み虚しく16号を格納したカプセルは大量の熱を排気しながらゆっくりと開かれた。
中からは鮮やかなオレンジの頭髪を頭部にまとめた巨漢が出てきた。
「よう、挨拶は必要か?」
相変わらず警戒心ゼロな17号、相手がその気になれば自分は簡単に潰されるというのに。
しかし、彼の幸運か相手は静かに見下ろすだけに終わった。
「必要ない。」
淡々と告げながら瞳の奥に搭載されたさまざまなスキャナが動作する。
自身のデータベースと照合し、17号を同胞と認識したらしい。
そのあまりにも淡白な態度と行動に思わず肩をすくめた。
「随分無愛想なやつだな、せっかくの甘いマスクが台無しだぞ?」
「何故俺を起動させた、孫悟空の抹殺ならお前たちだけで十分のはずだ。」
「何故?お前を起こせば面白そうだったからさ。」
完全ロボット型の彼にはあまりにも理解できない思考回路、どう考えても自分を起動させることはリスクでしかないのだ。
「理解に苦しむな。」
「アンタ、ロボットにまでバカにされてるよ。」
「全く、頭の硬い奴らだ。」
そして彼は更に奥に鎮座された人造人間へと目を向ける。
「16号、こいつらも起こしてみるか?」
「…やめておけ、13号たちは任務遂行に特化された人格にデザインされている。」
「その言い方だと、お前は違うみたいだな。」
「あぁ、ドクターの意図はわからないが、俺は好戦的なデザインをされていない。」
もちろん、孫悟空は殺したいのは変わらないが。というおまけは当然ついた物とする。
「そういうことなら、孫悟空でも探しに行くか。」
「…ゲロの言いなりはごめんなんじゃなかったのかい?」
「あぁ、だから俺は見てるだけだ。コイツのパワーにも興味があるしな。」
17号の拳が頑強なボディアーマーにこつん、と当たる。
「お前も来いよ18号、どうせ行くところなんかないんだ、コイツの任務遂行とやらを楽しもうじゃないか。」
きっと楽しいぜ、と無邪気に微笑む弟に何度目かわからないため息をこぼす。
「まあ、起こしちゃったモンはしょうがないね。」
「決まりだな、16号、孫悟空の居場所はわかるのか?」
「…レーダーに反応はない…が、大きなパワーがこちらに向かってきているな。」
「…なんだと?」
パワーレーダーも、気を読む力も持ち合わせていない彼らにはわからない。
しかし16号のレーダーには「800億」という途方もないパワーがこちらに向かってやってきている。
識別子は…プロジェクト凍結中の「セル」だった。
このパワーからして明らかに彼の状態は「完全体」なのだろう。
何故製作もされていない存在が進化しているのかは判断できない。
しかしラボのデータベースから得られた情報から、彼の目的が目の前の双子にあることを理解する。
このままでは危ない、そう判断した16号はラボの奥へと進んで行った。
言葉もなく、「ついて来い」という意図だけを理解した二人はその後ろに続くしかなかった。
…進んだ先には何基かのカプセルが用意されていた。
彼らを保管していたそれによく似ているがよーく見てみると細部が異なる。
「コイツを使って逃げるのか。」
どう見てもプライドを傷つけられた苛立ちを見せる少年に16号の細い瞳が引き締まる。
「そうだ、…立ち向かおうなどと思うな17号、奴のパワーは俺の自爆モードすら超えている。」
16号すら恐れる相手、自爆モードがなんなのかは知らないが…今より更にパワーを上げられる16号が「逃げろ」というのだから、抵抗したところで無為に終わるだろう。
「…わかったよ、今はお前に従おうじゃないか。」
「意外に聞き分けいいじゃないか、私の時も素直に聞いて欲しかったね。」
「姉弟ってのは反発しあうもんだろう。」
ニヒルに微笑んだ彼はいち早く、脱出ポッドのボタンを押して中へと入っていく。
16号に促され、18号もその隣のポッドへと入っていった。
同時に頭上から響く恐ろしい地鳴りと振動。
16号のいう「大きなパワー」がやってきたのだ。
早くしろと急かす大男に顔を顰めて18号は中へと入りポッドを閉じた。
彼女が入ったことを確認すると16号もまたそれに続く。
それぞれが異なるタイミングでポッドは射出された。
遥か彼方へと飛び出していくとともに、ラボは頭上からの破壊に耐えられず、グシャリと潰れていった。
もう少しラボに残っていたのであれば危なかっただろう。
…その後、凶悪な大爆発と共にドクターゲロのラボは文字通り跡形もなく吹き飛んでしまった。
人造人間セルはまたしてもパワーアップの機会を逃してしまったのだ。
戦闘力補足
17号
基本最大:12億
原作通り、超寄りのノリにしてみました。
恐らくあれが彼の素面な気がするので
18号
基本最大:8億
同じく原作通り、スピードタイプなのでパワーは低いらしい。
こっちはどうやってクリリンとくっつくんですかね。
多分運命力か何かで引っ付くんでしょう。知らんけど。
16号
基本最大:20億
自爆モード:400億
原作通り、自爆モードとは完全体セルに抱きついた時のアレです。
もちろんブルマが解除してないのでまだ機能は健在です。
ただし、倍近くの強さ相手に挑むほど彼は好戦的ではないので逃げ一択。
PS.
お察しの方もいると思いますが13号は消滅。
おまけにラボの奥深くに封印されてたこの時代のセルもセルが駆除してくれました。
あとはセルをコロコロするだけですね。