ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 閲覧ありがとうございます!

 ヤジロベーとクリリンの声が似てるって公式で言われてて草だったので初投稿です。


 鋼龍様、誤字報告ありがとうございます!!!


其之十八 快男児のち野生児、ときどき(元)殺し屋

 

 大きな飛行船の中…タンバリンは悟空を前にした傲慢さを全く感じない恭しい姿勢で膝をついていた。頭を深々と下げ…よほど目の前の男を敬愛していることが伺える。

 

 「お前をして苦戦する人間が…この世にいたとはな。」

 「申し訳ありません()()()()。」

 「うむ、ドラゴンボールと名簿を持ち帰ったのだ、此度の失態は不問としてやろう。」

 「はっ…ありがとうございます。」

 

 彼が報告していたのは、自身をあっさり撃退したある少女の話だ。

 大魔王と呼ばれた老人は考える。

 タンバリンは彼の手駒の中でかなりの達人だ。

 ソレが苦戦するのであれば更なる手駒を作る必要があるだろう。

 

 「お前は計画通り、武道家どもを始末せよ。」

 「はっ…!承知いたしました。」

 「良いか、例の小娘を見つけたら直ちにわしに報告せよ。…わし自ら…手を下してやる。」

 「大魔王様自ら…!?お身体に障ります。」

 「ふん、たかが人間の小娘捻り潰すなど…老いたこの身でも造作もないことよ。」

 

 主人の実に頼もしい言葉にタンバリンは頭が上がらない。

 そして同時に自身に屈辱を舐めさせた小娘の不幸を嗤う。

 大魔王に目をつけられた、アレの死は確定したと言っていい。

 

 「行くのだタンバリン、武道家どもを皆殺しにしてこい!あの憎き″魔封波″なる技を使う愚かな奴が二度と現れぬよう、徹底的にな!」

 「承知致しました。」

 

 迅速に彼はデッキを後にした。

 さて、大魔王と呼ばれたこの老いた男…彼こそが数100年前にこの世を恐怖のどん底に陥れ、武泰人の手により電子ジャーに封印されていたピッコロ大魔王その人である。

 

 愚かにも彼を解放したのはかつて悟空に世界征服の野望を阻止されたピラフ一味だった。海底深く沈んだ電子ジャーの場所をどうやってか探し出し、ソレを引っ張り上げて、彼を現世に蘇らせた最悪の不埒者。

 彼らの目的は「大魔王から支配した世界を分けてもらう」という、悪の軍団として余りにも情けないモノだった。

 

 さて、彼らにとって誤算だったのが

 ピッコロ大魔王は自身を解放してくれた最大の功労者であり、しかも情報提供までした彼らを路傍の石とも思わない、最悪の存在だったことだ。

 なんとなく雲行きが怪しいことを三人は察していたが、彼らに大魔王を止める術はない。ヘコヘコと頭を下げて、彼の腰巾着に徹するしか生き残る道はないのだ。

 自業自得である。

 

 話を戻そう。

 タンバリンを見送ったピッコロ大魔王は、より強い戦士を生む必要があるが…生憎と老いた彼の身体では…魔力の出力に限界がある。

 業腹だが、彼より数段下の戦士を産むしかない。

 我が子を危険に晒すことになるが、致し方ない。

 全ては、若き肉体を取り戻すために。

 

 彼はグロテスクにも…口から巨大な卵を吐き出した。

 生み出された巨漢の魔族の名はシンバル。

 これだけの巨体なら、易々と殺される心配もないだろう。

 

 「わかっておるな、お前の役目は残り6つのドラゴンボールを集めることだ。」

 「ははっ!おまかせを大魔王様…!」

 

 船のドラゴンレーダーが示したその場所は、悟空と小籠包が今まさに彷徨っている場所の近所であった。

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 タンバリンをやり過ごし、湿地帯を歩くこと、小一時間。

 

 ない…

 

 漸く湿地帯から熱帯林に変わる。

 

 ない!

