ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
ちょっと短めなので初投稿です。
高評価ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!!
迸る気の奔流は瞬く間に萎えた。
ポカンとジャッキーを見つめる一同、にも関わらずジャッキーは退屈そうに言い放った。
「聞こえんかったのか、降参じゃ…やれやれ年には勝てんのう。」
どこがだよ、全然いい勝負してたよ。
そんな総ツッコミが観客から、選手スペースからも聞こえて来そうな空気。
アナウンサーも呆気に取られて状況を理解していない。
やれやれと彼はため息を一つ溢し…
ーーーストン。
「!?」
まるで玄関にでも降りるような気やすさで武舞台から降りてしまった。
そこで漸く我に帰ったアナウンサーは力の限りマイクに向かって唾を飛ばす。
「じょ、場外!!天津飯選手の勝利です!」
ーーーわ、…わぁぁぁぁぁ!?!?
困惑混じりではあるが…死闘の末の決着。
観客は大いに盛り上がりを見せる。
投げ捨てた上着を羽織り腰を叩きながらジャッキーは実にマイペースに控え室へと戻っていった。
「じ、じっちゃん!なんでやめちまったんだ!」
「あのままやってもワシの負けじゃったよ。それに、武舞台を吹き飛ばしかねん威力じゃったからな。」
ほっほっほっ、と実に満足そうな高笑いを上げて彼は悟空を無視して去っていく。
さて、対する天津飯はといえば…!
ーーー何故だ…!何故勝負を捨てた…!!
戦った本人が一番この勝利に納得していなかった。
勝負は互角だった、どちらに転んでもおかしかない試合だったはず。
あの撃ち合いも…あと数秒長引けば…無茶なかめはめ波で消耗した自分が自滅するだけだった。
まるで、それを見越して彼は撃ち合いを放棄したようにも見える。
彼は急いで控室に駆け込んだ。
「シャオ、あの老人はどこに行った!」
「む……ジャッキーさんならもう行っちゃったけど…。」
「ちィッ…!」
「ちょっと天兄!?どこいくの!?」
もうすぐメディアが彼のヒーローインタビューを求めてここに殺到すると言うのに…肝心のヒーローがいない…となるとその洗礼を受けるのは。
「…小籠包選手!天津飯選手はどちらへ!」
当然、同郷の彼女が受けることになる。
「ぇ、あ…か、彼はァ…トイレ…でしょうか……?」
「では先の試合!同門からどう見えたのでしょうか!どうか一言!」
「えと、すごい、ですね?」
「昨日の試合…孫悟空選手とどのような因縁があったのでしょうか!?」
「か、彼とは…と、友達?です?」
「今大会の優勝候補はどなた考えられてますか!?」
「是非我が社のcmに!」
「武道を嗜まれて何年になられるのでしょう?」
「変わったご容姿ですが、ご出身は?」
「好きな食べ物は?」
「スリーサイズは?」
容赦ないマスメディアの質問責めとフラッシュの嵐。
さて、好意的な衆目に慣れてない彼女の黄色い瞳はクルクルと回り始める。
それもそのはず、あの試合の直後…彼女はそそくさとこの場を後にしている。
これ幸いにと昨日の分のインタビューしてしまえという強かなメディア連中。その困惑する様子はしっかりとメディアに残されて試合での苛烈な印象とのギャップは密かなファンを産むことになるのだが、それは別の話である。
さて、アナウンサーの機転にてなんとか事なきを得た彼女が解放されたのは…それから10分程たってからの話だった。
「俺たちには目もくれなかったな。」
「ですね。」
なお、追い払われたメディア達の背中を寂しそうに見送る二人の姿がそこにあった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
武道会場を抜けた先に、彼はいた。
変装を脱いでトランクの中にしまい…何食わぬ顔で黒のスーツに身を包む亀仙人、武天老師の姿が。
「ワシに、なんの用かな?」
「惚けないでください。…なぜ、降参したのですか。」
かつての亀仙流への険はそこにはない。
見上げるべき目上の存在として扱う天津飯本来の姿がそこにあった。
「あのまま続けてもお主には負けておったよ。」
「そんなことはない!」
思わず声を荒げ、感情的になったことを慌てて謝罪する。
亀仙人は特に気にせず続けた。
「ワシの時代は終わった、後は若いものが時代を背負う、それだけの話じゃよ。」
髭とサングラスで表情がわからないが、その顔は満足そうに微笑んでいる。そんな風に見える。
嗚呼惜しい、そんな風に思った。この老人の最盛期に自分が生まれたのなら…彼と覇を競い合えたのなら…彼はもっと上に至れたのではないか。
頂にて、高みへ目指す道標を無くし…成長の術を失った悲哀の神。
それが武天老師という男なのだと、彼は思い知った。
だからこそ、彼は弟子たちが自分と同じ悲しみを背負わぬよう…世の中にはもっと強い奴がいるのだと希望を持たせる為に…敢えて無名の格闘家を演じたのではなかろうか。
「…それが、あの変装の理由ですか。」
「さあての?わし有名じゃし?変装でもせんと大騒ぎになってしまうからのう〜」
ーーーほ〜ほっほっ。
夕闇の中に老人の高らかな笑い声が響き渡る。
その真意は語るつもりなどない。
仙人の粋な心に思わず破顔する。
成る程、こんな師の下で学んだからあの孫悟空と言う小僧はあんなにも面白いのか。
「しかし不思議なモノじゃ…数日前とはまるで別人。何がお主をそうまでさせたか、聞かせてくれんか。」
「語る程のことではありません。…少々放っておけない妹分がいるもので。」
彼の脳裏に浮かんだのは…殺しという極大の罪を背負いながら…なお人心を失っていない不思議な少女だった。
思えばこの若き武道家の心根が真っ直ぐだったからこそ…あの少女は道を外さずにいられたのかもしれない。
「どうじゃ天津飯。三人揃って…一からやり直す気はないか。」
「折角ですが…俺にその資格はありません。どうしても道に迷ったら…貴方をお尋ねします。」
ーーー断り文句までそっくりとはな。どうやら年寄りの杞憂に終わったようじゃ。
下ろした荷物を拾い上げ、トランクについた砂埃を簡単に払う。
「わしは観客席から見ておる、良い試合を期待しておるぞ。」
観客用の入口へのんびりと歩いていく後ろ姿に天津飯は頭を下げた…その姿が門の向こう側に消えるまで、頭をあげることはなかった。
「ご指導、ありがとうございました。」
人知れず引退を宣言した武の神に最大の慰労を込めたその言葉は、誰に聞かれるでもなく。ぴゅう!っと吹いた木枯らしが吹き飛ばしてしまった。
そろそろこの初投稿ノリが寒いと気づき始めましたがこのまま突っ走ります。中途半端が一番良くないと死んだじっちゃが言ってた(死語)
本編だとこの時点でまだチンピラですが…この段階で大分Zよりの天津飯に近くなったと思います。もう三人でとっととあのジジイ見限っちゃいなよって思ってますがなかなかうまく行きません。
最新話鋭意製作中ですので暫しお待ちを!
閲覧ありがとうございました!
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