ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 ジャッキーといえばあの技…!と言う訳で初投稿です。


其之十一 天津飯の覚悟

 

 天下一武道会、第二回戦。

 観客の期待値は最高峰に高まっていた。

 なんせ第一回戦からあのレベルだ、多少のアクシデントはあったかもしれないが、あの素晴らしい戦いがまだまだ見られると言うのならお釣りが来ると言うモノだろう。

 しかも2回戦の組み合わせは前回の優勝者が相手と言うではないか。

 観客の期待値は大いに高まっていた。さぞ素晴らしい戦いが見られるに違いない。もしかすると…昨日の第四試合以上の名試合が生で見られるのではないか?

 ともかく、野次馬…もとい観客たちは期待していた。

 

 一方、控室では

 

 「………。」

 「………。」

 ーーー試合とは別の緊張感があるな。

 

 小籠包と鶴仙人の無言の睨み合いに天津飯は胃を痛めていた。

 …とはいえ、彼も彼で妹弟子の胃を何度か蹂躙した身であるため文句を言える立場ではない。

 それは餃子も同じだった。

 

 ーーーはわわ……どうしよう。

 

 間に入って止めるべきか?しかしこうなった時の妹分は怖い。

 満面の笑みを浮かべて鬼をその顔に宿しきっとこう言うのだ。

 

 ーーー餃子は黙ってて。

 

 想像するだけで震えてくる。…そんな彼が師匠と妹弟子の間に入る事などできるはずもなく、落ち着かない試合前の時間を天津飯に与えることになる。

 

 「老師、すみませんが…少し一人にしていただけませんか。…試合前に集中をしたいのです。」

 「…うむ、よかろう。来い餃子。」

 「…は、はい。」

 

 今の今まで睨み合っていたというのにまるで小籠包などいないモノかのように彼女を無視して餃子を連れて行く。彼らは観客席で天津飯の戦いを見守るつもりだ。

 

 「…天兄。…しっかりね。」

 「ああ、まかせろ。俺は負けん。」

 

 それだけのやりとり。観客席ではなく、控えの位置から試合を見るつもりか…彼女は武舞台の脇へと出て行く。

 昨夜とは打って変わって…天津飯の心は静かだった。やはり闘争と言うモノはいい、余計な事を考えなくてすむ。深く息を吸い…肺に酸素を溜め込む。たくましい大胸筋が大きく膨れる。

 息を吐き出すと…そこにはもう目の前の戦いにしか意識のない男がそこにいた。

 

 ーーー武天老師…相手にとって、不足なし…!

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 天津飯から離れた彼女は試合が始まるまでの時間、武舞台を一人見つめていた。昨日は結構な暴れ様だったが舞台は綺麗に仕上がっている。…残念ながら破壊された壁などはそのままだが…これはこれで武舞台がよく見えて自分にとっては都合がいい。

 

 ーーー昨日あそこで…負けたんだね。

 

 あの試合は完敗だった。

 使える手は全て使ってその上で負けた。

 思えば(嫌ってはいたが)世間から異名がつくほど成長して天狗になっていたのかもしれない。

 優勝は我々でキマリ…そんな大口を叩いた連中の半分以上が一回戦敗退だ。

 いい笑い話である。

 

 「小籠包じゃねえか、試合見に来たんだな。」

 「うん、兄弟子の試合だからね。」

 「あの天津飯って奴強ぇんだろ?」

 「うん、私よりもね。」

 「ヤムチャの仇だけど…オラワクワクするなぁ!」

 「もう、決勝に上がったつもり?」

 

 そんな風に談笑する二人から数歩離れたところで…クリリンとヤムチャは微妙な顔をしていた。

 

 「な、なぁ…クリリン…あの子、悟空を殺す…つもりだったんだよな。」

 「そうですね、昨日の試合…凄かったですし。」

 「そうですねってお前…。」

 「いつもの悟空ですよ、アイツはそう言う奴です。」

 「…そうか、そうだな。」

 

 かつては自分も彼の前に立ちはだかった野盗だったことを思い出す。

 その自分は今や彼の兄弟弟子で…ライバルと高め合う関係だ。

 少し殺そうとした程度なら、こんなもの…か?

