ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 雑に書きすぎた内容を見直してたりしたら私生活が爆発して足踏みしまくったので初投稿です。


其之五十三 下っ端戦闘員ラディッツ

 

 ラディッツをピラフに紹介し、まるでサークルにでも勧誘するノリで、小籠包が仲間に加えたいと言い出したのが事の始まりだった。

 

 「…ダメだ、お前の頼みでもこいつを仲間にすることはできん。」

 「それはわかったから、どうしてか理由を教えてよ。」

 「ぶ、部外者をおいそれと入れる訳にはいかん…!」

 「私だって元部外者よ、彼と私どう違うの。」

 

 さっきから平行線である。なぜかこのピラフという男は自分を仲間に入れるのを恐れている様に見える。

 そしてそんなやりとりを横で聞く身としては、小籠包の言葉が否定される度に申し訳なくなる。

 自分を庇うほど彼女の居場所がなくなるのではと、不安になってしまう。

 

 「お前には実績がある…、だがその男には…!」

 「だから私が推薦してるんじゃない。はっきり言ったらどうなの。ラディッツが気に入らないって」

 「そうではない、そうではないのだ…!」

 

 ピラフは言葉を濁してはいるが、何かを恐れているのは言うまでもない。

 そしてそれを隠している。

 何を隠しているのかは知らないが、自分より隣で便宜を図ろうとしてる彼女の方がよっぽど恐ろしい存在だと思うのは自分だけだろうか。

 

 

 

 あの後、ラディッツは自分の力の強さをピラフルームで実感した。

 そして同時に、彼女には逆立ちしたって勝つことができないことがわかった。

 優しくて美しい上に強いとまで来た。

 ラディッツはますます小籠包に入れ込んでいった。

 

 さて、あまりにやりとりが平行線となっているのを見かねて、遂にラディッツが口を挟んだ。

 

 「小籠包、いい。雇い主がこう言ってるんだ、俺が引き下がれば良いだけの話だ、そうだろう?」

 「ラディッツは黙ってて、これは私の為でもあるんだから。」

 

 これだ、そんな物は方便だと言うことは誰にでも分かる。

 曰く、有事の際に自分一人だけでは追いつかない可能性がある。

 優秀な戦闘員が行くあてもなく彷徨っている。

 これを引き入れない明確な理由を示せと彼女は雇い主側に切望する。

 

 ここまで食い下がれば誰だって心象は悪くなる。

 

 ピラフも次第に困ったように頭を抱え始めた。

 

 「わかった、こうしよう。そいつの記憶が戻るまでだ。それ以上は認めん。」

 「どうして?そんな回りくどいことしなくてもいいでしょ。」

 「そいつにも元の立場というのがあるだろう。記憶がもどったらそこに戻せばいい。これ以上は譲らんぞ。」

 「けち、おこりんぼ大王。」

 「…お前は時々子供みたいな事を言うな…。」

 

 漸く落とし所がついたところで、ラディッツは心に決めた。

 せめて、記憶が戻るまで、彼女の迷惑にならぬようにと。

 

 ピラフ一味の末席に加わることになったラディッツだったが、

 雇い主が難色を示したのは無論、彼の尻に生えた尾っぽである。

 かつて尻尾の生えた小僧に煮湯を飲まされたピラフにはそれがトラウマなのだ。

 それを知らないし語る気もないピラフは、ただただ余所者を拒絶しているように映っただろう。

 何よりそんな事を語ったとして信用されるなどと思っていない。

 

 ラディッツは彼女に頭が上がらない。

 理由はどうあれ、雇い主とここまで徹底的に、

 本人は自分を悪と断じているが、ここまでお人好しな人間が悪人なら世の中は悪で溢れかえっているだろう。

 

 記憶を失う前の自分はどうしようも無い奴だったようだし、

 元の木阿弥に戻るのはあまり気が進まない。

 記憶が戻ったら、どう考えるかは想像もできないが…。

 

