ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 閲覧ありがとうございます。

 本戦の組み合わせが決まってざっくりプロットができつつあるので初投稿です。


其之三十三 謎の男 シェン

 

 武道会の予選グループが決まった。

 なんとなんと、幸運にも六人は同じ予選グループに入ることはなかったのである。

 …そんなわけなく、今回も餃子の超能力によるインチキだ。

 もちろん悟空たち亀仙流の面々がこれを知ることはない。

 

 小籠包はフラリとグループを抜けてある人物の元へと向かった。

 

 「なんの用だ。」

 「独り寂しく退屈してるかと思って。」

 「余計なお世話だサッサと消えろ。」

 

 マジュニアは白のマントとターバンを纏っている。

 

 「それ変装のつもり?」

 「消えろと言ったのがわからんのか。」

 「聞いてあげる義理もないでしょ。」

 「ちッ…相変わらず口の減らない野郎だ。」

 

 腕を組んで、壁にもたれかかるマジュニアの隣に陣取る。

 視界の向こうでは今まさに悟空がチャパ王を下したところだった。

 

 「世界征服はできそう?」

 「当然…と言いたいところだが、奴の力量はこの俺様でもまだ掴めん。」

 「へぇ…?」

 

 少しだけ驚いた、少し前まで自分は世界で一番強いと信じて疑わなかった男が、最大の障害を真剣な眼差しで見ている。

 自意識過剰むっつりドスケベ変態魔族が

 ムッツリドスケベ変態魔族に認識を改めた。

 最早完全な風評被害である。

 

 「貴様の底は知れているがな?」

 「あっそ、手加減した隙をつかれてあっさり負けないでよ?」

 「安心しろ、俺の敵になり得るのは孫悟空と…お前だけだ小籠包。」

 「どうも。…予選落ちしないよう、お互い頑張りましょ。」

 

 ひらり、と片手を振って去っていく。

 マジュニアとはブロックが異なる、戦うとしたら本戦からだろう。

 そういう自分はというと…

 

 ーーー本戦へ上がるには…得体の知れない男が一人。

 

 武道とはほぼ無縁にも感じる冴えないメガネの男性。

 構えはおぼつかないし、落ち着きもない、しかし武舞台の相手を翻弄している。

 いわゆるラッキーパンチと思われる攻撃の数々。

 

 殺し屋の界隈にも、ああいう輩はいた。

 道化を演じてあっさりターゲットを始末する。

 彼はそういうタイプ。

 

 ーーーそれに…なんなの、この違和感。

 

 攻撃の端々で発する気配が達人のソレなのだ。

 身体はとても貧相なのに。

 厄介な相手と同じブロックになった。

 

 ちょうど試合が終わり、観客にヘラヘラと愛想を振り撒きながらメガネの男が壇上から降りてきたところだ。真っ直ぐ、自分のところに近づいてくる。

 その表情は先ほどまでのヘラヘラした冴えない男ではない。

 全てを見透かした様な鋭い視線で彼女の黄色い瞳を射抜いていた。

 

 「お嬢さん、少し話があるのだが。」

 「そう、私も貴方に話があるわ。付き合ってあげる。」

 

 自分の出番はもう少し先、彼に続いて会場の隅へと移動する。

 

 「単刀直入に言おう、本戦への出場権を、譲ってはくれぬか?」

 「あら、名乗る事もせずに一方的にお願い?随分と舐められたものね。」

 「おーコイツは失敬、私はシェン。お嬢さん、貴方のお名前を伺っても?」

 「小籠包よ、…質問に答えるわね?ノーよ。欲しければ自分で勝ち取りなさい。」

 

 そうか、ソレは残念だ。

 偉そうに、あるいは大袈裟に首を横に振る中年の男は本当に底が知れない。

 隙が一切ないのだ。

 本当に一体、何ものなのだろうこの男は。

 

 「そんなことしなくても…貴方なら私くらい楽勝でしょ?」

 「そういう言い方は、私に勝算があるのと同じではないかな?」

 

 ご明察。

 交渉に来たということは何かの弱点を抱えている事に他ならない。

 残念ながら…それが何なのかまでは分かっていないが。

 

 「次は私の質問に答えて貰うわ…貴方何者?」

 「さっき名乗ったではありませんか…シェン、と。」

 「ふざけないで、そんなことを聞いてるんじゃない。どう見ても武術に縁のない体つき、でも繰り出す技は達人級…何者なの、貴方。」

 

 シェンは暫し口を噤んだ。

 こうしてる最中も、小籠包は隙を伺っている。

 攻撃の入る余地はゼロだった。力は間違いなく自分が上。

 しかし、技という領域においてこの男は遙か高みにいる。

 

 「素晴らしい目をお持ちだ、小籠包さん…いえ…鬼姫、と呼んだ方がいいかな?」

 ーーーびゅっ!!!!

