ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 駆け抜けるつもりがセルゲームまでの接続が難航してるので初投稿です。


其之百十五 悟空の決断

 

 戦闘服をボロボロにして二人の戦士が天界へと戻ってきた。

 崩れ落ちるラディッツを飛び出した小籠包が支えた。

 

 「こっぴどくやられたね。」

 「…うるさい。」

 「デンデ、治してくれる?」

 「はい、任せてください。その…ベジータさんも…お疲れ様です。」

 「ふん…。」

 

 彼の治癒能力によって二人は失った体力を取り戻す。

 一息ついたところで、ピッコロが彼らを見下ろした。

 

 「…奴はなんと言った。」

 「予定通りゲームをすると抜かしやがった。…ふざけやがって、何がセルゲームだ…!」

 

 ラディッツからの報告にピッコロはとりあえず首の皮一枚繋がったと安堵する。

 

 「ともかく、お前達のお陰で10日間の猶予がある。今は孫たちが入っている。次に俺と天津飯、小籠包…最後に…お前らサイヤ人だ。」

 

 誰も異論をあげない。

 生涯で二日しか入ることができない制約をあらかじめ小籠包が言い放ったのは正解だった。

 孫親子が出た残りの9日全て使わせろ、そんな発言をしかねない男が一人いたからだ。

 

 「…貴様らが入っても時間の無駄だと思うがな。…ここから先はサイヤ人の領域…お前ら雑魚が幾らやっても無駄だぞ。」

 「そのサイヤ人も尻尾を巻いて逃げてきたようだが?悪いがお前らサイヤ人なぞ俺の眼中にないんでな。」

 

 ピッコロの視線はベジータを見ることはない。

 真っ直ぐ仇敵を見つめている。

 視界の真ん中の憎い女は無造作に舌先をんべ、と出した。

 

 「ちッ…またあの女か…!」

 

 どいつもこいつも…、そんな恨み節を並べながらベジータは1人神殿の植木に腰掛ける。

 どうやらおとなしく次の順番を待つようだ。

 意外にも素直な様子にラディッツが面食らう。

 

 ーーー「貴様ら」か、天津飯は眼中にないと思っていたが…

 

 戦士型でもないピッコロがここまで極めたのはその才能故である。

 ベジータもその才能を正しく評価してるのだ。

 そして…この苦境を前に食らいつこうとする天津飯にも、同じく誇りある戦士として認めているのだ。

 以前のベジータにはこのような仲間意識など同族にすら持たなかったというのに。

 

 ーーー小籠包…いや、カカロット、その両方か…。王子様よぉ…俺らもすっかり毒されてしまったなぁ?

 

 凶悪な戦闘民族サイヤ人ともあろうものが、丸くなったものである。

 

 ーーーまたおかしな感傷に浸ってるな…。

 

 自嘲気味に笑うラディッツに隣の相棒はちょっと真顔で引いていたのは彼の名誉のために伝えないものとする。

 そんな相棒への白けた視線を捨てて、小籠包は静かに神殿の奥へと向ける。

 

 孫親子が精神と時の部屋に入ってから1時間ほどが経過した。

 中では半月と少しが経過しただろう。

 孫悟空はスーパーサイヤ人を超えられたか?

 あるいは柄にもなく手こずっているのか。

 

 孫悟空にはどこか余裕というものが感じられていた。

 あのベジータですら冷や汗を流した怪物セルの出現に対して、1人ケロっとしていたのである。

 …勿論、彼の楽天的な性格もあるのだろうが、その理由を小籠包は何となく察しつつあった。

 

 ーーーさぁ、悟飯くん。どんな進化をするのか…早く私に見せてよ。

 

 口角を釣り上げて愉快そうに微笑む。

 悟飯の年齢は…彼女が武道を…いや殺し屋を志した頃の年齢とほぼ同じである。

 そんな齢から…既にあれほどのパワーを持っているのだ。

 内に秘めた潜在スピリットがどれほど膨大なのかは想像できない。

 親でもない自分が気づいているのだ、彼の父親である孫悟空がここに気づかない筈がない。

 

 ーーーでもね、悟空くん…その考えは戦士としては終わりだよ。そんな甘い考えしてるなら…すぐにでも貴方を踏み越えてやるから。

 