 できる事なら小籠包への恩を返したい。

 その為には役に立って、ピラフの信用を得なければならない。

 

 その為に、先ずは彼女の部下として恥ずかしくないよう、強くならなければならない。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 小籠包の下についてからというもの、ひたすら鍛錬の日々だった。

 3倍の重力下の中、彼女に一撃を入れる。

 ただソレだけの内容。

 

 しかし、当たらない。自分の拳は空を切り、その度に彼女の掌が自分の身体に触れる。

 「反撃された」ということを意味する。

 この回数が少ないほど良いのはいうまでもない。

 あくまで戦闘ではなく戦術訓練。

 自分に余計なダメージを与えない様よく配慮されている。

 既に、「反撃された」回数は軽く2桁を超えていた。

 これが実戦なら自分はとうに敗北しているだろう。

 

 「ほら、手が緩んでるよ。私に一発入れるんでしょう?」

 「くっ…くそったれェ…!」

 

 思わず悪態をつく、己の不甲斐なさに怒りが湧き出る。

 怒りに身を任せるほど攻撃の質は堕ち「反撃された」回数が増えていく。

 一体どれほどの鍛錬を積めばこの高みに辿り着けるのだろうかと不思議でならない。

 

 これが終われば次は組み手だ。

 先ほどまでまともな反撃をしなかったが、今度は徹底的に自分を痛めつける。

 普段は美しく優しいが、こと戦闘に至っては悪辣になる。

 これほどまで自分と力量差があるというのに、正面からではなく意識の外や死角を突くような攻撃に徹底されている。

 

 「っおォりゃぁ!?」

 「ッ…!はァ!」

 「ごふ!?」

 

 見せつけられた隙を好機と捉えて、迂闊にも踏み込んだ哀れな拳を見切られ、一瞬で死角に潜り込まれる。

 視界から消え、意識を捜索に切り替えたその瞬間を狙ったボディブロー。

 意識の隙間をついた攻撃を受け続け、やっと意識を手放さない程度には彼の防御力は上がりつつあった。

 

 「ゥ…ぐ。」

 「…!」

 

 問答などない。

 戦闘力を大幅に削ぎ落とされた自分の顎を抉るようなフックに遂に意識が撓んで倒れ込む。

 仰向けにダウンしたところで終わらない。

 この組み手はどちらが意識を落とすまで続けられる。

 薄れゆく意識の中、普段の優しげな瞳から想像もつかない、冷たい鬼の様な視線で射抜かれ、鳩尾に追撃のストンプが入り、遂に意識を落とす。

 

 その度に、居住スペースのベッドで目を覚ます。

 彼女の待つピラフルームへと飛び出していき、一人鍛錬を続ける彼女に声をあげる。

 

 「もう一度だ!」

 

 振り返る彼女は僅かな汗を一筋流しながら笑う。

 その汗が自分との戦闘にやるものではない事がたまらなく悔しい。

 

 「いいよ、私はいつでも。」

 

 挑む、負ける、挑む、負ける。

 これを陽が沈むまで繰り返し、居住スペースで休む。

 ただひたすら二人で強さを突き詰める日々、この上ない充実感に満ちた時間だった。

 コレが自身の本質からなのか、小籠包が相手であるためなのかは瑣末な問題だ。

 

 彼女はよき友人であり、師であるが困ったことが一つだけある。

 あまりに無防備すぎるのだ。

 

 「ラディッツ、シャワー借りていい?」

 「元々お前のモノだろう。好きに使うといい。」

 

 鍛錬を終えて一息ついた矢先、何気ないこのやりとりが始まりだった。

 戦術訓練での「反撃された」回数と、その要因をまとめる。

 こうしてみると、自分がどの様な攻撃が苦手なのかがよくわかる。

 しかしどうしてもその対処方法がわからない。

 

 どうしたものかと頭を抱えている中、

 明日の訓練に備える最中に扉が開く音が聞こえる。

 

 「小籠包、ちょうどいい、お前からの意見もーーー」

 

 言葉を失った。

 よりにもよってバスタオル一枚であの女は出てきたのだ。

 ん?なに?ではない!

