ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 だんだん投稿ペースが落ちてきて申し訳ないので初投稿です。


其之四十三 孫悟空を超えろ!クリリンの底力!

 

 準決勝終了直後、小籠包は直ちに病院へ直行…されたわけではなく、ヤジロベーによって差し入れされたお馴染みの超万能薬、仙豆によって回復した。

 

 「ありがとうヤジロベー。」

 「ったく、世話かけさせんじゃねー。」

 

 フン、と鼻を鳴らす彼だが服の乱れから急いで来てくれたのはいうまでもない。あのとんでもない力の解放から彼は観客席ではなく、選手の控え室へと急いだのだ。

 

 「小籠包、惜しかったな。」

 「…勝てそう?」

 「分かんねえ、やるだけやってやるさ。」

 「おい小籠包、まだ俺と悟空の試合が残ってるぞ。」

 「あ、はは…そうだね。」

 

 ジトリ、と半目で睨むクリリンだったが、最早悟空相手にノーチャンスなのは彼自身がわかっている。

 先の試合、何が起きているのかほとんど見えていなかった。

 そんな試合の勝者に対して勝てるかどうかわからないと、彼には言えない。

 

 「悟空、手加減なんてしやがったら一生恨むからな。」

 「ああ!容赦しねぇぞクリリン!」

 

 熱く拳を重ね合う。

 クリリンは胸を借りるつもりで、悟空は親友の進化の程を見るつもりで、各々戦意を高めていた。

 

 天下一武道会準決勝、第二試合の開始には少々の時間を要した。

 あちこち穴や亀裂まみれの状態で試合をさせるわけにはいかない。

 今回の武舞台担当者は災難である。

 

 それでも舞台の修理に5分もかからないあたり、この世界の科学力の高さが伺える。*1

 修理というよりはホイポイカプセルで壊れた舞台を収納し、新しい舞台をカプセルから出しているだけだ。

 カプセルコーポレーション様々である。

 

 さて、優勝候補でもある孫悟空が出る注目の準決勝第二試合。

 奇しくも前回とその組み合わせは完全に一致した。

 同門対決でもあり、正に宿命の対決とも言える。…対外的には。

 力の差はかなり開いてしまい、クリリンの勝算はほとんどない。

 新品の舞台の上で向き合った事で、その力の差を理解した。

 

 ーーーまったく、どこまで強くなるんだよお前は。

 

 目の前にいるはずなのに、彼の気配を一切感じることができない。

 まるで悟空の立体映像を見ているかのような違和感。

 この3年間、血の滲むような努力をした。

 今なら、自分を殺したあのタンバリンだって倒せる自信がある。

 

 …しかし現実はどうだ。

 天津飯は試合中に限界を超え、小籠包はどれだけ強いのかもわからない超パワーアップを遂げた。

 そして目の前の悟空だ。

 

 棒立ちに見える悟空に対して、踏み込む隙が一切感じられない。

 自分を見て不敵に笑う親友を睨み返し必死に機をうかがう。

 試合はとうに始まっているのに、両者は微動だにしない。

 

 「どうしたクリリン、来ないならこっちからいくぜ…!」

 「ぐは…!?」

 

 悟空が構えるのと、その拳がクリリンの腹を撃ち抜くのはほとんど同時だった。

 身構えていたというのに、目の前に悟空を認識していたというのに、防御も何もすることができず、無防備に攻撃を受けてしまった。

 堕ちかける意識を持ち前の気力と感情で繋ぎ止めて、2、3歩後ろへよろめきながら…ヴン…!と気を高め、特大の気功波を打ち出す。

 

 「!」

 

 残念ながらそんな力任せな攻撃に当たるような悟空ではない。

 あっさり身体を半身にずらして交わした直後…

 

 「…太陽拳!!」

 

 放った気弾の背後に隠れ放たれるは最強のめくらまし。

 その目論見通り、悟空の視界は真っ白に塗りつぶされ…一時的に視力を失う。

 

 ーーーいまだ…!

 

 顔面を半端に庇った悟空目掛けて懐に飛び込む。先ほどのお返し…!

 不意打ちに隙を晒す彼の腹部に渾身の一撃を叩き込む!

