ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
毎日更新できなくて悔しいので初投稿です。
準決勝、第一試合。
会場の整備が終わり、アナウンサーが二人の選手を呼び出した。
「準決勝、第一試合を開始します。小籠包選手、マジュニア選手、武舞台へあがってください。」
実に落ち着いた仇敵…小籠包を忌々しげにマジュニアは見ていた。
ーーー何を考えてやがる…?
彼は確信している、小籠包はもう敵ではないこと。
それは相手も同じのはず、だと言うのに先ほどまで感じた焦りの色が見えない。
いつものスカした態度。何か奥の手でもあるというのか?
それはない、小籠包の底は知っている。
あいつは力を上下させる様な戦い方をしない。
常に一定のパワーで戦うことに異様なまでに拘っている。
だとすれば、この様子、何か隠し球があると見た方が良いだろう。
ーーー見せてもらうぞ、貴様の本気の戦いを…。
最早、彼も
頭の片隅に置かれた世界征服の野望は半分埃が被り始めている。
今は、一刻も早くコイツと孫悟空を下して、ナンバーワンになることだけを考えていた。
武舞台に上がる。すでにマントとターバンは脱ぐ。最初から全力で戦い、叩きのめす。
3年だ、3年待った。
あの日、この女にボコボコにされてからの悲願。
いつか
それが漸く叶うのだ、いつも通りの半身を下げた無形の構えに対峙する。
こいつの戦い方は脳裏に焼きついている。
なんだったら、別れてからもどうすれば倒せるか?
そんなイメージトレーニングを何度も何度も行った。
ーーーぶっ潰してやるぜ…!
尚も涼やかにこちらを眺める黄色い瞳。
その顔が屈辱に濡れる様が見られると思うと試合開始が待ちきれない。
彼にとっても永劫にも感じるこの時間、一陣の風が二人の間を横切る。
「試合、開始!!」
先ずは小手調べ。
飛び出したマジュニアは力を抑える。
最後に組み手をした時と同じ力関係。
彼女の力を僅かに下回る程度の気に抑えたウォーミングアップ。
マジュニアの拳が何度か彼女の頬をかすめる。
攻撃の間隙をついて返される数発の拳。
互いに牽制しあう様に放たれる撃ち合い。
それでも観客や、武の神と謳われた男にも
控えの選手たちにも、その姿を視認することはできない。
それができたのは孫悟空と、天津飯の二名だけだ。
撃ち、返す、避け、返す、受けて、踏み込む、受け流し、撃つ。
二人の攻守はよくできた演舞のようであった。
赤い閃きと緑の闇は一種の芸術のよう。
重ねて言うが、周囲の連中には速すぎて彼らの動きを知覚できない。
しかし彼らの動きが美しいことだけは伝わった。
高名な芸術家の生み出した絵の何らかはわからぬが、それが凄いと感じる様に。
誰もが二人の撃ち合い、或いは返し合いに魅入っている。
ただひとり、この撃ち合いに満足していない者がいる。
この終わりの無い返し合い。
この場の誰もが理解せずともマジュニアはある結論に達した。
小籠包から戦意を感じないのだ。無論、攻撃に対して反応はする。
その威力は確かに彼女の全力だ。
その反応はこれまで以上に俊敏だ。
その狙いは以前にも増して正確だ。
だがそれだけ、コンピュータゲームのAIのごとく、その返しに熱がない。
ーーーふざけるなよ…!
ギリ…!とマジュニアは歯噛みする。
こんなつまらない奴を踏み潰すために自分はここにいるわけではない。
いつもの人を小馬鹿にした様な態度はどうした。
こちらをヒトと思わぬ冷たい瞳はどうした。
自分を潰そうとする悪意はどうした。
「貴様ァ!何を腑抜けていやがる!!」
もう我慢ならなかった。
試合の始まる前、妙に落ち着いた様子の小籠包、その訳を漸く理解する。
この女はもう自分の勝ちを狙っていない。勝負を挑んですらいなかった。
「腑抜けてるのは貴方でしょ。」
返される言葉にいつもの悪意は微塵もない。
「なんだと…!?」
「魔族はね、殺しに躊躇しないの。貴方みたいに、いちいち心の準備をする腑抜けと違ってね?」
彼女は、更に続けた。
「私は貴方が悪党だと思ってた。でも見込み違いだった。貴方はピッコロ大魔王の記憶で粋がってるだけの誰かさん。そんな相手に、わざわざムキになると思う?」
何も言い返すことができない。
マジュニアは決して馬鹿ではない、何せあの神の片割れなのだ。
知恵者として明晰な頭脳が小籠包からの言葉から己を振り返る。
彼女の言うことは正しく、自分は絆されたと言っていい。
如何に前世の記憶、知恵をもっていたとしても…幼少期に共に過ごしたこの女に少なからず情を抱いてしまった。
何も返さず視線を逸らすマジュニアの胸ぐらを引っ掴む。
