ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
一口サイズなので初投稿です。
久しぶりにピラフが書きたくなった。
「セルに勝てるんだろうなぁ!?」
開口一番、数日ぶりに雇い主の顔を見に来たと思えばピラフは飛びつく様に小籠包に問いかけた。
「アイツは私が殺す。」
「本当だろうな!?」
「勿論。」
「本当に本当だろうな!?」
「…誰に向かって言ってるの?」
「本当の本当の本当に本当だろうな!?!?」
「だ れ に む か っ て 言 っ て る の?」
「貴様!一度負けてるではないか!!」
「な、何故それを…!」
「私の技術を舐めるなぁ!衛星から世界中の情報など手に取るようにわかるわ!無断で死に行った挙句、孫悟空に助けられておったではないか!!!」
「つ、次は…殺すもん。」
「らぁでぃっつぅぅぅ!?勝算はあるのかぁ!?」
「…厳しいな。」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!?」
そんな風に仰け反りブリッジを決めて床の上でのたうち回る大賢王ピラフ様。
世間に見せつけてる知的でクールなかっこいい善人の皮を被る極悪人(自称)の姿は見る影もない。
あまりにも哀れな姿にあの小籠包ですら若干引いてしまう。
いつも以上に情緒が破壊されているのはどういうわけか?
「ピラフ様、来月王位をかけた選挙を控えてたのよ。」
「へぇ、それは大変だね。」
「なぁぁぁぁにを他人事にしとるかぁ!!!!」
迂闊な発言に上司から飛び交う怒号。
コンマ1秒で指先を耳穴に詰め込んだことでその虚しい怒りは彼女に届くことなどなかった。
この10年…破竹の勢いで駆け上がっていくピラフの覇道はついに実を結ぶ直前にまでいたっていたのだ。
マイから渡されたタブレットには王位継承の選挙調査の画面が出ている。
円グラフを用いた二人の支持率の境目は完全な垂直。
つまりどちらが次の国王になってもおかしくない歴史的画面を叩き出していた。
そこに…あの怪物セルからの世界滅ぼすやでー発言である。
10年積み上げてきた努力が理不尽な天災により無に帰すのだ。
そりゃ床の上でブリッジでもキメたくなると言うもの。
「すごい、現国王と支持率がほぼ同じ。いつの間にこんなに支持されてたの?」
ぴく、と己が自尊心を刺激する言葉に大きな耳が震えた。
ブリッジからヌルリと立ち上がる姿は流石にキモい。
…が、ここはそんな感想をグッと飲み込むできた殺し屋小籠包なのだ。
「ぬはは…!このピラフ大魔王様にかかれば…!愚かな民衆の心を掴むくらいわけないのであぁぁぁぁぁある!!!」
大魔王と来たか…。
そんな風に悪ぶってはいるものの、やっていること言えば……
彼お得意のハイパー技術でロボットをうだるほど量産し、国王の目の届かない村や集落に派遣。
彼らの求めるサービスをほとんど無償で提供し続ける。
水のない村にはパワーにものを合わせて水脈にぶち当たるまで井戸を掘り続け。
土壌の貧相な村には腐葉土をどっさりと巨大なパワーでぶちまけて脳筋畑を生成する。
いや、そうはならんやろを意味不明な技術力で解決し続けた結果…!
ぴーらーふ!ぴーらーふ!!ぴーらーふ!!!
どこぞの世界チャンピオンすら顔負けのコールを上げられ、高笑いしているのが今のピラフである。
さて、時に敬愛は金を産むのである。
彼の助けた人々は少しばかり、無理のない献上をピラフに行う。
それを彼はさらに再分配するのだ。
ある集落で余るものは、別の集落では不足している。
そして彼らはピラフ大魔王様にまたも感謝するのだ。
少ない施しに対して莫大な見返りをくださる…!!
これは酷い。
と小籠包が呆れ顔でその成果を呆れ顔で見つめたのは記憶に新しい。
彼の信者もとい、支持者は加速度的に数を増やしていく。
北の外れにある集落は小さな町に発展しようとしていた。
もうおわかりであろう。
セルによる無差別攻撃の巻き添えになったのだ。
戦闘力数100億の力任せの暴発に何人もの民が犠牲になった。
ここで、ぐおおおお!?私の支持率がぁ!!!ではなく
私の臣民たちがぁぁぁぁあ!!
などとなってしまうのが彼が悪党になりきれない最大の要因なのかもしれない。
さて、そんな風に己が自伝を得意げにぬは!ぬは!ぬは!と高笑いしながら語るピラフに、やっとご機嫌になったか、そそくさと退散を始める小籠包とラディッツ。
「瓦礫の王様になってちゃ意味ありませんけどね。」
ぴし!!!
妖怪にでも睨みつけられたか、ピラフの動きは完全に停止した。
そしてそそくさと逃走を計る二人の戦闘員にまたも怒号が吹き飛ぶ!!
「良いかァ!!かならず!かなぁぁぁぁぁず!セルを始末するのだぁぁぁ!」
大きなため息をこぼす小籠包が、その瞳孔をきゅるりと細くする。
「ピラフ。」
その一言で彼はやっと正気を取り戻した。
目の前に立っているのがあの鬼姫だということを思い出す。
…以前の彼ならば、ここでガクガクと膝を震わせて速攻土下座ルートだったろう。
彼も彼でこの数年修羅場を潜ってきた。もちろん小籠包たちとは違った形で。
その心はその程度で折れるほど柔ではなくなったのだ。
「…す、すまん。少し冷静さを欠いてた。」
「気にしないで。」
こうなったのは自分の責任だ。
故に彼女への再三に渡る侮辱行為にも目を瞑った。
…身内には甘い小籠包である。
大きな大きなため息をひとつこぼす。
その上で口角を釣り上げた。彼女お得意のわるーい笑顔。
「そこで待ってなさい。私がセルをぶち殺してくるから。」
その笑顔にかつてここで鬼と盟約を交わしたことを思い出す。
こうなった彼女は本当に頼りになるのだ。
鬼姫は殺すと言った誓った相手を決して取り逃したりしない。*1
そんな顔をされては自身も悪党として返さずにはいられない。
彼は大魔王ピラフ様なのである。
「当然だ。お前らにはまだまだ働いて貰うからな。」
彼らがセルを倒したとすれば、その功績を持っていよいよ彼は王へのリーチ。
世界征服達成についに指先がかかるのだ。
であるなら、彼女の雇い主である自分がドーンと構えていなければ格好がつかないというものだ。
それに返すことなく、彼女はひらりと手を振りながら執務室を出て行った。
そこに慌ててついて行くラディッツ。
その背中に向けて静かな声が響いた。
「ラディッツ。」
「なんだ。」
「奴は私の大事な駒だ。死なせたら許さんぞ。」
「ふん、その前にあいつは俺のモノなんでな。貴様に言われるまでもない。」
きゃー、などとマイが黄色い声をあげたのをみるや否や、逃げるように大股で部屋から出て行った。
あいつらやっとくっついたんだったな。
そんな風に満足気に頷くピラフだった。
小籠包に勝算はない。
少なくとも、今の段階では。
だが後23時間…精神と時の部屋換算で11ヶ月と半月の猶予がある。
そこで活路を見出せなければ…自分はその程度の三流だ。
しかし自分はあの桃白白の一番弟子である。
自身の才能は信じられずとも敬愛する師匠の慧眼なら信じることができる。
だからこそ、自分はセルを超えられるのだ。
超えなければならないのだ。