 

 「!?」

 

 悟空は()()()()()()()クリリンの合攻撃を完璧に受けてみせた。

 

 「う、嘘だろ悟空…!?」

 「悪ィなクリリン、でもオラには通じねえ。」

 

 両目を閉じたまま、まるで見えているかの様に顔がクリリンの方に向き直る。

 気配を察知するなどというレベルの話ではない。

 まるでレーダーのように自分の位置を正確に掴んでいるのだ。

 

 「でもやっぱ…このまま戦うのはよくねえよな。」

 「?」

 「なぁクリリン、ちょっと脱いでもいいか?」

 「お、おう…。」

 

 呑気な奴…そんな呆れた様子で親友を眺める。

 太陽拳の効能が効いてたとて彼には通じない。

 大人しく彼が服を脱ぐのを待っていたのだが……

 

 やけにもたついている。胴着を脱ぎ…インナーに指先をかけた悟空は腕が引っかかっているのか、だいぶ苦戦している様子。

 

 「おい…まだかよ悟空?」

 「悪ィな…もう…ちょい。」

 

 ため息混じりにいつも通りのマイペースな友人を腕組みして待ち始める。たっぷり数分かけて悟空は漸くインナーの中から顔を抜き出した。

 

 「…!悟空、くん…まさか…!」

 「…ああ…なんて奴だ…!」

 

 その異変に気づいたのは鶴仙流の二人、もちろんこれを上空から見守っていたマジュニアも…。

 クリリンとヤムチャだけが、またも事態に追いついておらず、投げ捨てられたインナーが舞台にめり込み、ごしゃ…!と音を立てた事で漸く異変に気がついた。

 投げ捨てられたインナーを拾いあげるクリリンは…顔を青くする。

 

 「な…な…お、お前…こんなもんを背負ってたってのか…!」

 「ああ!昔じっちゃんとの修行でやったろ?あれと似たようなもんさ!」

 「ば、ば、バカやろう!こんな重さ…普通じゃないぞ!」

 

 ははは!と笑いながら、なんでもないかのように悟空は次々と重りを外していく。リストカバーに靴…合計100キロ超える恐ろしい重量。

 

 「本気でヤルって約束したのによ、オラこれ外すのすっかり忘れちまってたんだ。」

 「こ、このやろう…!言ってくれるぜ!」

 

 ーーー忘れていた。

 それはつまり、これだけの重りを背負ってなお、自分は脅威ではないと宣言されたようなもの。

 悟空に悪気はない、むしろこれは誠意だ、手加減なしと言われた友人に対してこの格好のままでは示しがつかないと。

 だからこそ、この誠意はクリリンの武道家としてのプライドを大いに傷つけた。

 

 怒り、それは人間の成長において重要なファクターだ。

 たった数日で戦闘力数倍にまで昇華させた悟空と違い、彼はこの三年で倍程度の成長しかできなかった。

 そこに向上心はアレど、足りぬものがあった。

 

 天津飯は悟空や小籠包という明確なビジョンがあるのに対し、クリリンはそれが欠落していた。

 

 つまり明確な目標である。

 

 今この瞬間、クリリンにとって孫悟空は親友ではなく、超えるべき存在…本当の意味でのライバルとなった。

 全ての重りを外し、その身軽さにぴょんぴょんと跳ねる彼の前で全身に力をこめた。

 

 ーーーはァァァァァァァァ!!

 

 「!」

 

 超えてやる!目の前の男を!

 怒りと執念。不足していたパーツが出揃う。

 この三年で鍛錬は十分、あとは心持ち一つだった。

 思い出すのは三年前の天下一武道会、華奢な少女が体現した気の充実。

 

 クリリンの全身に気が迸る。

 イタズラに巻き上げてるわけではない。

 指先から脚先までその力を充填していく。

 

 ーーー…やるじゃない。

 

 にひッ…と愉快げに笑う。

 全身レベルの気の解放とは、潜在能力の解放に近い。

 この土壇場でクリリンは己の壁を一枚ぶち抜いたのだ。

 

 「だぁ!!!」

 

 裂帛の気迫と共に風が一陣。

 ふぅ…と熱を廃棄したクリリンは数秒前とは完全に別人だった。

 

 「…待たせたな悟空、試合再開と行こうぜ。」

 「…こりゃ、楽に終われそうにねえな。」

 

 試合再開。

 

 力の強さだけでいうのなら、これでも及ばない。

 しかし、彼には技と機転がある。

 悟空にはない、勝利するためには小狡い戦術を使うことだって躊躇わない。

 加えてクリリンは悟空の戦い方をよくわかっている。

 幼少の頃から共に高め合い、その戦いの癖をよくわかっている。

 

 彼の戦い方はよく言えばクレバー、悪く言えば悪辣。

 悟空の攻撃の隙をついて視界の外に潜り込む。

 気の探知能力に長けているとはいえ、視覚情報と気の位置情報を交互に要求されては、いくら悟空でも翻弄される。

 紙一重でなんとか攻撃を回避するクリリンの攻撃を持ち前のタフさで受け止めて更に反撃を試みたハイキック。

 こめかみに迫るソレを受け止めた腕の痺れが止まらない、ここまで限界を超えたというのに二人の差はこれでも明確だった。

 一撃を貰えば間違いなくクリリンは負ける。

 全身に真っ白な焔を纏いながらクリリンは全身の力を更に解放し、勝負に出る!

