ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
小籠包に胃薬が必要なので初投稿です。
小籠包は深く深く反省していた。
なんせ、チチの悟空に対するハードルが天界レベルにまで跳ね上がっているのだ。
鬼姫と謳われた彼女も師匠の口の上手さは継承出来なかったようである。
自分のことに手一杯で悟空へ進言するタイミングを完全に逃してしまったのだ。
このままでは間違いなく悟空はチチのことが誰かわからないまま彼女を悲しませることになってしまう。
ごめんねチチ…!終わったら一緒にお茶でもして慰めてあげる。
そんな風に心の中で涙を流している小籠包を尻目に悟空は次なる対戦相手にワクワクしていた。
「あいつ強ェなぁ、ちょっと前のオラなら危なかったかもしれねぇ」
「悟空、相手は女の子なんだから手加減してやれよ。」
「そうだ、ただでさえお前の強さは天井知らずなんだからな。」
「手なんか抜けねぇよ、んなことしたら相手に失礼じゃねえか。」
相変わらずクリリンとヤムチャの言葉に何言ってんだコイツらと首をかしげる。武道家相手に手加減をするなどそれこそ相手に失礼では無いのか?
少なくとも自分なら本気でぶつかってくれた方が嬉しいしワクワクする。
さて、その対戦相手はと言うと妙に熱のある視線をこちらに向けている。
隣には引き攣った笑いをした小籠包がいる。
「なぁ悟空、あの子小籠包とどう言う関係なんだ?」
「オラにも知らねえ…けどあいつ、どっかで見た顔なんだよなぁ…。」
「それは聞き捨てならんな悟空、あんな可愛い子、どこで引っ掛けてきたんだ。」
「お前〜…ホントに天界で修行してたんだろうな?」
腕組みをして友人達の顔を想起する悟空を揶揄する二人、ソレをウフフと見つめる少女の隣で頭を抱える小籠包。
いよいよ場が混沌としてきたころ、アナウンサーが舞台補修が完了したことを控え室に告げた。
「孫悟空選手、匿名希望選手、どうぞ舞台へ上がってください!」
うし!と拳と掌をぶつけて気合いを入れる。
どんな使い手かは知らないが、やるからには全力で当たるまでだ。
「悟空、頑張れよ!2回戦で待ってるぜ!」
「おいクリリン、ソレは俺のセリフだ。負けるなよ、悟空。」
「ああ!行ってくる!」
二人の激励を受けて闘志を漲らせて歩く。
先ほどまでどこか弛緩していた空気は一気に引き締まり二人の若き男女はすっかり武道家のソレにかわっていた。
さて、対戦相手が隣に立ったところでやはり悟空は、目の前の子と初対面に感じなかった。
「なぁ、オラとお前ェ、どっかで会ったことねぇか?」
「分かってる癖にぃ…オラに勝ったら…教えてやるだ…♡」
聞く人が聞けば胃を痛めること間違いない会話なのだが、生憎この会話は二人以外に聞くモノはいなかった。
そっか、よろしくな。などと簡単に返すと二人は武舞台の中央に上がる。
天下一武道会が終わったら迎えに来てくれる。
未来の旦那がそんな宣言をした(と思っている)
彼女にとって嫁に貰いにきてくれると言うのなら、多少自分に気づいてくれない事くらいは小さな事なのだ。
むしろ後からネタバラシして驚かれた先に結婚しよう…!
これもこれで悪く無いのである。
さて、乙女前回なチチも武舞台に上がれば凛々しい女武道家に早変わり。
先ほどまでの緩んだ表情など想像もつかない引き締まった表情。
互いに向き合い、試合開始の合図を待つばかり。
「良く女の子と当たるわねぇ孫くん。」
「悟空なら楽勝だろ、怪我させんなよ〜!」
3年前、その女性相手に大激闘を繰り広げたことをもう忘れたのか、またもや応援組に弛緩した空気が流れる。
そんな中、亀仙人のサングラスの奥が光る。
ぴちぴちギャルへのスケベ心を押さえつける程の彼女の才覚。
武の神は匿名希望と呼ばれた女選手の才能を見逃さなかった。
ーーーかなりの達人じゃ…それに似ておる…牛魔王の奴に…!
勿論容姿のことではない。
彼のかつての弟子であった大男の構えを思い出させる。
ソレどころか記憶の中の彼とほとんど一致するのだ。
ーーー…成る程、大きくなったのう。いろんな意味で…♡
キラリと光った武の神様の瞳は一瞬でスケベ爺さんに早変わり。
アナウンサーが開始の合図をするのは、そんな頃だった。
互いに動かない、相手の出方を先ず伺う。
ソレが孫悟空の戦い方だ。
敵を知り己を知る。
その先に勝利があると彼は思っている…わけではなく。
単純に相手の力量と技を知りたいのだ。
万一、最初の一撃で倒してしまえば、折角出会えた相手の力の底を見る事はできない。
だからこそ悟空は観察に徹する。
実に自信過剰で傲慢な奴とも言える。
「来ないだか?それじゃあオラから行くだよ!」
「来い…!」
深く構えた女武道家が不敵に笑う。
ニッ…と笑う悟空の反応に合わせて女は駆けた。
速い、今大会で悟空が相対してきたどの選手よりも。
だが十分に見切れる。ポポの教えに従い心を空にする悟空の身体はまるで雲の様に掴みどころがなく。するすると放たれる拳の数々をかわしていく。
数秒にも及ぶ匿名希望…チチの激しい攻撃。
その動きは洗練されて無駄がなく、まるで演舞を思わす。
その全てを悟空はかわしきり、呼吸のためにチチは一歩下がる。
相手が悪いと言わざるを得ない。
チチは確かに超達人の領域にある。
しかし悟空はその枠組みすら超えてしまっているのだ。
そして、チチはソレを理解してしまった。
自分を嫁にもらってくれる男が自分の指先の届かない遙か高みに登ってしまったことに。
ソレでも悟空は打ち込まない。
難しい顔をして彼女を見つめている。
どうした、何故打ってこない。
互いの力量差は明確だ、打った自分が感じているのにソレを捌き切った相手がソレをわからないはずはない。
ーーーまさか…悟空…オラが嫁に相応しくないって…!?
