ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
ピラフ一味の処遇に頭を抱えたので初投稿です。
さて、小籠包にはやるべき事がもう一つある。
それはピッコロ大魔王についていた腰巾着三人組だ。
彼ら本人に害はないが…アレは自分達の利益のタメなら平気で世界を危機に陥れる連中。
次、どんな事をしでかすか分かったものじゃない。
彼らを探すのは簡単だった、その行動はよく目立つ。
少しばかり情報屋にゼニーを握らせたら直ぐにその居場所を突き止めてくれた。
さて、この三人は殺すに値するか…答えはyesであり、noだ。
もう彼女は殺しを選ばないことにした。
理由はいくつかあるが…一番は孫悟空の存在。
自分をライバルと慕ってくれてる以上、彼の望まぬ″無闇な殺生″は避けるべき。
そう考える様になった。
これまでの彼女なら、この危険因子はさっさと殺すと息巻いただろう。
しかし、ついぞマジュニアすら半分見逃した彼女に、ピラフ一味は殺さない…いや、殺せないが正しい。
彼女にとって、殺しに必要なのは覚悟だ。
これから奪う命の責任を背負い、一生その業を背負うという覚悟が必要だ。
今の彼女に、それはない。
見方を変えれば鬼姫は小娘に成り下がり弱くなったと言える。
だが小籠包自身は今の自分の方が気に入っている。
3年前、武の神に尋ねた。
ーーー自分でも武闘家になれますか?
今の彼女を見れば、武天老師も是と答えるだろう。
もっとも…彼は更に成長した身体に釘付けになるのだろうが…。
指定されたポイントに到着する。
確かに、山奥に鎮座する寂れた廃墟に扮しているが、そこには立派な秘密基地が存在していた。
彼女は無造作に機械ロックで封鎖された扉を千切る様にこじ開けた。
けたたましいサイレンが侵入者を通知する。
ーーー短期間でこれほどの施設を作れるなら、もっといい暮らしができるのに…。
一体何が彼らをそうさせるのか…そこまで考えて自嘲する。
自分も少し前までは説教をされる側の人間だったと。
ーーーさて、私にできるかな、老師のマネが。
襲いかかる警備ロボットたちを次々と破壊していく。
普通の軍隊なら歯が立たないレベルの兵器たち、しかし彼女は非常識な存在。
銃火器の類など、豆鉄砲に等しい。
なかなか奥へと進ませてくれないロボットたちにそろそろ嫌気が刺してくる。
「見てるんでしょう?これ以上無駄にロボット壊させるのなら…この基地ごと吹き飛ばすわよ。」
ぴたり。
ロボットの増員が止まった。なんてわかりやすいのだろうか。
どうも、と肩をすくめて奥へと進む。
奥には実に偉そうな執務机に座るピラフ。刀とマシンガンをそれぞれ構えるシュウとマイがそこにいた。
「な、何の様だ!我々を殺しにきたのか!」
「場合によってはね。」
「…ッ、シュウ!マイ!何をしておるコイツを早く殺せ!」
「あのロボットより弱いのよね?よした方が良いと思うけど。」
ぐぬぬ、とピラフが歯噛みする。予想していた事だが随分と警戒されている。先ずは落ち着いてもらおうと彼らに歩み寄る。当然、刀とマシンガンを握る力が強くなる。
「マイ、でいいのよね、これでお茶を入れてくれない?全員分。」
「はぁ?」
「早く、私…結構気が短いのよ?」
「ははっ、はいぃぃ!」
「そこのワンコ、こうして見下ろして話したくないの、椅子か何かない?」
「わ、わかりました〜〜!」
さて、いそいそと準備する二人の従者。テーブルとソファが用意され、ティーセットと茶請けが用意される。
あの鬼姫と恐れられた殺し屋が一体なんのつもりだ…ピラフは必死に思考を巡らせる。
あの茶葉に毒でもはいっているのか?…そんな回りくどいことをせずとも…あの大魔王すら倒す連中だ。そんな事をせずともこの基地もろとも吹き飛ばせばいい。
…まさか、自分たちに取り入ろうと言うのか?それであればこれほどの戦力を手に入れられれば、あの孫悟空にも対抗できる…いや、流石にそれはないか?