 ーーーばしっ!!!!

 

 反射的に拳が飛び出る。

 あっさり挑発に乗ってしまった己の未熟な心に歯噛みする。

 

 「ですが精神はまだまだ未熟のようだ。残念ながらあなたの質問には答えられません。私にはどうしても、やらねばならないことがあるのです。」

 「そう、じゃあ代わりに答えて、何が目的なの。」

 「倒すべき…いや…葬るべき存在がいるのです。」

 

 マジュニアだ、彼はマジュニアを倒すつもりでここにいる。

 

 「悪いけど、ソレはさせられない。」

 

 アレは悟空のために用意した仮想敵だ。

 こんな中年の為に3年間彼を鍛えたわけじゃない。

 

 「手塩にかけた弟子はソレほど大事ですかな?」

 「…あなた…!本当に何者…!?」

 「ただのしがない中年の親父ですよ。」

 

 そんな訳ない…自分が彼を鍛えたことは天津飯と餃子しか知らないはず…下界のことを見渡すカリンのような見識ぶり…まるで、この世の中の事を知り尽くしてる神様のようーーー

 

 ーーー!?

 

 ニヤリ、とシェンが微笑む。

 

 「あなた…まさかーーー」

 ーーー小籠包選手ー?いらっしゃいませんか?

 

 自身のブロックの審判の点呼が聞こえる。

 

 「出番ですよ、お嬢さん…素晴らしい試合を期待しています。」

 

 鼻歌まじりにシェンは去っていく。舌打ちを打ちながら小走りに武舞台にあがる。

 相手は自身の身の丈より遥かにデカい大男だった。

 

 「ほぉねーちゃん、結構可愛い顔してんじゃねーか、どうだ、俺と一緒にこの後……」

 

 ーーーどご!!

 

 秒殺。

 今の彼女は虫の居所がとてもとーっても悪かった。試合開始の合図とほとんど同時に、爪先が男の巨体を吹き飛ばし、あっさり場外負け。

 ぺこり、と最低限の礼を割いて武舞台を降りる。

 

 先の男性を視線で探すが見当たらない。代わりに、天津飯たちが彼女を迎えた。

 

 「シャオ、なにかあったのか。」

 「ちょっとね。…後で話すわ。」

 「わかった。」

 

 視線であの男を探すが見当たらない。まだあの男には聞かなければならないことがある。

 厄介なことに気を探ることもできない。

 彼女の予想が当たっている場合…気を消すという()()()()()高等技術が使える理由にも説明がつく。

 

 ーーー悟空くん攻略の前哨戦に使わせて貰うわよ()()

 

 強敵ではあるが、彼女にとっては問題ない。

 寧ろ、未知の力を攻略できるという喜びの方が大きかった。

 彼女も大概(バトルマニア)なのである。

 思わぬ強敵に気持ちを昂らせていたその時、とある武舞台から悲鳴が上がった。

 その方向は餃子が試合をしていた場所である。

 

 「「餃子(餃兄)!?」」

 

 飛び出した先には白目を向いて意識を失っている餃子の姿があった。

 審判の生死も振り切って…舞台に上がる。

 …虫の息ではあるがまだ死んではいない。

 

 「天兄どいて…!」

 

 微かに呼吸をしている彼を抱き上げながら…あの日、仙人から譲り受けた豆を懐から取り出し、開いた口の中に放り込む。

 

 「お願い…餃兄…!飲み込んで…!」

 

 殆ど意識の無い彼は口の中に含むばかり。どうしたら…と焦りに思考を乱され続ける中。

 

 「どけ…。」

 

 彼女をマジュニアが押しのけた。

 胸に掌を翳すと気の衝撃波で餃子の身体をおおきく揺らす。

 

 ーーーご、く。

 

 向いた白目は徐々に焦点が定まっていく。

 

 「天、さん…しゃ、お。」

 「餃子!よかった…!」

 

 回復に喜ぶ二人を他所に去っていくマジュニアの背中に投げかける。

 

 「なんのつもり。」

 「身内の不幸に全力が出せない。などと腑抜けた真似をされては敵わんのでな。…俺様はフルパワーの貴様をぶちのめし、誇りを取り戻さねばならん。それだけだ。」

 

 明らかに本意ではその言葉を信用などしないが、それ以上語るつもりはないのか、マジュニアはそそくさと去っていく。

 

 ーーーこれで貸し借りは無しだ、小籠包。

 

 魔族としての誇り、ソレは己の力一つで生き、この世界を征服すること、そのためには彼の負い目は足枷と言ってもよかった。

 小籠包の本心はどうあれ、幼少期の自分を最後まで鍛え上げてくれた事実は変わらない。

 その借りを返さぬまま、敵として彼女の前に立つことは彼のプライドが許さなかった。

 

