ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
人造人間組のその後を書かなければと思ったので初投稿です。
ベジータとラディッツがセルに敗北してからわずか数時間のこと。
世界はにわかに色めき立っていた。
ーーー10日後にセルゲームを行う。場所は都の北西、28KSの5地点。ここにリングを建設することにした。
得体の知れない怪物が突如都のテレビ局をジャックし、意味不明な催し物の宣伝をしだしたのだ。
それだけならまだいい、こんな怪物の与太話に誰が耳を貸すだろうか。
セルはそれだけにとどまらなかった。
ーーー挑戦者全員が私に敗北したその時、君たちを皆殺しにすることにした。
突拍子もない殺戮宣言。
誰が信じるものか、たった一人で世界中の人間を皆殺しに?
スタジオの人間はともかく、少なくともお茶の間、食堂、街頭、職場、あらゆるテレビの前の皆はそう感じた。
テレビ局が悪質なフィクションを生放送で演じていると。
ーーーだが先ずは、諸君に謝らねばならない。先日、北の山を一つばかり消してしまってね?近隣の住民には一足早く消えてもらった。私からすればゴミみたいな存在だが…君たちの言葉を借りるなら、「尊い命」というやつだろう?
先日の原因不明の大爆発、その犯人は自分だと公言したのだ。
ーーー少しばかり頭に血が登ってしまってね?この私が子供のように癇癪をおこしてしまった。情けないだろう?どうだ、笑ってくれたまえ。
一人高らかに声を上げるも、スタジオは完全にお通夜状態だった。
カメラには映らないが、その場にいる誰もが顔面蒼白だったのはいうまでもない。
ーーー話が逸れてしまった、参加者に制約は設けん、腕に覚えがあるモノはぜひ…このパーフェクトな私に挑んでくれたまえ。
では、これで失礼するよ。
そんな言葉を最後に怪物セルは空へと飛び去っていった。
当たり前のように空を飛ぶ怪物にスタジオの人々は戦慄した。
そして、ソレが合成映像でもやらせでもないことを…アナウンサー声高にして強調。
世界の危機が、訪れてしまった。
そんな僅か10分程度の衝撃映像。
14年前…世界を未曾有の危機に陥れた魔族、ピッコロ大魔王以来の大事件である。
これを見ていたカメハウスの面々の反応は様々だった。
あるモノは絶望にと顔を伏せ、あるモノは己が無力を噛み締めて拳を握り、あるモノは委ねることしかできないことにリモコンを握りしめる。
「ちくしょう…もう、どうしようもないのか…!」
「…慌てるでない、クリリン…幸いにも時間はある。…悟空達に賭けるのだ、サイヤ人達の可能性にな。」
いつの間にかテレビの画面には砂嵐ではなく、タレント達が際どい水着姿でエクササイズを行う、武天老師御用達の番組へと映像が変わっていた。
世界が大混乱に陥っている中、この呑気な映像は…むしろ先ほどの衝撃映像を際立たせるばかりだ。
そんな最中である。…このカメハウスに招かれざる客が現れたのは。
「邪魔をするぞ?」
現れたのは背格好の似た男女と大柄な男。
そう、人造人間の3人組である。
気という概念を持たない彼らだが…船も飛行機も無しにここに現れたという事実が、部屋の中の緊張感を引き締める。
「き、貴様ら…!人造人間か…!」
「そう怖い顔をするな、別に取って食ったりなんてしないさ。」
「こ、ここに何の用だ!」
「孫悟空を探しに来た、居場所を知らないか?奴の家には嫁しかいなかったんだ。」
実に軽い口調で放たれる爆弾発言。
チチのことを知っているということは…!
とてつもない絶望感がカメハウスの中を包み込んだ。
「お前…!チチさんに何をした!?」
「旦那の居場所を聞いただけだ。何をそんなに怒ってるんだ?」
「な、なにって…お前、何もしてないのか?」
「殺して欲しかったのなら残念だったな、俺にそういう趣味はないんだ。」
何を言ってんだコイツ。
そんな顔を真顔で続ける少年についにクリリンはようやく…コイツそんなに悪いやつじゃないのでは…?
と思い至る。
「わかった、悟空の居場所は俺らも知らない。」
「嘘が下手だな、まだ俺たちが信用ならないのか?」
「…だったら悟空になんの用があるんだ。」
「コイツが孫悟空を殺したいらしい。」
「帰れ!!!!!」
ようやく緩んだカメハウスの空気が一瞬で緊張した。
当然だろう。友人の居場所を尋ねた見ず知らずの存在が「殺したいから居場所を教えろ」などと言われて快く回答していてはそいつは友人でもなんでもない。
「…だってさ16号、どうする?こいつら痛めつけて吐かせてみるかい?」
「それは推奨しない。彼らを痛めつけても意味はないだろう。」
俺の目的は孫悟空だけだ。
そう締めると彼は静かにカメハウスを出ていく。
無関係な人間を傷つけるのは彼にインプットされたプログラムが許さない。
「だってさ、行くよ17号。」
やれやれ、そんな風に肩をすくめる少年はさっさと出ていく仲間たちの後を追っていく。
当然、自分たちを拷問にかけてでも悟空の場所を聞き出すものだと思っていたのだから、カメハウスの面々はポカーンとその様子を眺めてしまう。
「ま、待ってくれ!!」
漸く我に帰ったクリリンがハウスから飛び出し、今すぐにでも地平線の彼方へ飛び去ろうとする彼らに呼びかけた。
「なんだ、孫悟空の居場所を言う気にでもなったのか?」
「お前らは…悟空を殺した後、どうするんだ?」
よせ!クリリン!