 

 熱帯林から荒野に変わる。

 

 ない!!

 

 食べ物どころか飲めそうな水の一滴だって見当たらない。

 こんなに見つからないことがあろうか?

 生えているのは自己主張の激しいゲーミングなキノコ

 近づけば大口を開く果物もどきに

 口から謎の煙を吐き散らかす獣

 彼らからなんとか視線を回避して、あるいは回避させて*1、悟空をおぶった彼女は進む。

 

 どう見ても毒物しかいません本当にありがとうございます。

 

 さて、比較的少食な小籠包は空腹にある程度の耐性がある。

 しかし、大食漢の背中に背負う少年は常に腹を鳴らしている。

 あまりの小気味良いぐぅ〜〜!という音に自分まで空腹感を覚えてしまう。

 

 さて、絵に描いたような弱肉強食の過酷な環境から、漸く緑豊かといえる穏やかな光景に到着する。

 耳をすませば水の音が聞こえる、飲み水にもありつけるかもしれない。

 

 「ッ……。」

 

 彼をおぶって不休で歩き続けた彼女だったが、そろそろ限界だった。

 なんせ夕食を食いっぱぐれた上に今や遭難に近いこの状況。

 いくら鬼姫と呼ばれた彼女とて体力にも限度がある。

 悟空を木の根元に座らせて、一息つく。

 その途端…どっと疲れが溢れ出す。

 

 「ついてないなぁ…」

 

 誰に聞かせるでもなく、つぶやいた彼女は気力を奮い立たせて立ち上がる。

 

 「悟空くん、ここで待ってて。」

 

 眠りこける彼に一言告げて、水音を頼りに水源を探す。

 せめて食べられる水棲生物でもいればいいが…

 そんな彼女の願いを神が聞き届けたのか、大きな湖が広がっていた。

 静かな夜の湖。

 ちゃぷん、と聞こえる音から何かしらの生き物はいるらしい。

 

 少女の体が静かに浮き上がる。月夜の反射の隙間に目を凝らす。

 その奥にキラリと光る何か、ソレ目掛けて細い気功波を何発か撃ち込む。

 

 寝ぼけていた彼らを襲う災難。何匹かの魚が水面に浮上する。

 

 「食べられそう…かな?」

 

 生物に明るくはないが、少なくとも…毒を持っていそうな見た目ではない。

 当たったらその時だ。

 そんな恐ろしい覚悟を決めた彼女はソレらを持ち帰っていった。

 

 さて、眠る悟空は魚肉の発する香ばしい香りで目を覚ますと、あっという間に平らげてしまった。

 

 「ありがとな…助かったぞ。」

 「うん、無事でよかった。」

 「…アイツはどうしたんだ。」

 

 二人は互いの情報を共有した、敵を逃したことと悟空が死んだと思い込んでること、ドラゴンボールのこと

 悟空は仇敵が生きてることに俄然やる気を出し、小籠包はクリリンが蘇生できる可能性があることに安堵する。

 そして同時に、そんな恐ろしい玉を…得体の知れない敵が集めてる事に戦慄した。

 

 ーーーソレに…彼らは武道家を狙っている。

 

 でもなぜ?

 クリリンをあっさり葬れる怪物どもの集まりだ。

 この世の殆どの連中は脅威にならないはず。

 

 そこまで考えたところで、思考を止めた。

 きっと答えは出て来ない。

 悟空はいつの間にか寝ている。先ほどと違って安らかな寝顔だ。

 しばらくは起きないだろう。

 

 思考を止め、一息ついた途端、汗と埃の不快感が途端に押し寄せてくる。

 

 さて、小籠包はこれでも花もはじらう10代の少女である。

 こんな泥と汗にまみれた格好で夜を過ごせるほど、まだ女をやめてはいなかった。

 ここにいるのがスケベ仙人であったのなら自重したのかもしれないが、ここにいるのは色気より食い気、花より団子なスーパー野生児、おまけに年下な孫悟空とくれば…多少ガードが緩くなると言う物。