「貴方たちの目標はなに?」
鬼姫はティーカップを見つめ、持ち上げる。毒が入っていない事でも確認しているのか、目線は液体とカップを観察しながら問いかけた。
「せ、世界征服だ!それがどうした!」
「それで?」
「それで…とは?」
「だから、世界征服をして…どうするの。」
「それは…だな!このピラフ大王の恐ろしさ!素晴らしさを世に知らしめるのだ!」
「世界征服でなくて良くない?それ。」
……読めたぞ。ピラフはほくそ笑む。
この女は我々の力が欲しいのだ、軍団を作るべく、我らを取り込もうとしている。そうは行かない。
あのピッコロとかいう化け物の二の舞はごめんだ。
今度こそ、自分の力で世界を手に入れるのだ。
「我々を取り入れようたって無駄だぞ?」
「?」
「お前の考えはお見通しだ…なんだかんだ、お前も世界が欲しいのだろう?どうだ、我々に協力するのなら…まあ、No.3くらいにはしてやってもよいぞ?」
異形の瞳が呆気に取られる。瞬きを数回してからカップをソーサーに置いた。その瞳がまっすぐピラフを捉えた。
「そんな回りくどい事、しなくてよくない?」
「どういう意味だ。」
「貴方、こんなにすごい技術力があるのよ。貴方の凄さを少しずつ広めたら良いじゃない。」
「…確かに、……はっ!?」
敵の甘言に乗せられかけた部下を睨む
慌てて口笛を吹く部下に鼻をならす。黙っていろ、と。
鬼姫は続けた。
「悪しき恐怖のピラフ大王様…、慈悲深く聡明なピラフ賢王様…、どっちが末永い国になるのかしらね。…少なくとも前者は、孫悟空が許してくれないと思うけど?」
もちろん、この私もね。
ピラフは選択を迫られていた。
この場で鬼姫と敵対する意思を見せるのか。
少なくとも…善人として(例え体裁だけでも)歩みを変えるのか。
「ふん、何が国だ…!この国には国王がいるのだぞ!」
「蹴落とせばいいじゃない、彼より素晴らしい王になってね?」
できるでしょ、貴女なら。
カップを傾けながらなんでもないように言い放つ。
「貴様、何が目的だ。」
「私の邪魔にならない様に、釘を刺しにきたの。」
「邪魔…?」
「ええ、ピッコロ大魔王を蘇らせたり、レッドリボン軍みたいに、身勝手に誰かを踏み躙るような連中に加担して、私の大事なものが傷ついたりしない様にね。」
半分ほど中身の減ったカップがソーサーに置かれる。
よく鍛えられた脚が組まれる、凡そ話し合いの姿勢ではない挑発的な姿勢だ。
「だから、白黒つけにきたの。貴方は私の敵かどうか。」
「………。」
誤魔化すことはいくらでもできる。
耳障りの良い事を並べ立ておけば、この場は収められる。
しかしその後は?
彼女は決して裏切りを許さない。
正しき線引きが必要だ。
「貴様にとっての″敵″とは、なんなのだ。」
「言ったでしょう、私の邪魔をする人たちのこと。」
「我々に、善人になれとでもいうのか。」
「悪人で良いじゃない、私だって極悪人よ、何人殺したと思ってるの?」
…隣から生唾を飲む音が左右から聞こえる。
20に満たない若さで100人は間違いなく手にかけている。
サラリと言い放ったその言葉には大変な重みがある。
「私はね、貴方がピッコロ大魔王みたいな″人が苦しんでるのを楽しむ″下衆野郎だと思ってないの。己が利を求めて人に迷惑をかけただけ。けっこうじゃない、利を求める悪党で。でも今の貴方は破滅するわ、間違いなくね。」
利を貪欲に求める悪党、しかしやり方まで外道に走る必要はない。
外面は綺麗に飾り、その内面がグロテスクな悪でもいい。
結果、その行為が善に転がるかどうか、それだけの話。
同時に彼女は圧力をかけている。
外道に走るのなら容赦はしない。
正義の真似事?