 

 ーーーいやおかしいだろ。

 

 とは思うものの、なんとなく突っ込む気になれないヤムチャだった。

 

 「なぁ、お前もオラと一緒に修行しねえか?色々教わりてェンだ。」

 「考えておく。」

 

 さて、いつの間にか悟空はあの少女に粉をつけようとしているではないか、…もちろん彼にそんな気もないし、彼女も左に同じ…なのだが、この二人にとってはそうはいかない。

 

 「ヤムチャさん…よくみるとあの子…すごく美人じゃありませんか…?」

 「ん…ああ、そうだな。異種族のようだが…確かに可愛い顔をしてる。」

 「ご、悟空の奴〜!」

 

 さて、対抗心を燃やしたクリリンは相手が殺し屋であったことなど忘れて突き進んでいく。呼び止めるまもなく彼は二人の間に入って行った。

 

 「やい悟空!さっきから聞いてりゃ…次は俺との試合だぞ!」

 「知ってるぞ、クリリンとも久々にヤルなー楽しみだ。」

 「天津飯って奴と随分反応が違うな!俺が相手じゃ不満か!?」

 「そんなことねーぞ、クリリンも凄ぇ強くなってからな…今からでもやりてぇくらいだ。」

 「それに…女の子を連れ歩くなんて…羨まーーー破廉恥だぞ!そんな修行認められるか!」

 「じゃあクリリンくんも一緒に来る?」

 

 ヒートアップした彼の脳みそに冷や水がぶっかかる。

 なんて事のない調子、ポカンとした様子に小籠包は噴き出した。

 

 「ふふ、冗談よ。そんな驚かないで。」

 「で、ですよね、アハ、アハハ…。」

 「顔が赤いぞクリリン、熱でもあるんか?」

 「う、うるさい!ちょっと暑くなってきただけだ!」

 

 バツが悪くなったと…お手洗いにいくフリをして彼は去っていく。

 

 「それに、私と行くと多分色々苦労するよ。」

 「お前ェが女だからか?」

 「ほら、私人間じゃないでしょ。」

 「…そうか?ブルマとそう大して変わんねーと思うけど。」

 「悟空くん、今の言葉、ブルマさんに絶対に言わないでね。」

 

 世間知らずの悟空はここ最近、漸く男と女の区別がギリギリできるようになった。つまり、ちょっと肌の色が違う程度なら彼にとって差別点でもなんでもないのだ。

 何より、後ろで微妙な顔をしているヤムチャの視線が痛い。

 それはそうだ、恐らく彼のガールフレンドであろう彼女を自分と比較したのだから怒るに決まっている。

 

 ーーー確かに可愛い顔をしてるが、ブルマの方が上だぜ…!悟空!

 

 そんな小籠包の心配は全くの検討はずれだったと、ここに明記しておく。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 さて、武舞台脇の出来事から暫く経った。

 遂に天下一武道会第二回戦が始まる。

 武舞台にあがる二人の戦士、年若い天才格闘家と…謎の老拳士が向かい合う。

 

 「うちの妹分に随分な事を言ってくれたようですね。」

 「そう大したことは言っておらんよ。」

 

 二人の会話は武舞台の外にまでは届かない。

 会話もそこそこに二人は身構える。それに合わせて…アナウンサーが試合開始の合図を放った。

 

 ーーー第二回戦第一試合…始め!!!

 

 さて…低く構える天津飯に対してジャッキーは見を選んだ。

 互いの視線が交差し、ウィークポイントを探しあう。

 慎重に事を運ぶジャッキーとは対照的に最初に静を破ったのは天津飯だった。右拳を放ち…それを軽々と身を逸らしてかわす、視線の移動により生まれた死角から左拳をえぐる様に叩き込む。しかしそれもまるで見えているかのように身体を後ろに晒してかわしていく。彼の目線は天津飯の目を見て離さない。次々と死角に打ち込まれているはずの拳の悉くを回避。

 数発打ち込む無呼吸の拳…呼吸のために一歩引く。

 

 ーーー強い。

 ーーーやるのう。

 

 互いが互いに全く同じ評価を与えている。

 やはりあの男狼では当て馬にもならなかった。

 この老人はまだまだ力を隠している。半分ほどの力も出してはいないだろう。

 

 ならばと天津飯はセーブしていた力を緩める。

 次の試合に備えてなどいられない。

 かと言ってここで全力を使い切ってスタミナ切れを起こせばそれこそこの老人の思う壺だ。

 自分にあって、相手にないもの…それは若さ。

 戦いが長引けば当然彼の老体は自分より早く疲弊するはず、そこを突く…!