見開いた黄色と黒の瞳はどこまでも暗く彼を見つめた。
「こんなところでまで手を抜かれるとは思わなかったわ。」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
彼の力の底を見てやるつもりだった。
あれほどの失敗をしたのだ、準決勝ではそれなりの力を見せてくれるのだろうと期待した。
結果はこのザマだ。
どう言う訳か、コイツはどうしても自分相手に本気を出すつもりが無いらしい。
勝負をする気がなかったといえばまあその通りだ。
でも戦う気が無かったわけではない。
勝利は目指さない*1が、その力の一端を悟空に見せてやるつもりだった。
だというのに、この自称魔族な三歳児は、スパーリングも同然な力加減で襲いかかってきた。
つまり「小籠包は相手にする価値すら無い」と宣言したも同然。
確かに今の自分は彼には及ばない。
瞬間的な力の増強ができないため、天津飯以下の存在であるのは言うまでもない。
そっちがその気ならこちらだって相応の姿勢で返すまでだ。
これでも自分だって武道家の端くれである。
練習で手を抜かれるならまだしも、試合本番、真剣勝負にて明らかな手抜きを受けるのは屈辱、なんならこの場で服をひん剥かれる以上に屈辱。
要するにこうだ。
さっきの試合ではちょっとダウン喰らっただけでマジになったくせに3年間面倒を見てやった私には引き続き手加減ですかそうですかだったらこっちだって適当に相手してやりますよさっさと場外なりなんなり好きにしろよ自称魔族の自意識過剰野郎それなりに楽しみにしてたのにマジ最悪挙句の果てにふざけんな真面目にやれだぁ?こっちはいつだってフルパワーだってのフルパワー出さずにヘラヘラと練習気分でぶつかってくるお前に言われたくねえよなんだったらいますぐにでも武舞台から飛び降りて決勝進出チケットでもプレゼントしてやろうか?お前なんか悟空くんにボコボコにされてゲコゲコと泣いて山の中にでもこもってろよ私一人殺すのにいちいち決意固めないと行けない軟弱男がそれでも魔族かよほらはやく何か言い返してみろよなにも言い返さないなら私の言葉が正となりますけどそれでよろしいかよろしいですよねだって私なぁんにも間違ってないものそりゃ悟空くんの為に用意した悪党ですよ貴方はでもね私だってあそこまで強くなった貴方と戦いたかったんだよわかんないかなぁわかんないよねぇ所詮自分のことしか頭にない自意識過剰くんだもんねぇ三歳児にそこまで求めるのは酷だった?でもあなた実質数百年生きてるジジイみたいなもんでしょそんなことも察せられないなんて世界征服してもどうせすぐ破綻するからやめた方が良いんじゃないそんなに真面目にやって欲しいならやってあげようか天兄の二番煎じになるし私じゃアレは長続きしないし安定しない技を使うなんて私の流儀に反するから控えてたけどそんなに言うなら見せてあげようか最大出力の気功法を。
19歳の小娘が3歳児にブチギレである。
彼を幼児扱いするのは議論の余地ありだが。
小籠包は安定しない気の出力は苦手とする。
故に出力の増減が激しい技や動きは極端に消耗をするのだ。
これは彼女固有の弱点でもあり、個性である。
だから自分の性質に合わない戦いをすることは勝利を捨てる様なものだし、何より相手にとって失礼だ。
が、こと此処に至ってその条件は全てクリアした。
目の前のすっとこどっこいは失礼なんでレベルの話ではすまないスカポンタンであるし、そもそも自分に勝ちの目は存在しない。
小籠包の中で、何かがちぎれた。
目一杯、肺に空気を取り込み、吐き出す。
覚悟しろよ、楽しむ時間なんて、与えてやんない。
ーーー気功法。
意図的に…無理せず維持し続けられる制約を取っ払う。
そして死ぬギリギリのラインを極限まで攻めた最高出力。
強烈な爆風が彼女を中心に巻き起こる。観客の多くが遥か後方に吹き飛ばされ、武天老師すらもまとめて吹き飛ばされる程の凄まじい気の奔流。
「き、貴様…!」
「1分…いいえ?30秒耐え抜いたら貴方の勝ちよマジュニア。」
マジュニアは思い出した。
目の前にいる女がどれだけ悪辣で、底意地が悪くて、面倒くさいド悪党だったことを。
準決勝第一試合が終わるまで残り、30秒。
戦闘力更新
小籠包
通常:770
常時気功法:870
全力気功法:2210
戦闘力3倍!3倍!?ちょっと盛りすぎでは?
ラディッツ君大丈夫?大丈夫じゃないね?
ボーボボ版フュージョンもびっくりの短時間。
ドラゴンボールにおいて30秒とか24分くらいあるのでマジュニア大ピンチ。
幼少期の思い出が蘇るね嬉しいね。デメリットは制限時間終了と共に瀕死になります。最悪死にます。(金文字)