ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 (未来の)王の御前なので初投稿です。



其之四十八 かんばれ!ピラフさま!

 

 部屋の中では様々な摩擦音が静かに響いていた。

 ホワイトボードを書き、書物を捲る。

 その音の主が忙しなく動き回っているのか、或いは目まぐるしく思考を重ねていることがよくわかる。

 一心不乱に作業を続けるピラフを二人の従者は途方にくれた様子で見るしかなかった。

 門外漢には暗号が詰め込まれている様にしか見えないホワイトボードが何台も何台も並べられている。しかも裏表びっしりとだ。

 同じく天才科学者であるカプセルコーポレーションの社長とそのご令嬢なら、その内容がわかるかもしれない。

 

 鬼気迫る様子で作業を続けるピラフはもうここ一週間ほどまともに休んではいなかった。

 

 「ぴ、ピラフ様…?そろそろおやすみになられた方が…」

 

 恐る恐るシュウが問いかけても主人は聞く耳を持たない。

 ただでさえ怖い上司が鬼気迫る様子で作業をし続けては彼も迂闊に声をかけられない。

 マイは()()()()()の指揮を執るために早々にこの場を逃げ出した。

 

 『お前はここに残れ、俺様のサポートをするのだ。』

 

 そう命じられてはここに残る他なかったのだ。

 言われるがままに食事、飲み物、などなど…必要な物を言いつけられて無言で提供させられる。

 

 さて、ピラフが懸命に書いているのはある異空間発生装置の設計書。

 いや、設計のレベルですらない、仕様検討にも至ってない書き殴りの山だ。

 

 頭を抱えたかと思えば奇声をあげ、

 喜びに踊り狂ったかと思えば、

 絶望に膝をおり蹲る。

 

 完全に情緒のぶち壊れた彼がこうなった原因はいうまでもない。

 

 鬼姫だ。

 

 彼女の提案にまんまと乗せられた彼は、文字通り命を削る羽目になったのだ。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 「二週間振りね。どう?野望は順調?」

 

 やっとの思いで鬼を追い払うことができたピラフ達の平穏はたったの二週間しかもたなかった。

 左右で震える部下達に示しがつかぬと、努めて高圧的な殺し屋に高圧的な態度を維持する。実に健気な大王がそこにいた。

 

 「な、なんの様だ…。わ、我々を殺しに来たのか?」

 「貴方にお願いしたいことがあって。」

 「お願い、だと?」

 「作って欲しいモノがあってね。」

 

 なるほどとピラフは頷いた。

 多少の無茶振りなら叶えてやれるくらいには彼には科学力と頭脳がある。

 しかも鬼姫に貸しを作れるのなら彼にとって悪いことではない。

 むしろ逆、貸しを作ってあげるのならいくら身を削ってもお釣りがくる相手、それが鬼姫・小籠包である。

 彼女に頼られるということが彼の自尊心を大いに満たしたせいか、彼は迂闊にも「言ってみるがいい」と宣ってしまったのが運の尽きである。

 

 さて、肝心の要求はこうだ

 

 重力を操作できて

 気温を操作できて

 酸素濃度を操作できて

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 そんなトレーニングルームを作って欲しいと無茶振りしだしたのだ。

 

 どう?出来る?などと無邪気に首を傾げる様子に彼は頭を抱えた。

 

 前者3つはまあどうにかできる。程度にもよるが再現できるだろう。

 

 問題なのは最後の一つ。

 そんな都合の良い部屋があるのなら誰もが欲しがるわ!

 なんだったら自分が欲しいわ!

 出来る訳がない!アホか!帰れ!

 

 と、言いたい所だが…相手は彼の殺し屋鬼姫である。

 しかも、随分な態度で受け答えてしまった手前、

 できませんなどとは口が裂けても言えない。

 返事は、はいか、yesか、喜んでの3択だろう。

 

 「ごめん、一年じゃなくても構わないかな。三年でも十年でも大丈夫よ。」

 

 こいつ、実はとんでもないアホなのでは?

 人のことを神龍か何かと勘違いしてないか?

 

 「しぇ、神龍に頼むでは…いかんのか?」

 「駄目って断られたから貴方にお願いしてるの。」

 

 ちょっと何を言ってるのか分からない。

 ピラフの背後には壮大な宇宙が展開された。

 神龍にも生み出せないモノを作れるのなら、

 とっくに願望機なりを発明してとっくに世界の王になってるのですが…。

 

 「無理だよね、ごめん。最悪重力と、気温、酸素濃度を操作できるトレーニングルームで構わないわ。」

 「いいや、やってみよう、ただし期待はするなよ。」

 「ありがとう。」

 

 全く、とんだ作業依頼を受けてしまった…これでは自分が王に成り代わる計画が進まないではないか!