 飛び出した彼の身体から無数の連打。

 先ほどの様な爆風と爆音だけではない見応えのある試合が展開されていた。

 先の小籠包の試合より遥かに遅い、しかし楽に捌ける攻撃ではなかった。攻撃に次ぐ攻撃、文字通り息をつかせない連打は確かに悟空を追い詰めている。

 それでも悟空の心は静かだった。

 烈火のごとく戦意を燃え上がらせるクリリンとは対極である。

 既にクリリンの連打は10を超えている。

 悟空にとってそれは十分すぎる程の情報だった。

 

 「だァりゃぁ!」

 「ぐぁ!?」

 

 突き出した拳の軌道をそらして懐に潜り込んでボディブローを一撃。

 崩れ落ちるクリリンの腕を掴みそのまま背負い投げで彼を舞台の外へと投げ飛ばす。

 しかし、クリリンはすんでのところで舞空術により事なきを得た。胴着の帯の裾がギリギリ芝の先に触れないレベル。

 

 「勝負は、これからだぜ…悟空…!」

 

 へっと笑って舞台に視線を送った先には誰もいない。

 

 ーーーい、居ない…!?まさか!

 

 「もらったぁぁぁぁ!!」

 

 上空から響く友人の声と共にクリリンの身体にタックルが直撃。

 観客席との仕切りにあえなく彼の身体はめり込むこととなった。

 

 「じょ、場外!!孫悟空選手!決勝進出です!」

 

 心なしか先ほどよりも激しい歓声。

 先ほどの何が起きたのかよくわからない戦いよりも随分と見応えのある試合だったが故だ。

 

 「いってててて…」

 「大丈夫か?クリリン?」

 「ったく…お前の底が知らねぇよ…良い線行くと思ったんだけどなぁ。」

 「お前ェこそすげぇぞ!おらあんなにワクワクしたのは久しぶりだ。」

 「へっ、ありがとよ悟空。絶対追いついてやるからな!」

 

 熱い握手をしながら立ち上がるクリリンと悟空が舞台を後にしていく。

 このやりとりもまた、観客にとって醍醐味といえよう。

 

 ーーー全く、どうなってやがる…あの天津飯といい、クリリンとやらも…俺様の想像を遥かに超えてやがる…。

 

 上空から試合の顛末を見ていたマジュニアは思わず拳を握り込んだ。

 正直に言えば、この武道会は自分の恐ろしさを見せつけるデモンストレーションだったのだ。

 自分の敵となりえるのは孫悟空と小籠包…その二人ですら自分が本気になれば楽に勝てる相手…人間達に自分の力を見せつける余興とすら思っていた。

 

 しかしどうだ?

 雑魚と侮った男は自分の不覚とはいえダウンを取り、

 小籠包には危うく脚を掬われかけた。

 そしてこの試合、眼中にもなかった男があの孫悟空に食い下がったのだ。

 

 ーーー世界征服はどうやら簡単にはできん様だな。

 

 マジュニアの口角が楽しげに吊り上がる。

 ここは歯噛みの一つでもするところだ、悲願の達成が遠のくのだから。

 だというのに、それを差し置いてでも強敵の出現は彼にとって喜ばしいのだろう。

 

 もう彼は立派な武道家(戦闘バカ)である。

 

*1
なお、宇宙規模で見ると下の下の模様





戦闘力更新

 クリリン
 基本 240
 気の解放 800

 たった2度の本番で気の解放を習得。
 Z戦士にはやはり実戦での進化が一番手っ取り早いですね!
 ヤムチャ戦での一時的なものではなく全身レベルの気の解放。
 ここからクリリンは一段上のステージに上がります。
 がんばれヤムチャ。

 孫悟空
 気を消す 0
 試合開始直後 600
 重りを外す 900
 瞬間的な気の集中 1100

 100キロ近くの重りを抱えたまま試合に出るいつもの舐めプ。
 フルパワーで戦ったあとはちゃんと追撃を忘れない。
 アニメだったら悠長に舞空術での受け身を舞台の上から見守ってましたが、本作の悟空さは結構容赦ないです。
 多分リブリアン達の変身中に余裕でかめはめ波打ち込むと思う。

 
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