ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
閲覧ありがとうございます!
そろそろ主人公ちゃんの種族がバレそうなので初投稿です。
何が起きたのか、理解できなかった。
無類のタフネスを持つ悟空が、ぴくりとも動かないのだ。
「ご、…悟空…くん…?」
震える指先で、手首に触れる。
脈が、ない。
そんなバカな…!手首を、何度も摩る。
いくら探しても…そこから生命の息吹を感じ取ることはできなかった。
「う、嘘…。」
「そ、孫…。」
「がはははは…!次は貴様らだ!ククク…最後のチャンスだ、このピッコロ大魔王に下るのなら、貴様は見逃してやる!」
ゆらりと、立ち上がる。もう彼は、自分の大事な友人を奪った憎き敵だ。その瞳に…爛々とした殺意の焔が灯る。
「やはり良い目をしている、貴様は悪党だ、それも筋金入りのな!ワシの下に来い!共に血と暴力の世界を作ろうではないか!」
「化け物に下げる頭は、用意してないのよ。」
「そうか、なら仕方ない。くく、ここまで楽しませてくれた褒美だ……冥土への土産に…もう一撃くれてやるチャンスをやろう。…さぁ好きに打ち込め、ソレが貴様の最後の攻撃となる!」
「お優しいのね…大魔王様は…なら…お言葉に甘えるましょう…」
深呼吸をし…腰を落とす。両手を額に添えて、高らかに叫ぶ!
ーーー新鶴仙流!太陽拳!!!
「ぐぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!?」
ーーーいまだ…!
自分の首から提げたドラゴンボールを千切る、そのまま渾身の力で気功波と共に遙か彼方へ吹き飛ばす。
大魔王の目が眩んでる内に…悟空の亡骸と、ヤジロベーの襟を引っ掴み、気の全てを解放する。全身全霊の舞空術…!
ーーー遠くに…アイツの探知の範囲から…遠くに…!
彼の能力からして、気の探知は行えないと小籠包は踏んだ。意識を集中する。どこか、どこか安全な場所は……!
必死に気を辿る、できる限り、大きな気を…そして邪悪さの感じられない、清らかな気を探る。いるはずだ、どこかに武天老師、天津飯、餃子、ヤムチャ…誰でもいい…!ひっかかれ…!
「!」
凄く大きな気配…静かで大きな、温かい気…!
意識を集中する。そこに向かう…少なくとも…ここよりは遙か
遠く…自分たちの力になってくれるかもしれない…!
極限状態の集中と気の高まり、速度が少しずつ上がっていく。
自身の感覚が殆ど無意識になったその時、視界は唐突に、見知らぬ建屋の中へと切り替わる。
ーーーがしゃァァァァン!!
「な、なんじゃ…!?何者じゃ!?」
何が起きたのかわからない。巨大な壺に激突したらしい…足元には大量の豆が散らばっている。目の前には杖をこちらに向けて威嚇する猫…の様な生き物がいた。
ーーーこの人だ…!さっき感じた気…!でも、あんなに遠くだったのに…!?
「ええい、この聖地カリンにどうやって侵入した!無礼者め!下界へ叩き落としてくれる!」
「…た、助けてください!…私たち、ピッコロ大魔王から逃げて来たんです…!」
「なに…!ぴ、ピッコロじゃと…!?」
その猫は自らを仙猫カリンと名乗った。かつての師である鶴仙人から聞いたことがある。武道の神様と言われ、雲を突き抜けた先まで聳え立つ巨大な塔を登った先に住んでいる。仙人であると。
カリン曰く、小籠包はヤジロベーと悟空を抱えた格好で
本来は、下界からカリン塔を上り切った者のみ会うことを許される仙人。しかし…彼女が抱えているのは、かつて自身が教えを説いた武術家の亡骸。多少の恩赦に少しばかりの滞在を、彼は許してくれた。
「そうか…悟空はやられてしもうたか…惜しい奴を亡くした。」
「…はい。……ッピッコロ…め…!!」
ーーーこの娘…悪人ではないようだが…。
憎悪を燃やす少女の様子を観察する。
誰にでも悪心はある。彼女は本気で悟空の死を悼んでいるようだが、それ以上にその仇討ちへの憎悪の方が強い様に感じる。
ーーー実に危うい。道を踏み外さぬと良いのじゃが。
悲痛な空気が流れる中、ヤジロベー微かな違和感を覚える。
死んだ筈の悟空の亡骸が、動いた様な気がしたのだ。
そんなバカな…恐る恐る近づきその胸元に触れる。
ーーーとくん…!