 

 「ご老体にこの動きが見切れますか…?」

 

 天津飯の姿が武舞台の上から消えた。

 いや、消えてなどいない。現にジャッキーは彼の姿をその目でしっかり追っている。その目の良さに驚嘆する。スピードだけはほぼ本気だと言うのに、それで老人のそこが伺えない。これが武の神と讃えられた男の実力か。

 

 時間にしておよそ1秒もたたずにジャッキーの背後に回り込み…拳が打ち込まれる。当然それすらもジャッキーは容易く受け止めた。

 

 「はッ!」

 「かは…!」

 

 老いた老人の腕から放たれた物とは思えない重い掌底が彼の胸を貫く。

 

 ーーー浅い…。

 

 打ち込んだ感触は硬い。人体ではない硬質な何かを撃ち抜くような感覚。肉体改造などではない、気を瞬間的に高めて防御を固めたのだ。

 あの試合で悟空が小籠包にやった時のように。

 ジャッキーの違和感を顔から読み取ったのか…彼は不敵に口角を緩める。打ち込んだ際の僅かな隙をついて…今度は自分が掌底を老人の顎目掛けて撃ち込む。その手はあっさりと片手で受け止められてしまう。

 更に追撃にとジャッキーの指先が手刀に変わる。拳でダメならと更に鋭く指先を刃のように鋭くして放たれる突き。

 しかしそれでも…彼の分厚い筋肉と、気の防御は破れない。

 互いに一進一退。天津飯は攻撃の悉くを見切られ、対するジャッキーの攻撃は決定打にかける。

 互いに距離を置いて一呼吸おいた無言の仕切り直し。

 ゴクリ、と誰かが唾を飲む音が聞こえる。瞬きすら許されない攻防、一瞬でも見逃すまいと静かな熱気が会場を包む。

 

 「てやァァァァ!」

 

 鶴仙士から裂帛の気迫が放たれる。

 先ほどよりも更に速い踏み込み、当然観客には彼がワープをしたいるかの様に見えただろう。

 その後に放たれる彼の無呼吸の強烈な連打、それを静かに受けるジャッキー。

 彼らの戦いは武舞台の隅々で行われ、遂には天空をかけるにまで至る。

 それでもなお、天津飯の攻撃はジャッキーには届かない。

 その老体にどれほどの体力を宿しているのか、その呼吸は静か。

 

 対して躍起になって攻撃を続ける天津飯にはその熱を発するための大粒の汗を全身から流している。

 

 その消耗具合は誰が見ても明らか。

 

 強い…これが前回の天下一武道会覇者の実力!

 観客は瞬きするのすら忘れて魅入られる。

 

 睨み合いの中…彼らが次の攻防展開を期待してる他所に…ジャッキーは静かに、天津飯へ語りかけた。

 

 「…それほどの技を、なぜ世のために振るわぬのじゃ。」

 「…その答えを得るために、俺は戦っている。」

 

 彼の迷いは一つ。

 一度信じた道を否定することを、彼の根幹にある生真面目さが許さなかった。

 故に自分の中で出ている答えを飲み込まずにいる。

 彼に必要なのは後押しだった。

 

 「では何のために戦う。それが見えぬようでは…永遠に答えなど手に入らんぞ。」

 「お、…俺は…!」

 

 図星、今の天津飯の拳には想いが乗っていない。

 それは誰よりも彼自身が理解している。

 鶴仙人のため?殺し屋になるため?強くなるため?

 

 脳裏に、小籠包の顔が過ぎる。

 餃子を止めるために…震える指先で気を構える怒りと悲しみに満ちた泣き顔。

 孫悟空と勝利を讃えあい、喜びに満ちた顔。

 

 あの時…既に自分の中に答えは決まっていたのだ。

 

 ーーー俺は餃子と…シャオを…家族を…守りたい…!

 

 覚悟完了。

 

 彼の人生で最高速度の攻撃は、遂に武天老師の反応速度と技を凌駕した!

 

 「ぐ…!」

 

 頬にクリーンヒットした拳、勢いを殺す為に二度三度…武舞台をアクロバティックにバク転。

 垂れ落ちる鼻血を強引に止血し…笑った。

 

 ーーー良い顔じゃ、ジジイの余計なお節介だったかもしれんのう。

 

 いよいよ彼は黒のチャイナ服を脱ぎ捨てる。

 細身の老体から筋肉が隆起していく。

 フルパワーを解放したジャッキー改め武天老師。

 

 本気だ…!2回戦第一試合はここから始まるのだ…!

 天津飯は強敵の隠し持った力に笑みを隠せない。

 

 ーーー見せてもらうぞ、お主の本当の実力を…!我が弟子を預けるのに…十分かを…!