 

 見られたとて、減るものではないが一応周囲の気配を探り、獣すら寝静まってることを確認して、一人、深夜の水浴びに没頭した。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 翌朝、まともな寝床でないため、完全にとは言わないが悟空はかなり体力を回復した。

 

 「腹減ったぁ〜」

 

 してはいなかった。

 仕方なく、昨晩同様に狩りを試みるが…

 昨夜湖を襲ったり、誰かさんが水浴びをしたせいか、魚たちはすっかり警戒して水底に隠れてしまったらしい。

 どうしてか…他の動物も警戒心を強めて出歩いてはいない様子。

 

 ーーーこれも魔族の影響なの?

 

 さて、どうするか…などと考えている彼女の背後で…悟空は香ばしい香りを捕まえる。

 食べ物の匂いだ…!

 フラフラと匂いの方向へと誘われていく悟空。

 

 「参ったね、悟空くん…もうちょっと我慢…っていないし!」

 

 ああ、もう!

 ソレこそ魔族に出会したらどうするつもりだと、プンスコ怒りながら、彼の気を辿って追いかける。

 さて、たどり着いた先には、巨大な魚の骨の前に満足そうに転がる少年の姿があった。

 

 火の跡、どう見ても誰かの朝ごはんです。

 本当にありがとうございます。

 あまりの出来事に頭を抱える。

 

 「わりぃ、小籠包…全部食っちまった…。」

 「あのね…他人様のモノ…勝手に食べちゃダメでしょう。泥棒よ、これ。」

 「何言ってんだ、ここに落ちてたんだぞ?」

 

 めまいがする。

 言い訳ではない、この少年は大真面目に言っているのだ。

 悪意ゼロ、仮にここに「食べるな」と但し書きしてあれば、彼は手を出さなかっただろう。

 だが、手を出さないのが普通なのだ、こればかりは悟空が悪い。

 

 「これはね、誰かが捕まえて焼いてたの。だから落ちてたわけじゃーーー」

 ーーーテメェら!俺の魚食いやがったなァ!?

 

 怒号が響く、小籠包の頭痛は終わらない。

 

 「返せ!俺の魚!!」

 「…ごめんなさい、この子悪気はなかったんです。代わりに私が今から捕まえて来ますから。」

 

 独特の訛りの男。死んだ親友の声によく似た男の首には…見覚えのある琥珀色が光っていた。

 

 「ど、ドラゴンボール!!そうか…お前、あいつらの仲間だな!」

 「は?」「んぁ?」

 

 さて、ドラゴンボール…一星球を見た悟空は血相を変える。

 その星が4つに空見したら頭の血が上る、大事な親友の仇…その仲間と分かれば、悟空はいきなり男にとびかかった。

 

 「ちょ…悟空くん!?待っーーー」

 

 この男はどう見ても普通の人間、しかも一般人だ。

 天下一武道会準優勝の超達人が攻撃すればひとたまりもない。

 しかしその彼の飛び蹴りを男は難なく受け止めた。

 

 「「!?」」

 

 常人なら反応すらできない速度、この男…ふくよかな見た目とは裏腹に俊敏、そして正確な目を持っている。

 

 「お前いったいナニモンだ?ただのコソドロじゃねえな。」

 

 さて、四股をふむ彼はもう臨戦体制を整える。

 一つ踏む度に地鳴りが発生している。

 凄まじい膂力だ、この世にこれほどの強さを持つ男がいたとは

 これはまずい。やっと体力が回復した悟空を無駄に消耗させるわけには行かない。

 

 「す、ストップ!ほ、本当にすみません!お魚は弁償します!悟空くんも!ほら謝って!!」

 「なんでだ!?アイツらはクリリンの仇だぞ!?」

 「よく見なさい!!どう見たって普通の人間でしょ!?」

 