 その姿はかつてラディッツに叱咤された時の自分と全く同じだ。

 次の世代に期待して育む。

 正に自分がやろうとしていたことである。

 子を持たない自分と彼とでは考え方に差はあるのだろうが…あの時自分が「母」となることを選んだら…間違いなく小籠包は終わっていたと言っていい。

 

 ーーーまぁでも、いつかはその時が来るのだろうけど。

 

 少なくとも、それは今ではない。

 まだ感傷に耽っている相棒を一瞥する。

 セルという脅威を排除して今度こそ地球に平穏が訪れてからゆっくりその時を刻めば良い。

 そのためにも師匠を喰らったあのいけすかない化け物を早急に地獄に叩き落とさなければならない。

 

 ーーーやって見せる。真気功法を…超える技を、作ってみせる。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 外界で4時間…精神と時の部屋ではおよそ二ヶ月の月日が流れていた。

 居住の神殿の前では恐ろしい気の嵐が吹き荒れていた。

 たくましく膨れ上がった筋肉と激しい気のスパーク。

 これまでのスーパーサイヤ人とは一線を画すその姿に、悟飯は飛び上がって喜んだ。

 

 「……す、すごい…!すごいですよお父さん!!遂にスーパーサイヤ人を超えたんですね!!」

 「………。」

 「お父さん…?」

 

 舞い上がる息子とは裏腹に父親の表情は苦悶の一言に尽きた。

 大きくため息を吐くと彼はあっさりとその変身を手放した。

 

 「これじゃあダメだ。」

 「え…?」

 「確かにすげえパワーだ。でもこれじゃあ…小籠包にだって勝てねえ。」

 

 悟飯には父親の言うことが全く理解できなかった。

 少なくとも今の悟空は小籠包とほぼほぼ同等の力に思えたのだ。

 その言葉に悟空は優しく笑った。

 

 パワーだけでアイツに勝てたら、苦労はしねえ。

 

 寧ろ小籠包ならこう笑うだろう。

 そんな消耗の激しい姿でいつまで戦えるの?…と。

 彼女に勝てないと言うことは…セルには確実に通じない。

 暫し思考の末、再び父は息子に向き直る。

 

 「悟飯、スーパーサイヤ人になってみろ」

 「…はい、こうですか?」

 

 一ヶ月ほど前…ようやく変異をモノにした息子の姿をよく観察する。

 勉学が大好きで学者になるのが夢な穏やかな少年。

 その彼が殺気にみなぎった表情を自分に向けているのだ。

 

 「よし、来い悟飯。」

 「…はい!」

 

 父の思惑がわからない。

 スーパーサイヤ人を相手に通常状態で相手をするというのか。

 兎にも角にも…父の要望に応えぬわけにはいかない。

 いざとなれば仙豆がある。気を目一杯に高めて容赦なく父へと襲いかかった。

 

 「…!」

 

 渾身のスピード、渾身の力、最適なタイミング、どれをとっても完全な飛び蹴りがあっさりと交わされてしまったのだ。

 紙一重で回避した悟空の頬から僅かに出血してることからご飯の攻撃は辛うじて当たっていたようだ。

 しかし、あまりに大振りな攻撃はその代償に大きな隙を晒した。

 超達人である孫悟空にとってコンマ1秒の隙があれば十分だ。

 手頃な高さにまで持ち上がった悟飯の片足を捕まえる。

 

 「つォォォォりゃァァァ!!」

 「うわぁ!?」

 

 悟飯の視界がくるん!と一回転する。

 如何にスーパーサイヤ人といえど完全なるタイミングのカウンターで三半規管を一方的にシェイクされれば訳もわからず振り回される。

 何もさせないまま、悟空の背負い投げは綺麗に入り、背中を勢いよく強大。…肺から大量の酸素をぶちまけ…気の制御を手放した悟飯の変異はあっさりと霧散した。

 

 「…大ェ丈夫か?悟飯?」

 「痛ったた…流石お父さんですね。スーパーサイヤ人になってもとっても敵いません。」

 「なぁ悟飯、何で父ちゃんが勝てたか分かるか?」

 

