ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 幾ら見直しても誤字が出てくるので初投稿です。


幕間 Zへの始まり
其之四十七 天界での出来事


 

 気づけば自分の身体は場外に飛んでいた。

 覚えているのは対戦相手の拳が深々と腹に刺さるあの激痛。

 情けないことにあの瞬間…大魔王の生まれ変わりたる彼は意識をほんのわずか手放してしまった。

 その僅かな…針の穴を倒すような的確さでトドメを刺された。

 

 負けたのだ、孫悟空に。

 

 屈辱、しかしそれ以上の感慨が彼にはあった。

 世の中には自分と互角、いや自分以上の使い手がいるのだという幸福。

 ソレを噛み締めて、彼は一人静かに笑う。

 

 「思ったより元気そうね、負け犬。」

 

 覗き込まれる褐色の肌。

 今この瞬間最も見たくない女の顔だ。

 いつも通りの嫌味な言葉、しかしどうしてだか嫌な感じはしない。

 ソレを理解するだけの情緒がマジュニアには育っていない。

 あるいは小籠包にも。

 

 「同じ負け犬に言われても何も感じんな?」

 

 手を差し伸べるなど生優しい真似はしない。

 形式上、二人は師弟の間柄であるが、

 小籠包はもう彼を育てる気などないし、マジュニアに至っては倒すべき相手だ。

 片や倒れ伏した相手を嗤い、

 片や同じ負け組としての無様さを嗤う。

 そんな歪な師弟がこの二人なのだ。

 

 「私しか見てないからそうなるのよ。」

 

 マジュニアの敗因はある意味では小籠包にある。

 何せ()()()()()()()()()()()ようなクソ雑魚防御力が相手なのだ。

 対小籠包を想定した彼が防御ではなく攻撃を極めるのは必然と言える。

 おまけに誰かさんのせいで防御力には自信がある。

 攻撃力特化型となったのは仕方なしといえよう。

 

 「へっ…うるせえ。」

 

 彼にもその自覚はある。

 小籠包より強い奴がいるとは思わなかったのだ。

 だからこそ、彼女を超えれば、孫悟空など楽勝だと思った。

 世界の広さを知ったという意味では、

 この敗北がマジュニアを一段上の戦士に上げたと言って良い。

 

 「で、これからどうするの?」

 「決まっている、孫悟空を倒し、貴様を殺す。」

 

 思わず噴き出す、そんなつもりなどない。

 これは彼なりのコミュニケーションなのだと理解している。

 

 「わぁ怖い。頑張ってね。」

 「興味がないなら初めから聞くな。」

 「興味はあったよ。くだらないって思っただけで。」

 「マジで殺す。」

 

 起き上がるマジュニアを興味なさげに見つめる。

 こんな邪悪さのカケラもないバトル馬鹿に興味なんてない。

 だが、彼女がマジュニアの仇敵である限り無限に進化し続けるだろう。

 世界の仇敵を作るのには失敗したが、これはこれで悪くない。

 

 そんな風に感じた。

 

 「というか、悟空くんは″倒す″で私は″殺す″なんだ?」

 「孫悟空は気に入らんが、俺様個人はあいつに恨みはないのでな。」

 「私、貴方に何かしたっけ?」

 「そういう所だ!」

 

 そんなコントを繰り広げているうちに悟空はチチを連れて何かから逃げる様に筋斗雲で飛び出していってしまった。

 その後ろ姿。互いに目で追う。

 悟空に振られた地球の神が今度はこちらにやってくる。

 神と合わせる顔などない、そう言いたげにマジュニアは背を向けた。

 

 「いいか、俺様以外に殺されるのは許さんぞ。貴様を殺すのはこの俺…マジュニア様だ。」

 「そ、じゃあね。」

 「ちっ…!」

 

 舌打ちもそこそこにマジュニアは飛び去っていく。

 入れ替わりに来たのはこの星の神だ。

 

 「ピッコロの奴は行ってしまったか。」

 「はい、…わ、本当にそっくり。」

 「皆にも同じ反応をされたが…お前が一番淡白だな。」

 「えと、すみません?」

 「気にするな、それより…礼を言う。」

 

 神が深々と、彼女に頭を下げた。

 何のことが理解できずに、ただただ目上の者が下げる頭にもうしわけなくて慌ててしまう。

 

 「頭をあげてください、何のことだか…!」

 「あのピッコロがあそこまで穏やかになるとは思わなかった。お前が奴を育てたおかげだ。」

 

 ざわ、と感情のざわめきが聞こえる。

 育てた?私が?マジュニアを?