 

 

 選手用の観戦スペースにて、その変化に気づいたのは小籠包と悟空だった。

 

 ーーー天兄…!

 ーーーホントに、すげえなぁ…!

 

 武天老師の力は想像を遥かに超えていた。

 気の大きさでは相手を測れないとは、正に彼のことを言うのだろう。

 パワーを技で返し、防がれ、避けられる。

 今の自分では勝てない、と彼女は確信した。

 

 更に驚くべきは天津飯…彼の気配が変わった。

 文字通り気の質が変化したのだ。

 例えるのなら叩き潰すだけの槌に…大樹を両断する刃がついたと言うべきか。

 大きく、重厚で…それでいて澄んだ気配。

 悟空もその気配を感じ取っていた。

 なぜかわからないが…今の天津飯には勝てる気がしない、ワクワクする。

 

 「いっけぇぇぇ!天兄ぃ!!!!」

 「じっちゃぁぁぁん負けんなぁぁぁあ!!」

 

 その言葉とともに両者弾ける。先ほどより一段速い。

 受けに徹していたジャッキーが攻撃を開始したのだ。

 撃たれる事を厭わないカウンター、しかしそのカウンターが天津飯の完璧に思えた防御力を貫通する。

 攻撃の瞬間の僅かな緩みを確実に撃ち抜いているのだ。

 だがそれは天津飯とて同じこと。その老体に容赦のない反撃を撃ち合う。たがいの全身に青あざを作りながらの泥臭い戦い。

 

 「ゥッ……!」

 

 先にダメージに音をあげたのは武天老師。

 

 ーーー貰ったぁぁぁ!

 

 致命的すぎるその隙…確実にトドメを刺そうと振り上げた大ぶりの一撃。そのわずかな隙間を彼は見逃さなかった。

 

 萬國驚天掌!!

 

 「うぁぉぉァァ!?」

 

 強烈な電撃が彼を捉える。身動きのできないその身体は武舞台の外目掛けて投げ飛ばす!

 その体は宙を舞う…が。

 

 ぴた!

 

 舞空術、彼らの技がそれを阻止した。

 悠々と空中から降り立った彼は不敵に笑顔を浮かべる。

 

 「今のは危なかった…お返しに…良いものを見せてやろう…!」

 

 ーーーか……め……

 

 彼らのよく知る構えに驚きを隠せない。

 昨日初めて見た技を物真似したとは思えない威力だ。

 

 ーーーは……め……

 

 受けて立つと腰を低く落とす、その筋肉は更に肥大化…文字通りのフルパワーを見せる。

 かめはめ波には…かめはめ波だ!

 両者から凄まじい気が溢れ出す。昨日とは比較にならない気の奔流…この武舞台を消し飛ばすつもりかと錯覚するほど。

 

 ーーーかめはめ………

 

 天津飯は…敢えて、先達者の力が十分に溜まるのを待った。

 不意打ちで倒すのは面白くない、真正面から…元祖をうちのめして見せる。

 

 波ァァァァァァァァ!!

 波ァァァァァァァァ!!

 

 気と気のぶつかり合い、武舞台が悲鳴を上げ、くだけていく。その破片が観客達につぶてとなってとんでいく。

 

 ーーーまた修理が必要ですねぇ…。

 

 直近でみるアナウンサーは命の危機だというのにそんな呑気な事を考える。というより、命の危機に瀕しているからこその現実逃避か。

 互いの気の光はまったく譲らない。完全なる拮抗。

 爆光が迸り二人の姿をみることすら敵わない。だと言うのに撃ち合ってる当の2人は互いの姿を幻視する。

 

 ーーーなんて、爺さんだ…!

 ーーー素晴らしい才能じゃ。わしの時代は終わったのかもしれぬな。

 

 その押し合いの末…ついには互いのかめはめ波が遂に限界を迎える…その中心から気が膨れ上がり…爆発しようと言うところでーーー

 

 「降参じゃ!!」

 

 ジャッキーの高らかな敗北宣言が…青空に響いた。

 

 





戦闘力更新
天津飯 180=>190
(吹っ切れた事によるパワーアップ)


 撃ち合いの激しさを文章で書くのって難しい…!

 ヤムチャ戦で使わなかったかめはめ波をここで切りました!
 折角なら熱い試合を無粋に終わらせるじっちゃんが見たかったのでこうしました。決して戦いを終わらせたかったわけではありません。

 奇跡的に間に合ってますが相変わらずストックはありません!
 気長におまちください!

 閲覧ありがとうございました!
 評価・感想などいただけますと嬉しいです!

 

 
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