 しかし、その考えこそピッコロ大魔王から大きく乖離し始めていることに彼は気づいていない。むしろ逆、これで漸く自分はピッコロ大魔王を名乗れるのだと信じている。

 

 ーーーあのピッコロの分身思ったより悪ィ奴じゃねえな…。

 

 悟空は、予想外に邪悪さのなくなったライバルの後ろ姿を目で追う。

 あの悪辣な大魔王の分身というのだから、どんな邪悪な存在かと身構えていた。しかしどうだ…。

 その本心はどうあれ、彼は餃子を救ったのだ。

 あの…破壊と虐殺を何よりも好んでいたピッコロ大魔王が…救命を試みたのである。

 

 ーーーやっぱり、お前ェに任せて正解だったな、小籠包。

 

 実を言うと、悟空は彼女がどこで何をしているかを知っていた。

 天界での修行の最中、神とピッコロの関係…そして下界で何が起きているかをポポを通じて聞いていたのだ。

 

 最初はピッコロが生きていることに驚いた。

 しかもソレを友人が鍛えているというのだ。

 神とポポは難色を示したが彼は違う。

 彼女の悪心が如何に強いのかは知らない。

 確かに時々物騒な気配に変わることもある。

 

 でも悟空は、知っている。

 クリリンが死んだ時、

 自分が死の淵から蘇ったとき、

 彼女は本気でその死を悼むことができる優しいヒトだということを。

 

 彼女のやることなら…何か理由があるはずと信じた。

 

 ーーー感謝するぜ、オラにとっておきのライバルを用意してくれてよ。

 

 ピッコロの強さは底がしれない。

 恐ろしくもあるが、同時に彼は()()()()()()

 こんな恐ろしい強敵が二人もいる。出来ることならこの大会でその両方と戦いたい。

 そんな幸運を願った。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 少し離れた位置、シェンと名乗ったあの男は…気配を完全に決して会場の隅に佇んでいた。

 メガネの奥の目は…信じられないモノを捉えている。

 

 ーーー奴は…本当にピッコロの生まれ変わりなのか…?

 

 シェン改めて…この地球の神はありえない光景に驚愕を示す。

 あれは自分のなかに残された僅かな悪心…故にその邪悪さときたら純粋なモノである。

 アレが改心することなどあり得ない。

 しかし今起きた光景はどうだ?必死に家族を揺り起こす小籠包を押し退けて、その意識が戻る手助けをする。少々乱暴な方法ではあったが、結果意識不明の重体だった彼は仙豆を飲むことができた。

 

 ヒトの命を救ったのだ!あのピッコロ大魔王が!

 

 胸ポケットにしまった、小瓶に触れる。

 彼は本当に、封ずるべき悪なのか?

 

 神は再び自問する。

 

 自分は己に宿る悪心を恥と捉え、己が魂から切り離した。

 そのことに後悔はない。

 しかし、正しい行いではなかったのではなかろうか。

 

 誰にでも悪心はある。

 ヒトの強さとはソレを如何に乗り越えるか。

 

 小籠包を見て思う。彼女の魂は確かに悪しきものだ。だというのにその悪をまっすぐ見つめ、己が過ちを認め、どうあるべきかを直視している。

 対して神を名乗る自分はどうだ?臭いモノに蓋をして、見て見ぬふりをしてきたに過ぎない。

 

 おまけにその蓋をしたものが、愛すべき下界の民を傷つけた。

 これは自分が彼らを傷つけたことと何の違いがあろうか。

 そして、今回も…自分は彼を封印することを選んだ、また同じ過ちを繰り返そうとしたのではないか?

 

 ーーーカリンが目をかける訳だ。

 

 神、改めてシェンはメガネの頭をくい、と掛け直し予選ブロックの決勝で当たるであろう少女を見据える。

 

 ーーー観客の皆には悪いことをするな、素晴らしい試合が非公開になるのだから。

 

 自分が負けるのであれば彼女に…下界の者たちにこの世を託すのもまた運命なのだろう。

 いや、そうあるべきだったのだ。神がイタズラに人の世を闊歩してはならない。

 

 ーーー未熟なのは私の方だったか。

 

 ふふふ、と静かにシェンは笑った。

 





 戦闘力更新
  シェン
   気を消す 0
   基本 300
   気の集中による最大 650

 気の強さだけでいうなら小籠包より格下、気配の消し方、心の機微への察知、攻撃を読むなどなど、武道家としては遥かに彼女の上を行く達人……が乗り移った極普通のおじさん。憑依合体 神様
 小籠包だけ予選がハードモードで可哀想。


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