 

 「違います私は彼を教育したわけでも愛を注いだ訳でもないですただ戦い方を仕込んだだけなので保護者みたいな扱いしないでください死ぬほど不本意ですいくら神様といえど言っていいことと悪いことがありますよ?」

 「う、うむ…すまん。」

 

 あまりの圧に神ですら、ちょっと引くレベル。

 そこまでは言っていないし、なんなら自覚あるよね?

 くらいに思っていたので少しだけびびる神様。

 彼にも見通せないものがあるのだ。

 

 「お前にその気がなかったとしても、お前の行いは世を救ったと言っていい。この星の神として…礼を言わせて欲しい。」

 「…どういたしまして。」

 

 ぶす…っとむくれたまま再び下げられた頭に答える。

 殆ど事故とはいえ、本来礼をすべき相手をの機嫌を損ねたのは神としても心地が良くない。

 さてどうしたものかと、数秒思考を巡らす。

 

 「すまんな…詫びとしてはなんだが、天界に行きたくはないか?」

 

 ぴくり、と異形の瞳が反応を示す。

 手応えありと神の口元が不敵に微笑んだ。

 

 「興味があろう?孫悟空がどのようにして強くなったのか。」

 「稽古をつけてくださるのですか?」

 「いいや、お前のスタイルでは我々から学ぶことなど無かろう。」

 

 手合わせしたからこそ解る。

 彼女の戦い方は神の技と対極の位置にある。

 殺意を剥き出しに、防御の上から敵を刺す。

 0から100に転じる事で敵に気配を悟らせない神では、

 いくら指導者として優れていようと道を示すことはできない。

 

 だとしたら、何を…?そんな疑問に神は答えない。

 

 「天界で何を掴むかはお前次第だ小籠包。」

 

 さぁどうする。差し出された手を、彼女は躊躇いなく取った。

 

 「よろしい、そのまま掴んでいなさい。良いというまで離してはならんぞ?」

 「?」

 

 意味を理解しかねる、小首を傾げている間に、

 どこから出したのか年季の入った杖を取り出し、地面二度叩く。

 次の瞬間にはそこは天界の神殿の前だった。

 面食らう小籠包を実に楽しそうに神は見つめた。

 

 「これでも神だ、地球上のあらゆる所に移動くらいはできる。」

 

 神の技に驚いているのもそうだが、この感覚に覚えがあることに彼女は一番驚いていた。

 

 ーーーどこ、だったかな…これ…どこで……。

 「神様、おかえりなさい。…小籠包、よく来た。」

 

 脳内での思索も見知った顔と声で中断させられる。

 考えるのは後だ、今できることを優先しよう。

 

 「ポポ、彼女にこの神殿の案内をしてあげなさい。必要であれば使わせてやっても良い。」

 「はい神様。小籠包、ついてこい。」

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ミスターポポによる神殿の案内は実に端的だった。

 神殿の構造はさておいて、悟空の修行に使われた人形の材料、最もよく使われた過去に意識を飛ばすという時の部屋…そして……ーーー。

 

 

 「お前に扱えそうなのは…この人形と時の部屋くらい。使うか?」

 「…いいえ、大丈夫です。」

 

 彼女の気を引いたのは…あの悟空ですら1ヶ月と入っていられなかった「精神と時の部屋」というモノ。

 

 カリンの持っている「時の亀」はこの部屋をベースにつくられたらしいが…そこはやはり神と仙人の差か…時間経過には大きな違いがある。

 なんと1日で一年分の修行が出来るという物。

 

 しかし、その代わり、時の亀とは幾らか環境が異なる。

 気温の差が激しかったり、酸素が薄かったり、それだけで常人が決して立ち入ることはできない領域だが。

 何より恐ろしいのら重力の差だ。

 その数値、実に十倍。

 今の彼女にも…この部屋ではまともに過ごすことはできない。

 