そんな言葉を背に彼はどうしても問わずにはいられなかった。
物騒な発言の16号はともかくとして、彼の目にはこの少年たちがそこまで悪人だとはどうしても思えなかったのだ。
「特にないな。俺は16号に付き合ってるだけだ。孫悟空が死のうと俺の知ったことじゃないが、あのクソ科学者のお遊びに付き合うつもりはないぜ。」
「ドクターゲロのことか…?」
「なんだ、知っていたのか。ああ、アイツのせいで俺たちは怪物に改造された。だから俺の手で殺してやった。よくある話だろう?自ら生み出した怪物に殺されちまうってのは」
殺した…?あのスーパーサイヤ人ですら手を焼いた人造人間を…?
それだけで全身が粟立つというものだ。
「俺の余生は…こいつが孫悟空を殺した後にでも考えるさ」
時間はあるんだしな、話は終わりか?
そんな彼の言葉に一同は確信する。
こいつらはそんなに悪い奴じゃない。
寧ろ被害者なのではないかと。
「な、なぁ…どうしても悟空を殺さないとダメなのか…?」
「そうだ、孫悟空を殺すことは俺にとって絶対だ。」
「お前だって…こいつらと同じで仕方なくゲロに従ってるんだろう?」
彼の視線は一際大きな体格の「16号」と呼ばれる静かな男に向けられた。
彼が悟空殺しを諦めてくれれば、目下の敵はあの怪物「セル」だけになるのだ。
むしろ心強い仲間が増える可能性すらある。
「俺と彼らと違って完全なロボット。ドクターの生み出した兵器だ。その説得は無意味だぞ、クリリン。」
「…!、ゲロのデータには俺達の情報も入っているのか…!」
「…そうだ。そして俺からの忠告だ。俺は積極的にお前達に危害を加えるつもりはない。…が、邪魔をするのなら容赦はしないぞ。」
「……!!!」
あまりにも明確な決別の言葉。
見た目どう見ても普通の人間なだけにクリリンは言葉を失った。
それ以上返す言葉をなくしたと断じた16号は彼からの返事を待つことなくそのまま飛び去っていった。
「そう言うわけだ、じゃあな。」
続いて飛び去っていく17号。
当たり前の様に何の気を発することもない高速舞空術。
彼らが人造人間だと言うことを嫌でも実感させる行為だった。
さて、一人残され18号は意味ありげに彼を見つめた。
「な…なんだよ。」
ゆっくり歩み寄ってくるその様子に思わず身構える。
この場で抵抗したところで何の意味もなく殺されるのはわかっている。
それでも武道家として何の抵抗もなくやられるわけにはいかない。
腕を伸ばせば届く距離、いつでもクリリンを殺せる間合い。
ゴクリ、と固唾を飲んで見守るしかないカメハウスの面々に対して彼女は実に意外な行動に出た。
「アンタ、なかなかいい度胸じゃないか。嫌いじゃないよ?そう言う男は。」
冷や汗の滴るクリリンの頬に柔らかいものが触れる。
まるであいさつとでも言う様なチークキス。
何をされたのか意味がわからないと目を白黒させるクリリンを残して、不敵に微笑みながら18号は空の彼方へと消えていった。
呆然と立ち尽くす彼にヤムチャがあわてて駆け寄る。
「く、クリリン!大丈夫か!?」
「ヤムチャ、さん、俺、今…キスされたんすよね?」
「ああ、そ、そうだな。」
「アイツら、一体なんなんすか。」
「俺に聞くな!わかるわけないだろう!」
そんな風に困惑する弟子をサングラス越しに見つめ武天老師改め亀仙人は一人静かにぐぬぬと歯を食いしばった。
ーーーぴ、ぴちぴちギャルからの…キスじゃと…!わ、ワシだって60年はされておらんぞ!!!*1
色んな意味で出し抜かれたことに武の神様は実に俗物的な感情でクリリンを見つめることしかできなかった。
18「なかなか見どころがあるじゃないか。奥で震えてた連中と違って。」
ク「ふ、普通の女の子と、変わらねえな…。」
という筆者渾身の雑フラグ。
ここまでお膳立てしとけば多分時の界王神様あたりがなんとかしてくれます。