ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
閲覧ありがとうございます。
いつも誤字報告ありがとうございます。
本当に助かってます。読み直しで何故気づかないんですか?と自分を引っ叩いてやりたい。
Zの足音が聞こえてくるので初投稿です。
波乱の武道会も遂に決勝を残すだけとなった。
先の開催で既に人智を超えていた戦士達の力は更にインフレを起こし観客たちの期待値も最高潮に高まっている。
控室では、女房に甲斐甲斐しくお世話をされる悟空を見守る小籠包は少々複雑な思いだった。
彼の最大の強敵として用意したマジュニアは悪でもなんでもない。
本人は悪ぶっているがその根底は善に傾きつつある。
勘違いしてはいけないのが、悪の権化が善に傾くのは大変喜ばしいことで、小籠包自身もそれは望むところである。
だがそれとこれとは話が別、当初の目的である世界の仇敵役が綺麗さっぱり消えてしまったのだ。
さて、であれば自分が彼らの前に立ちはだかればよいか…?
小籠包は自称、極悪人である…が、それはあくまで人類スケールでの話だ。
魔族からしたらやんちゃな悪ガキ程度の小悪党だろう。
そんな自分が彼の敵に今更なったところで、冷ややかな空気が流れるだけ、なんなら兄弟子の説得フェイズで終わり、戦いにすらならない可能性もある。
必要なのはそんな甘っちょろい存在ではない。
鍛錬せざるを得ない最悪の存在。
倒さなければこの世は何もかも終わる。そういう危機感。
しかも、彼女にとって誤算なのは…悟空が所帯持ちになったこと。
守るべき物が強さを生む、そういう考え方も理解はできるが…ごく普通の幸せなご家庭を望むチチに対して悟空を過酷な戦いの場に送り込むというのは、彼女の友人として心が痛む。
そんな諸々の事情が彼女の思惑をめちゃくちゃに掻き回しているのだ。
「何良い子ちゃんになってんのよ、ホントに…。」
あの試合の最後の一幕を思い出す。
あろうことか、彼はアナウンサーの身を案じたのだ。
もう彼は自称魔族のチンピラだ。
ヤンチャしてたお父さんに憧れてるだけの思春期の悪ガキ。
しかもそのいい子ちゃんの要因が自分にあるときた、極悪人を名乗っていながらとんだ甘ちゃんである。
敬愛する師であればもっと上手く、彼を教育できたのだろうか。
そんな益体の無い想像をするほどに彼女は頭を抱えていた。
かくなる上は…自分がマジュニアの壁となって立ちはだかるか?
それこそお笑い種だ、先ほど悲惨な負け方をした自分が、今更どの面を下げて彼の壁になるというのか?
アレだって勝ちを捨てて始めて発揮できた力だ。
この力が成熟するのが先か、己の最盛期が終えるのが先かはもう考えるまでもない。
自分の中に半分流れている父親の血が…どこまで彼女を前線に維持してくれるかにもよるが…父親が何者かもわからない現状は、希望的観測しかできない。
今度神龍にでも頼んで、自分の素性を聞いてみるのもありかもしれない。
大きな大きなため息を溢したところで、自分の前に大きな影が現れたことに漸く気づく。
「…試合前ってのに随分余裕ね?」
「流石の貴様も、全力を叩き潰されたことは堪えたようだな?」
おおかたマジュニアには、アレがワンチャンスをかけた切り札だと思ったのだろう。
見当違いもいいところだ。
アレは負け前提の力、あんなので勝てるほど戦いは甘くはない。
それはそれとして、別に否定してやる義理もないので、無言で見つめ返してやることとする。
「クク、やはり貴様を見下すのは気分がいい。約束通り特等席で拝ませてやるぞ、孫悟空が敗北する姿をな?」
「…どうかしらね?」
「なんだと?」
「悟空くんはまだまだ底が見えてない。…対する貴方はどう?私に随分と…苦戦したようだけど?」
「………。」
大袈裟にため息を一つ吐いて足を組み直す。
「本当に反省しないのね、相手は私の一段上の相手よ?そんな態度で挑んであっさり負けでもしたら…
全力の殺意を込めて冷ややかに睨みつける。
三年もかけて鍛えた仮想敵がつまらない油断と慢心で敗れることなんて許さない。
そんな不出来な奴なら自分の手で消してやる。
「…貴様ごときに殺されてたまるか。見ていろ、貴様の鍛えた奴がどういう力を得たのか、もう一度見せてやる。」
どこか痛いところでも突かれたのか、或いは自分程度の脅しに怯みでもしたか、マジュニアは悪態をつきながら去っていく。
ーーーこれで少しは真面目にやってくれれば良いけど。
何故かわからないが、武道家達はとにかく相手の実力を出させたがる。
そんなことをする必要なんてないのだ。
そこに付け入る隙があることを知らないとは言わせない。
ーーー次こそ見せて貰うよ、孫悟空の本当の実力を…!