 悟空の100キロを超える重りとは訳が違う。

 仮に体重52kg*1の人間が立ち入ったとして、520kgとなる。

 確実に自重で潰れてしまうだろう。

 

 しかし、この重力増加に彼女は惹かれた。

 重りを背負うのも考えたが、どうやっても重心にばらつきが出てしまう。

 しかし重力なら、文字通り全身が重りと化す。

 その為には高出力の気を維持し続けなければならない。

 ここなら、自らの望む修行が出来る。

 

 「…精神と時の部屋…今のお前には使わせられない。諦めろ。」

 

 容赦ないポポの一刀両断が彼女のきぼうを打ち砕いた。

 

 「まだ何も言ってません。」

 「言わなくてもわかる、お前、わかりやすい。」

 

 これでも「何を考えてるのか分からない」と言われる程度にはポーカーフェイスは得意なのだが*2…神の域にいる彼らはまた違った感性があるのだろう。

 

 「この部屋、危険。今のお前に使わせるわけ、いかない。」

 

 いつになく真剣な表情。

 何も言い返せない、先ずは重りを背負い少しずつ身体を鍛えていけ。

 彼はそう言っているのだ。修行に近道などない。

 

 「焦ることない、今のお前、十分強い。じっくりやれ。」

 「…わかりました。」

 

 にひ、とミスターポポが笑う。

 なんとなくだが…笑い方が自分に似ている、そんな風に感じる小籠包であった。

 彼に案内されて神殿の外へ出る、当たり前ではあるがこの神聖な領域は自分にはどこか疎外感を覚える。

 言うなればアウェー、友達のそのまた友達の家に来たかのような肩身の狭さ。気にする様なレベルではないのだがどこか遠慮する、そんな空気。

 

 二人を待っていたのか、案内を終えたところを神が出迎えた。

 

 「どうだ、何かつかめたかな。」

 「はい、ありがとうございました。」

 「礼には及ばん、お前たちには、これからもこの世を守って貰わねばならんからな。神として、できる限りサポートはしてやるつもりだ。」

 

 礼の意を込めて再び頭を下げる。

 用が済んだのなら長居は無用。

 自分にふさわしくないこの聖域から逃げる様に、彼女は下界目掛けて飛び降りた。

 

 

 考えることは二つ。

 

 ーーー精神と時の部屋の負荷を個人に合わせることが出来れば…

 

 向かう先は…決めている。

 科学と言えば…彼のもとへ行けばいい。

 

 ソレともう一つ。

 神が天界に移動した時のあの感覚を…

 

 ーーーどこだろう…絶対、初めてじゃないんだけどなぁ。

 「これ、小籠包。」

 

 またも、思考が中断される。

 きき、とブレーキ音が響く様な挙動で空中に静止。

 

 「あ、カリン様…」

 「あ、じゃないわい。近くを通ったのなら挨拶くらいせぬか。」

 「すみません、ちょっと考え…事…ーーー」

 

 目に映るのは仙豆の入った壺。

 何やら随分数を減らしている気がするが…

 問題なのはそこではない。

 

 脳裏に過ぎるのは、壺が粉々に割れる風景。

 孫悟空とヤジロベーを抱えていたあの時。

 ヤジロベーの吐き捨てるようなあの言葉。

 

 ーーーこいつ、いきなりワープしやがった。

 

 

 小籠包に電流走るーーー!

 

 

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?

 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 上空に木霊する殺し屋と仙人の絶叫。

 

 「なんじゃお主!突然叫びよって!ワシの鼓膜を破壊する気か!?」

 「思い出した!!カリン様!ありがとうございます!近いうちにまた!!!」

 「は?…おい、…全く忙しいやつじゃのう…。」

 

 目にも止まらぬ速さで小籠包は水平線の彼方へ消えていく。

 何のことが分からぬ仙人は出かけたヤジロベーの居ないカリン塔で、一人寂しく髭を撫でるのだった。

*1
他意はない

*2
サイコパスなだけ





 カリン様、いっつもこんな役回りじゃない?
 

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