 ごちん、と頭を軽く叩かれて漸く悟空の頭が冷えていく。

 よく見れば、彼の首に下げているボールの星は…一つだった。

 じいちゃんの形見、四星球ではない。

 

 「……ほんとだ、じっちゃんの形見じゃねえ。」

 「あ や ま り な さ い !」

 「いでででで!?…ごめ、ごめんなさい!?」

 「おかしな奴らだな…。」

 

 ここで漸く落ち着いた三人は互いの自己紹介をし、とりあえず小籠包は…遭難中で食べ物に困っていたことをなんとか納得してもらえた。

 

 「おめえ、女ほったらかして自分だけ腹一杯食うとは見下げ果てた野郎だな!」

 「しょうがねえだろ、腹ペコで死にそうだったんだから。」

 「まあいい、お前の姉ちゃんに免じて今回は見逃してやる。」

 

 彼も男だ、人間離れした肌と触覚があるとはいえ…美人にぺこぺこと頭を下げられて悪い気はしない。

 食い物は後で調達すればいいし、なんなら彼女らを顎で使ってやろうか…などと考えていた時…ソイツは現れた。

 

 「おい、小僧ども…俺様の質問に答えろ。」

 

 どこかの打楽器のような傲慢さを彷彿とさせる怪物。

 その見た目と禍々しい邪悪な気、小籠包の瞳が鋭くなった。

 間違いない、クリリンを殺した連中の仲間だ。

 悟空もソレを勘づいたようで身構える。

 

 唯一ヤジロベーだけはのっし、のっしと不遜な態度で彼に切り返す。

 

 「てめえ!ソレが人に物を頼む態度か!?」

 

 ぴき…!

 怪物のこめかみに青筋がたつ。口の利き方がわからないガキは嫌いだ。

 面倒だ、殺してやろうか?いやしかしこの近辺にあると思しきボールを自分一人で探すのは無理がある。

 …そこまで考えたところでやっと彼は…ヤジロベーの首に提げられたドラゴンボールを自覚する。

 

 頭は、あまりよくはないらしい。

 

 「おいデブ!!貴様の首に提げた球を渡してもらおうか!」

 

 品がないな、小籠包はため息を溢す。

 タンバリンも大概だったがコイツは大した力も無いくせに自分は仲間内で最強と信じて疑わないタイプだ。

 

 少なくとも、ここのメンツではこの怪物が最弱…しかも1vs3

 殺し合いをすればまず間違いなくコイツは死ぬ。

 だと言うのに下手にでるでもなく、交渉に出るでもなく脅しだ。

 

 おつむは最悪と言わざるを得ない。

 

 ヤジロベーはこれで礼をすれば礼で返してくれる男。

 彼がまともに交渉をすれば、或いは無傷でこの場を後にできたかも知れないのに。

 

 「…見てられないわ、あの馬鹿面。」

 「おい小娘!…聞こえているぞ!」

 「ごめんなさい、馬鹿面の自覚あったのね。」

 

 ぐぬぬ、殺す!

 と息巻いたシンバル。その間にヤジロベーが立ちはだかった。

 

 「おい、女に手ェ出すとは見てられねぇ、俺が相手になってやる。」

 「ふん、安心しろお前らは皆殺しだ。仲良く地獄に堕としてやる!」

 

 さて、そんなシンバルはその特異な戦術で僅かに彼を翻弄したが、結局は輪切りにされてあっさり絶命してしまった。

 身の程をわきまえない傲慢な奴に相応しい末路、教科書にでも載せたいくらいに彼の死に様はテンプレート通りだった。

*1
殺意剥き出しの彼女に絡む程、彼らは馬鹿ではなかった。





戦闘力更新
 ヤジロベー 190
 シンバル 120

 サービスシーンなんてなかった、いいね?

 この調子なら未だ未だノンストップで行けそうです!よろしくお願いします!

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