ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 閲覧ありがとうございます!

 鬼姫ブチギレ(?)回ということで初投稿です。


其之十五 貴方を始末します。鬼姫最後の仕事

 

 餃子は、試合に熱中していた。

 あれほどまでに天津飯がイキイキと拳を振るうのは見たことがない。

 素晴らしい戦い。できる事なら永遠にこの試合が続いて欲しいとも感じる。

 わくわくと次の攻防に期待を寄せていた餃子の脳みそが一瞬で冷えた。

 

 ーーー孫悟空の動きを止めろ、餃子。

 

 意味がわからない、戦いはこれからだ。

 互いに未だ底を出し切っていない、面白いのはここからだというのに。

 ソレの邪魔をする?この老人は自分の言っていることがわかっているのか?

 ここで自分が邪魔をすれば確実に天津飯は勝つ。

 しかしそれが望まぬ決着なのは、師匠も知ってのことだったのでは?

 一本筋の通らないめちゃくちゃな師の考えに遂に餃子も、この仙人に見切りをつけた。

 

 何より、自分はこの試合…天津飯の戦いを最後まで見ていたい。

 

 「い、嫌だ…!」

 「なんじゃと…?」

 

 生まれて初めての師に対する反逆、その緊張から餃子の声は震えている。

 

 「僕…天さんの試合、最後まで見たい!」

 「何を腑抜けた事を…貴様、もしやあの出来損ないに何か吹き込まれたのではなかろうな…!?」

 「違う!あんな天さん初めて見た!だから…僕は最後まで見たい!」

 

 恐怖と決意に満ちたその表情。

 鶴仙人の最も嫌う感情が弟子から滲み出ていることに、彼はもう我慢がならなかった。

 

 「そうか、ならば貴様も用済みだ。」

 

 淡々と呟くその瞳…サングラスの奥から冷たい殺意が餃子を捕捉する。

 胸ぐらを掴んで、身動きを止め、指先が喉元を狙う…その指先は刃だ。

 撃たれれば餃子とてタダではすまない。

 しかしその手を掴んだ物がいた。

 

 「言いましたよね…鶴仙人様。次はないって。」

 「…シャオ!」

 「ありがと餃兄、勇気出してくれて。コイツは、私が排除する。」

 

 武舞台では悟空と天津飯が死闘を演じている。

 ほとんどが彼らの闘いに夢中になっている。

 

 「場所を変えましょうか。」

 「き、貴様…!はなせ…!」

 

 その瞳は無感情な闇一色…怒りと殺意に身を任せた鬼姫がそこにいた。

 ここではまずい…折角の決勝戦…兄弟子の全力を振るう場を奪うわけには行かない。

 仙人の首を引っ掴んだまま彼女は会場外へと引き摺っていく。

 さて、彼を連行した先は武道会場の遙か後ろ、雑木林の中。

 なんの感情もない視線を投げ込みながら彼女は静かに宣言する。

 

 「天兄に免じて一度は見逃しました。でももう許しません。…貴方を始末します。」

 

 愚か、あまりにも愚か。

 自分は師匠で、目の前の息巻いた小娘は自分の弟子、格下だ。

 先ほどは不覚を取っただけ、正面から挑めるのなら自分の勝ちは揺るがないと言うのに、なんと愚かな奴か!

 

 それが敗者の言い訳だと言うことに、彼は気づいていない。

 

 愚かなのは、果たしてどちらか?

 

 「正気か?師匠であるこのワシに向かって…!」

 「はぁ…前々からずーっと思ってました。貴方が私に何を教えたと言うんですか?」

 「な、なんじゃと!?」

 「私の技も、信念も、桃白白様から教わったモノ…例え嘘っぱちだったとしても…私の技と心は桃白白様からもらったモノです。断じて貴方のようなつまらないジジイからじゃない。」

 

 明確な離反。少しばかり腕が立ち、それなりの才能で殺し屋として熟し…鶴仙流の広告に一役買っていた。だからこそ昨夜の暴言は水に流してやろうと思ったのに、始末する理由を自分から用意してきた。

 少しばかり本気になる。拳を凶器に変えて、弟子だった小娘に向ける。

 

 「…もうよい…貴様らは皆殺しだ…ワシに逆らった事を後悔させてやる。」

 

 激昂した仙人はフルパワーで彼女に飛びかかる。

 その動きはこの世で10本の指に入る程の素晴らしい技だった。

 しかしその技は…16歳の少女には最早過去の栄光でしかない。

 必殺の拳はいとも容易く掴まれてしまう。

 

 「な…!?」

 「後悔するのは貴方の方よ。」

 「がはッ!?」

 

 拳が腹に刺さる、まるで時間を飛ばされたかのような錯覚。

 鶴仙人をもってして、今の拳を知覚することはできなかった。

 

 ーーーバカな…!?