ニヒ…ッと笑うその横顔は誰がどう見ても悪辣な微笑みであったのだが、本人にその自覚は一切ないことをここに残しておく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「悟空さ、優勝したら結婚後の資金にするだぞ?わかっただか?」
「お、おう。よくわかんねーけど、任せとけ、オラ絶対勝つからな。」
試合開始の直前までチチは悟空にあれやこれやと世話を焼いていた。
水分補給はしたか?胴着の着替えは必要か?先ほどの試合で怪我なんてしていないか?etcetc……
若干鬱陶しそうにする悟空な様子も加味しても胸焼けしそうな光景である。
既に彼は重いインナーとリスト、靴を脱いだ状態。
初めからフルパワーでマジュニアに挑むつもりだ。
あの凄まじい猛攻にすら耐え抜いた未曾有の強敵…悟空は心の底からワクワクしていた。
何せ、
しかも相手はとびきりの強敵、心ゆくまで戦闘を楽しむことができる。
こんなに嬉しいことはない。
小籠包と決着をつけられなかったのは心残りだが、彼女とはまた別の形で勝負を挑めば良いだろう。
今は目の前の最高のライバルにだけ集中する。
「じゃあチチ、行ってくる。」
「んだ、怪我さしねェようにな?」
それはできない相談だ。…などと返したらまた口煩く言われそうなので黙っておう、と頷いておく。
並びたったマジュニアからは確かにピッコロと同じ妖気を感じた。
しかし、それは波長が似ているというだけでありその中からは嫌な悪意を感じない。
やはり彼はただの生まれ変わりであり、ピッコロ大魔王とは別の存在になりつつあるのだろう。
「嫁の前で恥をかくことになるな。」
「かもな…。」
チチの手前意気込んでは見せたが、正直な話…マジュニアに勝てるかは五分五と言ったところ。力の面ではマジュニアに分がある様に見える。
技という知見においては、悟空に分があるといったところ。
ならばその技で自分は彼を下すまで、武の在り方を亀仙人から学び、気の使い方を小籠包に、戦い方をミスターポポに教わった。
3人の師匠の教えが正しかったと証明する為にも、今度こそ自分はこの武道会で優勝してみせる。
「お前ェは小籠包から何を教わったんだ。」
「貴様に話す義理はない!」
何故か突然怒り出す彼に悟空は首を傾げる。
「なんだよ、ケチだな。」
「そう急かさずとも知ることになるさ、この俺様の実力をな。」
3年間も彼女の下で技を教わったのだから、自分以上に質の高い修行を受けてるはずなのだ。*1その中に、あの凄まじい力の秘密があるのかもしれない。
彼はそれが知りたかっただけなのだ。*2
「お前ェも使えるのか?あの技」
「さあな、使えたとして、それを俺様がペラペラ喋ると思うか?」
「喋ってんじゃねえか。」
「…貴様も口が減らんな…。」
チッ…と吐き捨てるマジュニアが構える。
マントもターバンも脱いだ彼は小籠包のご要望通りフルパワーであることが伺える。
胸の高鳴りと武者震いが止まらない悟空も、それに応えて構える。
正に世紀の大決戦に相応しいカード。
アナウンサーが二人の心構えを汲んで高らかに宣言した。
試合開始!!