 普段、父はこんな問答をしない。

 まるでピッコロのようだと思った。

 

 「ぼ、僕が弱いから、でしょうか。」

 「いーや、悟飯の方が強かった。気の大きさじゃ悟飯の圧勝だったさ。でも父ちゃんは悟飯に勝った。」

 

 謎かけに悟飯は腕を組む。

 父は勉強はできないが論理的思考は得意なのだ。

 母が何度も何度も「悟空さは決して馬鹿じゃねーだ」と言っていたのを思い出す。

 対して悟飯はその手の応用力がない。

 …とはいえ弱い10に満たない年齢の子供…それは当然の事なのだが。

 

 「すみません、わかりません。」

 「まだ悟飯には難しかったか、父ちゃんはな…オラ達がスーパーサイヤ人の力を使いこなせてねぇんだと思ってる。」

 

 今度は悟空がスーパーサイヤ人に変異して見せた。

 指先で「かかってこい」と合図を送る。

 …今度は自分が通常状態で父のスーパーサイヤ人と戦う…。

 ごくり、と生唾を飲んで悟飯は再び父へと襲いかかった。

 

 今度は、カウンターを受けないよう慎重に…。

 そこまで考えたところで悟飯はハッと気づいて立ち止まった。

 

 「どうした悟飯。」

 「…お父さんの防御を崩せるとは思えません。…ですから様子を見ようと思ったんです。」

 「そうか、ならオラから行かせてもらうぞ。」

 

 金の閃光を迸らせながら父が迫る。

 速い、あまりにも。

 スーパーサイヤ人を使わなければこんなにも…こんなにも…!

 

 ーーー!?

 

 息子の変化に気づいたのか、その拳を眼前にてピタリと停止させた。

 変異を解いた悟空は実に嬉しそうな顔でニカッと笑った。

 

 「どうだ?父ちゃんの言いたい事、わかったか?」

 「はい…!スーパーサイヤ人になると…普段の戦いができないと感じました。」

 「ああ、スーパーサイヤ人になるとどうしても殺気立っちまう。力任せの攻撃じゃ…強ェ奴には通じねえ。」

 「そうなると…先ほどの変身と変わりませんね…。」

 

 ではどうすればいいのか?

 スーパーサイヤ人無しにこの先の戦いを制することができるとは思えない。

 途方に暮れる悟飯に父は答えを持っているようだった。

 

 「悟飯、今日からずっとスーパーサイヤ人になるんだ。」

 「どういうことですか?」

 「スーパーサイヤ人でもいつも通り戦えるようにする。そしたらこの力を十分に発揮できるようになるはずだ。」

 

 悟空の脳裏にあったのは「気功法」を常駐する義理の姉の姿だった。

 あれをスーパーサイヤ人で実現できたのなら、変身の負荷も減るだろう。

 もっとスムーズに変異できれば戦いの応用にもつながる筈だ。

 そしてその先に…まだ見ぬ息子の潜在能力開花への扉がある筈なのだ。

 

 





 戦闘力更新
 孫悟空
 基本最大 2800万
 超1-1 14億
 超1-2 21億
 超1-3 31億5000万

 僅か二ヶ月でスーパーサイヤ人の壁を超えた悟空。
 凄まじいパワー…好戦的なサイヤ人では確実に辿り着けない発想。
 亀仙流の悟空だからこそ辿り着けた境地。
 これまでのスーパーサイヤ人としての戦いの反省点に思うところもあったのだろう。
 進化の先にそれが克服できるのならと可能性を求めた。
 その結果、悟空の求める変身ではなかった。

 孫悟飯
 基本最大 1500万
 超1-1 7億5000万
  無意識の手加減=>1億5000万

 まさかのたったの3000万程度の力で、7億5000万の力の差を覆した……わけではなく。
 悟飯は父の「検証」のために無意識にパワーを落としていた。
 それでもスーパーサイヤ人。
 その戦闘力差は5倍以上の差が存在する。
 超化特有の興奮状態もあいまって油断もあったのだろう。
 あるいは彼が生粋の武道家ではないというところもあったのかもしれない。
 この道10年以上の悟空の前では、如何に類い稀な才のある悟飯を持ってしても埋めきれない「技」が存在する。

 
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