心臓が、微かに動いている!
ーーーとくん…!
聞き違いではない、微かに鼓動の音を感じる!
「お、おい…孫のやつ…生きてるぜ…!」
「「!」」
ーーーカハッ……!?
彼らの視線が集まると同時に
死んだと思っていた友人の手を握る、弱々しいがその指先に微かな脈を感じる。
ーーー生きてる…!
「……悟空くん!しっかり!」
「…コレを悟空に与えよ。」
カリンは地面に散らばった豆を一つ摘んだ。
そんな豆粒一つで何が出来るのかと、困惑する彼らを他所に説明の時間はない。カリンは死の淵からよみがえりつつある悟空の口の中にその豆を放り込み、水で流し込んだ。
虫の息は忽ち穏やかな者と変わり、汚れてはいるものの、全身の生傷が癒えていく。まるで朝目覚めるかの様な気楽さで悟空は立ち上がった。
「!……あれ?なんでカリン様がここに居るんだ?」
なんて事のない様に周囲を見渡す。聖地カリンからは遠く離れた場所だったはず…それにピッコロはどうした?
様々な疑問を解消する暇も無く、シャオランが彼を抱きしめた。
「何すんだ!痛えって小籠包!」
「良かった…!本当に…死んじゃったのかと…!」
ーーーうわァァァァァァァ!
聖地カリンに少女の歓びの涙がこだまする。
何が起きたのかわからない悟空と、安堵の表情を示す仙人。
そして、置いてけぼりの快男児がなんとも言えぬ顔で頬を掻いていた。
泣き続けた彼女が落ち着くまでしばらくかかった。我に帰ったというべきか、実にバツが悪そうに居直る。
自分を殺すと息巻いていた頃とは随分変わったと悟空は思う。いや、これが彼女本来の性質なのかもしれない。
「お前ェ、よくアイツから逃げられたな。」
「う、うん。太陽拳と、ドラゴンボールを囮にしてね、殆ど賭けだったけど。」
「あれから何日経ったんだ?あそこからここまで結構距離があるぞ?」
」
「1日も経ってねぇよ、孫。こいつ、いきなりワープしやがった。」
「イィ!?お前ェ…そんなこともできんのか!?」
「…わ、わからない。無我夢中だったから。」
「へぇ…やっぱりお前ェすげぇなぁ…」
身体と心を鍛えていた亀仙流とは違う強さ、″気″の扱いにおいて彼女は間違いなく悟空の知る中で最高の使い手といえる。あるいは…あのピッコロ大魔王よりも使い方は上かもしれない。
少し悩んだ末に、悟空はあることを切り出した。
「なぁ、オラを鍛えてくんねえか。」
「何言ってんの、悟空くんのほうが私より強いじゃない。」
「そうじゃねえ、オラ″気″って奴をよく知らねえ。オラに教えてくれ…お前ェの技…!」
「…私より、もっと適任がいらっしゃると思うけど。」
彼女は殺し屋、武闘家に教えるのなら武の神と言われた仙人をさしおいて、一体何を教えられるというのか。…と、杞憂の視線の先には呑気に鼻くそを穿っている猫がそこにいた。
ーーーす、すごいのはわかるのだけどなぁ…。
「コホン…小籠包とやら、悟空に稽古をつけてやってはくれぬか。」
「しかし、カリン様、私は…」
「殺し屋が教えることなどないと?」
「!」
読心術、それも相手の表情から考えを当てるなど生優しい物ではない。
頭の中を読み取られた。伊達酔狂で武の神と呼ばれているわけではない。…ならば、彼のいう事に身を任せて見るのもいいかもしれない。
自身の考えが如何に偏狭であったかを思い知らせるかの様な一言に、彼女は観念した。
「それに、お主らは塔をちゃんと登っておらんしの〜、教えてやるわけにはいかんわい。」
ーーーずて。
それが本音かこの仙人。鼻歌を歌いながら髭をなでる彼にじとり視線が集中する。だが彼のいうことは正論、自身の力でここにきたとはいえ、正規の方法で入場してないにもかかわらず、追い出されないことがそもそも有情なのだ。文句は言えない。
「わかりました。」
「やったぁ!…よろしく頼むぜ!」
「…短期間で、どこまでやれるかはわからないけど…」
「それならば良いところがある。ついて参れ。」