 彼女の苛烈な攻撃に忘れかけているが、当たり前に女性なのだ。

 褐色の肌は湯上がりに少しばかり上気…ではなくて!

 局部を隠しているが彼女のボディラインをよく…ではない!!

 

 「おおお、お前!なんて格好してる!せめて服を着てこい!」

 「は?何言っーーーちょ、押さないでって」

 

 強引に彼女を更衣室に押し込む。

 しかも何を言い出すかと思えば、着替えはないからそのままの格好で自室に戻るなど言い出した。

 仕方ないのでマイに連絡をいれて、着替えを持ってきてもらう。

 

 「す、すまん…今日は非番だというのに」

 「いいのよ、ほらこのバッグに詰めてあるからこのまま渡しなさい。」

 

 貴方も苦労してるのね、などと先輩からは同情の視線を向けられた。

 やけに手際が良いと思っていたら一度や二度ではないらしい。

 自分は女である前に戦士だ。

 ソレを地でいくのが小籠包なのである。

 

 こんなことが一度や二度ではない。

 なんなら浴室から出たことに気付かずにいきなり背後から覗き込まれて、椅子をひっくり返した事だってある。

 少しは自分の容貌が目を引く物だと自覚して欲しい。

 それをやんわり指摘して返ってきたのが。

 

 「え、ラディッツはこのナリに欲情するの?」

 

 などと言い出した。心の底から不思議な物を見る目で、である。

 

 小籠包はヒューマンタイプと呼ばれる生物であり、地球人もソレに該当する。

 この地球において見かけたことはないが、彼女の様な肌色は決して珍しくはなく、彼女の顔立ちは美形に類するのだ。

 記憶を失ったとはいえ、この辺りの感性はやはり地球外準拠である。

 瞳の色が黄色だろうが、褐色の範疇を超えていようが、そんなのはただの特徴であり、根っこがサイヤ人の彼にとっては彼女の強い気性やきつさを感じるこの容貌はど真ん中ストレートなのである。

 

 「お、俺は悪くないと、思うぞ…!」

 「そうなんだ、良い趣味してるね。」

 

 母さん、美人だったからなぁ。そんな風に呟く彼女はラディッツの言葉にまったく関心をもっていない。

 以降、彼女は不用意に自分の前で極端にラフな格好は避ける様になった。

 異性としての意識ではなく、「ラディッツが煩いから」であるのがまた悲しい。

 

 記憶をなくして早2週間。

 相変わらず自分が何者かはわからない。

 

 そして、この生活に満足しつつある彼は、自身が誰かもわからないという喪失感はなくなりつつあった。

 師である小籠包は相変わらず組み手では容赦ないが、それ以外は良き友人だし、彼女の隣にいるのは楽しい。

 

 ピラフとの契約は″記憶が戻るまで″だ。

 つまり、記憶が戻るということは、同時に小籠包とも別れることとなる。

 ソレは、あまり愉快なことではなかった。

 

 ーーーこのままコイツらと、″世界征服″をするのも、悪くない。

 

 そんな事をぼんやり思うようになった。

 既にラディッツの中で、記憶を戻すことの優先度は最底辺に位置着いていた。

 今の最優先事項は少しでも早く、小籠包に並び立つことだ。

 

 ーーーいつか、お前に見合う男になってみせるぞ。

 

 などと意気込む彼だったが、そもそも花より団子ならぬ、花よりバトル!色気より闘気を地でいく彼女にそういう匂わせは一切通じない。

 彼のこの思いは完全なる一人相撲なのである。

 

 その彼が、小籠包に望まぬ引導を渡す事になるとは、この頃の彼は想像だにしていなかった。





 ピラフ様痛恨のプレミ。

 戦闘力更新
 ラディッツ
  記憶喪失:1500=>500
  弟子入り(?):500=>2000

 
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