なんてことだ、こんな弱っちぃのならいらねぇ、そんなことを思われてしまったか。
失望させてしまったか?
だとしたら最悪だ、今すぐ荷物を纏めて帰りたい。
「どうした、もうお終ェか?」
「ま、まだだ…!こっからは本気で行くだ…!」
試されている…!孫悟空のお嫁さんに相応しいのかどうか!
天下一の男には天下一の女が相応しい、今ここで旦那のハートをもぎ取って見せる!
絶対悟空に見合う女になって見せる!
その決意はチチのくすぶったハートに火をつけた!
ーーーッ…気がちょっと上がったぞ…!
再びチチの鋭い貫手が迫る。
先ほどよりも遥かに速い、そして何よりチチの目が変わった。
悟空の見たことのないタイプの戦士。
強さとはまた違う渇望を秘めた不思議な気配。
ソレでも悟空の動きに一切の濁りはない。
敵の攻撃が幾ら速回しになっても雲となった悟空を掴むことはできない。
「やぁぁぁぁあ!!」
「…ん?」
渾身の突き、外面を気にしてる余裕のない必死の形相。
回避の遅れた悟空は慌ててその拳を受け止める。
「はッ…はッ…!やるだな、孫悟空!」
浅い呼吸で全力を受け止められた彼女は動揺を隠せない。
対して悟空は今の顔に記憶を大きく揺さぶられていた。
『やっぱりチンチンねぇな、お前女だろ。』
『あァァァァ!?何すっだぁぁぁぁぁ!!』
かつて少しだけ筋斗雲で冒険をした少女の顔と目の前の女性の面影が重なる。
「思い出したぁぁぁぁぁ!」
会場中の歓声をピタリと止める悟空の絶叫。
そんなことを意にも介さず、悟空はびし!と指さす。
「お前ェチチか!?なんでこんな所に!?」
「気づいてなかっただか!?」
「だってよぉ!あのチチが、こんなにでっかくなってるなんて思わねえよ!」
「悟空さだって人のこと言えねえべ!こっだら立派なヒトになっちまって…!」
突然始まった痴話喧嘩なのかいちゃつきなのかよくわからないやりとり。
孫悟空の関わる試合はどうしてこうも茶ば……ドラマが多いのだろうか。
アナウンサーは口をアングリ開けながら、この空気どうしようかと頭を捏ね回す。
「あ、あの〜試合の方は…?」
「わ、悪ぃ司会のおっちゃん!おいチチ、続きやるぞ。」
「いーや!ダメだ!悟空さ!オラとの約束…もしかして忘れてる訳じゃねーだ!?」
どこかの元殺し屋が『ひぃっ!?』と縮こまりそうな発言である。
「オラがお前ェを嫁に貰うんだろ?悪かったなぁ、オラてっきり食いもんのことかと思って。」
「じゃ…じゃあ…。」
「でも約束だかんな、結婚すっか。」
「んだぁ…!!」
飯でも食いに行こうぜ!
そんな非常に軽いノリでチチの肩に手をおく。
ぱぁ…と笑顔になったチチが彼の胸な中に飛び込む。
シン…と静まり返った会場。
「そ、孫悟空選手〜なんとなんと、試合中にプロポーズです!天下一武道会前代未聞!対戦相手にプロポーズをしましたァッ!!!」
静寂を打ち破るアナウンサーは流石の胆力である。
ソレを皮切りに途端に会場は武道会場はまた違った盛り上がりをし始めた。
部外者にでもこのプロポーズが勝ち確であることは言うまでもない。
武道会を盛り上がるそれではなく、二人を持て囃す指笛まで鳴り出す始末。
「それでよ、チチ。試合はどーすんだ?」
「なぁに言ってるだ、オラの負けだよ悟空さ♡」
「し、し、試合終了です!孫選手の強烈なアタックにより!匿名希望選手はあっけなくダウンです!!」
アナウンサーの洒落の利いた言い回しに会場は更に盛り上がる。
ポカンとしてるのはブルマ達にクリリンとヤムチャ。
小籠包はこれ以上胃にダメージを負わずに済むことに安堵し
マジュニアは下らんと控室に戻ってしまった。
かくして、天下一武道会第三試合は異例の決着により試合終了となったのである。
孫悟空、準決勝進出決定!
戦闘力更新
チチ
基本 130
女の意地 150
悟空の嫁になる!
という気迫だけで戦闘力を上げる。
女って怖いぜ。
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