そんなお優しいモノではない。
彼女も己の利の為に立ち回っているに過ぎない。
そうでなければあの時マジュニアをあっさり殺して居たはずだ。
「話は終わりよ。…お茶ありがとうマイ。上手に淹れてたわ、美味しかった。」
「え、えぇ…。」
言いたい事を言い切ったのか、カップの中身を飲み干して彼女は立ち上がった。三人のカップは手付かずのまま。
「良く考えることね、ピラフ大王。貴方が外道ではないことを祈ってる。どうか私に、貴方を殺す覚悟をさせないでね。」
返事を待たず…あるいは期待すらしておらず小籠包は去っていく。扉が閉じて、その姿が見えなくなるまで、三人は彼女の後ろ姿を見送った。
「ぴ、ピラフ様…」
「ど、どうしましょう…。」
「お前たち、我々の悲願はなんだ。」
ボスの突然の質問…面食らうが…何とか二人は″世界征服″と答える。
「うむ、その通りだ。」
部下たちの心が変わってないことに満足そうに彼は頷く。
問題はその方法だ。彼らはドラゴンボールに頼み、世界を手にするつもりだった。
だが、その先はどうする?
悪の支配者を、孫悟空は決して見逃さないだろう。
実に短い玉座、そんなことになったらピラフは一生歴史の笑い物である。
実に、実に愚かな王だったと。
『蹴落とせばいいじゃない。』
ピラフの口角がニタリと釣り上がる。
ーーー確かにお前は悪党だ鬼姫…!このピラフ様を利用しようというのだからな!
民衆の心を掌握し…国王から玉座を奪う。
そして、国王を退けたピラフを余人はこういうだろう。
なんて恐ろしい男だ…と。
そして皆が自分たちの前にひれ伏すのだ…。
あんな王より自分の方がよほどこの国を管理出来る自身がある…!
ーーーくく、面白い、面白いではないか…!
これこそ自分たちの求めている理想ではないか。
何よりかっこいい、これは何より大事なことだ。
その上、手段に筋さえ通っていれば…少なくとも鬼姫を敵に回すことはない。
そうなれば、あの憎き孫悟空がちょっかいをかけてくる可能性も減るだろう。
何も化け物どもと戦う必要などない。
なんせ奴らは世界をねらってるわけではない。
同じ土俵に上がる必要などそもそもないのだ。
千里の道も一歩からとはよく言ったモノ。
正攻法で玉座を奪う力を自分は持っている…!
わざわざドラゴンボールに頼む必要などそもそもないのだ!
それに奴らは勝手に巨悪を退治までしてくれるだろう。
こんな都合のいい自衛装置は存在しない。
それを掌握する…まさしく悪党!
恐ろしきピラフ大王に相応しい目標だ…!
少しばかり良い子ぶる必要があるが…この理想郷の前に多少の屈辱は目を瞑ろうじゃないか…!
ぐふふ…!と大変ゲスな含み笑いの後に、彼は高らかに宣言した。
「我々の目的は依然変わらん!世界征服だ!!あの国王のジジイにこのピラフ大王様が直々に引導を渡してくれる!!」
「「は、はい!!ピラフ様!!」」
ここに新生・ピラフ一味が誕生した。
とりあえずやばそうな連中を避けて、何とかかんとか王様になろうとするケチな小悪党が誕生したのである。
国王就任RTA開始!
なお、ドラゴンボールの使用は縛る物とする。
閲覧ありがとうございました!
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