カリンに誘われるままに来たのは…炊事場と思しきに部屋。随分と使われていないのか、ところどころ埃が目立つ。奥にある大きな水瓶を引っ張り出してきたカリンは…なみなみと水が注がれたそれを彼らの前に置いた。
「あの…これは…?」
「時間と場所が欲しいのじゃろう?」
時の亀。カリンはそう呼んだ。
外界と時間の異なる異次元空間がこの中に詰め込まれている。
そうカリンは説明した。
「おかしな事いう猫だぜ、この中に部屋があるだって?」
「なら確認してみい!」
「ぎょわぁぁぁぁぁぁ!?」
水瓶を覗き込むヤジロベーの背中を突き落とす。いくら大きな水瓶といえど、ヤジロベーのような巨漢が入ったというのに水は一滴も溢れない。まるで小石でも投げ込まれたかのような静かな波紋が広がるだけ。1分程経過したところで、中から水泡が上り、ヤジロベーが飛び出してきた。
「て、てんめぇ!殺す気かぁ!」
「あの程度で死ぬ様な軟弱者ではなかろう。…どうじゃ、ここなら外を気にせず思いっきりやれる。」
「ありがとな!カリン様!行ってくる!」
何の躊躇いもなく、悟空は水瓶の中に飛び込んだ。思い切りがいいのか、何も考えていないのか、先ほどまで死にかけていたとは思えないわんぱく振りに小籠包はため息をついて続く。
「シャオランよ。」
「…なんでしょう。」
「悟空のこと、頼んだぞ。」
「…?、わかりました。」
含みのある言い回し。その真意がわからない。それ以上何も言うつもりがないのか、仙人は背を向けて炊事場を後にした。今度こそ悟空に続こうと縁から身を乗り出す。
「おい、待て。」
「もう…なに、ヤジロベー」
「なんだ…お前のおかげで助かったぜ。生きて帰ってこいよ。」
「…ありがとう。…貴方も、さっきはかっこよかったよ。行ってきます。」
今度こそ小さな水飛沫を跳ねて水瓶の中に消えていく。
全く妙な事に巻き込まれたぜと、照れ隠しの悪態をつきながら快男児も仙人に続き炊事場を後にした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
水中を通じて沈んでいく。水中なのに濡れた様子もなければ呼吸もできる不思議な空間。その異空間を通じて降りた先には古ぼけた扉があった。
向こうからは悟空の気配を感じる。
「何してたんだ。オラ待ちくたびれたぞ。」
「ごめんね。」
「しっかし広いなぁ、本当に壺の中なんか?」
扉の先には…天下一武道会の武舞台すら比較にならないほどの広間があった。入り口の上には2本の歪んだ針が真上を…いや、ほんの少しばかりすすんでいるか。
入口の横には山小屋の様な小さな小屋。中の様子は確認できないが、少女と少年が寝泊まりするには十分なスペースだろう。
中には簡素なベッドと、いくつかの壺…中には成分不明の粉が入ったものと飲み水。これがここでの食料のようだ。
こちらの世界での三日は外界では1日。
時間はない、大魔王がドラゴンボールを集め、願いを叶えればこの世はおしまい。
程なくして世界を手中に収めるだろう。
なんとしても早くに力をつけなければならない。
「早速始めようか、ピッコロ大魔王を倒す特訓を。」
言い訳タイム:
オリジナルアイテム「時の亀」
人1人入れるくらいのクソでかいツボ。
1日で3日分の修行ができる異次元空間。
重力変化なし、気温は適温。
広さは大体のデカ目の体育館くらい。
食料はお馴染み謎の粉。
時の異次元空間ってDBワールドだとポピュラー(?)らしいので、カリン様くらいの方なら持ってるやろの精神で思い切りました。
超神水使わなかったのは、単純に危ないからです。
原作でも、「どうせ死ぬなら飲んでみるか?」って言うくらいなので、できることならチャレンジしてほしくなかったはずだし、多分悟空があのまま死んじゃう世界線もあったと思います。
本作は便利な覚醒メダル「小籠包」が実装されてるので、ソレに頼る形です。
言い訳タイム終わり。
渾身の2話投稿は多分これで打ち止め…多分、メイビー
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