 「この程度も見切れないのですね、失望しました。」

 

 崩れ落ちる仙人に落とされる冷たい視線。

 いや、冷たい所か温度すら感じない無機質で、無感情なモノ。

 喉奥から湧き上がる悲鳴を、仙人はなけなしのプライドで飲みこむ。

 

 二人の差は、歴然だった。

 

 彼女はこの数年、ひたすらに実戦経験を積んだ。

 例えそれが格下であったとしても学ぶべきところはあった。

 加えて、今の彼女は気の解放状態を維持している。

 それだけで…鶴仙人を十分超えていたといえよう。

 対して鶴仙人はどうか、弟子より強いと自負するばかりで己の技を磨いていたか。

 答えはnoである。

 彼は優れた師範であったが、同時に一線を退いていた。

 その差が今、如実に現れたのだ。

 

 この瞬間、鶴仙人は理解する。

 彼女はもう、自分の手に負える存在ではとうになくなっていたことを。

 

 「鬼姫が″殺す″と言ったんです。この意味…貴方にはわかりますよね?」

 

 あの日、納められた筈の殺気が再び立ち昇る。

 

 「ま、待てシャオ…!ワシが悪かった。良い!許そう!何処へなりと消えるがいい。貴様の様な化け物はワシの方から願い下げだ。」

 「もちろん、鶴仙流からは出ていきますよ。貴方を始末した後で安全にね?」

 

 不出来な裏切り者は殺すと宣言をしておきながら、なんと情けないことか。

 ソレは何の命乞いにもなっていない。

 寧ろ鬼姫の不興を買っていることにも気づいていない。

 哀れな老人の姿がそこにあった。

 

 「天津飯と餃子もだ…!奴らのことも見逃そうじゃないか。どうだ…三人仲良く出ていきたいだろう?どこへなりとも行くといい!」

 「そうですか、信用なりませんので、貴方を始末してその言葉を現実にします。」

 

 鬼姫の脚は止まらない。止まるはずがない。

 師から受け継いだ信念(例えハリボテであってもだ)それを踏み躙ったのを見逃した。

 だというのに次は彼女の大事なヒトに手をかけようとした。

 

 ーーー許す、ものか…!!

 

 黄色の瞳が爛と殺意に光る。

 ざり…と恐怖に怯えた翁の後ずさる音が響く。

 正に…彼女が踏み出し…その命を刈り取ろうとしたその時。

 

 「武闘家になりたいのではなかったのか、小籠包よ。」

 「!」

 

 背後から響く…静かな声。

 湧き上がる殺意がまるで魔法のように静まっていく。

 

 「その男はお前が殺すほどの価値はない。見てみよ。」

 

 武の神の言葉に改めて小さな老人を見る。

 先ほどこの世で10本の指に入っていた達人は…たかが16歳の…小娘の殺気にあてられて震え上がっている。

 

 殺意で熱された脳が冷える。

 強大な敵と思われた存在が…正しく彼女の視界に映った。

 

 「…小さい。」

 

 思わず口から出た言葉。

 こんなものに、自分はムキになっていたのか。

 

 「ほほほほ!そうじゃ!奴は小さかろう!…ぃ〜ヒヒッ!これ鶴よ!お前には勿体無い弟子じゃのう?…いや、もう弟子じゃなかったかワハハ!」

 「貴様ら〜…調子に乗りおって…」

 「なんじゃ〜キャンキャンと鳴いて見苦しいのう。」

 

 ねぇどんな気持ち?ねぇねぇ?

 煽りに煽る亀仙人、その場でダンスすら踊りかねないテンション。

 

 覚えておれ!

 そんな捨て台詞を残して…小籠包が惚けているうちに彼はあっという間に遠くに逃げ去っていってしまった。

 

 「捨て台詞までつまらん奴じゃのう。」

 

 かっかっかっ!と豪快に高笑いを続ける仙人に気づけば頭を下げていた。

 あの時、彼の言葉がなければ…自分は殺し屋に戻っていた。

 何が、殺し屋を辞めるだ。この程度で頭を茹だらせて殺意を漲らせては…この先一生、自分は鬼姫のままだ。

 

 「老師…ありがとうございます。」

 「よくぞ踏みとどまったな。」

 「いえ、貴方の言葉がなければ…私は鬼姫のままでした。」

 

 顔をあげよ。

 肩に置かれた掌はとてつもなく大きく、温かった。

 

 「未熟で良い、完成したと豪語すれば、人間はそこで終わりじゃ。今の心、忘れるでないぞ。」

 「はい、ありがとうございます。」

 「パイパイはこれ以上ないくらい完成しとるがのう♡」

 

 気づけばドスケベジジイが襟元から覗く彼女の豊かな谷間を覗き込んでいた。

 むほ〜♡と鼻息荒くする彼の顔を押しかえす。

 

 「老師の煩悩は、ソレで完成させてくださいね。」

 「良いモノが見れたワイ♡」

 

 今度は触らせてあげませんよ。

 なんじゃケチじゃのう。せめてツンツンだけでも…

 だめです。勝手に覗いたんですからソレでチャラですよ。

 

 そんなやりとりをしながら彼らは逃げ出した鶴仙人のことなどすぐに忘れ、武道会場に急ぎ足で戻っていった。なんせ、世紀の大決戦が今行われている最中だ。

 今正に、とびきりの見せ場を見逃してるかもしれないのだ。

 

 





戦闘力更新

鶴仙人 130


 鶴仙人をどうするかは迷いましたが、20年後くらいにブウが殺してくれるので彼女が殺す必要もないでしょう。
 ってことで見逃してあげました。残りの人生楽しく過ごせよ鶴仙人。

 なお、亀仙人のお説教は超からの引用です。
 ジレン相手に悟空が似たようなこと言ってたので

 次回いよいよ、天下一武道会編最終回!
 
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