 そんな彼の落胆を流石に不憫に思ったのか、鬼姫は静かに口を開いた。

 

 「…できなくても構わない。でも、達成できたら貴方の用心棒にでもなってあげるわ。」

 

 がた!!!

 豪華な椅子が勢いよく倒れる音が部屋に響く。

 耳を疑った。鬼姫が、自分の配下になる?

 今、コイツはとんでもない口約束をした自覚はあるのか。

 

 「今の話、本当か…?」

 「もちろん、私の【敵】にならないのならね。今のところ、私の思惑通り振る舞ってくれてるようだし。」

 

 そういうと彼女はここ二週間で彼の立ち上げている計画書を拾い上げた。

 その中には、彼が王となる為、人心掌握を目的としたちまちまとした慈善事業のリストが挙げられている。

 ピラフにとって彼女が味方になるというのは、どの様な兵器でも替えは利かない。

 困った時に彼女を気兼ねなく呼ぶことができるのは、彼にとってこの上ないプラスだし、彼女の身内になれるのは最強の後ろ盾である。

 

 「やろうではないか…!もう一度いう!時間を貰うぞ。」

 「いいよ、でも早く作れる機能があるなら用意して欲しいかな。」

 「重力と気温、酸素濃度くらいなら…1ヶ月もあれば作れるぞ。」

 「流石ね、じゃあよろしく。場所はどこでもいいわ。持ち運べたりすると便利だけど。」

 

 王になるには、色々必要でしょう?と挑戦的な笑み。

 その言葉をピラフは正しく理解した。

 

 「良いだろう、ホイポイカプセルに収まる簡易式のモノを用意してやる。ただし性能は落ちるぞ。作業の効率化も考えて、大型のモノは我が城に併設することになるな?」

 「じゃあ通うしかないわね、時間が合うなら、色々手伝ってあげてもいいよ。」

 「そうかそうか、なら急がねばならんな。」

 

 クックック。と悪い笑みを讃えあう子悪党二人。

 良い感じに載せられてしまった主人に左右の部下は大丈夫かと不安しかなかった。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 二人の不安は見事に的中したのである。

 彼は早々に重力発生装置、大気制御装置、極温度制御装置、ソレらをモジュールに組み上げたトレーニングルームの計画書を僅か二日で書き上げ、ソレをマイに押し付けた。

 

 「1ヶ月で終わらせろ!手段は問わん!」

 

 クソ面倒な状態の主人の面倒を見るか、無茶振りの2択を迫られたマイはあっさり後者を選び逃走したのだ。

 

 ソレからというモノ、熊猫もかくやと言わんばかりのクマをこしらえて彼は難題と戦い続けた。

 半ばゾンビ…しかしてその頭脳の回転は衰える事を知らぬようで、ホワイトボードへ難解な図式を無限に増やしていく。

 

 「あ、あの…ピラフ様…?鬼姫は時間がかかっても構わないと…言ってましたし…」

 「馬鹿者!あの鬼姫が俺様の配下となる絶好のチャンス…!こんな気まぐれ、奴は2度と起こすものか!なんとしても奴を手に入れるのだ!」

 

 もう見てられないと、見かねた心配の言葉すら、

 唾を迸り叱責される始末。

 しかも向いてる方向はホワイトボード。

 背中で語るとはこのことである*1

 このやりとりも既に3回目。

 なんなら、ピラフのこの文章も3回目である。

 この難題を解くために文字通り全身全霊を込めているのだ。

 部下の世迷言に付き合う暇も余力もない。

 

 マイが工事終了の報告をしたそのころ…盛大な涎を机に垂れ流し、

 眠りかけるピラフの姿がそこにあった。

 眠気に敗北したのではない。

 

 彼のその顔面のかたわら…シュウが涎の洪水の餌食にならぬ様、スタンドに立てかけたノートにはとある異空間発生装置の考案図。

 

 彼は僅か1ヶ月で、鬼姫の無茶振りをクリアできる世紀の大発明のとっかかりを掴み取って見せたのだ。

 

 ピラフ大王、勝利の爆睡である。

 

*1
たぶん違う




 うおおお!!!
 ピラフ様最高!
 ピラフ様最高!
 ピラフ様最高!

 1ヶ月で精神と時の部屋の再現を科学的に証明するアルティメット科学者。お前がナンバーワンだ?
 なお、理論を構築したからと言って完成する訳ではない。
 大事なのはこのスピード感で出来るやで!ってオリ主にアッピルすること。
 もうこれで一財産稼げますよ!!
 王様目指してる場合じゃないっすよ!!
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